自社の収益向上や人材育成のために、新規事業開発の必要性が高まっています。この記事では、新規事業開発の手順や、活用できるフレームワークなどについて解説します。新規事業に成功した企業の事例も紹介するので、参考にしてください。
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目次
新規事業とは
新規事業とはどのようなものか、その意味と形態を解説します。
新規事業の意味
新規事業とは、企業が現在行っている事業とは異なる領域で、新たな事業を展開することです。既存の分野や市場とは異なるテリトリーに取り組むことは、企業の競争力の維持、向上に欠かせない要素です。新規事業を黒字化するためには、長期的な視点が求められます。
新規事業の形態
新規事業の形態は、主に以下の3つに分けられます。
- 社内で新規事業開発の部署を立ち上げる
- 社内の既存事業部が新規事業に携わる
- 新会社を設立し、新規事業に取り組む
新規事業の開発例として、新製品やサービスの開発、ビジネスモデルの構築、競合が少ない市場に参入するといった、さまざまなケースが挙げられます。
新規事業開発が求められる背景
企業に新規事業開発が求められる背景として、外部環境の変化、収益の向上、人材育成の3つが挙げられます。それぞれについて詳しく解説します。
外部環境の変化に対応するため
市場や社会情勢など外部環境の変化に伴い、多様な価値観が広まったことで、企業活動も変化しています。たとえば、近年の環境問題への関心の高まりから、サスティナビリティを重視した経営が求められていることが挙げられます。
企業は、自社の経営課題を明確にして、顧客や市場ニーズの変化に柔軟に対応しつつ、スピード感をもって新規事業を創出しなければなりません。
新たな収益源を確保するため
新規事業の開発により、多角的なビジネス展開が可能です。安定した経営基盤を構築できるため、新たな収入源の確保につながるでしょう。また、既存事業のノウハウを活用することで、新規事業の売り上げアップも見込めます。
次世代を担う人材を育成するため
中堅層と若年層に分類される従業員を、新規事業の立ち上げメンバーに抜擢することで、次世代を担う人材の育成が促されます。事業経営の環境確保で生じる効果は、現場に知見やスキルが蓄積することだけではありません。
新規事業開発の経験は、リーダー候補としての自覚を生み、従業員にとって大きな強みや自信となるでしょう。中堅層と若年層が実戦的に経験を積むことは、将来的な経営層の育成にも有効です。
新規事業開発の成功に必要なステップ
新規事業の開発を成功させるためには、段階を踏んで着実に進めなければなりません。ここでは、6つのステップについて解説します。
自社の理念やビジョンを明確にする
新規事業を進めるうえで重要なのは、達成したいゴールや目指したい社会貢献など、事業展開のビジョンを明確にすることです。5年後や10年後の自社の姿を想像するとよいでしょう。あわせて、自社の経営理念も明確にしておきます。
社会における自社の存在意義を明確にするために、内容を意識しましょう。魅力的で有意義な理念やビジョンは、従業員のモチベーション向上にもつながります。
課題を見つける
製品やサービスを提供する際には、顧客の課題を正確に把握することが重要です。そのためには、市場にあふれる既存の製品やサービスを、多角的な観点で調査、分析する必要があります。たとえば、解決できていない課題は何か、これから需要が高まりそうなサービスはあるかといった視点です。
課題を見つけたら、ランダムに行動するのではなく、誰に対してどの課題を解決するべきかを明確にすると、顧客ニーズにつながりやすくなります。
事業を展開する領域を決める
事業領域とは事業を展開する領域のことです。どのような市場に参入すべきか、検討すべき領域を決めましょう。その際には、顧客は誰であるか、顧客にどのような方法で製品やサービスを提供するのかといった、根本的な問いを立てます。迷ったら、最初のステップで明確にした理念やビジョンに立ち返りましょう。
市場の状況や需要などを分析、予測する
事業のアイデアが定まったら、市場の状況や需要の分析と予測をして、事業化に向けてブラッシュアップしましょう。ブラッシュアップにおいては、市場性と事業性の2つの観点による調査分析が重要です。市場性の例は以下のとおりです。
- 市場の特徴
- 成長性
- 市場に参入するリスク
- 競合
事業性の例は以下のとおりです。
- 新規事業のターゲット
- ターゲットの特徴
- ターゲットのニーズ
必要な人材やノウハウを調達する
事業開発に向けて、必要な人材やスキルなどを明確にしましょう。曖昧な状態で進めると、市場への参入だけではなく、開発も十分に機能しなくなる可能性があります。どのような人材、人手、ノウハウ、スキル、顧客情報が必要であるかを洗い出したうえで、調達を進めましょう。
計画を立案する
新規事業を展開するために必要な行動を洗い出すとともに、いつ、誰がどのような行動を起こすのか、現実的な計画に落とし込みましょう。誰がどのタイミングで何をするか、具現化することが重要です。新規事業の開発は、最初に計画した通りに進めることは難しいものです。余裕のある立ち上げ計画を組み、イレギュラーな状況にも対応できるようにしましょう。
各施策の効果を定期的に検証し、改善を進める
新規事業を開発したら、各施策の効果を定期的に検証し、必要に応じて改善を進めましょう。仮説と異なる結果が出た場合は、原因を特定して改善に努めます。PDCAを回して施策の効果が出ているかを、定期的に振り返ることも重要です。また、最小限のコストで新規事業に取り組み、改良と改善を繰り返す、リーンスタートアップという手法も有効です。
新規事業開発を成功に導くフレームワークの例
新規事業開発を成功させるために、フレームワークを活用しましょう。ここでは、フレームワークの例を3つ挙げます。
PEST分析
PEST分析は、自社を取り巻く環境が現在と将来において、どのような影響を与えるのかを把握するフレームワークです。PESTは、Politics(政治)・Economy(経済)・Society(社会)・Technology(技術)の4つの頭文字からできています。それぞれの意味は以下のとおりです。
- P:政治、法律、税制など、自社に影響する要素
- E:インフレ-ションやスタグフレーション、失業率など、自社に影響する経営動向
- S:人口や世論、教養など顧客や消費者のライフスタイルに関する要素
- T:技術革新や特許取得、テクノロジーの進歩など、自社に影響する技術的要素
SWOT分析
SWOT分析は、強み・弱み・機会・脅威の4つの要因から構成されたマトリクスを使用して、自社の現状を把握するフレームワークです。新規事業のリスク分析のほか、既存事業の改善点の把握、戦略立案に有効です。また、SWOT分析で明確になった強み・弱み・機会・脅威の4つを掛け合わせたクロスSWOT分析を活用することで、さらなる戦略選定につなげられます。
ペルソナ分析
ペルソナ分析は、新規事業を利用するオーソドックスな顧客像を作りこむことで、顧客ニーズを把握するフレームワークです。
ペルソナ分析では、顧客像の年齢や性別、職業、年収、家族構成、趣味、住所など、多岐にわたる詳細な情報を設定することが重要です。細かい顧客像を設定すると、顧客が求める製品やサービスの解像度を高められるため、ターゲットを限定したサービスを提供できます。精度が高いペルソナの設定には、綿密な調査や情報収集が欠かせません。
新規事業の構想に役立つバリューデザインシンタックス®(VDS)
バリューデザインシンタックス®(VDS)は、自社の強みや社会課題、顧客価値などを「価値の構文」として構造的に整理し、新規事業の“打率”を上げるためのフレームワークです。誰が、なぜ、その価値を必要とするのかを明確にすることで、再現性のあるアイデア創出を可能にします。
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新規事業のリスクを回避するコツ
新規事業にはリスクがつきものです。ここでは、リスク回避のコツを2つに分けて解説します。
需要を予測する
具体的かつ成功確率が高い新規事業開発のアイデアを引き出すためには、市場の状況や需要などを細かく分析、予測することが重要です。事前の需要予測が曖昧であったり、自社にとって都合よい解釈で計画をしたりした場合、新規事業開発の成功確率は低くなるでしょう。
新規事業に取り組む理由、顧客の課題を解決できる根拠などを説明できるように、事業予測は明確かつ客観的に立案しましょう。需要予測は、在庫管理の最適化や顧客満足度の向上といったメリットにもつながります。
事業撤退の基準を明確にする
新規事業は、すべて成功するとは限りません。不本意ながら、撤退せざるを得ない状況になることも考えられるでしょう。そのため、事前に事業撤退ラインを決めておく必要があります。基準を事前に決めておくことで、不必要に経営資源を損失するリスクを回避できます。
撤退を検討する基準として、収益目標や期待収益を設定するとよいでしょう。そのうえで、事業計画の達成率や競合他社の状況なども加味して複合的に判断し、撤退するか否かを決めましょう。
新規事業開発に向いている人の共通スキル
新規事業開発に携わるメンバーは、知識よりも、新規事業に向いているかどうかで決めましょう。特に未経験の分野に取り組む場合は、通常の評価基準が当てはまるとは限りません。新規事業の開発に向いている人には、以下のような共通の行動や思考があります。
- チャレンジ精神がある
- 現実と理想を分けて考えられる
- コスト意識が高い
- 周囲を巻き込んでチャレンジできる
- スピード感を重視する
- ロジカルシンキングに長けている
- 忖度せずに意見を出せる
- 途中で投げ出さない
新規事業開発の成功事例
ここでは、新規事業開発に成功した企業の事例を2つ紹介します。自社の新規事業開発に役立ててください。
日本たばこ産業株式会社(JT)
日本たばこ産業株式会社は、新たな顧客体験の創出を目指し、心の豊かさをテーマとしたデジタルプラットフォーム「Momentia」の新サービスとして、デジタルデトックス支援アプリ「Offly」を立ち上げました。Sun*では、ユーザー中心設計に基づいたサービスデザインやUI/UXの設計支援を行い、ユーザーリサーチを通じて、現代人のスマホ利用に関する課題とニーズを可視化しました。
その結果、ストレス軽減や自己コントロールへの関心を持つユーザー層に最適化された体験設計が実現し、日常生活に自然に溶け込むプロダクトとしての立ち上げに成功しています。
本田技研工業株式会社
自動車・オートバイを製造する本田技研工業株式会社は、ホンダの子会社であるホンダ エアクラフト カンパニー(HACI)を立ち上げ、新型小型ビジネスジェット機「HondaJet」を開発しました。エンジンの構成から機体まで独自の技術を投入し、他社の小型ジェット機よりも燃費性能を20%向上させて、他社をしのぐ高性能と低価格を両立しています。
株式会社タニタ
株式会社タニタは、体重計・体脂肪計などの健康計測機器メーカーです。社員食堂のメニューをまとめたレシピ本がベストセラーになったことをきっかけに、「丸の内タニタ食堂」を出店しました。その後、全国に「タニタ食堂」を展開しています。
また、マルコメ株式会社とのコラボレーションにより、「タニタ食堂」で実際に使われている無添加の粒みそを食品化するといった、健康に配慮した食品の販売も手掛けています。
まとめ
新規事業の開発は、人材育成や新たな収益源確保のために重要な取り組みです。PEST分析やSWOT分析といったフレームワークを活用し、段階を踏んで進めましょう。
新規事業には、株式会社Sun AsteriskのMVP作りのポイントとフレームワークを活用ください。「作ったものの市場に受け入れられない」「アイデアはあるのに、具体的にどう進めるべきかわからない」といった、手詰まりを解消する一助になるはずです。

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