システム開発における開発コストは、プロジェクトの規模や内容によって大きく変動します。効率的にプロジェクトを進行するためには、適切なコスト管理が欠かせません。
今回は、開発コストの内訳や分類、コストの算出方法について初心者向けにわかりやすく解説します。開発コストについて知りたい担当者は、ぜひ参考にしてください。
目次
システム開発の開発コストとは?
システム開発の「コスト」は、システムを構築・導入する際に発生する全ての費用を指します。人件費・設計開発費・テスト費、導入・運用費などが含まれ、プロジェクトの規模・開発期間・作業体制によって費用は大きく異なります。
予算の無駄を防ぎ、効率的に開発するためには、適切な予算配分と正確な見積もりの作成が重要です。
開発コストの分類
開発コストは、おもに直接費・管理費・間接費の3種類に分類されます。
システム開発費
システム開発費は、要件定義から設計・実装・テストに至るまでの一連の開発工程で直接発生する費用です。開発者の人件費・外注費・開発ツールやソフトウェアの導入費などがこれに含まれます。
費用はプロジェクトの規模や開発内容によって変動しやすく、開発コスト全体のなかでも大きな比率を占めます。タスクの細分化や作業時間の正確な算出によって、妥当性の高い費用の見積もりが可能です。
プロジェクト管理費
プロジェクト管理費は、プロジェクトの進行管理・品質管理・スケジュール調整など、開発を円滑に進めるための間接的な業務にかかる費用です。
プロジェクトマネージャーやチームリーダーの人件費・会議運営費・報告資料の作成管理費などがこれに該当します。プロジェクトの管理体制が不十分だと納期の遅延や品質低下に繋がるリスクがあるため、適切なコスト配分が欠かせません。
間接費
間接費とは、開発プロジェクトには直接関与しないものの、プロジェクトの遂行には不可欠な費用を指します。オフィスの光熱費や設備費・作業員の福利厚生費・教育研修費・ITインフラの維持費などがこれに含まれます。
直接費と異なり、プロジェクトごとに明確に予算を配分しにくいため、その会社の平時のコスト管理体制に大きな影響を受けます。
開発コストを左右する要素
システム開発のコストは、複数の要素によって大きく変動します。
作業工数
作業工数は「作業時間 × 作業人数」で算出する単位で、開発にかかる期間と人員数によって決まります。要件が煩雑になるほど増加するため、初期段階で適切な見積もりを行い、ムダな工程を削減することが重要です。
作業単価
作業単価は、作業を行うエンジニアやプログラマーのスキルレベルや役職に応じて設定されます。高スキルの作業員を起用すれば単価は高くなりますが、開発効率の向上によってかえって低コストに収まる場合もあります。作業単価の適正化のためには、開発人材を適切に配置することが重要です。
高スキルの作業員を起用すれば単価は高くなりますが、開発効率の向上によってかえって低コストに収まる場合もあります。一般的にエンジニアは月70〜120万円、プロジェクトマネージャーは月100〜150万円程度が目安で、オフショアを活用するとその半額程度になるケースもあります。
固定費用
開発環境の構築費・各種ライセンス料・開発機材の購入など、プロジェクトに関わる一定の固定費用もコストに含まれます。これらはプロジェクトの規模に関係なく発生するため、事前に正確な金額を把握しておくことが大切です。
システム開発費用の内訳
開発費用は、システム開発の工程ごとにも分類されます。
開発者の人件費
開発費用のなかで最も大きな割合を占めるのが、開発者の人件費です。費用はプログラマー・エンジニア・デザイナーなどの担当業務や、開発に関わる人数・スキルレベル・作業時間などに応じて大きく変動します。
特に専門性の高い技術者を必要とする場合は、一般的な開発プロジェクトに比べて単価が高騰しやすくなります。効率的なコスト配分のためにも、最適な人員配置を行うことが重要です。
要件定義費用
要件定義は、クライアントのニーズや開発目的を明確にし、開発の方向性を定めるために重要な工程です。仕様の曖昧さを防ぎ、開発途中での修正や手戻りを防止するためにも、要件定義に十分な時間と費用を投じる必要があります。
専門的な知識を持ったディレクターやコンサルタントの人件費を雇用する場合は、費用がやや割高になるでしょう。
システム設計費用
システム設計は、要件定義に基づき、システム全体の構造やデータベースを定義する、開発の中心となる段階です。
そのため、システム設計費用はプロジェクト全体の成果物の品質に直結するといえます。後の工程でのエラーの発生や再設計を防ぐためには、適切なコスト配分が重要です。
テスト費用
開発したシステムが仕様通りに動作するかを確認するためのテスト工程にも、一定の費用がかかります。単体テスト・結合テスト・システムテストなどの複数の段階があり、それぞれのテストでバグの発見や修正が求められます。
テストを軽視すると後のトラブル対応に多大なコストが発生するため、十分な予算を確保することが求められます。
テストを軽視すると後のトラブル対応に多大なコストが発生します。一般的には開発費用全体の20%~30%程度をテスト工程に配分するのが目安です。
システム導入費用
システム導入費用には、開発したシステムを実際の業務環境へ組み込むための作業や設定、関係者への説明・教育にかかる費用が含まれます。
ネットワークの新規構築・既存システムとの連携・業務フローの刷新をともなう場合は、追加費用が発生することもあります。導入段階でのトラブルを防ぐためにも、不足のない予算配分が欠かせません。
システム運用費用
システム運用費用は、システム稼働後の保守・監視・更新などにかかる継続的な費用です。サーバーやネットワークの維持管理費・ソフトウェアのバージョンアップ費・セキュリティ対策費などがこれに含まれます。トラブル対応やユーザーサポートを外部委託する場合にも、運用コストが発生します。
ライセンス費用
システムに利用されるソフトウェアや開発ツールには、ライセンス登録が必要な場合があります。たとえば、OS・データベース・セキュリティソフトなどのライセンス費用がこれに該当します。
ライセンス形態には買い切り型やサブスクリプション型があり、運用期間やユーザー数によってコストが変動します。利用目的に合った契約形態を選ぶことで、コストの最適化につながります。
開発コストの算出方法
開発コストの見積もりを行う方法は複数あり、目的や状況に応じて使い分けられています。
トップダウン法
トップダウン法は、過去の類似の開発プロジェクトにかかったコストを参考に、概算を見積もる方法です。全体のリソースを把握してから、細部にコストを振り分ける形で見積もっていきます。スピーディに見積もりを作成できますが、あくまで概算のため精度は高くありません。
ボトムアップ法
ボトムアップ法は、プロジェクトの遂行に必要な作業を細かく洗い出し、それぞれの工数や単価を積み上げて合計する見積もり方法です。
詳細なタスクごとに費用を見積もるため、精度が高く、計画段階で実際にかかる工数やコストを把握しやすいのがメリットです。正確な見積もりを算出したいときに適していますが、見積もりの算出には時間がかかります。
パラメトリック法
パラメトリック法は、過去の類似プロジェクト実績をもとに、パラメータとよばれる係数を使用して見積もりを行う方法です。実績データが豊富にある企業の場合、高い再現性が期待できるうえ、見積もりも比較的スピーディに算出されます。
ただし、過去の事例と現在の条件や環境が異なる場合は、見積もり金額に誤差が生じる可能性があります。
プライスツーウィン法
プライスツーウィン法は、クライアントの予算に合わせて、予算から逆算する形でコストを見積もる方法です。あらかじめコストの最大値を定めてから算出するため、予算を超過する心配がありませんが、予算不足による開発の遅延や品質の低下を招くおそれがあるため注意が必要です。
>>システム開発の見積もり方法と見積書の項目・内容、チェックポイントを解説
補助金を活用して開発コストを削減する方法もある
システム開発には多額の費用がかかりますが、国や自治体の補助金を活用すれば費用負担を軽減できます。たとえば、IT導入補助金やものづくり補助金は、中小企業が新たなシステムを導入する際に活用できる代表的な制度です。
IT補助金やものづくり補助金は、中小企業が新規システムを導入する際に活用できます。対象は中小企業・小規模事業者向けで、補助率は1/2〜2/3程度。大企業は対象外となるため注意が必要です。
補助金は申請時期や対象条件が限られているため、事前に情報を収集し、要件を満たすように計画を立てることが重要です。
参考:https://it-shien.smrj.go.jp/
参考:https://portal.monodukuri-hojo.jp/
見積もり書を請求したときのチェックポイント
見積もり書を受け取った際は、単に総額だけで判断せず、各項目の内訳や算出方法を細かく確認することが大切です。特に人件費・開発工数・作業単価などの費用が変動しやすい項目は、具体的に数値が明示されているかをチェックしましょう。
また、追加費用が発生する条件や、保守対応の範囲についても確認しておくと安心です。発注の際は複数の業者から相見積もりを取ることで、相場感をつかみつつ納得のいくコストで発注しやすくなります。
チェックリスト(抜粋) |
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✓ 人件費:役割別の単価/工数が明示されているか |
✓ 固定費:ライセンス・環境構築費の範囲は明確か |
✓ 保守:対応範囲(障害復旧/監視/アップデート)が明示されているか |
✓ 追加費用:条件と料金体系が記載されているか |
→ チェックリストはこちらからDL:システム開発 見積もりガイド

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