アジャイル開発の手法の1つに、XP(エクストリームプログラミング)というものがあります。本記事では、XPの特徴について、重視される5つのポイントと4つの慣習に触れつつ解説します。アジャイル開発の手法であるスクラムとの違いについても紹介するため、ぜひ参考にしてください。
アジャイル開発の手法XP(エクストリームプログラミング)とは
アジャイル開発の手法XP(エクストリームプログラミング)について、特徴やスクラムとの違いを解説します。
XPの特徴
XPはアジャイル開発における手法の1つです。アジャイル開発の特徴は、プロダクトの要件ごとに短期間のイテレーションを繰り返し、継続的に開発を進めていくところです。XPも他のアジャイル開発手法と同様に、イテレーションを繰り返してプロダクトを開発します。なお、アジャイル開発のなかでも、XPは特に柔軟性に重きを置いた開発手法といえます。
XPの起源と名称の由来
XPは1990年代後半に、給与計算システムを開発する過程で考案されました。XP(Extreme Programming)は、極限までを意味する(Extreme)と、プログラミング(Programming)を合わせた言葉です。
スクラムとの違い
アジャイル開発手法の1つであるスクラムもXPと同様、イテレーションを繰り返します。ただし、スクラムが重視するポイントは、開発スピードです。ラグビーの「スクラム」に由来する名前のとおり、チームは一致団結してスクラムを進め、迅速にプロダクトを作り上げます。
また、XPとスクラムでは、チームメンバーの役割や顧客の関わり方などにも違いがあります。XPは技術を要する活動が多いのに対し、スクラムは役割や会議の構造化を通じて自己組織化を図る点が特徴的です。
XPにおけるチームメンバーの主な役割
XPにおけるチームメンバーの主な役割は、以下の3つです。
・コーチ
・トラッカー
・顧客
コーチはプロジェクトの管理者として、開発には直接参加しません。開発が円滑に進むように環境を整えるのがコーチの役割です。トラッカーは、プロジェクトの進行状況を測定してチームに報告します。
顧客は要求を定義し、プロジェクトの進捗を常に把握して優先順位を決めます。また、受け入れテストの作成も顧客の役割です。
XPの流れ
XPの基本的な流れは、以下のとおりです。
1.計画ゲーム
2.イテレーション
3.リリース
計画ゲームでは、顧客の要求とチームの能力のバランスを取りながら、次のイテレーションで開発する機能を決定します。イテレーションでは、決定した機能を短期間で開発し、受け入れテストを行います。イテレーションは繰り返し行われ、機能が徐々に追加される仕組みです。複数のイテレーションの完了後、顧客の受け入れに合格した機能をまとめてリリースします。
XPで重視される5つのポイント
XPの基本的な原則を表す、5つのポイント(価値)を解説します。ポイントを押さえると、効果的な開発とチームワークの向上が見込めます。
1.過不足ないコミュニケーション
XPでは、顧客とチーム間やチーム内の活発なコミュニケーションが必要です。顧客とのコミュニケーションが不十分だと、顧客の期待に沿わないプロダクトが生まれる恐れがあります。一方、チーム内のコミュニケーション不足は、誤解や重複作業などのトラブルを招きやすくなります。
2.設計のシンプルさ
XPでは、複雑な設計を避けて基本的な機能のみを実装し、顧客のフィードバックや要求に応じて、段階的に機能を追加していくアプローチを取ります。シンプルさを重視する理由は、無駄な開発を避け、仕様変更に柔軟に対応するためです。
3.仕様変更に対する寛大さ
XPでは、初期段階で詳細な計画を立てない代わりに、開発中の仕様変更を自然な過程として受け入れます。大規模な仕様変更も想定内とすると、顧客満足度の高いプロダクトの提供が可能になります。
4.フィードバックの活用
XPでは、シンプルな初期設計に対して顧客からのフィードバックを積極的に求めます。フィードバックを通じて、本当に必要な機能や改善点が識別され、段階的な機能の追加・改良につながります。
5.メンバーの意見尊重
XPでは、チーム内の活発なコミュニケーションが求められるため、互いの意見を尊重する姿勢が重要です。メンバーの専門知識や経験を認め合い、オープンに意見を交換する過程でチームの結束力が高まります。
XPの4つのプラクティス(慣習)
XPで重視されるプラクティス(慣習)を、4つのカテゴリーに分けて解説します。
1.共同プラクティス
以下に示した共同プラクティスは、開発にかかわる全員で取り組むプラクティスです。
・反復
・共通の用語
・開けた作業空間
・回顧
共同プラクティスは、チーム全体の協力と効果的なコミュニケーションの促進に効果的です。反復的な開発により柔軟性を保ち、共通の用語で理解を深め、開けた作業空間で情報共有を促進します。さらに、定期的な回顧ではプロセスを振り返り、継続的な改善を図ります。
2.開発プラクティス
以下に示した開発プラクティスは、主にプログラマーを対象としたプラクティスです。
・テスト駆動開発
・ペアプログラミング
・リファクタリング
・ソースコードの共同所有
・継続的インテグレーション
・YAGNI
開発プラクティスは、高品質なコードの生産と効率的な開発プロセスを促進します。テスト駆動開発とペアプログラミングでバグを減らし、リファクタリングで設計を改善します。ソースコードの共同所有と継続的インテグレーションで、チーム全体の生産性の向上が可能です。さらに、YAGNIにより不要な複雑さを避けられます。
3.管理者プラクティス
以下に示した管理者プラクティスは、管理面に関するプラクティスです。
・責任の受け入れ
・援護
・四半期ごとの見直し
・ミラー
・最適なペースの仕事
管理者プラクティスの目的は、プロジェクトの円滑な進行と持続可能な開発環境の構築です。管理者が責任を受け入れ、開発の援護や負担の調整、進行状況の共有、適切な作業ペースの維持に努めると、長期的な生産性と品質の向上につながります。
4.顧客プラクティス
以下は、顧客に関するプラクティスです。
・ストーリーの作成
・リリース計画
・受け入れテスト
・短期リリース
顧客は開発メンバーの一員として、開発プロセスに深く関与し、プロジェクトの方向性を左右する立場です。
顧客は、ストーリーを通じて要件を明確にしたうえで、計画立案に参加し、受け入れテストにより品質を確認します。また、短期リリースで頻繁にフィードバックを提供し、製品が顧客のニーズに合致するよう調整します。
アジャイル開発をXPで進行するメリット
アジャイル開発をXPで進行するメリットを解説します。柔軟に顧客の意見に対応しつつリスクを回避できる点が、XPで進行する強みです。
柔軟に顧客の意見に対応できる
シンプルな設計を基本とするXPは、顧客の意見を反映して容易に機能を追加できます。アジャイル開発は、各イテレーションで顧客の意見を取り入れる機会が多い手法です。顧客との密接な協力関係を築き、要望や意見を積極的に聞き取り、プロダクトに反映させましょう。
リスク回避しやすい
リスク回避の容易さも、アジャイル開発をXPで進行するメリットです。ペアプログラミングを通じて、コーディング中のエラーをリアルタイムで発見して修正できます。また、シンプルな設計を基本とするため、仕様の複雑さに起因するエラーを低減できるでしょう。
さらに、アジャイル開発全般にいえますが、短期間のイテレーションごとにテストを行うことで、エラーを早期に発見して迅速に対応できます。
アジャイル開発をXPで進行するデメリット
アジャイル開発をXPで進行するデメリットを解説します。プロジェクトの内容によっては、他の開発手法も検討しましょう。
開発者に高いプログラミングスキルが求められる
開発プラクティスは、プログラマーが主体となって実践されます。XPで重視されるテスト駆動開発、ペアプログラミング、リファクタリングなどを効果的に行うには、高度な技術力が必要です。
また、プロジェクトを成功に導くためには、プログラミングスキルに加えて、問題解決能力やコミュニケーション力、そしてチームワークなど多様なスキルが求められます。
スケジュール調整が難しい
XPを用いたアジャイル開発では、スケジュール調整が難しい場合があります。XPでは、プロジェクトの全体像を捉えにくい傾向があるためです。特に、大規模なプロジェクトに長期的に取り組む際は、スケジュール管理の複雑さが増す可能性があります。
予算を組みにくい
XPを用いたアジャイル開発は、予算管理に課題があります。顧客のフィードバックに基づいて柔軟に機能を追加・変更する特性上、開発の過程で予想外のコストが発生し、予算が膨らむ可能性があるためです。プロジェクトの開始時点では詳細な要件が固まっていないことから、初期段階での正確な予算計画の立案は困難です。
まとめ
アジャイル開発の手法の1つであるXPは、柔軟さが特徴です。XPを円滑に進めるには、顧客を含めたチーム全員とコミュニケーションを密に取り、個々の意見を尊重しましょう。
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