激しく変化する市場環境のなかで、新規事業の立ち上げは企業の成長に欠かせない取り組みとなっています。事業を成功に導くためには、明確なプロセス設計と実行可能なタスクの設計が不可欠です。本記事では、新規事業の立ち上げに必要なタスクをフェーズごとに整理し、管理のポイントまでを詳しく解説します。事業開発の担当者は、ぜひ参考にしてください。
目次
企業にとって新規事業を立ち上げる目的とは?
あらゆる外的要因によって、企業は新たな目的や価値提供が必要です。たとえば、以下のような目的で新規事業の立ち上げが検討されます。
- 収益源を多様化してリスクを分散
- 自社の強みを活かした市場の変化へ対応
- 技術革新への適応
- 組織変革のきっかけ
新規事業は単なる売上拡大の手段ではなく、企業の未来を切りひらく取り組みといえます。
【フェーズ別】新規事業の立ち上げに必要なタスク一覧
新規事業の立ち上げには、フェーズごとにさまざまなタスクが発生します。以下の8つの項目をチェックして、やるべきことの抜け漏れを防ぎましょう。
<主なタスクチェック項目例>
- 顧客ニーズを明確にする(インタビュー、ペルソナ設計など)
- ビジネスモデルの各要素を検討して言語化する(提供価値、収益、チャネルなど)
- 市場調査やKPIを含めた事業計画を策定する
- 資金の見通しと調達手段を把握する(補助金・融資・出資など)
- 必要なスキルに応じてチームを組成する(社内外の連携含む)
- MVPの検証計画と開発プロセスを設計する
- 販売戦略を4Pに分けて整理する
- 法務的なリスク(許認可・契約・知財)を洗い出す
1.顧客ニーズの把握
顧客ニーズの把握には、下記の多面的なリサーチが重要です。
- ユーザーインタビュー
- アンケート
- ペルソナ設計
- SNS分析
- 競合他社の動向をチェック
実際の声や行動データをもとに定性的・定量的な分析を行いましょう。
2.ビジネスモデルの構築
ビジネスモデルの構築では、どのような価値を提供して収益を上げるかを具体化します。以下の9つの要素を明確化すると、事業の全体像が整理しやすくなります。
要素 | 検討内容 |
---|---|
顧客セグメント | 誰が顧客か/どのような属性か |
提供価値(VP) | どのような課題をどう解決するか |
チャネル | 顧客と接点を持つ方法 (例:Web/営業/小売等) |
収益の流れ | どこでお金が発生するか (例:販売、サブスクなど) |
コスト構造 | 固定費/変動費など |
おもな活動 | 提供するために必要な活動 (例:開発、支援など) |
必要な資源 | ヒト・モノ・カネ |
キーパートナー | 外部連携先/仕入先/アライアンス先 |
顧客関係 | 顧客との関係構築の方法 |
3.事業計画の策定
事業計画のおもな役割は、目指すべきゴールと達成手段を社内外の関係者と共有することです。
計画書には、以下の項目を盛り込む必要があります。
- ミッション/ビジョン/バリュー
- 目標設定(KPI/KGI)
- 事業推進の方針
- 市場での自社のポジショニング
- 障害になるリスクとその対策
- マイルストーンと進捗管理
事業計画は銀行や出資者への説明材料にもなるため、数字の根拠や戦略の整合性をしっかりと練り上げましょう。
4.資金調達・助成金調査
新規事業は自己資金だけに頼らず、補助金・融資・出資など多様な手段を検討しましょう。
代表的な手法には以下のようなものがあります。
手段 | 特徴 |
---|---|
助成金・補助金 | 国や自治体が提供 |
融資 | 金融機関からの借入 低金利だが返済義務あり |
エクイティ出資 | 投資家からの出資 ノウハウを得られるが株式を希薄化しやすい |
クラウドファンディング | Webで資金を募る 広報効果もある |
補助金の申請には、実現性のある事業計画が求められます。公募のスケジュールや対象となる要件をこまめにチェックしましょう。
5.チーム組成と外部連携
新規事業の成功には、目的とビジョンを共有し、必要なスキルセットを組み合わせた人材配置が重要です。立ち上げフェーズでは、以下の観点でチームを構成しましょう。
- 役割の明確化:担当と責任を早期に定義する
- カルチャーフィット:柔軟性・共創意識を持つ人材が好ましい
- 外部との連携:ノウハウと人材不足を解決
初期の段階では、少人数になることが多いため、1人が複数の役割を担うケースもあります。
>>新規事業開発でベストなチームを作るためのガイド|「理想のチームの条件とは?」
6.プロダクト・製品開発
顧客ニーズとビジネスモデルに基づき、実際の製品やサービスを形にするフェーズです。
「MVP(Minimum Viable Product)」は限られたリソースの中で、必要最小限の価値を届ける考え方として活用されています。
具体的なプロセスとしては以下の通りです。
- 仕様の明確化
- プロトタイプの作成
- ユーザーテストと改善
- 本開発とリリース
物理的なプロダクトであれば製造・在庫管理の体制、サービス型であればUI/UX設計やインフラ面の整備も欠かせません。
7.マーケティング・販売戦略
マーケティングや販売戦略で重要な考え方は4Pの整理です。
- 製品(Product):価値提案の明確さと差別化
- 価格(Price):顧客が納得しやすく、利益が取れる価格設計
- 流通(Place):EC、店舗、代理店など
- 販促(Promotion):広告、SNS、コンテンツマーケティングなど
近年では、デジタルマーケティング(SEO、SNS広告、CRM施策など)との連携が成果に直結します。
8.法務上の手続き
立ち上げ時に確認しておくべき法務上のポイントは以下の通りです。
- 許認可の確認:業種によっては開業前に申請が必要
- 契約書の整備:顧客・取引先・外部パートナーとのトラブルを予防
- 知的財産の保護:商標・著作権・特許などの模倣リスクを回避
- 個人情報・コンプライアンス対応:プライバシーポリシーや利用規約の整備が必要
社内に法務の専門人材がいない場合は、弁護士や行政書士との連携を早めに検討しましょう。
新規事業の立ち上げを成功させるタスク管理
新規事業は、通常の業務よりも不確実であるため、実行できる単位にタスクを分解して管理する必要があります。ここでは、WBSの活用と組織向けのタスク管理ツールの使い方について解説します。
WBSを使ってタスクを分析する
WBS(Work Breakdown Structure)は、新規事業に必要なタスクを「抜けなく・重複なく」洗い出すのに有効な手法です。たとえば、マーケティング施策という大きな項目もWBSを使うと、以下のように分解できます。
- 市場調査の設計と実施
- ターゲットセグメントの明確化
- 広告文の作成と検証
- LPの作成依頼と修正対応
- 広告出稿の管理と予算配分
作業の粒度は「誰がいつまでに終えられるか」を基準にし、担当者単位で行動できるレベルまで分解するのがポイントです。
WBSは構造化すればするほど効果が高まります。もし「どこから手をつけるべきか迷っている」「自社用にアレンジしたテンプレートがほしい」という場合は、以下の資料も参考にしてください。
組織向けのタスク管理ツールを活用する
新規事業は複数人で連携しながら進めるため、チームで使えるタスク管理ツールの導入が効果的です。
役割や進捗を可視化しやすくなり、抜け漏れや属人化も防げます。代表的なツールは以下のとおりです。
- Backlog/Jira:IT系の開発や複雑なWBS管理に強い
- Asana/ClickUp:視覚的にタスクを把握しやすく、非エンジニアにも使いやすい
- Notion/Trello:柔軟性が高く、情報共有やナレッジ管理にも活用可能
誰が見てもわかる形でタスクと責任を共有できるツール選びが重要です。
どのツールを選ぶかは「開発が中心か、ビジネスサイド中心か」「ナレッジ共有も重視するか」など、プロジェクトの特性によって変わります。たとえば、エンジニア主導ならJiraやBacklog、チーム全体での議論や進捗可視化を重視するならAsanaやNotionが向いています。
新規事業の立ち上げによくあるタスクの失敗例
新規事業では、アイデア出しだけでなく、実行フェーズでつまずくケースが多くあります。ここでは、直面しやすいタスクの失敗例を紹介します。
市場調査が不足している
競合やターゲットの行動パターンを調べず、自社の視点だけでサービスを組み立てると、ニーズのないプロダクトになる可能性があります。定性・定量の両面から調査を行い、仮説ではなくデータに基づく判断を意識しましょう。
業務分担や責任者の役割が整理されていない
少人数の立ち上げ期は、誰が何を担当し、どこまで責任を持つのかを明文化しておくことが重要です。小さなタスクでも、「誰が・いつまで」の2点は必ず決めておく必要があります。
フィードバックを無視して改善しない
ユーザーや社内メンバーからのフィードバックを十分に取り入れず、最初の方針をそのまま貫いてしまうと、改善機会を逃してしまいます。
初期フェーズでは特に、試しながら修正していく動き方が成果に左右します。意見を集める仕組みをあらかじめ設計しておくと良いでしょう。
まとめ
新規事業を成功に導くには、適切なプロセスと戦略の設計が欠かせません。ニーズに基づくビジネスモデルの構築、チーム体制の最適化、外部パートナーとの連携、そして法務・資金面の土台づくりまで、一つひとつのタスクを丁寧にこなすことが重要です。一方で、限られたリソースで複雑なタスクを回すのは簡単ではありません。
タスクが多すぎてどこから手を付けるべきか迷っている、チーム内での役割分担があいまい、という状況に心当たりがある場合には、「進め方の型」を知ることが突破口となります。
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