TOPICS

TOP

>

TOPICS

>

システム開発

【図解なしでもわかる】システム開発の上流工程とは?開発の流れや必要なスキル・適性を解説

更新日: 2025年5月28日

上流工程は、システム開発の成功に不可欠な初期段階の工程です。上流工程でシステムの企画や要件定義、基本設計、詳細設計が決まるため、後の工程に大きな影響を与えます。この記事では、上流工程の基本知識から、開発の流れ、必要なスキル・適性について解説します。

上流工程の失敗が引き起こすトラブルや、上流工程の経験がキャリアに与える影響についても解説しているので、上流工程の知識を深めたい人は参考にしてください。

システム開発の上流工程とは?

上流工程は、システム開発の初期段階で行われる要件定義や機能定義、構成管理、計画立案などの工程です。クライアントの要望を整理し、必要な機能やシステム構成を明確にし、開発全体の計画を策定します。

システムの基盤を築く重要なプロセスであり、上流工程の内容に基づいて下流工程が実装されます。以下で、上流工程と下流工程の違いを解説します。

下流工程との違い

下流工程とは、上流工程で決めた内容に沿って、システムを実際に開発・完成させる工程です。具体的には、実装(コーディング)、テスト、導入の3つのステップが含まれます。

実装では、指定された機能とプログラミング言語に従って開発を行い、テストでは機能が期待通りに動作するかを検証します。導入では、本番環境でシステムが正常に稼働するかを確認します。顧客対応やプロジェクト全体の管理は上流工程が担当するため、下流工程では主に実装に集中し、マネジメントよりも開発が中心です。

上流工程の流れ

上流工程は、4つのフェーズに分かれます。各フェーズは、プロジェクトの進行において重要な役割を果たします。以下で、上流工程の流れについて順を追って解説します。

1.システム企画

まずは、企業のIT戦略に沿って、システム開発の企画書を作成します。ユーザーの要求や課題を整理し、予算や開発期間などを明確にしましょう。社内開発でない場合、多くは外部委託となるため、開発業者にとっては要件の出発点となります。

2.要件定義

システム企画を立てたら、要件定義をします。要件定義は、システムに必要な機能や仕様を明確にする工程です。機能・非機能の要件を洗い出し、予算やスケジュールを踏まえて要件定義書にまとめます。設計や開発の土台となるため、内容の曖昧さや不整合には十分に注意しましょう。

また、顧客が「システム化に必要な情報の一覧」を作成できない場合、開発業者やテスト会社が代行することがあります。業務フローが見える化されていない場合は、この段階で作成しておきましょう。

3.基本設計

要件定義が完了したら、基本設計を進めましょう。基本設計は、要件定義に基づいてシステム全体を設計する工程で、システムの構造や機能、操作、入出力などを決定します。他のシステムと連携する場合は、インタフェースも入出力項目に含める必要があります。

また、基本設計は、ユーザーが直接関わる部分を設計するため、「外部設計」とも呼ばれます。基本設計書はシステムの品質に影響を与えるため、要件との整合性を保ち、詳細かつ正確に記述することが重要です。

4.詳細設計

基本設計を終えたら、詳細設計を進めましょう。基本設計に基づき、プログラムごとの詳細設計書を作成します。例えば、商品名で検索可能なECサイトの場合、基本設計ではTOPページ、検索結果ページ、商品の在庫データベースが必要です。詳細設計では、TOPページで検索キーワードを入力し、検索ボタンを押した後の動作を具体的に設計します。

また、ユーザーが意図しない動作をした場合のエラーハンドリングも、詳細設計のフェーズで行います。

上流工程の失敗が引き起こすトラブル

上流工程を進めるためには、よくあるトラブルを把握しておく必要があります。以下で、上流工程の失敗が引き起こすトラブルについて解説します。

コストの増大

上流工程での失敗は、開発コストの増加を招くリスクがあります。見積もりが甘いと、想定外の機能や不可能な仕様が明らかになり、コストが膨らみます。クライアントと予算上限を確認し、無理のない範囲で設計することが大切です。

想定外の機能の追加が生じると、追加開発やコスト不足が発生し、プロジェクトが頓挫する可能性もあるため、見積もりは慎重に行いましょう。

納期の遅延

上流工程での失敗は、下流工程に引き継がれ、修正作業が必要になり、納期遅延を招きかねません。納期延長ができない場合、十分なテスト期間が確保できず、バグの多いシステムを納品するリスクがあります。バグが残っていると、運用段階でさらに大きなトラブルを引き起こす可能性もあるため、注意深く確認しましょう。

また、下流工程で問題が発覚しても、システム全体に影響する場合は、上流工程をやり直す必要があります。その結果、開発が停止し、納期に大きな影響を与えることがあります。

運用後の不具合

上流工程での失敗は、運用後の不具合にもつながります。システムは開発完了後も運用フェーズが始まり、運用し始めてからトラブルが発覚する可能性があります。上流工程で運用を考慮しないと、トラブル対応の遅れやコミュニケーションミスが生じ、リスクが増大するでしょう。運用を見据えた設計が重要です。

上流工程で求められるスキル・適性

上流工程で求められるスキル・適性は、ヒアリング力と論理的思考力、設計力です。以下で、それぞれのスキル・適性について解説します。

ヒアリング力

クライアントの要望を最大限に引き出すには、ヒアリングスキルが重要です。要件を明確にし、課題解決につながる設計を進めます。

ヒアリングでは、クライアントの問題点に焦点を当て、「作業の効率化を図りたい」「システムを改善して、使い勝手を良くしたい」といった具体的な要望を引き出すことが大切です。認識違いを避けるため、情報を整理しながら提案を進めましょう。

論理的思考力

上流工程では、システムの要件や構成を決める際に、論理的思考力が欠かせません。具体的には、事実や根拠に基づいて課題を整理し、最適な解決策を導き出す力です。クライアントの要望の背景にある課題を正しく理解し、優先順位の判断や機能の取捨選択を行うことで、より実用的な設計につながります。

設計力

上流工程では、設計力も必要です。下流工程を見据えた丁寧な計画を立てることで、開発をスムーズに進行できます。そのためにも、工程全体の道筋とゴールを明確にし、不備や手戻りを防ぐ設計力が重要です。

さらに、コーディングやテストの工程に向けて、具体的でわかりやすい指示を設計に盛り込むことも忘れではいけません。修正や追加作業を最小限に抑え、スケジュール通りに進行できる設計を心がけましょう。

上流工程の経験がキャリアに与える影響

上流工程を担当することで、プロジェクト全体を俯瞰する視点や高度な技術が身につき、マネジメントやコンサルティングの役割に挑戦するチャンスが広がります。これにより、キャリアアップがしやすく、リーダーシップやプロジェクト管理能力も向上するでしょう。さらに、上流工程での成功実績は転職や独立時に有利に働き、キャリアの選択肢が広がります。

まとめ

システム開発の上流工程は、開発全体の基盤を築く重要なステージです。失敗するとコスト増大や納期遅延、不具合を招くリスクが高まります。そのため、上流工程をしっかり理解し、適切に実施することが重要です。上流工程の計画と実行がプロジェクト全体の成否を左右するため、慎重かつ確実に進めましょう。

株式会社Sun Asteriskは、DX戦略の立案からシステム設計、開発に至るまで幅広いサービスを提供しています。豊富なノウハウと柔軟に対応できる開発リソースを活かし、上流工程から安心してお任せいただけます。

上流工程で全体像を固めたあとは、作業単位に落とし込んで進行管理をする必要があります。そんなときに役立つのが「WBS(Work Breakdown Structure)」です。タスクの可視化と作業漏れ防止に効果的で、実践で使えるテンプレート付き資料もご用意しています。ぜひご利用ください。

WBS(Work Breakdown Structure)について、基本の解説と、作成方法を具体的にご紹介いたしました。

アジャイル開発で最低限抑えておきたいポイントをチェックリスト化いたしました。