システム開発の工程を適切に管理することは、プロジェクト成功に欠かせません。この記事では、システム開発工程の基本的な流れから代表的な開発手法、成功のポイントまで解説します。よく使われる略語についての解説もあるので、システム開発プロジェクトの推進に、ぜひ役立ててください。
目次
システム開発工程とは
システム開発工程とは、高品質なシステムを効率的に構築するための体系的なフレームワークです。要件定義から基本設計、開発、テスト、リリース、運用・保守に至るまでの一連のプロセスが構造化されています。大規模システムの場合は、開発期間が数か月から1年以上に及ぶこともあり、適切な管理と、品質を担保するための重要な枠組みです。
システム開発の工程を分ける理由と重要性
システム開発の工程を分けるおもな理由は、「効率的かつ高品質なシステム構築」を実現するためです。半年から数年に及ぶ長期プロジェクトでは、工程を細分化することで、全メンバーが完成像を共有しやすくなります。各段階で管理者を設定し、綿密にテストすることによって、タスク管理の効率化や完成後の不具合の大幅な削減が可能です。
また、工程を分けることで、必要なスキルに合わせた適材適所の人員配置が可能になり、結果として開発効率の向上とシステム品質の確保につながります。
システム開発工程の流れ
システム開発の工程は要件定義から運用・保守まで一連の流れで行われます。以下でそれぞれについて解説します。
要件定義(RD)
要件定義は、システム開発の最上流工程であり、クライアントの要望を具体化する段階です。システムの機能要件・非機能要件を明確にし、開発手法、導入方法、運用方法、予算、期間などを決定します。
基本設計(BD)
基本設計は、要件定義で決定した内容に基づき、システム全体の構造や主要機能を具体化する工程です。おもに画面設計、データ設計、インターフェース設計などを行い、基本設計書を作成します。クライアントが確認する資料は、専門用語を避け、視覚的にも理解しやすいものにします。
詳細設計(DD)
詳細設計は、基本設計をさらに具体化し、どのように実装するかという点に焦点を当てます。機能をモジュールごとに分割し、機能仕様書、データフロー図、データベース物理設計書など、開発者向けの指針を示す資料を作成します。
プログラミング(PG)
詳細設計書を基に、SEやプログラマーがコードを書いて、プログラミング作業を行います。システム開発の中核を担う工程です。適切なレビューと改善を繰り返すことで、高品質なプログラムを構築します。
実装
実装は、プログラミングで作成したコードを組み合わせ、実際にシステムとして動かす工程です。詳細設計書の仕様に沿って、各機能が正しく動作するかを確認しながら進めます。この段階で、プログラム間の連携や整合性を確保します。
テスト
テスト工程は、単体テスト、結合テスト、システムテスト、運用テストと段階的に行うものです。単体テストではモジュール単位で動作を確認し、結合テストではモジュール間の連携を検証します。システムテストではシステム全体の動作を確認し、運用テストでは実際の業務を想定した検証を行います。
リリース(公開)
テスト工程で品質が担保されたシステムを、本番環境に導入する工程です。旧システムから新システムへのデータ移行を含みます。「一斉移行」と「順次移行」の2つの方法があり、プロジェクトの特性に応じて選択します。綿密な移行計画と、手順書の作成が必要です。
運用・保守
システムリリース後も、安定稼働を維持するための継続的な取り組みが欠かせません。運用はシステムの改修・アップデートを行い、保守はデータ入力やトラブル対応などを行います。この工程は、クライアントの担当部門が担うケースもあります。
システム開発の代表的な手法・モデル
システム開発には、さまざまな手法やモデルがあります。以下でおもな4つを解説します。プロジェクトに合わせて、最適なものを選択しましょう。
アジャイル開発
アジャイル開発は、柔軟性とスピードを重視した開発手法です。機能ごとに小さな開発サイクルを繰り返し、随時修正を行いながらシステムを進化させていくアプローチを取ります。要件が流動的なプロジェクトや、新規事業のように成果物のイメージが明確でない場合に適しています。一方で、進捗管理が難しいため、品質管理には注意が必要です。
ウォーターフォールモデル
ウォーターフォールモデルは、滝のように上流から下流へ一方向に進む開発モデルです。システムの開発工程を順序立てて進行し、1つの工程が完了してから次の工程に着手します。進捗管理がしやすく、品質が担保しやすい反面、途中での仕様変更に弱く、上流工程でのミスが下流工程に影響を与えます。要件が明確で変更が少ないプロジェクトに適しています。
V字モデル
V字モデルは、ウォーターフォールモデルを進化させたもので、開発工程とテスト工程を対応させたモデルです。名前の通り、開発からテストへの流れがV字型を描くことが特徴です。左側の開発工程と、右側のテスト工程が対になっており、各段階で作成された成果物がテスト工程で検証されます。開発とテストの対応関係が明確なため、品質管理が体系的に行えます。
スパイラルモデル
スパイラルモデルは、設計・開発・テストを螺旋状に繰り返す反復型の開発モデルです。システムを複数のサブシステムに分割し、ウォーターフォールモデルを使って、それぞれの開発を進めます。アジャイル開発とウォーターフォールモデルの長所を取り入れた手法であり、仕様変更に柔軟に対応しながらも、進捗管理も行いやすい開発モデルです。
システム開発工程を適切に管理するメリット
適切な工程管理は、システム開発成功の鍵です。各工程を計画的に進めることで得られる、おもな3つのメリットを以下で解説します。
品質向上・トラブル防止
システム開発の工程を適切に管理することで、各段階での検証とテストが確実に行われ、バグや不具合の早期発見・修正が可能です。特に、上流工程での要件定義と設計の精度を高めることが、下流工程での手戻りを抑え、最終的な品質向上につながります。結果として、ユーザー満足度の向上、システムの信頼性確保が実現します。
コスト削減とプロジェクト進行の最適化
正しい工程管理とリソースの適切な配分により、開発コストを削減できます。事前の計画と進捗の可視化によって、予期せぬトラブルのリスクを減らし、スケジュール遅延や追加費用を抑制します。工程ごとの明確な目標設定により、タスクの優先順位付けやリソース配分の最適化が可能です。同時に、リリース後の運用コスト抑制にもつながります。
クライアントとの円滑なコミュニケーションの確立
工程の明確化によって、開発側とクライアント側の共通認識が形成され、円滑なコミュニケーションが実現します。各段階での進捗報告や仕様確認を通じて、認識のずれをタイムリーに解消することが可能です。クライアントも開発知識を持ち、主体的に参加することで、互いの理解が深まり、プロジェクト成功の可能性が高まります。
システム開発を成功させるポイント
システム開発を成功に導くための、おもな2つの重要ポイントについて解説します。
目的にあった開発モデルの選択
システム開発成功の鍵は、プロジェクトの特性に最適な開発モデル・手法を選択することです。開発目的を明確にし、最適なアプローチを選ぶことが重要です。要件が明確なプロジェクトにはウォーターフォールモデルが、柔軟性が必要なプロジェクトにはアジャイル開発が適しています。システムの特性、規模、期限などを考慮しましょう。
効率的なタスク管理とリスクマネジメント
プロジェクト成功には、進行管理とリスク対策が不可欠です。管理者による全体把握、詳細なスケジュール設定、定期的な進捗確認が重要になります。機能の優先順位を明確にし、限られたリソースを効率的に配分することも必要です。予期せぬトラブルへの対応策を事前に検討し、計画に余裕をもたせることで、プロジェクトの成功確率を高められます。
システム開発工程に関する略語と意味
システム開発の工程では、多くの専門用語や略語が使用されます。各工程を表すおもな略語とその意味を解説します。
SP(システム企画)
システム企画は、プロジェクトの第一段階であり、システム導入の目的、効果、予算、スケジュールなどの基本計画を立案する工程です。
SA(要求分析)
要求分析は、クライアントの要求を聞き取り、何を実現したいかを明確にする工程です。
UI(UI基本設計)
UI基本設計は、システムとユーザーの接点となる画面レイアウトや操作方法を設計する工程です。UIはユーザーインターフェースの略です。
ED(外部設計)
外部設計は、ユーザーが直接操作する部分やシステムの見た目の設計を行う工程です。基本設計と同義で使われることもあります。
ID(内部設計)
内部設計は、システムの内部構造や各機能の処理メカニズムを具体的に設計する工程です。詳細設計と同義で使われることもあります。
SS(構造設計)
構造設計は、システムの骨格となる構成やデータの流れを、設計する工程です。コンポーネント間の連携方法や依存関係を明確にします。
FD(機能設計)
機能設計は、システムの各機能の動きや仕様を決定する工程です。開発会社によって、外部設計や内部設計のどちらに含まれるかが異なります。
PD/PS(プログラム設計)
プログラム設計は、具体的なプログラムの動作や処理フローを設計する工程です。アルゴリズムやデータ処理の流れを詳しく定義します。
CD(コーディング)
コーディングは、設計書に基づき、実際にプログラミング言語でソースコードを記述する工程です。コーディング規約に従い、保守性の高いコードを作成します。
UT(単体テスト)
単体テストは、個別のプログラムが、仕様どおりに機能するかを確認するテスト工程です。
IT(結合テスト)
結合テストは、単体テストで検証した複数のモジュールを組み合わせ、相互作用が適切に行われるかを確認するテスト工程です。
PT(総合テスト)
総合テストは、システム全体が要件に沿って正常に機能するかを確認するテスト工程です。機能面だけでなく、性能やセキュリティもテストします。
ST(システムテスト)
システムテストは、構築されたシステム全体の動作検証をする工程です。総合テストと同義で使われることもあります。
h3:OT(運用テスト)
運用テストは、本番環境または類似環境でシステムの安定性や実用性を検証するテスト工程です。ユーザー受け入れテスト(UAT)とも呼ばれます。
まとめ
システム開発の工程は、要件定義から運用・保守まで複数の段階に分かれています。適切に管理することによって、品質向上、コスト削減、開発会社とクライアント間における円滑なコミュニケーションを実現させます。
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