システム開発の開発コストは、さまざまな要因によって変動します。開発計画時に見積もったコストと実際に発生したコストとの間に大きなギャップが発生するケースも珍しくありません。
今回は、開発コストを左右するおもな要因や開発コストが高騰する原因、開発コストを削減するにあたって効果的なアイデアを解説します。これから開発コストを見積もる人や開発コストの高騰に悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。
目次
開発コストの内訳とは?
開発コストは、システム開発費用・設備費用・プロジェクト管理費用・間接費用の4つに分類されます。これらの費用は開発の規模や期間、開発するシステムの内容によって大きく変動します。開発コストを最適化するためには、各項目の内訳や優先度を正確に把握することが大切です。
システム開発費用
システム開発費用とは、要件定義・システム設計・実装・テストなど、開発プロセスそのものにかかるコストを指します。エンジニアやプログラマーの人件費が中心となり、プロジェクトの規模が大きいほど費用も増加します。
また、開発途中での仕様変更やバグ対応による手戻りが多発すると、費用が当初の予定よりも膨らむ可能性があります。効率的な開発を実現するには、要件定義の明確化や正確なスケジュール管理が重要です。
<システム開発費用の一般的な割合>
- 開発費用:全体の50~70%程度
- テスト費用:全体の20~30%程度
- 人件費:PMは月100~150万円・エンジニアは月70~120万円が相場
設備費用
設備費用には、開発に必要なパソコン・サーバー・開発ツール・ソフトウェアライセンス料などが含まれます。
特にクラウド環境を利用する場合、サーバー運用費が継続的に発生するため、運用コストにも注意しましょう。
費用はオンプレミス開発やクラウド開発などの開発手法によって差が生まれることが多いため、開発環境や開発内容に合わせて予算を見積もることが大切です。
プロジェクト管理費用
プロジェクト管理費用は、プロジェクトマネージャーの人件費や管理ツールの導入費用など、プロジェクトの進捗や品質を管理する業務に対して発生する費用です。
開発が大規模になるほど管理工数も増加し、費用がかさむ傾向にあります。適切な人員配置やツールの活用によって、費用を最適化することが求められます。
その他の間接費用
その他の間接費用には、作業員の教育研修費・交通費・福利厚生費など、開発に直接関わらない費用が含まれます。
例えば、新規入場した作業員への教育コストや、リモート開発時のコミュニケーションツールの導入費用などがこれにあたります。このような間接費用も積み重なると大きな負担となるため、定期的な見直しによる最適化が欠かせません。
開発コストが高騰する原因
システム開発では、当初の見積もり金額よりも費用が大幅に膨らんでしまうことがあります。ここでは、開発コストが高騰するおもな原因について解説します。
当初の予定よりも開発期間が伸びた
開発スケジュールが当初の予定よりも延びると、その分人件費や管理費が増加し、コストが膨らみます。スケジュールの遅延原因の多くは、要件の追加や仕様の変更、タスクの遅延などです。
特に要件定義が不十分なまま開発に着手すると、後から手戻りが発生しやすく、納期の遅延につながります。事前の計画を明確に立て、進捗管理を徹底することが重要です。
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システムテストがスムーズに進まない
システムテスト工程が計画通りに進まない場合やシステムテストによる不具合修正が多発した場合、当初の予定よりも作業工数と費用が増加します。テスト項目の不備や、テスト人員の不足が原因となることも考えられます。
テスト段階をスムーズに進行するためにも、開発の初期段階から品質を意識し、単体テスト・結合テストを丁寧に実施することが大切です。
対応するデバイスの範囲が広い
開発物の対応デバイスがパソコン・スマートフォン・タブレットなどの多岐にわたる場合、それぞれの動作確認やデザインの最適化が必要となり、作業工数が増加します。
OSやブラウザの違いにも対応しなければならず、テスト工程や修正作業にも時間がかかるため、コストが高騰する要因になります。
開発者同士のコミュニケーション不足
チーム内でのコミュニケーションや情報共有が不十分だと、認識違いや作業の重複が発生しやすく、非効率な開発を招きます。
たとえば、仕様変更が関係者に伝わらなかったりレビュー不足でバグが残ったりすると、後の修正工数が増加し、開発コスト全体に影響を及ぼします。定期的なミーティングやチャットツールの活用で、円滑なコミュニケーションを促進しましょう。
人件費の高騰
エンジニアの人件費は、開発コストの大部分を占めます。開発内容に対して必要以上にスキルの高い人材を確保しようとすると、費用が高騰しやすいため注意が必要です。
また、プロジェクトが長期化すると、自ずと人件費も増加します。人件費の最適化には、人的リソースの適切な配分や、コストパフォーマンスの高い人材の活用が必要不可欠です。
為替変動の影響
海外の開発会社へ外注している場合、為替レートの変動がコストに大きな影響を及ぼします。特に円安が進むと外注費用が割高になり、当初の想定よりも多くの費用が必要になることが考えられます。
長期的な開発を計画する場合は、為替リスクを加味した予算管理を行ったり、国内リソースに限定したりするなどの対策を行いましょう。
開発コストを削減する方法
開発コストを抑えるためには、プロジェクトの計画段階から戦略的にコストカットに取り組む姿勢が求められます。
要件定義を明確に行う
開発コストを最適化し、不要なコストを削減するためには、要件定義を明確に行うことが必要不可欠です。開発中の仕様変更や機能の追加の多くは要件定義のあいまいさに起因するため、事前に開発目的・搭載する機能・開発範囲などを細かく取り決めておくことが重要です。
関係者全員で認識を揃え、文書化された仕様書をもとに進行することで、開発中の手戻りや開発期間の延長も防げます。
開発するシステムの機能や要件を見直す
全ての機能を盛り込んだシステムを開発しようとすると、作業工数が膨大になり、開発コストが高騰します。不要なコストを削減するためには、本当に必要な機能は何かを見極め、開発項目に優先順位をつけることが大切です。
また、必要最低限の機能のみを搭載した状態でリリースし、ユーザーニーズに合わせて後から改善や機能追加を行う「MVP開発」を取り入れるのも効果的です。
>>MVP開発とは?MVP開発の目的やメリット・デメリットなどを解説
固定費をカットする
サーバー費・ライセンス費・オフィス利用料などの開発にともなう固定費を見直すことも、コストカット方法の1つです。
たとえば、クラウドサービスの利用やオープンソースソフトウェアの活用などを行うことで、サーバー費やライセンス費を削減できます。不要なツールの解約や見直しも、固定費の削減に効果的です。
できるだけ自社で開発を完結させる
システム開発では、作業員を外注するとコストが高騰しやすくなります。開発費用を削減するためには、可能な範囲で作業を内製化し、自社のリソースを活用することが効果的です。
特にプロジェクトの立ち上げや要件定義などの上流工程を内製化すれば、外部とのやりとりにかかる工数やコミュニケーションコストも削減できます。また、開発後の運用・保守工程を自社で完結するのも、コストカットの1つの方法です。
>>【PDF】今日から始める!内製アジャイル開発 スタートガイド|チェックリスト付
スピード感のある開発手法に変更する
開発期間が短期化すると、その分開発コストも抑えられます。開発効率の高いアジャイル開発・オフショア開発・MVP開発などのスピード感のある開発手法に切り替えることで、無駄な工数を省ける可能性があります。早期にシステムをリリースすれば、収益化の前倒しにもつながるでしょう。
>>オフショア開発にかかる費用は?国別の費用相場と特徴、費用を抑えるポイントなどを解説
途中の内容変更にも柔軟に対応する
開発中の要望変更はコスト高騰の原因ですが、柔軟に対応できる体制を整えることで、手戻りを最小限に抑えられます。たとえば、アジャイル型の開発手法で段階的に要件を調整しながら開発を進行すれば、無駄な作業が減少し、現実的なコスト管理が行えます。
開発者同士のコミュニケーションを活性化する
開発者間での情報共有が円滑に進まないと、作業の重複や認識のズレが発生しやすく、無駄な工数が発生する可能性が高まります。
コミュニケーションコストを最適化するためにも、進捗状況やタスクを可視化するツールを導入したり定期的に共有ミーティングを実施したりして、開発チームでの連携を強化しましょう。
日頃からコミュニケーションを活発に取り合っていれば、作業効率の向上やトラブルの早期発見にもつながります。
ノンコア業務を外注する
開発に直接関係しないルーティン業務をノンコア業務と呼びます。成果物の管理・マニュアル作成・テスト作業などのノンコア業務を外注すれば、エンジニアが本来の開発業務に注力でき、作業効率を向上できます。
作業の切り分けやリソースの再配分を行い、プロジェクト全体の品質に影響しにくい業務に対して外部リソースを活用する施策も、コストカット手法の1つです。
補助金や助成金を活用する
国や自治体が実施するIT導入補助金や中小企業向けの助成制度を活用することで、開発費用の一部をまかなうことができます。補助金を活用したい場合は、対象となる案件や申請条件を事前に確認し、要件を満たす開発計画を立てることが重要です。
ただし、これらの補助金の受理や入金には一定の期間がかかることをあらかじめ理解しておきましょう。
>>新規事業で6,000万円もらえる補助金・助成金|各種制度の概要や注意点を解説
まとめ
システム開発のコストは、開発期間・開発内容・参画する作業員の人件費などの複数の要因によって大きく変動します。無駄なコストを削減し、開発費用を最適化するためには、開発計画段階での要件定義の明確化や正確な工数の見積もりが必要不可欠です。
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