システム開発を考えているものの、具体的な流れがイメージできないケースは少なくありません。全体の流れがイメージできないと、スケジュールや予算を検討するのも難しくなるため、一般的な流れを把握しておく必要があります。本記事では、システム開発の流れや成功のためのポイントなどを解説します。
システム開発の流れ
システム開発は要件定義から始まり、いくつかのプロセスを経てリリースします。まずはシステム開発の大まかな流れを確認しておきましょう。
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要件定義
まずは、クライアントの課題や要望をヒアリングします。システムの性能や機能・カバーする領域・具体的な進め方などを決めます。要件定義はシステム開発の流れにおける重要なポイントです。この工程をしっかり行わないと、遅れが生じたり、想定していたシステムとは異なる仕上がりになったりする可能性があります。
外部設計・内部設計
外部設計はインターフェースをつくることです。サービスを提供するサーバーや、ユーザーが使用する画面など外部に関する設計で、見やすさや使いやすさ、使い勝手に直結します。
内部設計は、目に見えない部分をつくる行程です。外部設計をもとに、必要な機能の設計やデータの整理をする仕様書・設計書を作成します。
プログラミング・コーディング
設計書が完成したら、プログラミング・コーディングの工程に移ります。プログラミングはコンピューターにさせたい仕事を順番に書き出す作業、コーディングはプログラマーがコードを書いてシステムを作成する作業を指します。1,000以上もあるといわれているプログラミング言語のなかから、設計書に応じたプログラミング言語を使って作成します。プログラミング言語はコンピューターに指示をする際に必要な言語で、種類によってできることが異なります。
プロダクトのテスト
プログラミングが終了したら、内容に間違いはないか、問題なく使用できるかなどをテストします。テストの種類は下記の4つです。
●単体テスト:分割して作成したプログラムが、それぞれ正常に動作するか確認する
●結合テスト:複数のプログラムを組み合わせて動作を確認する
●総合テスト:全体が正常に動作するかを確認する
●運用テスト:実際の環境下で問題なく使用できるかを確認する
リリース(納品)
プログラミングのテストをすべてクリアできれば、いよいよリリース(納品)です。これまで使用していたシステムがある場合は、リリースするシステムに移行します。リリース時は操作方法を説明したり、受け取り側が検収をしたりする作業を行い、問題がなければリリース完了です。
運用・保守・サポート
リリースが成功したからシステム開発は終了というわけではありません。開発側では想定していなかった操作によるトラブルや、使用時に発生する想定外のエラーが生じることもあるためです。運用を開始してからもトラブルがあれば対応する、定期的なチェックをするなどの保守・サポートが必要になります。
システム開発に携わるメンバー
システム開発で特に重要な役割を担うのがプロジェクトマネージャーです。プロジェクト全体を管理し、的確な指示を出したり問題が発生した場合は迅速に対応したりします。希望通りのシステムを構築できるかどうかは、システムエンジニアにかかっています。システムエンジニアはシステム要件定義や設計を担当します。設計書に従ってコーディングするのがプログラマーです。なかには下請けに委託する開発会社もあります。
システム開発の種類
システム開発の種類は、「アジャイル型」、「ウォーターフォール型」、「プロトタイプ型」、「スパイラル型」の4つです。
アジャイル型
アジャイル型は、要件定義や仕様を大まかに決めておき、機能ごとに設計・開発・テスト・リリースを行っていく手法です。重要度の高いものから小規模な開発を繰り返して全体を完成させていきます。短期間でリリースまで進められることから、「素早い」という意味の「agile(アジャイル)」と呼ばれています。
ウォーターフォール型
ウォーターフォール型は、「waterfall(滝)」が上流から下流まで流れるように、すべての工程を順番に進めていく手法です。1つの工程が完璧にできたら、その次の工程に進むという流れで進めていきます。進捗やコストを管理しやすい一方で、開発途中での修正や仕様変更が難しいことが課題となっています。
プロトタイプ型(プロトタイピング)
プロトタイプ型は、プロトタイプ(試作品)を作成してから細かい部分を修正していく手法で、プロトタイピングとも呼ばれています。試作品を確認したうえで「ここはこうした方がよい」など考えられるため、システム全体の明確なイメージができていなくても開発を進められます。ウォーターフォール型の弱点を改善した手法といえるでしょう。
スパイラル型(スパイラルモデル)
アジャイル型とウォーターフォール型の強みを組み合わせた手法が、スパイラル型(スパイラルモデル)です。スパイラルは螺旋を意味しており、螺旋状に小規模な開発を回して開発を進めます。スケジュールを重視しつつ、開発の途中で修正もできるのが特徴です。
併せて読みたい:アジャイル開発とウォーターフォール開発の違いは?それぞれの特徴を解説
アジャイル型の特徴
アジャイル型は、短期間でリリースできる点や、開発している部分ごとに随時仕様変更できる点がメリットです。一方、スケジュールやコストの管理がしづらい点はデメリットといえます。仕様変更が可能なため、市場動向に合ったシステムを作成したい案件に向いています。
併せて読みたい:イラスト図解で分かるアジャイル開発!メリットや向いているケースを解説
ウォーターフォール型の特徴
ウォーターフォール型は、スケジュールや予算などの計画が立てやすく、プロダクトの品質を保ちやすい点がメリットです。ただし、開発が長期化しやすい、仕様変更しにくいといったデメリットがあります。大規模な開発や作りたいシステムが決まっている案件に向いています。
システム開発を一定の流れで進める重要性
システム開発は、品質維持や納期、コスト面などを考えると、一定の流れで進めることが重要です。
プロダクトの品質維持
システム開発は、プロセスに沿って進めることで品質維持につながります。例えば、アジャイル型もウォーターフォール型も進め方こそ異なりますが、いずれも確認・レビューを実施しながら開発を進めるためです。品質を確認しながら開発していくことから、システムのクオリティをより高められます。
プロジェクトにおける認識の統一
開発の流れが決まっていると、メンバー間でプロジェクトに対する認識を統一できます。メンバー全員が作業予定や進捗状況を把握しやすくなり、互いに異なる作業をしていてもスムーズに開発を進められます。なお、システム開発を外注する際は、発注者と依頼する開発会社同士で認識を統一しておくことも重要です。
納期遵守・コスト削減
自由にシステム開発を進めていると、途中で修正や変更しなければならない事象が発生しやすくなるため、納期が遅れたり想定外のコストが発生したりする可能性があります。開発の流れが決まっていると、流れのとおりに進めていくだけなので、スケジュールや予算の管理がしやすくなります。
成長につながる
毎回決められたプロセスに従って開発を進めていくと、プロジェクトに携わったメンバーの経験値として蓄積されやすくなります。何度か同じプロセスを経験すれば、プロセスを成功に導くためのコツやポイントが見えてくるためです。一方、流れを決めずに開発していると、ノウハウを体系的に積み上げづらくなります。
システム開発の流れで用いられる略語
システム開発では頻繁に用いられる略語があります。覚えておくと開発におけるコミュニケーションがスムーズになるうえに、外注する場合は依頼する開発会社とのやり取りもしやすくなります。システム開発の流れで用いられる略語を表にまとめました。
【略語一覧】
開発のプロセス |
専門用語 |
略語 |
意味 |
要件定義 |
Requirement Analysis |
RA |
要求を分析する |
Requirement Definition |
RD |
要件定義 |
外部設計・内部設計 |
System Planning |
SP |
システムの計画および導入 |
System Architectural design |
SA |
システムの方式を設計する |
Basic Design |
BD |
基本のシステムを設計する |
External Design |
ED |
外部の設計をする |
Internal Design |
ID |
内部の設計をする |
Detail Design |
DD |
プログラムの詳細を設計する |
System Structure Design |
SS |
システムの構造を設計する |
Function Design |
FD |
機能ごとの仕様を設計する |
User Interface |
UI |
画面レイアウト・操作方法の設計 |
Program Structure Design |
PS |
プログラムの構造を設計する |
Program Design |
PD |
プログラムを設計する |
プログラミング・コーディング |
Programing |
PG |
プログラムの作成 |
Coding |
CD |
プログラミング言語の入力 |
プロダクトのテスト |
Unit Test |
UT |
システムごとの単体テスト |
Integration Test |
IT |
複数のシステムの結合テスト |
Product Test |
PT |
プログラム全体の総合テスト |
Operations Test |
OT |
実際に運用してみる運用テスト |
System Test |
ST |
要件定義に沿っているか確認するシステムテスト |
専門用語には似ている言葉もあり、場合によっては同じ意味で使われることもあります。
例えば、基本のシステムを設計する「BD」と外部設計を意味する「ED」です。プログラムの詳細設計を意味する「DD」と、内部設計を意味する「ID」も同義で使われることがあります。
さらに、システムの構造を設計する「SS」が、「DD」や「ID」とほぼ同じような意味で使われることもあります。同義で使われることのある略語も同時に覚えておくと便利です。
システム開発におけるポイント
システム開発は一定の流れで進めること以外にも、意識したいポイントがあります。途中で仕様変更などをする必要がないように要件定義は具体的に決めておく、成果物のクオリティを保つために開発側の実績やスキルを確認するなどです。
また、問題が発生してもスムーズに対応できるように情報共有を密に行うことや、複数の開発会社を比較検討し、自社に合った依頼先を見つけることもポイントとなります。
まとめ
システム開発にはいくつかのプロセスがあり、流れに沿って進めることが大切です。一定の流れで開発を進めることで、品質維持や納期厳守、コストの削減、メンバーの成長につながるためです。自社での開発が難しい場合は、外注する方法があります。外注する際は複数の開発会社を比較したうえで検討しましょう。
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