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製造業ERPとは?基本機能や導入メリット、成功のポイントを解説

更新日: 2025年11月26日

老朽化した基幹システムの刷新、DXやスマートファクトリー化の推進といった高度な経営課題に直面し、ERP(Enterprise Resource Planning)の導入を検討されているのではないでしょうか。
本記事では、製造業に特化したERPの役割や基本機能から、戦略的なメリット、失敗しないための選定・導入のポイントまで解説します。データ駆動型の経営を実現し、競争優位性の確立を目指している担当者は、ぜひ最後までご覧ください。

そもそも製造業ERPとは?

製造業では、複数階層におよぶBOM管理、見込み生産と受注生産の混在、工程の多段階管理、個別原価の算出など、業務そのものの複雑性が高い点が特徴です。そのため、ERPは単なる基幹システムではなく、こうした製造特有の構造を正しく扱えることが必須条件となります。

まずは、ERPの基本的な役割と、製造業における特有のシステムとの関係性について解説します。

製造業ERPの役割

製造業ERPとは、生産、購買、在庫、原価、品質といった製造業特有の業務プロセスに加え、会計、人事、販売などの基幹業務を統合し、企業全体の経営資源を一元管理するシステムです。

ERPによって各部門に散在していたデータをリアルタイムに連携・可視化し、経営層の迅速な意思決定を支援します。データに基づいた戦略的な経営を実現するためには欠かせません。

MES・SCM・PLMとの関係性

ERPは、製造現場の実行管理を担うMES(製造実行システム)、部材調達から納品までを管理するSCM(サプライチェーン管理)、製品の企画から廃棄までを管理するPLM(製品ライフサイクル管理)といった専門システムと密接に関係します。

ERPは専門システムの「上位」に位置し、各システムから得られる情報を経営情報として統合・分析するハブの役割を担うのです。

たとえば、MESから取得した設備稼働率や不良発生データをERPの原価管理へ連携すれば、日次で製品別の利益率を可視化できます。SCMと連携すれば、販売計画と在庫状況を踏まえた最適な生産計画立案が可能となり、現場データが経営判断に直結する形を作れます。

製造業向けERPの基本機能

製造業向けERPに搭載されている、専門的な機能について詳しく解説します。

生産管理機能

受注情報に基づき、需要予測、生産計画、資材所要量計画を立案し、製造現場への作業指示から工程の進捗管理、実績収集まで、生産に関する一連のプロセスを管理する機能です。

見込み生産、受注生産、個別受注生産といった多様な生産方式に対応できる柔軟性が求められ、納期遵守率の向上や生産リードタイムの短縮、生産能力の最大化を支援します。

購買・在庫管理機能

生産計画と連携し、必要な部材や資材を、必要なときに、必要な量だけ調達するための購買活動を支援する機能です。

発注、検収、支払処理といった購買業務に加え、入出庫管理、棚卸、在庫評価といった在庫管理業務も管理します。欠品による生産停止リスクの低減と、過剰在庫によるキャッシュフローの悪化防止を両立させ、適正在庫の維持に貢献します。

原価管理機能

製造プロセスで発生する材料費、労務費、経費を精緻に集計し、製品ごとの原価を算出する機能です。標準原価と実際原価を比較し、差異を分析して、コスト超過の原因を特定し、収益改善に向けた具体的なアクションにつなげます。

個別受注型の企業では、試作費や各工程で発生する作業工数を原価データに紐づけることで、製品別の実際利益率を正確に把握できます。これにより、どの工程・部材がコスト超過の要因となっているかを迅速に特定できます。

個別原価計算など、企業の事業特性に合わせた高度な原価管理を実現するための重要な機能です。

品質管理機能

製品の品質を維持・向上させるため、部材の受け入れから製造工程、最終製品の出荷に至るまで、各段階での検査基準の設定や検査実績の記録を行います。

品質問題が発生した際には、ロットトレース機能によって原因となった部材や工程を迅速に特定し、影響範囲の特定とリコール対応などを支援します。品質保証体制の強化につながります。

BOM管理(部品表管理)

製造業の中核となるBOM(部品表)を管理し、構成展開、代替部品、工程別の使用部材などを正確に把握する機能です。製品の仕様変更があった場合も、BOM変更をERP全体に反映できるため、工程指示・在庫管理・原価計算に至るまで一貫したデータ整合性が保たれます。

ERP導入がもたらす4つのメリット

ERPの導入は、単なるシステム刷新にとどまりません。企業経営にもたらすメリットについて見ていきましょう。

経営の「見える化」による意思決定の迅速化

ERPは、販売、生産、在庫、財務といった企業活動の全データを単一のデータベースにリアルタイムで統合するため、これまで月次でしか確認できなかった業績データを、日次あるいはリアルタイムでの分析が可能です。市場の変化や経営課題をいち早く察知し、データに基づいた的確な意思決定を下せるようになります。

サプライチェーン全体の最適化

ERPは、需要予測、生産計画、購買、在庫管理といった機能を通じて、サプライチェーン全体の最適化をもたらします。SCMシステムと連携すれば、販売実績や市場トレンドから将来の需要を予測し、最適な生産計画と部材調達計画の立案が可能です。欠品による販売機会の損失や、過剰在庫による保管コストの増大といったリスクも抑えます。

DX・スマートファクトリー化の推進基盤

スマートファクトリーの実現には、工場内のIoTセンサーから収集されるデータを、生産計画や原価情報といった経営データと統合して分析しなければなりません。ERPは、このデータ統合基盤としての役割を担います。MESやIoTプラットフォームとERPを連携させれば、現場のリアルタイムな状況を経営判断に直結させられます。

グローバルレベルでのガバナンス強化

海外に複数の生産・販売拠点を持つ企業にとって、各拠点の経営状況を統一された基準でリアルタイムに把握することは、ガバナンス強化の観点から重要です。多言語・多通貨・各国の法制度に対応したグローバルERPを導入すれば、グループ全体の経営情報を一元的に管理し、連結決算の早期化や、内部統制の強化を実現します。

失敗しない製造業ERPの選び方・導入のポイント

ERP導入は大規模な投資です。導入を成功させるには、以下の点に注意しましょう。

自社の生産方式への適合性

製造業ERPでは、標準機能の範囲とカスタマイズが必要な範囲をFit&Gapで明確に整理することが重要です。ここを曖昧にしたまま導入を進めると、過剰なカスタマイズによりプロジェクトが長期化したり、保守コストが膨らむリスクがあります。

製造業と一括りにいっても、生産方式は多岐にわたります。特定の製品を大量に作る「見込み生産」、受注後に生産する「受注生産」、顧客の仕様に合わせて一品一様で設計・製造する「個別受注生産」など、自社の主要な生産方式にERPが標準機能で適合しているかは最重要の選定ポイントです。適合しない場合、大規模なカスタマイズが必要となります。

クラウドか、オンプレミスか

ERPの提供形態には、自社でサーバーを構築・運用する「オンプレミス型」と、ベンダーが提供するサービスをインターネット経由で利用する「クラウド型」があります。近年は、初期投資を抑えられ、迅速な導入と柔軟な拡張が可能なクラウド型が主流です。特に、複数拠点での利用や、最新技術を活用したい企業には、クラウド型がおすすめです。

MES/IoT基盤との連携性

スマートファクトリー化を目指すのであれば、ERPと製造現場のシステムとの連携性は重要です。特に、MES(製造実行システム)や、IoTセンサーのデータを収集・管理するIoT基盤とのスムーズなデータ連携が可能かどうかの確認が必要です。APIや標準的な連携コネクタがあるかなど、将来的な拡張性を視野に入れた技術的な評価が欠かせません。近年では、設備の稼働データ(OEE)をリアルタイムでERPへ取り込み、生産計画を自動調整したり、原価情報と突き合わせてライン別の採算性を可視化する取り組みも広がっています。

ベンダーの業界知見とサポート体制

ERPは導入して終わりではなく、長期にわたって活用していく経営基盤です。自社の業界や特有の商慣習に対する深い知見と、豊富な導入実績を持つベンダーを選びましょう。企画段階のコンサルティングから、導入プロジェクトの推進、稼働後の保守・サポートまで、一貫して信頼できるパートナーシップを築けるかどうかを、総合的に評価してください。

ERP導入を成功に導くための次のステップ

海外子会社や複数拠点でERPを利用する場合、会計基準の違いや多言語・多通貨対応、ローカル法制度への準拠も考慮が必要です。RFI段階でグローバル要件を漏れなく定義しておくことで、後工程での仕様変更リスクを抑えられます。ここからは、ベンダー選定と導入プロセスを計画的に進めるための具体的なアクションプランを解説します。

RFI/RFPの作成とベンダー選定

自社の現状課題とERP導入の目的を整理した上で、複数のベンダーにRFI(情報提供依頼書)を発行し、各社の製品や実績に関する情報を収集しましょう。その情報をもとに候補となるベンダーを絞り込み、次にRFP(提案依頼書)を作成して、要件に対する提案と見積もりを依頼します。提出された提案内容を、比較検討してベンダーを選定します。

PoCによるスモールスタートと効果検証

いきなり全社規模でERPを導入するのはリスクが大きいため、特定の部門や業務領域に限定して小規模な試験導入(PoC:概念実証)を行いましょう。PoCを通じて、実際の業務環境でERPが想定通りの機能や効果を発揮するかを検証し、課題を洗い出します。ここで得られた知見や現場からのフィードバックを基に、本格導入に向けた計画の精度を高めます。

製造業ERPに関するよくある質問

製造業ERPに関して、担当者が抱きがちな疑問について見ていきましょう。

生産管理とERPの違いは何ですか?

生産管理システムは、生産計画や工程管理といった「生産」に関わる業務に特化したシステムです。一方、ERPは、生産管理の機能を含みつつ、販売、購買、在庫、会計、人事といった企業の基幹業務全体を網羅しています。ERPを導入すれば、生産活動が販売計画や財務状況とリアルタイムに連携できるため、全社最適の視点での経営管理が可能です。

製造業ERPの注意点は何ですか?

製造業ERPの導入は、業務プロセス全体の変革を伴うため、現場の抵抗に遭う可能性があります。新しいシステムに業務を合わせる考えを基本としつつも、現場の意見を十分にヒアリングし、丁寧な合意形成を図ることが重要です。また、自社の強みとなっている独自のプロセスまで無理に標準化すると競争力を失うリスクにも注意しなければなりません。

ERPの2025年問題とは何ですか?

世界的に広く利用されているSAP社のERP製品「SAP ERP 6.0」の標準保守サポートが2027年末(当初2025年とされていたためこの名称で呼ばれる)に終了することに起因する問題です。これを機に、単なるシステム刷新ではなく、DX推進を視野に入れた抜本的な業務改革に取り組む企業が増えています。

まとめ

本記事では、製造業ERPの基本から、導入メリット、選定・導入を成功させるためのポイントまでを解説しました。ERPはもはや単なる業務効率化ツールではなく、DXやスマートファクトリー化を推進し、グローバルな競争を勝ち抜くための戦略的な経営基盤です。

ただし、ERPは製造現場の実態に合わせた設計や、周辺システムとの連携が不可欠であり、生産管理(Manufacturing Management)の精度や運用に深く結びついています。

もし、より具体的に「生産管理システムをどう設計し、どのように業務に落とし込むのか」を知りたい場合は、以下の関連記事が参考になります。

▼関連記事:オフショア開発を利用した生産管理システム開発
https://sun-asterisk.com/service/development/topics/systemdev/2035/

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