開発支援事例:SOMPO Light Vortex 株式会社
2025年3月末、滋賀県彦根市で開催された地方創生をテーマにしたイベント「滋賀 FUTURE THINKING WEEK」 。その一角で、子どもたちの創造性がテクノロジーと出会う、特別な体験型アート展示が生まれました。10日間で約2,500人が来場したこのイベントで、Sun*は子どもたちがAIとのポジティブな初対面を果たすためのAIアート体験ブース、生成AIとつくる「びわこ未来パーク」の企画から実装、運営までを一気通貫で担当しました 。
本プロジェクトは、SOMPO Light Vortex(SLV)社との協業によるものです。Sun*は、SLVのバリュー クリエーション ユニット(VCU)の活動体メンバーとして参画 。保険の枠を超えて顧客課題を解決するこの新しい枠組みの中で、最終クライアントであるトヨタ・コニック社、そして滋賀の地域社会に貢献することを目指しました。
コンセプトは「AIとともだちになろう!」
プロジェクトの核心にあるのは、「AIは怖くない、自分の可能性を広げてくれる”ともだち”なんだ」というシンプルなメッセージです 。子どもたちにとってのAIに触れるファーストタッチが、驚きと楽しさに満ちたポジティブな記憶になるよう、Sun*で「びわこ未来パークをつくろう!」という体験をデザインしました。このコンセプトをより地域に根差したものにするため、私たちは現地調査を徹底しました。

まず、琵琶湖博物館を訪れ、固有の生物や地形について学習。その学びを背景デザインや世界観に反映させ、滋賀らしさをクリエイティブに落とし込みました。
展示会場では、原寸大のペーパープロトタイプを用いて検証。子どもたちの目線に合わせたモニターの高さや、使いやすい椅子・テーブルのサイズをミリ単位で調整し、没入感のある空間を作り上げました。
子どもたちのAI体験フロー

この体験では、まず子どもたちがタブレットを使い、想像を膨らませて理想の「びわこ未来パーク」の絵を自由に描きます 。絵が完成すると、次にその絵が「いきもの」や「のりもの」といったどのカテゴリに属するかを選択し、生成AIに絵の内容を伝えます 。この情報をもとに、AIが絵に合わせたオリジナルのストーリーと動きを加えて映像を生成し、子どもたちの描いた絵に命を吹き込みます 。最後に、完成した映像は会場の大きなモニターに映し出され、自分や他の子どもたちの作品が動き出す様子を楽しむことができます 。
テクノロジーとクリエイティブの挑戦
子どもたちの描いた絵がスクリーンで動き出す。このユニークな体験は、デザイナーとエンジニアの様々な挑戦とこだわりが詰まっています。
技術的な挑戦
「絵」を壊さずに「命」を吹き込む
最大の課題は、子どもたちが描いた絵のタッチや温かみを「そのまま崩さずに動かす」ことでした。多くの生成AIは独自の解釈で絵を”綺麗”に作り変えてしまうため、元の絵の個性を活かすことができません。私たちは、画像生成AI “Runway”とストーリー生成AI “Claude API”を組み合わせ、プロンプトの試行錯誤を幾度となく重ねることで、この課題を乗り越えました。

UXのこだわり
待ち時間さえも楽しい体験に
AIが約1分間の動画を生成する間も、子どもたちを退屈させません。キャラクターが「この発想ユニークだね!」といったポジティブなフィードバックをくれたり、琵琶湖に関する豆知識が表示されたりと、待つ時間さえもワクワクする体験の一部として設計しました。
空間デザインの工夫
段ボールが生み出す特別な空間
展示ブースの什器は、環境にも配慮し段ボールでオリジナル設計。一枚の大きなモニターを段ボールの枠で巧みに分割することで、複数の映像が動いているかのような演出を実現しました。子どもたちが使うiPadのカバーに至るまで、世界観を統一するための工夫を凝らしています。

アジャイルなチームが生んだ
成果と未来への展望
企画から開催まで約3ヶ月という短期間での成功を支えたのは、デザイナーとエンジニアが初期から一体で臨んだアジャイル開発体制です 。この緊密な連携が子どもたちを夢中にさせる体験を生み 、10日間で677件 、週末には1日で122件もの作品が誕生するという 、予想を大きく上回る成果につながりました。






今回のプロジェクトで得られた知見を活かし、Sun*はこれからも変わらず、職種の垣根を越えた共創とユーザーへの深い共感を通じて、世の中にポジティブなインパクトを与える新たな価値創造に挑戦し続けてまいります。
「リアルとデジタルを融合させた新しい顧客体験を創りたい」「テクノロジーを活用して地域を盛り上げたい」といったご要望がございましたら、企画の構想段階からでも伴走いたします。どうぞお気軽にご相談ください。
