アジャイル開発において、見積もりはプロジェクトのスコープやリソースを明確にするために重要な要素です。見積もりを行うことで、チームはプロジェクト全体の進行を把握し、効率的にリソースを配分することが可能になります。本記事では、アジャイル開発における見積もりの重要性や具体的な手法について詳しく解説します。
アジャイル開発で見積もりをすべき理由
アジャイル開発において、見積もりはプロジェクトのスコープやリソースを明確にするために欠かせないプロセスです。見積もりを行うことで、チームはクライアントや上司に対して現実的な期待値を設定し、プロジェクトの進行状況をより正確に予測できます。
また、見積もりを通じて、潜在的なリスクを早期に把握し、適切に管理することが可能となります。さらに、開発期間やリソースの割り当てを適切に計画することで、チームの効率が向上し、プロジェクトの成功率を高めることができます。
アジャイル開発の見積もり方法
アジャイル開発の見積もり方法は以下の3つです。それぞれについて詳しく解説します。
プランニングポーカー
プランニングポーカーは、アジャイル開発においてチームメンバーが匿名で見積もりを行い、その後のディスカッションを通じて合意に達する手法です。
チームメンバーはタスクの複雑さや作業量を数値で表すカードを使用し、全員が同時にカードを公開します。その後、見積もりに差異があれば意見の違いを議論し、最終的な見積もりを決定します。この手法では、各メンバーの意見が反映され、より精度の高い見積もりを導き出すことが可能です。
Tシャツサイズ
Tシャツサイズは、タスクの相対的なサイズをXS、S、M、L、XLなどのカテゴリで評価するシンプルな見積もり手法です。この方法は、バックログのグルーミングやスプリント計画の際に特に有効であり、タスクの複雑さや作業量を簡単に比較することができます。
Tシャツサイズを使うことで、チームはタスクを素早く評価し、スプリント内で取り組む優先度を決めやすくなります。また、この方法は直感的でシンプルなため、全員の意見を反映しやすく、スピーディに見積もりを進めることが可能です。
三点見積もり
三点見積もりは、楽観的な見積もり(O)、悲観的な見積もり(P)、そして最も現実的な見積もり(M)の3つのシナリオを考慮し、その平均を算出する手法です。この手法を用いることで、タスクに伴うリスクや不確実性を考慮した、より現実的な見積もりを出すことができます。
特に、複雑なタスクや不確定要素が多いプロジェクトに適しており、チームは各シナリオを慎重に評価することで、精度の高い見積もりを導き出します。
見積もり方法で主に使われているのは「プランニングポーカー」
見積もり方法で主に使われているのがプランニングポーカーです。その理由を3つ、以下で解説します。
チーム全員が見積もりに参加できる
プランニングポーカーは、チーム全員が見積もりプロセスに参加することを可能にする手法です。各メンバーが自分の視点や経験をもとに見積もりを行い、それをチーム全体で共有することで、さまざまな観点からタスクの難易度や作業量を評価できます。
これにより、見積もりの精度が向上し、チーム全体で合意を形成しやすくなります。全員の意見が反映されるため、より現実的で信頼性の高い見積もりが可能になります。
全員が共通の理解を持てる
プランニングポーカーのプロセスでは、チーム全体でユーザーストーリーやタスクの内容を話し合い、見積もりの合意に達することが求められます。これにより、作業を開始する前にチーム全員が共通の理解を持つことができ、プロジェクトの進行において全員が同じ目標を共有できます。
どのメンバーが担当する場合でも、ユーザーストーリーやタスクの解決方法に対する理解が一致しているため、作業の効率性と品質が向上します。
1人の主観よりも早く正確に見積もれる
プランニングポーカーでは、上司やシニアメンバーがタスクの詳細を把握しきれず、楽観的な見積もりを出すリスクを軽減できます。現場のメンバーが技術的な知識を持ち寄り、より具体的で現実的な見積もりを提供できるため、タスクに対する正確な評価が可能です。
また、ストーリーポイントという抽象的な単位を使うことで、時間ベースの見積もりではなく、作業の相対的な複雑さに基づく評価が可能になります。
プランニングポーカーは完璧な見積もりを作るものではない
プランニングポーカーは、完璧な見積もりを目指すものではなく、チーム全員で合意を形成し、プロジェクトをスムーズに進行させるための手法です。見積もりの過程では、各メンバーの意見や視点が異なることが多いですが、これらの相違を調整しながら、現実的なスコープを決定していきます。
そのため、プランニングポーカーの目的は、単に正確な見積もりを得ることではなく、開発サイクルごとにフィードバックを取り入れ、プロジェクトを継続的に改善していくことにあります。
プランニングポーカーのやり方
プランニングポーカーのやり方を3つの手順で解説します。
1.ユーザーストーリーの説明とディスカッション
プランニングポーカーの最初のステップは、見積もりを行う対象となるユーザーストーリーの説明です。プロダクトオーナーやスクラムマスターが、そのユーザーストーリーの要求や背景を説明し、チーム全員がその内容を理解できるようにします。
この段階では、チームメンバーが自由に質問を行い、ストーリーに関する曖昧な点や不明確な部分を確認します。ディスカッションを通じて、チーム全員がユーザーストーリーの複雑さや要求を共通の認識として持つことが重要です。
2.カードの選択と投票
次に、チームメンバーはそれぞれの見積もりをカードに書かれた数字で表します。この数字は通常、フィボナッチ数列(1, 2, 3, 5, 8, 13など)に基づいており、ストーリーポイントとして作業量を評価します。全員が見積もりの準備ができたら、同時にカードを公開し、ユーザーストーリーに対する各メンバーの見積もりを示します。
もしメンバー間で大きなばらつきが見られた場合、なぜその見積もりを選んだのかを共有し、理由を議論します。
3.合意の形成
見積もりに違いが出た場合、チームはその理由について話し合い、ユーザーストーリーに対する共通の理解を深めます。このプロセスでは、作業量やタスクの複雑さに関する異なる意見を調整し、全員が納得できる見積もりに到達することを目指します。
必要に応じて見積もりを再度行い、全メンバーが合意に達するまでこのプロセスを繰り返します。最終的に、チーム全体で合意した見積もりが公式なものとして決定され、そのユーザーストーリーの基準となります。
プランニングポーカーで見積もりをするタイミング
プランニングポーカーは、スプリントやイテレーションの計画段階で実施される手法です。具体的には、ユーザーストーリーが十分に明確になったタイミングで行われ、次の開発サイクルに入る前にチームが集まり、作業量や複雑さに対する見積もりを行います。
この流れを通じて、チーム全員が共通の理解を持ったうえで作業を開始することができ、結果として効率的な開発が期待されます。プランニングポーカーは、見積もり精度を高めるだけでなく、チーム内での合意形成や協力を促進する重要な役割を果たします。
アジャイル開発の見積もりで注意すべきポイント
アジャイル開発の見積もりで注意すべきポイントを3つ解説します。
目的を明確にして会議を進める
プランニングポーカーは、ゲーム感覚で楽しく見積もりを行える手法ですが、初心者や若手メンバーだけで行う場合、遊び感覚が先行し、適切な意思決定ができないリスクがあります。そのため、見積もりを行う際には、プロジェクトの目的やユーザーストーリーの重要性を明確にし、会議を進めることが非常に重要です。目的を共有することで、全員が真剣に取り組み、精度の高い見積もりを実現できます。
見積もりはチーム全員で行う
アジャイル開発における見積もりは、チーム全員が参加することが求められます。全員が同じ認識を持つことが、プロジェクトのスムーズな進行に不可欠です。プランニングポーカーのような手法を用いることで、各メンバーが自分の視点や経験を共有し、合理的に見積もりを行えます。
また、チーム全体で行うことで、タスクの複雑さやリソースの見積もりに対して共通理解が生まれ、チーム全体が同じ目標に向かって進むことも可能になります。
過去の実績やデータを参考にして見積もりを行う
アジャイル開発では、見積もりを行う際に過去のスプリントでの実績やデータを参考にすることも重要です。これにより、チームはより現実的な見積もりを行い、予測精度を高めることができます。
過去のデータを利用することで、チームのベロシティ(進捗速度)を把握し、それに基づいた計画を立てやすくなります。
まとめ
アジャイル開発における見積もりは、プロジェクトのスコープやリソースを明確にし、チームが効率的に作業を進めるために不可欠なプロセスです。
なかでもプランニングポーカーは、チーム全員が見積もりに参加し、意見を共有しながら合意形成を図る方法です。ユーザーストーリーを理解したうえで、カードを使ってタスクの複雑さや作業量を見積もり、チーム全体で共通の認識を持ちます。
Sun Asteriskは、圧倒的に柔軟な開発リソースを背景に、さまざまなアプリやシステムを開発しています。設計から本格的な開発まで、一気通貫でサポートできる広範なケイパビリティを備えていることも強みです。
貴社の状況にあわせて最適なチームをご提案します。アジャイル開発のご相談やお見積りのご依頼は、お気軽にお問い合わせください。
Sun*アジャイル開発に関するソリューションやこれまでの開発実績をまとめた資料のダウンロードはこちらから。