多くの企業が、さらなる発展を目指して新規事業を立ち上げています。一から新しく事業を始めるうえで、まず行うのが市場調査です。この記事では、新規事業を進めるべく市場調査のフレームワークについて解説します。フレームワークの概要だけでなく、目的別におすすめのフレームワークや注意点も解説するため、ぜひ参考にしてください。
新規事業の打率を上げるフレームワーク「バリューデザインシンタックス®」
目次
なぜ企業は新規事業を開発するのか?
企業が新規事業を開発する理由は、以下2つです。
・企業を継続的に発展させるため
・経営層の育成のため
ビジネス市場は日々変化しています。今後も、環境の変化によってニーズが変わることが想定されます。テクノロジーの進化によって、ビジネスモデルの寿命は短くなっているためです。企業が継続的に発展していくためには、常に新しい事業を進めて消費者のニーズに応える必要があります。
経営層の育成には、実際に経営を任せるのが効率的です。事業を一から立ち上げ、成長させることで、リーダーの教育になるでしょう。
フレームワークとは?
市場調査を行う際、指標となる一定の基準が必要です。基準をもとに、調査の枠組みをパターン化したものがフレームワークです。ビジネスのフレームワークとは、多くの研究者やコンサルタントが試行錯誤して確立した分析手法です。長年、ビジネス市場で用いられていた手法であるため裏付けもあり、効率よく分析できます。
目的別フレームワークは4種類
単に市場調査といっても、その目的やスキームはさまざまです。フレームワークも、段階に沿った手法を選択する必要があります。以下は、フレームワークを活用する際の目的です。
- アイデア出し
- 市場調査・分岐
- 事業構築
- 事業・サービスの改良
次章から、各目的に合ったフレームワークの種類を解説します。
アイデア出しをするフレームワーク
アイデア出しをするフレームワークとして活用できるのは、ペルソナ分析やSCAMPER法などです。それぞれの詳細を解説します。
ペルソナ分析
ペルソナとは、商品やサービスの象徴的なユーザー像を指します。ペルソナを分析・作成することで、顧客に対する解像度が高まり、効果的にアピールしていくことができます。ペルソナはマーケティングや新規事業を行う際に、メンバー間に共通言語を与えるため、円滑に進行していくうえで役立ちます。
ペルソナを分析・作成する際は、職業や年齢、性別などだけでなく、居住地や家族構成、行動パターン、価値観などの詳細も設定することが大切です。実際の顧客に近い、具体的なイメージを持つことで、顧客の潜在的なニーズを把握しやすくなり、顧客目線の商品・サービス開発が可能になります。
SCAMPER(スキャンパー)法
SCAMPER(スキャンパー)法は、新しいアイデアを生み出す際に役立つフレームワークです。既存のアイデアやサービス・商品の改良にも応用できます。以下7つの単語の頭文字からとって名付けられました。
- Substitute(置き換える)
- Combine(組み合わせる)
- Adapt(適応させる)
- Modify・Magnify(修正する)
- Put to another uses(他の用途に使う)
- Eliminate(除去する)
- Reverse・Rearrange(逆転する・再編成する)
アナロジー分析
アナロジーとは、他業種の成功事例を取り入れるフレームワークです。たとえば、多くのオフィスで採用されている「オフィスグリコ」は野菜の無人販売をモデルにしたものであり、アナロジー分析の代表格ともいえます。他業種であっても、成功事例を応用できるでしょう。
マンダラート
マンダラートとは、仏教のマンダラ模様に着想を得たアイデア拡張法です。中心にテーマを記入し、周囲に連想するアイデアを8つ書き込みます。選んだアイデアを次の9マスの中心に置き、周囲に再度アイデアを書き込みます。マンダラートの特徴は、書く人によって異なるアイデアが生まれることです。自由なルール設定でユニークな発想が可能です。
市場調査・分岐のフレームワーク
市場調査・分岐に適したフレームワークは、3C分析やVRIOなどです。ここでは、5つのフレームワークについて解説します。
3C分析
3C分析の提唱者は大前研一氏であり、ビジネスフレームワークの1つです。3C分析の要素はCustomer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つです。マーケティング戦略を練る際の分析手法として活用されています。
PEST分析がマクロ環境を分析するのに対し、3C分析はミクロ環境を分析するための手法です。大前研一氏は元マッキンゼーのコンサルタントであり、現在はビジネスブレイクスルー大学の学長を務めています。
VRIO(ヴリオ)分析
新規事業の成功には、持続的な提供と差別化が必要です。VRIO分析は、自社の競争優位性を維持するためのフレームワークです。自社の経営資源(人・モノ・金)の効果的な活用方法を判断するうえで役立ちます。VRIO分析の要素は以下の通りです。
- V:経済的な価値(Value)
- R:希少性(Rareness)
- I:模倣可能性(Imitability)
- O:組織(Organization)
ポジショニングマップ
ポジショニングマップとは、市場における自社や競合他社の商品・サービスのポジションを配置した図です。市場の状況や自社の優位性、競合他社と差別化できる点が明確になるため、商品・サービスの改善や新規事業の立ち上げ、マーケティング施策の立案に役立ちます。
アドバンテージマトリクス
アドバンテージマトリクスとは、ボストン・コンサルティング・グループが考案した競争優位性を評価するフレームワークのことです。
縦軸は「競争要因の数」、横軸は「競争優位性を構築できる可能性」となります。自社の事業を4つの領域に分類し、業界の特性を把握することが目的です。戦略の基本的な方向性を明確にするためのツールです。
SWOT(スウォット)分析・クロスSWOT(スウォット)分析
SWOT分析は、自社の状況や市場、競合の現状を整理し、新しい経営戦略を導くためのフレームワークです。SWOTはStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の頭文字からなる言葉です。内部環境の要素は以下のとおりです。
- Strength
- Weakness
さらに、外部環境の要素は以下です。
- Opportunity
- Threat
事業構築のフレームワーク
事業構築のフレームワークとしては、リーンキャンバスやセグメンテーション・ターゲティングなどが挙げられます。
リーンキャンバス
リーンキャンバスは、スタートアップ企業や起業家の新規事業のビジネスモデルを設計するためのフレームワークです。顧客にどのように価値を提供するかを整理することが目的とされています。
ビジネスモデルキャンバスとの関係は、ビジネスモデルキャンバスをもとにしており、新規事業向けに改良されています。事業目標達成のために作るビジネスプランと比べ、簡素化されていて、簡単に骨子を可視化できます。また、見直しも頻繁に行えます。
セグメンテーション・ターゲティング
セグメンテーションは、市場を細分化し、各セグメントの特性を明らかにすることが目的です。人口統計や地理的条件、ライフスタイル、行動パターンなどの基準で市場を分類します。
ターゲティングとは、セグメント化された市場から、自社にとって最適な顧客セグメントを選定することを指します。成長性や収益性、参入障壁などの観点から評価し、経営資源を効果的に活用するセグメントを特定します。
9セルフレームワーク
9セルフレームワークは経営者や起業家が自身のビジネスの強みと弱み、機会・脅威を分析して、事業戦略を立てるためのフレームワークです。構造はシンプルでありながら、事業の本質を把握しやすく、さまざまな分野の経営者に活用されています。
事業の改善を目指したフレームワーク
すでにある事業の改善を目指す場合、PLCやバリューチェーン分析などが適しています。各フレームワークの詳細を解説します。
PLC(プロダクトライフサイクル)
PLC(プロダクトライフサイクル)は、製品が市場に投入されてから消えていくまでの一生を可視化するフレームワークです。プロセスは導入期、成長期、成熟期、衰退期の4つに分かれています。S字のカーブで各ステージを表現する点が特徴です。どのステージに現在の製品があるかを把握することが目的であり、今後の戦略を立案する際に役立ちます。
バリューチェーン分析
バリューチェーンは企業の活動を「主活動」と「支援活動」に分類する手法です。それぞれの活動がどの工程で付加価値を生み出すかを分析するフレームワークです。企業は複数の活動の連鎖で成り立っており、各活動の価値とコストを評価することで、強化や効率化の方向性を明確にできます。
ECRS(イクルス)
ECRS(イクルス)とは、4つの視点に基づいて業務改善を目指す際に活用するフレームワークです。実践する場合、E・C・R・Sの順に検討すると、より効果が高まります。それぞれの単語の意味は以下のとおりです。
- Eliminate(排除)
- Combine(結合と分離)
- Rearrange(入替えと代替)
- Simplify(簡素化)
ピラミッドストラクチャー
ピラミッドストラクチャーは、プレゼンテーションなどビジネスさまざまな場面で活用されているフレームワークです。メインメッセージを頂点に配置し、その根拠を階層状に配置することが特徴です。論理展開を明確にすることができます。論理的に自分の主張を構成したり、矛盾点を発見したりするメリットがあります。
PDCA(ピーディーシーエー)
PDCAとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)のプロセスを循環させるフレームワークです。行動管理、品質管理、生産管理などで品質を向上させるために使用されます。一度ではなく何度も循環させることが特徴です。
AARRR(アー)
AARRRは、顧客の状態を5つの要素で表したフレームワークです。単に顧客の獲得や収益化に焦点を当てるのではなく、より広範な改善を促進するための指標として活用されます。
- Acquisition:獲得
- Activation:活性化
- Retention:継続
- Referral:紹介
- Revenue:収益
フレームワークを導入する注意点
フレームワークを導入する際は、客観性や費やす時間、採用するフレームワークについて注意しなければなりません。それぞれの注意点について解説します。
客観的な分析を行う
フレームワークを使った分析の重要なポイントは、客観的な視点で取り組む姿勢です。これは、主観や思い込みが結果に影響する可能性があるためです。主観的判断が強すぎると信頼性の低い結果を招く恐れがあるでしょう。
時間をかけすぎない
フレームワークは、問題解決のために使用されるツールです。そのため、手間をかけすぎないことが重要です。過度な細かい分析は、時間の無駄になりえます。時間管理が鍵となるため、作業に時間制限を設けるなどの工夫が必要です。
自社に合うフレームワークを採用する
フレームワークは、幅広い定義と多くの種類が存在します。自社の状況に応じて適切なフレームワークを選ぶことが重要です。目標達成を支援する役割を果たします。複数のフレームワークを組み合わせて使用することが有効です。
まとめ
企業が継続的に発展していくためには、新規事業に挑戦していかなければなりません。その際、市場調査はフレームワークに沿って行うと効率的です。ただしフレームワークを進める際は、時間をかけすぎない、自社に合うフレームワークを採用するなどの注意点があります。
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