開発支援事例:株式会社原田伸銅所
1952年創業の原田伸銅所は、進化を続ける社会を「りん青銅」で支える中堅企業です。りん青銅は、人間の身体に例えるなら血管のような役割を果たす金属であり、スマートフォン、PC、電子機器やICカードなど、IT分野では欠かせない素材です。近年、5G通信を基盤とするIoTやEV車、自動運転の普及に伴い、需要が拡大しています。これまで製造管理の中枢を担っていたシステムは、既存のパッケージシステムをカスタマイズして対応していましたが、需要の拡大に伴い、生産の効率化と働き方改革を実現するためにシステムの刷新を決断。スクラッチによる開発を上流〜下流まで、Sun*の日本とベトナムのチームが一気通貫で支援いたしました。
クライアントの課題
既存システムでは対応しきれない、独自の受注生産フロー
原田伸銅所では、既存の国内ERPパッケージシステムでは自社の業務フローに十分対応できず、とりわけ生産管理領域において属人化が進んでいました。
同社の生産工程では、1つのロットに対して複数の仕様や納期条件が紐づくことも多く、それらをどのように組み合わせて最適な生産計画を組むかが重要になります。しかし、その判断は長年、特定の担当者の経験や勘に支えられてきました。結果として、業務の継続性や効率、部門間連携の観点で大きなリスクを抱えていたのです。
さらに、新たな基幹システムとしてSAP Public Cloudを導入するにあたっては、Clean Core戦略の実現に向けて「Fit to Standard」を前提とする必要がありました。一方で、生産管理は同社の競争力を支える重要領域であり、標準機能だけで置き換えることは現実的ではありませんでした。標準化と独自性の両立が、大きなテーマとなっていました。
課題に対するSun*の対応
Sun*が現場に最適化した生産管理システムを構築し、SAP Public Cloudと疎結合で接続
Sun*は現場へのヒアリングを重ね、既存業務に最適化したスクラッチ開発による生産管理システムを提供しました。属人化の解消と業務の見える化を進めるとともに、SAP Public Cloudとの連携を視野に入れた全体最適を支援しています。
特長は、従来型のアドオン開発ではなく、コアシステムに手を入れないサイドバイサイド拡張を採用したことです。先行して開発していた生産管理システムを活かしながら、SAP Public Cloudとは疎結合で接続。標準化すべき協調領域はSAP Public Cloudに任せ、競争優位の源泉である生産管理領域は独自システムで支えることで、現場最適と全体最適を両立しています。
また、業務システムでは見落とされがちなデザインの観点にも着目し、現場と伴走しながら、実務に根ざした柔軟で実用的なUI/UXの実現も重視しました。
開発体制

クライアントの声
『本気で課題に挑む人たちと、事業を通して社会にポジティブなアップデートを仕掛けていくこと』をミッションとするSun*さんは、企業の課題に対して真摯に耳を傾け、高い理解力と分析力、自らの都合に依らない適切な提案力を遺憾なく発揮してくれました。そのおかげで、難解な局面も無事に乗り切ることができました。また、開発期間中のビジネス変化にも迅速に対応いただき、期待以上のシステムが完成しました。ミッションを体現する人たちとの出会いに感謝しています。

画面左から、牟田 昭則氏、情報システム部 システム開発課 兼 システム管理課 課長、小山 晋介氏、人事総務部 情報システム部 取締役
小林 邦義氏、情報システム部 システム管理課 兼 システム開発課、Sun*長田 拓也
クライアントインタビュー
SAP Public Cloud時代の“現場に強い”生産管理へ
原田伸銅所がSun*と挑んだ、属人化を脱する次世代システム構築
原田伸銅所では、独自の受注生産フローに既存システムが対応しきれず、生産管理業務のブラックボックス化と属人化が課題となっていました。そこでSun*は、競争優位の源泉である生産管理領域に着目し、現場に最適化した生産管理システムをスクラッチで開発。さらに、新たな基幹システムとしてSAP Public Cloudを導入するにあたり、先行して構築していた生産管理システムを活かしながら、SAP Public Cloudとサイドバイサイドで疎結合に接続するアーキテクチャを実現しました。
標準化すべき領域はSAP Public Cloudの標準機能を活用し、現場の強みが表れる生産管理領域は独自システムで支える。コアに手を加えず、それぞれの役割を明確に分担することで、将来的な変更にも柔軟に対応できる次世代基幹システムの構築を進めています。
本プロジェクトについて、原田伸銅所 情報システム部 取締役の小山様にお話を伺いました。

Sun*が先行して開発した生産管理システムを起点に、SAP Public Cloudと疎結合で連携することで、現場最適と全体最適を両立
導入背景
── 生産管理システムの導入背景や目的について教えてください。既存のパッケージシステムではフィットしなかったと伺っていますが、どのような課題があったのでしょうか。
小山:もともと既存のPKGシステムの導入時点では、生産管理システム自体を活用するつもりはありませんでした。ただ、当社の生産工程はかなり属人的で特殊です。お客様の受注は、1つのロットに対して3件、4件、時には8件もの仕様が紐づくことがあります。それをどう効率よく組み合わせるかは、経験と勘に頼る部分が大きかったのです。
それぞれのスペックや納期を見ながら最適な組み合わせを導き出すのは、まさに担当者の“職人技”でした。一方で、そのやり方は特定の個人に依存する部分が大きく、担当者が休んだ場合や異動した場合にどうするのかというリスクも抱えていました。
完全に機械化することはまだ難しいとしても、検索条件の整理や情報の見える化によって判断を支援し、属人化を脱却してチーム全体で判断できるようにする。それが今回のプロジェクトの大きな目的でした。
属人化・工程管理の課題
── 属人化は特に大きなテーマだったのですね。実際、どのような影響がありましたか。
小山:実質1名の担当者が全体を見ていたため、その人が休んでしまうと業務全体が止まるリスクがありました。一方で、お客様からはジャストインタイムでの納品が求められますし、当社は流通を通して納品するケースも多くあります。そのため、流通側が在庫を持ってくれないと、急な依頼に柔軟に対応することが難しい状況でした。
営業部門と生産部門の間でやり取りはあるものの、アバウトな生産見込みをもとに動いていたため、緊急対応や納期調整はどうしても属人的になってしまっていました。だからこそ、生産状況や物理的な負荷を可視化し、全社的に調整判断ができる状態をつくる必要がありました。
たとえば、特急対応をすればその分ほかのお客様の納期に影響が出る。そうしたことが見えるようにならないと、営業側も判断できません。対応の温度感が担当者によって変わってしまうからこそ、客観的な情報を共有できる仕組みが必要だったのです。
システム選定の判断軸
── 当初は既存のPKGシステムでの対応も検討されていたとのことですが、最終的にスクラッチ開発を選ばれた理由を教えてください。
小山:もともとレンタル業向けに開発されたPKGシステムをカスタマイズして導入しようとしていたのですが、正直かなり無理がありました。データベースの構造も当社の業務にはまったくマッチしておらず、必要なデータを引き出すだけでも相当苦労していました。
そうしたなかで、Sun*さんとの最初のやり取りの中で、「本来ならデータを取り出すためのAPIや仕組みを設けるべきです」といった技術的な助言をいただきました。その考え方が非常に納得感のあるもので、「この会社なら任せられる」と感じたことが、選定の大きな理由になりました。
パッケージに合わせて無理に業務を変えるのではなく、現場にフィットした形でシステムを構築する。その方向性が、自社にとって最適だと判断しました。
SAP Public Cloudとの疎結合アーキテクチャ
── 今回の取り組みでは、SAP Public Cloudとの連携も大きなポイントだったと思います。どのような考え方で全体像を設計されたのでしょうか。
小山:新しい基幹システムとしてSAP Public Cloudを導入するにあたっては、標準化できる領域はできる限り標準機能を活用する、いわゆる「Fit to Standard」の考え方が前提にありました。一方で、生産管理は当社の競争力そのものに直結する領域です。そこを無理に標準化してしまうと、現場の強みまで失ってしまう可能性がありました。
そのため、もともとSun*さんが開発していた生産管理システムを活かしながら、SAP Public Cloudとは疎結合で連携する形を選びました。コア側には手を入れず、必要な領域だけをサイドバイサイドでつなぐことで、将来的にどちらかの変更が発生しても柔軟に対応しやすくなると考えました。
結果として、標準化すべき部分はSAP Public Cloudで効率的に運用し、現場の強みが表れる生産管理領域は独自システムで支えるという、役割分担の明確な構成にできたと思っています。

導入効果と現場の反応
── 実際にシステムを運用してみて、どのような変化を感じていますか。
小山:属人化の脱却については、明らかに前進していると感じています。もちろん、まだ全社展開が完了しているわけではありませんが、フェーズごとに開発・導入を進めており、現在は製造部門での利用を中心に進めています。
まずは製造部門でしっかりと基盤を固め、そのうえで営業部門の要望も吸い上げながら反映していきたいと考えています。特にUI/UXについては、現場でより使いやすいものへと改善できる余地がまだあります。今後も、現場の声を取り入れながら磨き込んでいきたいと思っています。
今後の展望・人材活用
── 今後の展望について、人材活用の観点からもお聞かせください。
小山:実は、ベトナムの方を中心に海外人材も一部受け入れています。Sun*から採用したスタッフの中にも非常に優秀な方が多く、日本語のレベルも高い。技能実習生とは異なる形で、自社のシステム内製化を担う人材として活躍してくれるメンバーもいます。
また、高専卒の新卒人材を採用し、社内支援のもとでITの専門学校に2年間通ってもらい、IT人材として育成する取り組みも行っています。現場とシステムの両方を理解できる人材を育てることで、ベンダー任せではない、よりスピーディに改善できる体制を整えていきたいと考えています。
まとめ
原田伸銅所の取り組みは、生産管理システムの刷新にとどまらず、SAP Public Cloudを中核に据えながら、競争優位の源泉である生産管理領域においては、先行してSun*が開発したシステムを活かし、疎結合なアーキテクチャによる全体最適を目指したものです。
Sun*はそのパートナーとして、現場の業務に丁寧に向き合いながら、属人化の解消や業務の可視化、さらには内製化につながる仕組みづくりをご支援してきました。今後も、原田伸銅所様の現場に寄り添いながら、持続的な業務改善と次世代システムの進化をともに推進し、長期的な成長をご支援してまいります。
