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PlaywrightによるE2Eテスト自動化と、Sun*が目指すサービス品質マネジメント

PlaywrightによるE2Eテスト自動化と、Sun*が目指すサービス品質マネジメント

更新日: 2025年8月20日

PlaywrightによるE2Eテスト自動化と、Sun*が目指すサービス品質マネジメント

高速開発の時代に、品質をどう担保するか?

今日、ソフトウェア開発の現場では「高速な価値提供」が当たり前の要求となっています。
クラウドネイティブやマイクロサービス、APIエコノミー、ローコードツールの普及により、プロダクト開発のリードタイムは劇的に短縮されました。
特に以下のような技術・業界トレンドが、スピード優先の開発文化を加速させています。

  • DevOpsの浸透:開発と運用の分業から協業へ。リリース頻度が“日単位”に
  • CI/CDの一般化:プルリクエストベースで毎日のように自動デプロイ
  • SaaS・モバイルアプリの運用:新機能を短いスパンで繰り返し投入
  • カナリアリリース/ブルーグリーンデプロイ:失敗を前提にした小規模展開の高速サイクル

このような時代背景の中で、品質保証の在り方も抜本的に見直される必要が出てきました。従来のように「開発が終わった後にテスト期間を設ける」モデルでは、もはや追いつきません。

不具合が1日遅れて検知されれば、それだけで数千・数万ユーザーに影響を及ぼすこともある現代において、“スピードを保ったまま品質を担保する”アプローチが求められています。

つまり今、必要なのは:

  • 手戻りを最小化できる早期フィードバック
  • リリースと同じスピード感で機能する品質ゲート
  • 本番運用中でも異常をいち早く検知する監視機構

Sun*では、これらを実現する基盤として「DevOpsにおけるE2Eテスト自動化」を戦略的に導入しています。
本記事では、その取り組みの全体像と背景、実践内容について詳しくご紹介します。

E2Eテストとは?

E2E(End-to-End)テストとは、システム全体を通じて、ユーザーが行う一連の操作を再現し、アプリケーションが正しく機能するかを検証するテスト手法です。
単にコード単位やAPI単位の動作を確認するのではなく、「ユーザーが操作したときに、期待通りの画面が表示され、正しい結果が得られるか?」を体験レベルで保証することを目的としています。

E2Eテストとは?

E2Eテストの概要:テスト対象は「機能」ではなく「体験」

たとえばECサイトであれば、以下のような流れがテストシナリオになります。

  • ユーザーがログインし
  • 商品を検索して選択し
  • カートに追加し
  • クレジットカードで決済を完了する

この流れのどこか1つでも欠ければ、ユーザーにとっては「使えない」サービスになります。
E2Eテストは、この“ユーザー体験の完成形”を保証するための、最も包括的なテスト手段です。

なぜE2Eテストが今、特に重要なのか?

現代のアプリケーションは、以下のような構造的複雑性を持っています。

  • マイクロサービス化:処理が複数の独立サービスに分散
  • API連携:外部サービスとの接続が前提
  • 非同期処理:画面に現れない内部エラーの増加
  • 高頻度リリース:1日に複数回のデプロイも珍しくない

こうした状況下では、単体テストや統合テストだけでは見つけきれない障害が、ユーザー体験の中に潜むようになります。
つまり、「テストが通ったのに、実際には壊れている」という状況が起こりやすくなっているのです。
E2Eテストはこのギャップを埋める、“信頼性の最終チェックポイント”の役割を担っています。

E2Eテストを自動化することの重要性

E2Eテストは、手動でも実施可能です。実際にユーザーと同じように画面を操作し、フローを確認すればよいからです。
しかし現実には、手動テストには以下のような大きな課題があります:

  • テストケースが多くなると人的負担が膨大
  • 変更のたびに繰り返す必要がある
  • テストの再現性が保証されない
  • 本番環境での監視には向かない

特に、DevOpsにおける継続的な開発(CI)と継続的デリバリー(CD)を支えるには、テストもスピードと安定性を兼ね備えた「自動化」が前提になります。

E2Eテスト自動化がもたらす具体的メリット

観点 効果
品質担保 リグレッション(回帰バグ)の早期発見、体験の崩れを防ぐ
スピード デプロイ前後に即時チェック、開発〜リリースの高速化に対応
運用効率 テスト工数の大幅削減、人が手を動かさなくてもよい
安心感 ビジネスチームも「使える」ことが客観的に確認できる
モニタリング活用 本番環境に対して定期的に実行し、サービス死活の監視手段としても有効

 

E2E自動化は、単なるテスト効率化ではなく、開発・運用・ビジネス全体の安定性を支える基盤技術と言えます。

Playwrightの採用とSun*が選んだ理由

Sun*では、E2Eテスト自動化のためのフレームワークとしてMicrosoft製のPlaywrightを選定し、全社的に活用しています。
E2E自動化にはさまざまなツールが存在しますが、その中でもPlaywrightを選んだのは、単なる「テストの自動化」だけでなく、スピード、安定性、拡張性、DevOpsへの親和性のすべてを満たすバランスの良さがあったからです。

Playwrightとは?

Playwrightは、Microsoftによって開発されたモダンなE2Eテスト自動化フレームワークです。2019年にオープンソースとして公開されて以来、世界中の開発チームに採用が広がっており、CypressやSeleniumに次ぐ存在として急速に評価を高めています。

Sun*がPlaywrightを採用した主な理由

① 主要ブラウザすべてに対応している

  • Chromium(Chrome系)だけでなく、Firefox / WebKit(Safari)にも公式対応している
  • クロスブラウザの自動テストが1つのコードベースで完結する

→ これにより、モバイル含むUI検証の抜け漏れ防止につながります。

② 高速かつ安定した実行性能

  • 並列実行、ヘッドレス実行に対応し、テスト全体の実行時間が大幅に短縮できる
  • テストのフレーク(成功したり失敗したりする不安定な挙動)が少ないことも特長
  • スピードと再現性の両立ができる点が、CI/CDへの組み込み時に特に有効

③ TypeScript / JavaScript ベースで開発者と親和性が高い

  • フロントエンドエンジニアやQAが、既存の開発スキルを活かしてテストスクリプトを記述可能
  • API設計、ロジック検証との一貫した開発フローが実現でき、学習コストも低い

④ 柔軟な操作性と強力なセレクタエンジン

  • Playwrightは、テスト対象の要素に対して「role」「text」「label」「data-test-id」などの意味的なセレクタを使うことが可能
  • UI変更に強く、保守性が高いテストスクリプトが実現できる

⑤ DevOps環境との親和性が高い

  • GitHub ActionsやGitLab CIなど、主要なプラットフォームと簡単に統合可能
  • スクリーンショット、動画キャプチャ、失敗時のHTML保存など、デバッグ支援機能も充実しており、テスト結果の可視化が容易

Sun*でも、CI/CDパイプライン上での自動実行、失敗時の通知連携(Slackなど)をPlaywright中心に構成しています。

CypressやSeleniumとの比較(簡易表)

比較項目 Playwright Cypress Selenium
対応ブラウザ Chromium, Firefox, WebKit Chromium系のみ すべて対応
(ただし安定性は低い)
並列実行
高速

やや制限あり

外部ツール依存
モバイル対応
要設定

環境依存
セレクタの柔軟性
強力

限定的
CI/CD統合
簡単

設定が複雑
安定性
高い

フレークが多い

Playwrightの導入効果(Sun*の現場での実感)

Sun*のQAおよび開発チームでは、Playwrightの導入により以下のような成果を実感しています:

  • 開発と同時にテストを実装・運用するShift-left Testingが実現
  • 開発者とQAが同じテストスクリプトを読み書きすることで、チーム間の連携が自然に強化
  • 本番環境向けのE2E監視にも活用でき、「開発」と「運用」の境界を越えた品質担保が可能に

Playwrightは「開発 × QA × 運用」をつなぐE2E基盤

Playwrightは単なるテスト自動化ツールではなく、DevOps体制の中でスムーズに動き続ける信頼性のインフラです。
Sun*では、開発・テスト・運用のすべてにわたってPlaywrightを活用し、「壊さずに出す」「出してもすぐ気づく」「次に活かす」という改善サイクルを構築しています。
E2E自動化を本格的に取り入れたい組織にとって、Playwrightは非常に優れた選択肢であると言えます。

Sun*が実践する DevOps × E2E自動化

Sun*が実践する DevOps × E2E自動化

──E2Eは品質担保の手段から、継続改善の“エンジン”へ

Sun*では、E2Eテストを「テスト工程の一部」にとどめるのではなく、DevOpsの各フェーズに組み込み、継続的な品質改善とプロダクト成長の基盤として活用しています。
その取り組みは、大きく分けて以下の3つのフェーズに展開されています。

① TESTフェーズでの活用:CI/CDへのシームレスな統合

目的:リリース前の不具合を早期に検出し、安心してデプロイできる状態を保つ
Sun*では、開発チームがコードをPushしたタイミングやプルリクエストを作成した時点で、Playwrightを用いたE2EテストがCI/CDパイプライン上で自動実行されます。

実施内容:

  • GitHub Actionsと連携し、テスト実行をパイプラインに組み込み
  • テスト対象は、ログイン・商品購入・申込・検索など、ユーザーの主要な操作フロー(クリティカルパス)を中心にカバー
  • E2Eの結果をトリガーにマージやデプロイ可否を自動判断(品質ゲートとしての機能)

効果:

  • デプロイ前に潜在的な不具合を自動で発見
  • 手動テストの手間とタイミング依存からの脱却
  • QAと開発の連携を強化し、Shift-left Testing(早期テスト)の実現

② MONITORフェーズでの活用:本番環境を対象としたE2E監視

目的:ユーザー影響のある障害を即座に検知・対応し、サービス信頼性を保つ
本番環境においても、定期的なE2Eテストを“死活監視”の一種として実行しています。
このフェーズでは「見える不具合」だけでなく、「気づきにくい操作不能状態」も拾い上げることができます。

実施内容:

  • 一定間隔でE2Eシナリオを自動実行(cron実行 or CIスケジュールトリガー)
  • 画面表示・UI要素の有無・エラーメッセージの表示有無などを検証
  • 異常があった場合は、SlackやPagerDutyなどにリアルタイム通知し、担当者にエスカレーション

効果:

  • サービスダウンやUI崩れなどの顕在化前のトラブルを迅速に検知
  • 開発チームやSREが早期に対応でき、ユーザー影響を最小化
  • 通常の監視(CPU・メモリ・ログ監視)では検知できない“ユーザー目線の障害”にも対応可能

③ PLANフェーズへのフィードバック:継続的改善サイクルの実装

目的:検知された課題を“設計段階”に反映し、品質の根本改善を行う
DevOpsにおけるE2E活用の真価は、検知した結果をどう活かすかにあります。
Sun*では、MONITORフェーズで検出した課題や傾向をそのまま放置せず、設計・企画フェーズ(PLAN)に反映しています。

実施内容:

  • 異常ログやテスト失敗内容を分析し、「なぜ起きたか?」の根本原因を共有
  • PdMやQA、SREとの振り返りの場(レビュー・レトロスペクティブ)で、設計レベルの改善方針を協議
  • 必要に応じて、仕様変更・設計改善・テストカバレッジ見直しなどに展開

効果:

  • 一時的な障害対応に終始せず、構造的な品質改善が進む
  • PdMが“現場の技術的課題”を把握しやすくなり、開発と企画のズレが減少
  • DevOpsが持つ「継続的なフィードバックループ」が実働することで、プロダクト全体の学習・進化が促進

3つのフェーズをつなぐDevOpsループとしての意義

Sun*におけるE2E自動化は、「TEST → MONITOR → PLAN」それぞれで完結するのではなく、フェーズ間の循環と学習を意図した構造になっています。

このループによって、次のような状態が実現されます

  • “壊れないこと”を前提にせず、壊れてもすぐ直せるプロダクト
  • リリーススピードを落とさず、品質と信頼性を維持
  • E2Eを通じて全社が品質を“共有する”体制

DevOps体制としての拡張的な取り組み

Sun*ではE2E自動化を中心に据えつつ、以下のような要素とも組み合わせ、より信頼性の高いDevOps体制を実現しています。

CI/CDパイプラインの構築と自動化

  • GitHub Actionsを用いたビルド・テスト・デプロイ自動化
  • プルリクエスト単位でのテスト実行と自動マージの仕組み

IaC(Infrastructure as Code)の活用

  • Terraform / Ansibleなどを用い、開発・検証・本番の構成を統一
  • 「テストが通った構成のまま本番へ」→環境差異によるトラブルを排除

Observability(監視)の統合

  • DatadogやPrometheusにより、システム内部のメトリクス・ログも可視化
  • E2Eと内部監視を両輪とした、多層的なモニタリング体制

チーム横断の連携体制

  • QA・開発・SREが同じ視座でテスト設計に関与
  • DevOps=ツール導入ではなく、チーム文化としての“改善サイクル”の実装

DevSecOpsの導入も検討・試行中

  • 脆弱性スキャン(SAST/DAST)や依存ライブラリ検査なども自動化し、
  • セキュリティ面でも「変更に強い基盤」へと進化中

信頼性は、プロセス設計から始まっている

E2Eテストの自動化は、単なるQA効率化ではありません。
それは、「ユーザーが安心して使えるサービスを継続的に提供する」という、プロダクトチームの根幹に関わる取り組みです。
Sun*では、Playwrightを活用したE2Eテストを起点に、CI/CD・監視・IaC・セキュリティを有機的に組み合わせたDevOps体制を築いています。
“壊れない”のではなく、“壊れてもすぐに気づけて直せる”
そんな信頼性の高いプロダクト開発を、今後も推進していきます。

自社に合わせた最適なテスト戦略をお考えでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。

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