システム開発の成功を左右するのがプロジェクト管理です。一方で、「プロジェクト管理とは具体的に何をすればよいのか」と悩む人も多いでしょう。
本記事ではシステム開発におけるプロジェクト管理の基本から、おもな手法や成功に導くためのポイントを解説します。ツール活用のメリットにも触れるので、プロジェクト管理を担う方は最後までご覧ください。
目次
システム開発を成功に導くプロジェクト管理とは
システムが高度化・複雑化する中で、開発プロジェクトの遅延や品質トラブルを防ぐには、プロジェクト管理の高度化がますます重要になっています。
システム開発におけるプロジェクト管理とは、品質・コスト・納期を管理し、プロジェクト全体を計画・実行・統制する活動です。
予算や人員、時間などのリソースを効率的に配分し全体を指揮します。適切なプロジェクト管理が行われれば、遅延や予算超過を防ぎ、要求された品質のシステムを完成させられます。
システム開発のプロジェクト管理で行うべき業務
プロジェクト管理は、単一の作業ではありません。プロジェクトの進行に沿って以下の業務から成り立っています。
プロジェクトの立ち上げ
プロジェクトの立ち上げは、開発の方向性を定める重要なステップです。システム開発によって「何を達成したいのか」という目的とゴールを明確に設定します。
業務効率を何パーセント改善するか、投資効果が見込めるかなどを評価し、全ての関係者間で共通の認識を持つことが不可欠です。
要件定義
要件定義は、顧客やユーザーがシステムに求めている内容をヒアリングし、実装すべき機能や性能、セキュリティなどの仕様を定義するプロセスです。システム開発の土台であり、後の設計や開発、テストの全ての工程に影響を与えます。発注側と開発側の間で認識の齟齬が生まれないよう、要件定義書にして合意を得ることが重要です。
計画書の作成
目標と仕様をもとに具体的な計画書を作成しましょう。プロジェクトの範囲や必要なタスクを細分化したWBS、各タスクの担当者とスケジュールを記したガントチャートなどに落とし込みます。
必要なコストと予算や人員体制、品質管理の方法、そして潜在的なリスクとその対策なども計画に含めます。後の進捗管理の基準となる重要な工程です。
特にWBS(Work Breakdown Structure)は、全体の作業を漏れなく、かつ論理的に分解・整理する手法として有効です。誰が・いつ・何をすべきかが明確になり、進捗の可視化やリスク管理にも役立ちます。
>>WBS(Work Breakdown Structure)解説&テンプレート(無料ダウンロード)
必要なメンバーの確保
作成したプロジェクト計画に基づき、開発に必要なスキルや経験を持つメンバーを確保し、チームを編成します。システム開発は個々の能力だけでなく、チーム全体の連携が成功の鍵です。
プロジェクトマネージャーは、各メンバーのスキルセットや特性を深く理解し、それぞれの役割と責任を明確に割り振る必要があります。
環境構築
プロジェクトをスムーズに進めるため、開発やテスト、本番環境などのインフラを準備します。
サーバーやネットワークといったハードウェアの用意から、OSやミドルウェア、開発ツールなどのソフトウェアのインストールと設定までさまざまです。
バージョン管理システムやコミュニケーションツールなどもこの段階で導入しましょう。
進捗確認
プロジェクトの進み具合を定期的に確認し、問題があれば軌道修正を行う進捗確認は、プロジェクト管理の中核です。週次での定例ミーティングの開催や、プロジェクト管理ツールを活用したリアルタイムのスケジュール確認を行います。遅れが発生する場合は、原因をすぐに特定し、リソースの再配分やスケジュールの見直しといった対策を講じます。
また、WBSのように計画を構造化しておけば、各タスクの完了状況を明確に把握でき、進捗管理がよりスムーズに行えます。
振り返り
プロジェクト完了後や節目ごとに行う振り返りは、成功と失敗の要因を分析し、組織全体の成長につなげるためのプロセスです。
プロジェクトで上手くいった点や問題となった点、次に挑戦すべきことをチーム全員で洗い出し、内容を文書化します。得られた知見や教訓は、貴重な資産として組織に蓄積していきましょう。
システム開発におけるプロジェクト管理のおもな手法
プロジェクト管理には、内容や規模、組織文化に応じてさまざまな手法が存在します。ここでは、代表的なプロジェクト管理手法を5つ紹介します。
PMBOK
PMBOKは、プロジェクトマネジメントに関する知識やノウハウを体系的にまとめたガイドブックです。
統合・スコープ・スケジュール・コスト・品質・資源・コミュニケーション・リスク・調達・ステークホルダーという10の知識エリアと、立ち上げ・計画・実行・監視/コントロール・終結という5つのプロセス群で構成されています。
CCPM
CCPMは、プロジェクトの遅延を防ぎ、納期を確実に守ることに重点を置いた管理手法です。タスクごとに設けていたバッファを1つに集約し、プロジェクト全体の最後に配置するのが最大の特徴です。
各タスクの遅延がプロジェクト全体の遅延に直結することを防ぎ、プロジェクト全体の期間短縮と納期の確実性向上を目指します。
PERT
PERTは、各タスクの依存関係と作業時間を分析し、プロジェクト完了までの最短時間を算出する手法です。
アローダイアグラムと呼ばれるネットワーク図を用いて、タスクの流れとつながりを視覚的に表現します。図上で、プロジェクト開始から終了まで最も時間がかかる一連のタスク経路であるクリティカルパスを特定します。
PPM
PPMは、プロジェクトを単独で管理するのではなく、企業内で進行中の複数のプロジェクトを1つのポートフォリオとして捉え、組織全体の戦略的な視点から統合的に管理する手法です。
企業の経営戦略や目標に基づき、限られた経営資源をどのプロジェクトに、どの程度配分するのが最も投資対効果が高いかを判断します。
P2M
P2Mは、経済産業省の主導で開発された、日本発のプロジェクトマネジメント標準です。
個々のプロジェクトの成功を目指すだけでなく、連携・統合させたプログラムとして管理し、組織全体の事業価値の向上やイノベーションの創出といった、大きな目的の達成を目指す点が特徴です。
全体の価値を最大化するためのマネジメント手法として位置づけられています。
システム開発のプロジェクトを成功させるポイント
プロジェクトを成功に導くには、手法を知っているだけでは不十分です。以下の4つのポイントに注意しましょう。
適切な目標設定
プロジェクトの成功は、明確で適切な目標設定から始まります。「何を解決するためのものなのか」という目的を具体的にし、クライアントや開発チームなど、関係者全員でそのゴールを共有します。
たとえば「問い合わせ対応時間を20%削減する」のような、具体的で測定可能な目標の設定が重要です。日々の作業の意義も理解しやすくなります。
こまめな進捗管理
プロジェクトの進行中は、当初の計画と実績の間にズレが生じがちです。ズレをできるだけ早期に発見し軌道修正するために、こまめな進捗管理が重要となります。
定期的なミーティングはもちろん、プロジェクト管理ツールなどを活用して、各メンバーのタスク状況や課題をリアルタイムで可視化することが効果的です。
円滑なコミュニケーション
システム開発はチームで行う作業であるため、円滑なコミュニケーションはプロジェクトの生命線です。開発チーム内はもちろん、クライアントや他部署などのステークホルダーとの間で、密な情報共有を心がける必要があります。
定例会議やチャットツールなどを活用し、相談しやすい良好な関係を築き、チームの一体感を醸成しましょう。
プロジェクト管理ツールの導入
複雑なシステム開発において、プロジェクト管理ツールの導入は強力な武器です。Excelやスプレッドシートによる手作業の管理では、情報の更新漏れやリアルタイムでの共有が難しく、管理に多大な工数がかかってしまいます。
プロジェクト管理ツールを導入すれば、WBSのように作業の構造化と進捗の一元管理をスムーズに行うことができ、プロジェクト全体の状況をリアルタイムで可視化することもできます。
プロジェクト管理ツールを活用するメリット
あらゆる規模のプロジェクトで、管理ツールは欠かせません。ここでは、ツールを活用するメリットを3つ紹介します。
進捗状況の可視化
プロジェクト管理ツールを導入するメリットのひとつは、進捗状況をリアルタイムで可視化できることです。
ガントチャート機能を使えば、各タスクのスケジュールや担当者、進捗率が一目でわかり、タスク間の依存関係も明確になります。
どの工程で遅延が発生しているか、誰の負荷が高いのかといった問題点が把握でき、スムーズに対応できます。
チーム内の情報共有
チーム内の情報共有をスムーズにするために、プロジェクト管理ツールは有効です。情報や資料が、メールや個人のパソコン内に散在していては、認識のズレを生み出しかねません。
プロジェクト管理ツールを導入すれば、仕様書や議事録、各種ファイルなどを一元的に管理・共有できます。常に最新の状態で情報を確認できるため、探す無駄な時間を削減できます。
効率的なタスク管理
プロジェクト管理ツールは、タスクを効率的に管理する機能が充実しています。各タスクに対して、担当者や期限、優先順位を明確に設定し、カンバンなどでステータスと共に一覧で管理可能です。
タスクの抜け漏れを防ぎ、今誰が何をすべきかが明確になります。タスクの適切な再配分を通じて、チーム全体の生産性を最大化できます。
まとめ
プロジェクト管理は「知っている」だけでなく、「仕組みとして整えて運用する」ことが成功のカギです。
本記事では、システム開発を成功に導くためのプロジェクト管理について、重要性から具体的な業務内容、主要な管理手法、成功のための普遍的なポイントまでを解説しました。
今回紹介した業務プロセスや成功のポイントを日々の活動で意識してプロジェクトを成功させましょう。
特に、タスクの全体像を明確にし、各担当者ごとに可視化できるWBS(Work Breakdown Structure)はプロジェクト管理に欠かせません。作業漏れや工程の偏りを防ぐ仕組みを詳しく知りたい人は、下記資料にてその基本や実践的な方法まで解説していますので、ぜひご覧ください。
>>WBS 基本と実践(解説&テンプレート)|ダウンロード無料
WBS(Work Breakdown Structure)について、基本の解説と、作成方法を具体的にご紹介いたしました。
アジャイル開発で最低限抑えておきたいポイントをチェックリスト化いたしました。