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推し活アプリ『Banamee』で探るAI時代のコミュニケーション

推し活アプリ『Banamee』で探るAI時代のコミュニケーション
AIUI/UXデザインアプリ開発
業界: 情報・通信
株式会社KDDIテクノロジー

開発支援事例:株式会社KDDIテクノロジー

チャットや通話機能で推しのAIと特別な会話が楽しめるアプリのPoC

“推し”の AI と 1 対 1 で会話できる。 KDDI 社が企画した「 Banamee 」は、 AI 時代の新たなファン体験を創造するコミュニケーションアプリです。シンプルなチャットだけでなく、まるで本人と話しているかのような音声通話も可能で、会話履歴は AI に記憶され、使うほどにパーソナライズされていきます。生成 AI による IP の無断利用が課題となる中、 公式 IP を健全に活用するこの先進的な挑戦に、 Sun* は開発パートナーとして参画。 KDDI テクノロジー様主管のもと UI/UX 設計とスピーディな開発、生成 AI との連携を一体で推進し、要件定義からローンチまで、約3ヶ月という短期間で、この革新的な概念実証(PoC)を実現しました。


 

3.5兆円市場に向けたAI時代の実証実験

近年、日本では「推し活」が大きな経済現象となっており、2025年の調査によると、推し活人口は約1,384万人、年間支出は約3.5兆円に達するとされています。ファンがアイドルやキャラクターと日常的につながりたいと願う一方で、生成AIの普及に伴い、著作権侵害やキャラクターの無断利用といった課題も懸念されています。

こうした背景のもと、KDDI社は、AIを活用して推し活体験をデジタル化しながら、IPコンテンツを適切に保護することを目的とした新規事業の概念実証(PoC)として、「Banamee」の企画に着手。IPを健全に活用するビジネスモデルを検証するPoC(概念実証)として、短期間で生成AIを活用したアプリを開発することが課題となっていました。

 

AIコミュニケーションアプリ「Banamee」とは?

「Banamee」は、“推し”のアイドルを模したAIと、1対1でリアルなコミュニケーションを楽しめるアプリです。シンプルなチャットはもちろん、まるで本人と電話しているかのような体験ができる音声通話機能も搭載しています。
アプリの対話機能は、OpenAI社のChatGPT(大規模言語モデル)が活用されています。会話内容はAIに記憶(コンテキスト)として蓄積され、過去のやり取りを踏まえることで、ユーザー一人ひとりにパーソナライズされた応答が生まれます。
また、ファン活動を支えるためのUI/UXにも工夫が凝らされています。推しAIとの対話履歴が見やすいチャット画面や、ワンタップで通話に切り替えられる直感的な操作性を実現。さらに、アプリ内で推しの情報を答えてくれる仕組みを備え、日々のファン活動をデジタルで包括的に支援します。

KDDIテクノロジー - 推し活アプリ「Banamee」

 

成功を支えたパートナーシップと開発体制

プロジェクトの初期段階から、両社で相互理解を深めるためにコミュニケーションを重ね、将来のビジョンや課題意識を共有。信頼関係を築きながら、要件定義・AI設計・デザインの検討を行い、短期間で機能の実装と検証を進めていきました。
Sun*の日本チームは、ファンの視点に立ったUI/UXデザインを、そしてベトナムの開発チームは技術実装をスピーディに進め、デザインと開発が一体となってプロジェクトを推進しました。

開発体制
総勢12名からなる開発体制

 

 

3フェーズで進めたPoCプロジェクトの流れ

構想検討と要件定義

急成長する推し活市場や生成AIの動向を分析し、コンテンツ著作権の課題とユーザー体験のニーズを整理したうえで、正規のIPデータを活用したAIチャットアプリのPoC方針をディスカッションを通じて策定。その後、機能スコープやリスク、スケジュールを明確にし、限られた期間内でPoCを完了させるための計画を立案しました。

デザイン・AIチューニング

Sun*のデザインチームがファンと推しの世界観を感じられるデザインを作成し、チャット画面や通話画面の操作性を設計。また、OpenAIのChatGPTを用いて推しのキャラクター性を再現するAIモデルを構築。両社でタレントデータベースやNGワード集を作成し、長期記憶・短期記憶の管理を工夫。VoIP通話の品質やAI応答の自然さを検証し、ユーザーごとに会話履歴を記憶する設計を進めました。

実装とリリース

Sun*ベトナムチームがFlutterでアプリを実装し、チャット・音声通話・ニュース通知機能を搭載。セキュリティ対策やパフォーマンス最適化を実施。両社でユーザーテストを実施しながら、AIの応答品質やUIのわかりやすさに対するフィードバックを反映。短期間でβ版をリリースし、ユーザーから初期反応を収集。短期開発でのリリース可能性と技術的課題を確認しました。

 
 

IPコンテンツ保護とファン体験向上へのロードマップ

限られた予算とスケジュールのもと、プロジェクトは要件に沿ってウォーターフォール型で進行。同時に、緻密なAIチューニングと予期せぬ事態への柔軟な対応力が求められました。

アプリの根幹をなすAIの精度、特に推しのキャラクター性を再現するために共同でタレント情報のデータベース化や不適切な発言を防ぐNGワード集の作成、会話の文脈を自然に保つための「長期記憶」と「短期記憶」の分離といった工夫を重ねました。

さらに、開発中にAIモデルを変更するという方針転換が生じた際も、開発チームは柔軟かつ迅速に対応。関係各所と密に連携することでプロジェクトを遅延させることなく最短期間でのリリースを実現しました。
今回のプロジェクトで培った連携を基盤に、今後も技術とデザインの両面から、同社のIPコンテンツの新たな可能性を追求する価値創造を支援してまいります。