システム開発のフレームワークは、効率的かつ高品質なシステム開発を行うために欠かせないツールで、プログラミング言語とセットで習得するのが一般的です。
今回は、システム開発に役立つフレームワークについて、機能や活用するメリットをわかりやすく解説します。各プログラミング言語ごとにおすすめのフレームワークも紹介するため、ぜひ最後までチェックしてください。
フレームワークとは?
フレームワークは、システムやアプリケーションの開発を効率化するために用意されている、共通の構造や機能を提供するソフトウェアの土台です。
開発における基本的なルールや設計思想が組み込まれているため、開発者は必要な機能を実装するだけで済み、作業時間の大幅な短縮や作業品質の向上が期待できます。
また、複数の開発メンバーが同じ思想で開発を進めるための“共通言語”としての役割も担っています。
フレームワークを使用する目的
フレームワークは、多くの開発現場において、開発スピードの向上やコーディングミス防止のために活用されています。
元々用意されているフレームワークに沿って開発を進められるため、開発者ごとの品質のブレやコーディングの癖も平準化でき、プロジェクト内でコーディングのルールを統一できます。
ライブラリとの違い
プロジェクト開発の効率化を助けるツールとして、フレームワークのほかに「ライブラリ」も広く活用されています。
フレームワークはシステムの全体設計を提供するツールですが、ライブラリは開発時に頻出するプログラム・関数・データなどの部品を収録したものであり、それぞれ使用目的が異なります。必要なときにライブラリを呼び出せるため、フレームワークと合わせて活用されています。
フレームワークの機能
フレームワークには多彩な機能が備わっており、プロジェクトの開発を包括的にサポートしてくれます。
おもな機能として、ソフトウェアの設計をモデル・ビュー・コントローラーの3つの役割に分けて管理する「MVCモデル」が挙げられます。このモデルに沿って開発を進めることで、保守性の高いコーディングを行えます。また、SQL操作を簡潔に記述できるデータベースとの接続機能や、セキュリティ対策も組み込まれています。
フレームワークには明確なルールが設けられた「オピニオン型」と柔軟性の高い「非オピニオン型」の2種類があり、開発要件や開発環境に合わせて適切なタイプが選択されます。
<フレームワークのおもな機能>
- MVCモデルによる開発
- データベースとの接続
- セキュリティ対策
フレームワークを活用するメリット
フレームワークを活用することで、開発の効率化や品質保持など、さまざまなメリットを得られます。
開発効率の向上
フレームワークには開発に必要な機能があらかじめ備わっており、開発者がゼロからシステムを構築する必要がありません。認証やデータベース接続などの処理を自動化・簡略化でき、短期間で高品質な開発を行うことができます。
コーディングミスやエラーの減少
フレームワークには多くの設計パターンやセキュリティ対策が組み込まれており、手作業によるコーディングミスやシステムエラーを未然に防止できます。標準化されたコードや処理を利用することで、動作検証も簡易化できるでしょう。
コーディングのルールを統一できる
フレームワークはあらかじめ設計思想やコーディングのルールが定められているため、複数の開発者が関わるプロジェクトでも統一感のあるコーディングや開発品質を保てます。コードの可読性や保守性も向上し、仕様変更や担当者変更にも柔軟に対応できます。
コーディングルールが統一されることで、属人化を防ぎ、担当変更時もスムーズな引き継ぎが可能になります。
フレームワークを活用するデメリット
利便性の高いフレームワークですが、使い方によってはデメリットを感じられるかもしれません。
開発の自由度が下がる
フレームワークは決められたルールや構造に従うため、独自の設計やカスタマイズを反映しにくい場合があります。開発内容によっては、フレームワークの制約が開発のボトルネックになるかもしれません。
フレームワークの習得に時間やコストが必要
フレームワークは便利なツールですが、使いこなすためには構造や仕様を理解しなければなりません。場合によっては難易度の高いフレームワークもあるため、導入難易度を慎重に見極める必要があります。
プログラミングスキルの向上を阻む可能性がある
フレームワークに依存しすぎると、基礎的なプログラミングスキルやアルゴリズムへの理解が浅くなるリスクもあります。開発案件によっては、フレームワークによって提供された機能を使うだけで完結してしまう場面が多く、プログラミングスキルが伸び悩む可能性があります。
プログラミング言語別の人気のフレームワーク
多くのフレームワークは、開発言語に合わせて作られています。ここからは、代表的なプログラミング言語とそのフレームワークを紹介します。
Javaのフレームワーク
Javaは大規模なシステム開発で広く使われているオブジェクト指向のプログラミング言語で、さまざまなフレームワークが揃っています。
Spring Framework
Spring Frameworkは、Javaにおける代表的なフレームワークです。Web開発や必要な各機能が備わっており、セキュリティ対策面も充実しています。拡張性が高いため、大規模な開発に適しています。
Play Framework
Play Frameworkは、JavaとScalaの2つのプログラミング言語に対応したフレームワークです。軽量で動作速度が早く、効率よく開発を進めたい現場に最適です。Spring Frameworkよりも、一般的に学習難易度が低いといわれています。
JavaScriptのフレームワーク
JavaScriptはWebサイトやWebアプリケーションの開発に適したプログラミング言語です。Webブラウザにさまざまな動作や制御を加えることができます。
AngularJS
AngularJSはGoogleが提供しているフルスタックフレームワークで、Webアプリケーションの開発に必要な全ての要素を搭載しています。使い勝手がよく、開発者のスキルを問わずに扱いやすいため、多くの大規模開発現場で使用されています。
Vue.js
Vue.jsはルールや制約が少なく、柔軟性の高いフレームワークとして人気です。学習難易度が低いため初心者でも使いこなしやすく、小規模プロジェクトや個人開発に適しています。
Rubyのフレームワーク
Rubyは、日本人によって開発されたオブジェクト指向のプログラミング言語です。簡潔な構文が特徴的で、おもにWebアプリケーションの開発に用いられています。
Ruby on Rails
Ruby on Railsは、最もポピュラーなRuby向けのフレームワークです。同じコードを使用せず、設定よりも規約を優先させるというルールが特徴的で、生産性と保守性の高いコーディングを行えます。
Sinatra
SinatraはRuby向けの軽量フレームワークで、Ruby on Railsよりもシンプルなコーディングで開発を行えます。学習難易度が低く柔軟性が高いため、プログラミング初心者や小規模の開発プロジェクトに適しています。
Pythonのフレームワーク
Pythonはシンプルな構文が特徴的なオープンソースのプログラミング言語で、Webアプリケーション開発・データ分析・AI学習など幅広い用途で活用されています。
Django
Djangoは、高機能なWebアプリを迅速に構築できるフルスタックフレームワークです。処理スピードが速く生産性が高いため、大規模なアプリケーション開発で広く用いられています。
Flask
Flaskは、開発に必要な最低限の要素のみを搭載したマイクロフレームワークです。機能がシンプルで柔軟性が高く、学習難易度が低いため、小規模なアプリケーション開発現場で人気を集めています。
PHPのフレームワーク
PHPは、Webサーバー上で動作する、サーバーサイドスクリプト言語です。WebサイトやWebアプリケーションなど、Webサーバー上での開発に用いられています。
Laravel
Laravelは、MVCモデルを採用したPHP向けのフレームワークです。豊富な機能とシンプルかつ学習しやすい点が人気で、Web上の幅広い開発案件に適用されています。セキュリティ認証やセキュリティ対策が充実しているのも魅力の1つです。
CakePHP
CakePHPは、シンプルかつスピーディなWeb開発を可能にするPHP向けのオープンソースフレームワークです。初心者でもコーディングしやすいさまざまな機能が備わっており、学習難易度の低いフレームワークとして根強い人気があります。
開発に使用するフレームワークの選定方法
開発で使用するフレームワークは、使用する言語や開発物に合わせて選定しましょう。開発を内製で行うのか、外部パートナーと連携して進めるのかによっても、最適なフレームワークは異なります。
開発するプログラムや使用する言語で選ぶ
はじめに、開発するプログラムの要件や開発環境に合わせて使用するプログラミング言語を選定し、その言語と相性のよいフレームワークをピックアップしましょう。
たとえば、大規模な業務システムの開発ならJavaとSpring、WebサービスならPythonとFlaskなど、プロジェクトに合わせたフレームワークの選定が必要不可欠です。
開発者のスキルや学習難易度から選ぶ
開発者の持つスキルやフレームワーク活用のためにかかる学習難易度も、選定の際の重要なポイントの1つです。同じプログラミング言語に対応しているフレームワークであっても、学習難易度や導入難易度はそれぞれ異なります。
たとえば、Javaで開発を行う際、初心者が多い場合は難易度の低いPlay Framework、経験年数の多い開発者が多い場合は高難易度のSpring Frameworkのように開発者のスキル構成に応じたフレームワーク選びをすると、スムーズに開発を進められるでしょう。
サポート体制やセキュリティ対策の充実度から選ぶ
フレームワーク選びにおいては、公式が提供しているドキュメントの充実度や開発者コミュニティの活発さも重要な判断材料となります。トラブル発生時にサポート体制やセキュリティ対策が整っていれば、安心してフレームワークを導入できるでしょう。
まとめ
最適なフレームワークの選定に加えて、プロジェクトの進行を可視化・管理するWBSも、開発成功には欠かせない要素です。WBSを活用することで、タスクの見える化や進捗の把握がしやすくなり、チーム全体での認識のズレを防ぎながら、プロジェクトを円滑に進めることができるでしょう。
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