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システム開発

Flutterの開発事例10選|企業の導入メリット・注意点などを解説

更新日: 2025年12月12日


アプリ開発を進める上で、効率と品質を両立させるフレームワーク選定はとても重要です。近年はGoogleが提供する「Flutter」が注目されており、国内外の企業が積極的に採用しています。単一コードでiOSとAndroidに対応できる点は大きな強みです。

その背景を踏まえ、開発事例から得られるヒントや導入判断に必要なメリット・注意点を整理しました。詳細を踏まえてFlutterを採用すべきか判断してみてください。

FlutterとはGoogle発の開発フレームワーク

Flutter(フラッター)とは、Googleが提供するクロスプラットフォーム向けのUIフレームワークです。単一コードでiOSとAndroidの両方に対応でき、画面描画の仕組みも独自のため動作が軽く仕上がります。ここでは、その特徴やReact Nativeとの違いについて解説します。

Flutterの特徴

Flutterの最大の特徴は、単一コードで複数OSへ展開できることです。iOSとAndroidの双方で共通部分を多く持てるため、開発期間の短縮が期待できます。また、ホットリロードにより修正内容を即座に画面へ反映でき、作業効率が高まります。

UIは独自エンジンで描画されるため、アニメーションやレイアウト調整がしやすいことも特徴です。設計が一定に整うことで、利用者に統一感のある操作体験を届けやすくなります。

React Nativeとの違い

FlutterとReact Nativeはどちらもクロスプラットフォーム開発に用いられていますが、仕組みが異なります。React NativeはJavaScriptで記述し、OS標準のUIを呼び出す構造です。一方FlutterはDart言語を利用し、独自描画でUIを構築します。

そのため、Flutterは表示の再現性が高く、OS間で差が出にくいことが特徴です。また、描画制御を自前で行うため、アニメーション表現を柔軟に扱えます。開発言語や描画方式の違いが選定のポイントといえるでしょう。

Flutterを活用した開発事例まとめ

Flutterが実際のプロダクトでどう生かされているかを確認すると、採用判断のヒントを得られるでしょう。ここでは、企業のアプリ開発において、Flutterの強みがどの部分で発揮されたのか解説します。

My BMW App

ドイツの自動車メーカー・BMWが提供する公式アプリでは、車両の状態確認や遠隔操作など高度な機能を扱っています。Flutterへ移行したことで表示の一貫性が保たれ、画面更新もスムーズになりました。地図表示やアニメーションが滑らかに動くようになり、複雑なデバイス連携を扱うアプリでも安定した操作性を実現しています。

Green転職アプリ

GreenはIT・Web業界向けの転職サービスで、限られた開発リソースの中で効率的にiOSとAndroidの両方を更新できる体制を作ることを目的にFlutterを採用しました。結果、学習中のエンジニアが中心となり、約4か月でのリリースを実現しています。

ホットリロードによる画面調整のしやすさやUI構築の早さが特に役立ち、転職アプリ特有の検索や閲覧、チャットがスムーズに行えます。

じゃらんnetアプリ

旅行予約アプリ「じゃらんnet」は、ホテル・温泉宿の検索やクーポンを扱う大規模アプリです。段階的にFlutterへ移行したことで、開発コストを削減することに成功しています。作業工数をほぼ半分に削減できただけでなく、画面レイアウトの統一も実現しました。

複数OSで仕様差が出やすい予約アプリでも安定した品質を保ち、継続的な改善にも取り組みやすい環境が整っています。

Stailer

Stailerは、小売チェーンやドラッグストア向けに「スマートフォンで簡単に買い物体験を提供するアプリ」です。Flutterの採用により、UIの改修やアクセシビリティ対応をスムーズにすることに成功しました。特にスクリーンリーダー対応を含むユーザー体験の改善を目的とし、音声読み上げで商品情報を取得できるようになったため、目が見えにくい利用者でも迷わず操作できる設計を実現しました。

トヨタコネクティッド

トヨタコネクティッド株式会社では、次世代カーナビやデジタルコックピットのUI/UX開発においてFlutterを採用しています。異なるデバイスや車載システム間で統一された操作体験を提供するため、単一のコードベースで複数環境に対応できることが決め手となっています。これにより、仕様変更や機能拡張にも強い開発体制を構築できました。

ahamo

ahamoはNTTドコモが提供するオンライン専用プランの公式アプリで、料金確認や手続き、eKYCなど多くの機能を統合しています。Flutterの活用により画面構築の効率が向上し、設計から製造までの生産性を大幅に高めることに成功しました。

単一コードで各OSのレイアウトをそろえたことで、料金確認画面や契約手続きのUIが統一され、操作時のストレスが軽減されています。

Act-Self

Act-Selfは受託開発を中心にアプリ・システム制作を行う企業で、Flutterを用いたプロトタイプ提供や多機能アプリの短期開発を強みとしています。Flutterを採用した案件では、工具管理アプリや業務支援ツールなどをiOS・Android共通で構築し、要件変更への対応速度を高めています。

セキュリティ診断で高い評価を得たプロジェクトでもあり、Flutterを軸にした安全性と開発効率の両立を実現しました。

Philips Hue

オランダ発の照明ブランドであるPhilips Hueは、スマートライトをアプリで操作できるエコシステムを展開しています。Flutterを活用したことで、OSを問わずUI表示を統一し、複数機器との接続やスケジューリングをスムーズに構築しました。

ビルドパイプラインやCIを刷新し、アプリの保守にかかる時間の削減にも成功しています。

Kubota Remote Support

建設機械・農機具大手のクボタが提供する「Remote Support」アプリでは、現場と機械メーカー間で3DモデルやARを活用して故障か所を迅速に共有する体制を構築しました。Flutterを基盤に、OSごとに別実装が必要となるネイティブ機能を最小限に抑え、同じコードで運用できる範囲を広げたことが特徴です。現場対応のスピードが上がり、保守運用の負荷も軽減されています。

iRobot Home

ロボット掃除機「Roomba」で知られるiRobotの公式アプリでは、Flutterの活用により各OSへの展開の効率化に成功しています。小規模チームでの開発でも、地図作成・掃除エリア指定・音声アシスタント連携といった複雑な機能を単一コードベースで管理できる体制を築いています。これにより、運用保守のコスト削減と機能拡張速度の向上を両立させました。

Flutterで開発を行う際の注意点

Flutterは効率的にマルチプラットフォームへ展開できる一方、導入前に把握しておきたい特有の制約もあります。ここでは、開発中に発生しやすいポイントを整理し、検討段階で注意すべき内容について解説します。

OS固有機能の実装にはネイティブ開発が必要

カメラ制御やBluetooth、センサー情報など端末固有の処理は、Flutterだけで完結できないことがあります。プラグインで対応できない領域はSwiftやKotlinの併用が必要であり、開発体制にネイティブ知識を持つメンバーを含める前提で進める必要があります。

複雑なバグ修正には専門知識が求められる

ウィジェット構造が深い画面やアニメーション処理が複雑な場面では、不具合が発生した際に原因特定に時間がかかることがあります。描画タイミングやステート管理のどこで問題が起きているのか切り分けが難しく、Flutter特有のライフサイクルを理解していなければ、調査に時間がかかることには注意が必要です。

最新のOS機能を即時反映しにくい

iOSやAndroidの大型アップデートが行われた際、Flutter側の対応が追いつくまでに時間がかかる可能性があります。公式パッケージの更新待ちとなることもあり、新機能をすぐに組み込みたいプロジェクトでは、スケジュール調整が欠かせません。OS依存度の高い企画では慎重に判断しましょう。

開発環境と人材がまだ成熟していない

Flutterは年々普及が進んでいるものの、国内における経験者はまだ多くないのが現状です。プロジェクト規模が大きいほど、継続的な開発体制を組む難易度が高まります。また、ライブラリの更新などが発生する可能性もあり、環境管理を丁寧に行う運用体制が欠かせません。

日本語ドキュメントが少なく情報収集に時間がかかる

Flutterは情報源の大半が英語であり、日本語だけで開発を進めたい企業にとっては調査の負担が大きくなります。特にトラブルシューティングや実装の細かい例は英語によるコミュニティが中心です。英語の細かい解釈まで理解できるメンバーが必要になる可能性があることも理解しておきましょう。

まとめ

アプリ開発では、技術選定によって開発効率も保守性も大きく変わります。Flutterは、スピードとUI表現に優れた選択肢である一方、OS固有機能や複雑な不具合対応ではネイティブ知識が必要になる場面もあります。

今回の事例で述べたように、どのアプリでもどこまでFlutterで実装し、どこからネイティブを補完するかを見極めることで品質が安定します。社内で判断が難しい場合は、まず小さな範囲で検証しながら進めるとリスクを抑えられます。

もし他社がどのように課題を整理し、どのような進め方でアプリを成功に導いたのか知りたい場合は、以下の「Sun Asteriskのシステム開発・改善 事例集」を参考にしてみてください。実際のプロジェクトの進め方や、成果につながったポイントが具体的にまとまっており、開発パートナー選定の判断軸にも役立つ内容です。

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