日本におけるベトナムのオフショア開発について詳しく説明しています。オフショア開発の基本的な定義から、その背景にある日本のIT人材不足の現状、オフショア開発が行われる理由やその傾向について解説。オフショア開発に対するネガティブなイメージの原因や、失敗する主な理由とその解決策、ベトナムにおけるインフラやオフィス環境の整備状況、エンジニアコミュニティの活性化についても触れています。さらに、オフショア開発が「グローバル開発」として進化する未来についての展望を示し、日本企業がグローバルな視点でIT開発を進める重要性についてまとめています。
オフショア開発とは
オフショア(Offshore)とは岸(shore)から離れている(off)という意味で、つまり海外という意味です。オフショア開発とは、海外で行うシステム、アプリ、ソフトウェア開発ということになります。オフショア開発は、新興国のエンジニアを活用し開発することで、日本のエンジニアでは賄えないエンジニアリソースを確保しながらコスト削減を期待し、中国、ベトナム、インドや東南アジア諸国で行われるのが一般的です。欧米企業で行うオフショア開発ですと、東欧や南米などもオフショア開発のエリアとして人気がありますが、日本ですとオフショア開発と言えば、時差が少ないアジアで開発することが多いのが現状です。
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日本におけるIT人材の課題と状況
日本ではIT人材が供給不足に陥っています。経済産業省の調査によると、2024年には、日本のIT人材が約40万人不足していて、2030年には最大約79万人ものIT人材が不足すると予測されています。この不足は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進や情報セキュリティの需要増加によってさらに深刻化している状況です。特に、AIやIoTなどの先端技術を扱える高度なスキルを持つ人材の不足が顕著です。さらに、日本の労働人口は少子高齢化の影響で減少しており、2030年には労働者全体が10%減少すると予測されています。この不足は特に高度なスキルを持つIT人材の需要が増加する一方で、供給が追いつかないことが主要な原因です
※参照:経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課「IT人材育成の状況等について」
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オフショア開発が行われる背景と傾向
Sun*では、2012年の創業以来、2023年12月末時点で850を越えるプロダクトの開発を伴走し、500社以上の事業成長のサポートをして来ました。各社がオフショア開発を実施する理由としては、主に以下のような理由が挙げられます。
オフショア開発を実施する理由
- 国内で優秀なエンジニアを採用することが困難
- システム開発のコスト削減/コストの変動費化
- 事業の海外進出
- 組織の多様化(ダイバーシティ)
最初は規模の小さいスモールスタートではじめて、慣れてきたところで、10人、数十人規模のプロジェクトに拡大していく例が成功事例として増え、コストの削減よりも事業の開発スピードや品質を重視するクライアントが増えている傾向があります。
ガートナージャパンがかつて2016年に発表した「2020年までに起こるIT人材の展望」には、「オフショアを実施する日本のIT部門の50%が、コスト削減ではなく人材確保を目的とする」と書かれていました。そして2024年の現在、どのようになったでしょうか。「オフショア開発白書2023年版」の調査結果をみると、オフショアを活用する一番の理由は、「リソースの確保」と予測通りの結果になっています。
※参照:「オフショア開発白書」(2023年版)
オフショアに対するネガティブなイメージ
多くの方がオフショア開発の「オフショア」という言葉に少しネガティブなイメージを持たれていると思います。本来は「岸が離れているだけ」という意味ですが、いろいろな失敗体験からネガティブなイメージが染みついてしまっています。しかし、実際のオフショア開発の現場で起こる問題は、本当は国内の開発現場でも起こり得る、また起こっている問題でもあります。どうしてもそのオフショアという言葉に引っ張られて、言語や文化の違い、直接コミュニケーションがとれないからうまくいかないなど、オフショア特有の問題から起因して問題が起きているのではないかと思われがちです。オフショアという言葉に引っ張られ、本質が見えなくなってしまうことがとても多く見受けられます。
オフショア開発が失敗する理由と原因
オフショア開発自体は古くからあった開発手法ですが、一部でネガティブな印象が持たれているのは、多くのオフショア開発プロジェクトが失敗に終わっているからです。なぜ、オフショアにはネガティブなイメージが多く持たれているのでしょうか。オフショア開発が失敗する理由と原因の代表的な例は以下です。
オフショア開発が失敗する主な理由
- 品質が悪かった。テストがしっかり行われていない
- 言葉の問題から仕様を伝えることが難しかった
- 文化や価値観の違いからミスコミュニケーションが発生した
- 人種の違いを乗り越えていいチームを作ることができなかった
オフショア開発が失敗する原因
- 依頼先のブリッジSEに頼りきってしまった。(できていると思ってフタを開けてみたらできていなかった)
- 日本のやり方を押し付けてしまい、新しいチームに適応する新しいやり方を十分に模索しなかった
- コミュニケーションの量が十分ではなかった
- コミュニケーション方法が適切ではなかった
- 文化や価値観の違いを克服し、お互いに信頼し尊敬しあうチームを作ることができなかった
参考記事:オフショア開発の進め方とは?具体的な手順や押さえておきたいポイント
オフショア開発の課題に対する取り組み
Sun*ではこれらオフショアの課題に対して、一つ一つ本質を追求しながら、いろいろな対策をしてきました。オフショアだからというのではなく、「この問題はなぜ起きるのか、それをどうやって解決するべきか」というのをフラットな視点で解決をしてきました。
エンジニアたちもそういう問題を解決することにとても貪欲で、エンジニア主体でいろいろな課題解決もしています。
例えば、ソースコードの品質改善やコミュニケーションミスを減らすために以下のような取り組みをしてきました。
- CIの環境をつくろうと、エンジニアたちが自分たちでCI環境を構築
- クラウド上にソースコードをコミットした段階で、自動でソースコードレビューが入る仕組み
- Github上で自動でソースコードレビューのコメントが入る環境の構築
- バージョンが更新される度にテストコードを実行し、常に安定したリポジトリを保てる環境の構築
- ヒューマンエラーをなくすためのデプロイなどの定期作業の自動化
Sun*では、創業以来、オフショア先のメンバーたちも日本のチームと同じような想いで、品質やスピードをあげるための仕組みを自分たちで作る文化を形成しています。クライアントやパートナーからも、その姿勢と環境は先進国と同等、もしくはそれ以上と評価していただいています。
併せて読みたい:オフショア開発の品質は低い?日本国内の開発との違いや対処方法を解説
ベトナムにおけるインフラやオフィス環境
ベトナムはアジアの中でも急速に経済が発展している国のひとつです。例えば我々が入っているビルは2012年にできた72階建ての350メートルぐらいあるオフィスビルで、このような高層オフィスビルが急速に建設されています。コワーキングスペースやクリエイティブなオフィスも増えてきており、インフラやオフィス環境なども先進国と変わらないような状況がつくられてきています。
ベトナムのエンジニアコミュニティ
新しい技術を学ぶための勉強会やセミナー、プログラミングコンテストなどが頻繁に開かれています。Sun*では、エンジニアのコミュニティーやカルチャーをとても大切にしており、その発展に多く貢献して来ました。例えば現地語で技術情報を共有し合えるVibloというエンジニア向けのプラットフォームを運営していますが、今では月間70万人を超えるユーザーが利用し、PVも300万を超えるサービスへと成長を遂げており、現地語での技術共有も非常に活性化しています。エンジニアが書いたAIアルゴリズム同士を戦わせるAIトーナメントイベントCodewarなどには、1度に2000人以上のエンジニアが参加してくれています。
なぜベトナムでオフショア開発なのか
アジアの中でもなぜベトナムがオフショア開発に向いているのでしょうか。上記で説明させていただいたように、オフィス環境やエンジニアのコミュニティが先進国と大差がなくなっていることのほかに、真面目な国民性や親日国であることも選ばれる理由です。オフショア開発におけるコミュニケーションを円滑にさせます。
オフショア開発はコミュニケーションが大事です。いいコミュニケーションは人間関係や信頼がベースとなります。国内での開発においてもチーム内での人間関係、信頼関係が大事ですが、言葉も文化も異なる多種多様な人間でチームを作る場合はますます大事になります。Sun*でもプロジェクトの立ち上げ時に、ベトナム現地でのチームビルディングを行い信頼関係を築いていただくことを推奨しております。
参考記事:オフショア開発ならベトナムがおすすめな理由とは?
オフショア開発でベトナムが注目される理由
現在、オフショア開発の依頼先としてベトナムが注目されているのは、なぜなのでしょうか。ベトナムに注目が集まる理由を解説します。
優秀なIT人材が豊富
ベトナムは生産年齢人口が多く、優秀で若いIT人材が豊富です。また、今後も若い層が増加すると予測されています。
オフショア開発でWebアプリケーションなどを開発する場合、エンジニアは若い層が向いているといわれます。若いエンジニアは最新のIT教育を受けており、新しく難解な技術も使いこなせる可能性が高いでしょう。
さらにベトナムでは国策としてITの教育に力を入れている背景があり、毎年多くの学生が大学でエンジニアリングを学んでいます。株式会社Sun Asteriskではハノイ工科大学で学生の教育も行っており、日系企業向けに新卒エンジニア採用のサポートも行っています。
海外トップ大学の優秀層が集まる、エンジニア採用プラットフォーム「xseeds」
国が成熟したタイミング
ベトナムは、オフショア開発の分野では国として成熟したタイミングであるといえます。
オフショア開発は1980年代頃の中国で始まり、2008年にブームとなりました。その後はインドや東南アジア、東欧、アフリカなどに広がり、さらに次にオフショア開発先として成熟した国がベトナムです。現在はベトナムが、オフショア開発のトレンドといえます。
2012年頃にも日本企業によるベトナム進出やオフショア開発拠点の立ち上げが頻繁に行われたタイミングがありましたが、その時にはうまくいかず、数年後に徹底する企業も少なくありませんでした。しかしその間ベトナムのITレベルは着実に向上し、今は中国のカントリーリスクに対する懸念もあり、再び注目を浴びています。
エンジニアの単価が日本の約1/3
ベトナムの人件費は、日本の約1/2〜1/3といわれています。一方、日本のエンジニアは国内でも需要が高く、人件費が高騰しているのが現状です。
つまり、オフショア開発の依頼先としてベトナムを選べば、人件費の削減につながるメリットがあります。技術的にも遜色がなく、パワーのある人材がいることも考えると、コストパフォーマンスがよいといえます。
具体的には、エンジニアはプロジェクトマネージャー、ブリッジSEの平均単価は以下のようになっており、数年前と比較すると上昇してきているとはいえ日本よりはまだまだ安価です。
・プログラマー :32万円
・システムエンジニア :40万円
・ブリッジエンジニア :51万円
・プロジェクトマネージャー:58万円
併せて読みたい:オフショア開発にかかる費用は?国別の費用を比較・解説
オフショア開発でベトナムを選ぶメリット
オフショア開発の依頼先にベトナムを選ぶことには、以下のようなメリットがあります。
勤勉な国民性
ベトナム人は向上心が強く勤勉な国民性をもつといわれています。スキルアップに熱心で、新しい技術も取り入れていく意欲も十分にあります。
また、親日的な傾向があるのも大切なことです。気持ちの上で親しみをもち、抵抗感なく、誠実に仕事に取り組んでもらえるでしょう。
日本語が話せる人材もいる
ベトナムなら、日本語を話せる人材も多々いるのがメリットです。それは、ベトナムから日本へ多くの留学生が訪れているなどの事情に関係しています。
リモートでのやりとりが主となるオフショア開発では、言語が通じることで大きく効率を上げることができます。実際にオフショア開発においては、日本語を話せるベトナム人エンジニアが、ブリッジエンジニアとして活躍しています。
日系企業がべトナム現地でオフショア開発拠点を運営していることも多く、要望によっては日本人スタッフをプロジェクトにアサインできる可能性もあります。
時差2時間の地理的条件
ベトナムと日本は、時差が2時間と少ないのが特徴です。ベトナムの一般的な業務開始の時間は朝8時で、日本における朝10時に該当します。
時差が少ないことでミーティングなどのストレスが軽減されるため、スムーズな業務の進行が可能です。
インフラ環境が整っている
ベトナムは、インフラ整備に力を入れている国です。道路や治水、港湾、そして通信インフラが整っています。
インフラは生活にはもちろん、ビジネスにおいても不可欠なものです。インフラが整っていれば、電力や通信が途切れるといった心配もなく、オフショア開発の依頼先として安定した稼働が期待できます。
「オフショア開発」から「グローバル開発」へ
我々は、ベトナムというのはあまり意識していません。IT開発において海外か国内かというのは、単に拠点が分かれていて、色んな人種のメンバーがチームにいるだけです。実際に我々のベトナム拠点には、ベトナム人はもちろん、バングラデシュ、カザフスタン、ロシア、カンボジア、ナイジェリア、そして日本など、様々な国籍・人種のメンバーがごっちゃになって働いています。
我々の観点からすると「オフショア開発」ではなく単に「グローバルなチームでの開発」です。
日本国内だけに目を向けると、少子化、人材不足とネガティブな情報に目が行きがちですが、少し外に目を向けて、国という概念を超えて周りと手を取り合えれば、新しい形でのグローバル先進国家というものを目指していけるはずだと思います。
Sun*では、グローバルチームでの開発を通じて、このようなことを実現していきたいと考えています。
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