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システム開発

React開発事例|大規模Webサービスが採用する理由を解説

更新日: 2025年12月17日

Reactは世界中の企業で採用されているJavaScript向けのライブラリで、高速なUI表示や開発効率の高さから現代のWebサービスに欠かせない存在となっています。今回は、IT業界で働く人やプログラミング学習者向けに、Reactの特徴やできること、具体的な開発事例を紹介します。

React(リアクト)とは?

Reactは、Meta社(旧Facebook)が開発したJavaScript向けのライブラリで、ユーザーインターフェースを効率的に構築する目的で広く利用されています。コンポーネント単位で画面を組み上げられるため再利用性が高く、複雑なWebサービスでも保守性の高い実装ができます。

また、動的な表示変更に強く、ユーザーが操作するたびに素早く画面が切り替わる設計や、快適なUIを実現できる点も強みです。企業の大規模サービスでは、複数チームでの並行開発や長期運用が前提となるため、Reactのコンポーネント指向は保守工数の削減に直結します。

Reactの特徴

Reactには、開発を効率化するためのさまざまな機能が備わっています。

宣言的でコードの可読性が高い

Reactは宣言的な書き方を採用しており、「何を表示したいか」を明確に記述できます。コードの可読性が高く、開発者間で共有しやすいのが利点です。

また、保守性にも優れており、長期運用が必要なWebサービスにも適しています。宣言的に記述できるため、レビューや引き継ぎの際にコードの意図が理解しやすく、複数チームでの長期運用に向いています。

コンポーネント指向で拡張性が高い

Reactはコンポーネント指向の仕組みを採用しており、画面を小さな部品に分けて開発できます。一度作成したコンポーネントは別の画面でも再利用できるほか、部品ごとに役割を分離することで、修正や追加の影響範囲を最小限に抑えられます。複数の開発者で作業する場合もコンポーネント単位で担当を分けやすく、大規模なプロジェクトの役割分担がスムーズです。

大規模サービスではデザインシステムと統合しやすく、UIの統一や品質維持が行いやすい点も企業採用が進む理由です。

リアクティブプログラミングである

Reactは、状態の変化に応じてUIが自動的に更新される「リアクティブプログラミング」を採用しています。開発者は「状態がどう変わるか」を記述するだけでよく、画面の更新処理を細かく指示する必要がありません。

そのため、ユーザーの操作に素早く反応するインタラクティブな画面を効率よく構築できます。フォーム入力、検索フィルタ、ダッシュボード更新など、業務システムでも頻繁に利用される動的UIと非常に相性が良い仕組みです。

高速のDOM操作ができる

Reactは「仮想DOM(Virtual DOM)」という仕組みを採用しており、画面の変更点だけを更新するだけで済みます。通常のDOM操作は負荷が高く、大量の表示更新が必要な場面では処理が重くなりがちですが、Reactでは仮想DOMで高速に計算するため、複雑な画面でもスムーズに動作します。

大量データを扱う表形式の画面やリアルタイム情報の更新など、負荷が高い場面でもパフォーマンスを維持しやすい点が評価されています。

iOSアプリとAndroidアプリを同一コードで開発できる

Reactは「React Native」というフレームワークと組み合わせることで、iOSとAndroidの両方に対応したアプリを同一コードで開発できます。OSごとに別々のコードを書く必要がないため、開発コストや工数を大幅に削減でき、機能追加や改善も統一して行えます。既存のWebサービスの技術基盤と共有できる部分が多く、フロントとネイティブ双方のリソース最適化に寄与します。

一度学習したらさまざまな分野で応用できる

ReactはWebフロントエンドにとどまらず、モバイルアプリ・デスクトップアプリ・VRコンテンツなどの幅広い分野に応用できます。「React Native」や「Next.js」のようなフレームワークも多く、一度Reactを身につければ多様な開発に展開できる学習効率の高さが魅力です。

Reactでできること

ReactはWebサイトからネイティブアプリまで、多様な開発に活用されています。

Webサイト開発

Reactは動的な表示が多いWebサイトの開発に向いており、ユーザー操作に合わせて素早く画面を更新できます。コンポーネント指向で管理しやすく、企業サイトやメディアなど規模の大きいWebサイトでも高い保守性を保ちながら運用できます。また、「Next.js」などのフレームワークと組み合わせることで、SEOに強いWebサイトも構築可能です。BtoBサイトやメディアなど、SEO要件が強い場合は「Next.js」のようなSSG/SSR対応フレームワークと組み合わせることが一般的です。

Webアプリ開発

Reactは、ユーザーが頻繁に操作するWebアプリの開発に特に適しています。リアクティブに画面が更新されるため、入力フォーム・検索機能・管理画面などでストレスのない操作性を実現できます。コンポーネントを再利用しやすいため、複雑なアプリでも効率よく開発できるのが魅力です。特に企業の管理画面や業務ダッシュボードでは、Reactのコンポーネント再利用性により機能追加がしやすく、長期運用コストを抑えられます。

ネイティブアプリ開発

フレームワーク「React Native」を使うことで、Reactの記述を生かしてiOSアプリやAndroidアプリを開発可能です。1つのコードベースで両方のOSに対応できるため、開発コストを最小限に抑えられます。近年は小規模開発だけでなく、大企業のプロジェクトでも広く採用されています。

VRコンテンツ開発

ReactはVRコンテンツの開発にも活用されており、「React 360」などのライブラリを利用することで、インタラクティブな3D体験をWeb上で実現できます。Web技術をベースにしているため導入がしやすく、特別な環境を構築せずにVRを提供できます。

SPA(シングルページアプリケーション)開発

ReactはSPA(シングルページアプリケーション)開発に適しており、ページ遷移を行わずに必要な部分だけを更新できます。仮想DOMの高速処理によってアプリのようなスムーズな操作を体験できるため、SNSやダッシュボードなどのリアルタイム性の高いサービスで多く利用されています。

Reactの開発事例

Reactは多くの世界的なサービスで採用されており、ユーザー体験の向上や開発の効率化に大きく貢献しています。

※本記事で紹介している事例は公開情報をもとにした紹介事例です。 当社の支援実績ではありませんが、技術選定や活用の参考として掲載しています。

Facebook

ReactはもともとMeta社(旧Facebook)が自社サービス改善のために開発した技術であり、現在もFacebook内部で幅広く利用されています。例えば、最初にReactを使って実装されたニュースフィード機能のほか、Messenger・プロフィールページなどに活用されています。大規模で頻繁に更新されるUIを長期運用していることから、Reactが“高頻度更新×巨大ユーザーベース”の両立に強いことを示す代表的な事例です。

Instagram

Instagramでは、プッシュ通知設定やコメントモデレーションなどの処理にReactが活用されています。ユーザーの操作に即座に反応する画面更新が求められるため、Reactの高速なDOM管理が好適です。また、iOSアプリとAndroidアプリで多くのコードを共有しています。モバイルアプリとWebの双方でReactを活用している点は、企業が複数プラットフォームを統合しつつUI品質を高めたい場合の有効なアプローチを示しています。

Netflix

Netflixは、動画視聴サービスのフロントエンド部分にReactを採用しています。膨大なコンテンツからユーザーに合った作品を素早く高画質で表示でき、ユーザー体験の向上に貢献しています。この事例は、Reactが高トラフィック環境でも高速描画を維持できることを示しており、動画配信のようなUI負荷の高いサービスでも実用的であることが分かります。

Uber Eats

Uber Eatsでは、ショップ側のダッシュボードをReactで構築しています。リアルタイムに更新される店舗情報や配達ステータスを快適に表示するために、Reactの仮想DOMによる高速描画が活用されています。設定変更・注文状況がリアルタイムに変化する業務特性とReactのリアクティブUIが非常に相性が良い点がポイントです。

Airbnb

Airbnbは宿泊検索や予約画面など、ユーザーが頻繁に操作する部分にReactを採用しています。スクロールやクリックのレスポンススピードを高めつつ、画面遷移を最小限に抑える工夫がなされています。対象施設数・検索条件が膨大でもUIを素早く描画できている点は、Reactが“検索×フィルタ×高速表示”を求められるサービスに強いことを示しています。

Dropbox

Dropboxでは、Web版のユーザーインターフェースにReactが採用されています。大量のファイル操作やフォルダ移動など、動的処理が多い環境においてReactの特性が生かされています。膨大なファイルを扱う業務画面でも操作負荷を感じさせない点から、大量データを扱うBtoB管理画面や社内システムとも高い親和性があります。

PayPal

PayPalは、決済画面や管理ダッシュボードなどのフロントエンドにReactを活用しています。高いセキュリティ体制と操作性の両立が求められる決済サービスにおいて、Reactの高速処理と安定したパフォーマンスは適性が高いといえるでしょう。セキュリティ要件が厳しい金融領域でも運用されている点は、“堅牢性とUI操作性を両立できるフレームワーク”としてReactが信頼されている証拠です。

Shopify

Shopifyでは、iOSとAndroidの開発を統合するために「React Native」を採用し、管理画面やショップ画面を構築しています。フレームワークの活用により開発効率が高まり、エンジニアのリソースも最適化できました。ECプラットフォームのように、機能追加・改善が頻繁に発生するプロダクトに対し、React Native が“短い開発サイクル”と“複数OSの共通化”を実現している点が象徴的です。

Reactのデメリット・弱点

便利で活用しやすいReactですが、利用時に注意すべきポイントや弱点もあります。

日本語のドキュメントや情報が少ない

Reactは世界的に普及していますが、最新情報や高度な実装例の多くが英語で公開されています。そのため、日本語だけで学習しようとすると情報が少なく、初心者はつまずきやすい傾向があります。また、英語の記事や公式ドキュメントを読む必要があるため、理解に時間がかかるケースも少なくありません。

チーム開発の場合は英語ドキュメントを前提とした運用ルールや技術選定基準を整えておくと、実装方針のブレを防げます。

メモリの消費量が多い

Reactは仮想DOMを使って高速化を図っていますが、その分メモリを多く使用する傾向があります。画面構成が複雑な場合は、読み込みが遅くなったりパフォーマンスが低下したりすることがあるため注意が必要です。また、デバイスによっては動作が重く感じられるケースもあり、開発内容によってはReactが最適ではない場合があります。

実際の開発では、コンポーネント分割や不要な再レンダリング抑制などの最適化で十分にコントロール可能です。

環境構築に時間がかかる

Reactは自由度が高い反面、開発環境の構築が複雑になりがちです。利用するツールやライブラリが多く、はじめはどれを利用すればよいのか迷うかもしれません。また、開発環境のバージョンが頻繁に更新されるため、常に最新の構成に合わせた設定が必要です。チーム開発では環境差が問題になることもあるため、初期のセットアップや運用ルールの整備を行いましょう。Dockerなどの仮想環境を利用して環境差を吸収するのが一般的で、初期のセットアップさえ定義できれば運用負荷は大きく下げられます。

また、Reactは広く利用される技術のため、フレームワークや関連ライブラリで脆弱性が公開されることがあります。企業で採用する場合は、最新バージョンへのアップデートや依存パッケージの管理など、セキュリティ面の運用体制を整えておくことが重要です。

まとめ

Reactは、宣言的な記述やコンポーネント指向といった特徴を持ち、WebサイトやWebアプリ、ネイティブアプリなど幅広い領域で活用されているライブラリです。世界的なサービスでも採用が進む一方、日本語情報の少なさや環境構築の難しさといった課題もあるため、導入時には開発体制や運用面まで含めた検討が重要になります。

Sun Asteriskでは、こうした技術選定や開発を進める際の考え方にお役立ていただけるよう、さまざまな事例やガイドを公開しています。
これから開発計画を検討する際の参考情報として、ぜひご覧ください。

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