【イベント】スタートアップ/新規事業の「壁」の越え方

スタートアップ・新規事業に関わる人たちのコロナ時代の成長戦略

スタートアップ/新規事業の「壁」の越え方

Event Report

チーム提案型開発

Startup Studio

オープンイノベーション

開発分野: IT・通信


イベント概要


新型コロナウイルスが世界で蔓延する中、経済活動の停滞は、スタートアップや新規事業に関わる人たちに対しても例外なく影響を与えようとしています。資金調達をしたスタートアップや大企業において進められている新規事業も、このような状況下においても限られた時間で成果を出すことが求められます。
そんな中、創業以来、スタートアップや新規事業の「価値創造」を共創していくことをミッションとして掲げてきたHandsOnとSun*で、これまでの経験と実績をもとに、歩みを止められないスタートアップ、新規事業担当者に向けたオンラインセミナーを行いました。
資金調達や予算取りをしたあとに立ちはだかる成長の「壁」に対して、先人達はどのように乗り越えてきたか。実例の紹介を交えたパネルディスカッションの内容をご紹介します。

プロダクト設計の壁

本イベントはオンラインにて行いました。

新規事業におけるプロダクト設計のポイント

少ない資金での選択と集中

 -「コロナ影響による課題の収束」
 -「今が事業チャンスと言う捉え方もある」


中野:スタートアップもエンタープライズも、プロダクトの設計については様々な壁があるので、色々盛り上がりそうなテーマですね。僕もエンタープライズで9年、スタートアップで10数年やってきているので、過去を振り返ると色々ありました。

「少ない資金での選択と集中」というテーマでいうと、特にスタートアップスタジオをやっているSun*はたくさん相談を受けていると思いますが、今のトレンドや、コロナ以前と以後で生じた違いなど、ありますでしょうか?

船木:そうですね。Sun* では120個くらいのプロジェクトが並行して動いていて、ある種、日本におけるスタートアップ・新規事業立ち上げの縮図のようになっている部分があると考えています。またその分、そこにトレンドも反映されているように感じています。

そこでのニーズを聞くと、コロナ以後ではフードテックや「娯楽を届ける」というところに課題を感じ、解決しようとしているプレイヤーが増えている印象です。これ自体は良いことですが、多様な課題について話を聞いていた頃に比べると、今はそれらがコロナの影響による課題に収束していっているように感じます。

中野:なるほど。岩田さん、エンタープライズだとコロナの影響はどうでしょうか。

岩田:コロナの影響はかなり出ていますね。我々のタクシー業界では稼働台数が半分以下になっているので、そのまま売上も半分以下になりました。アフターコロナの「移動」がどういったものになるのかというところは、我々もテーマとして考えています。

日本交通でフードデリバリーを始めてみたり、今のニーズにどれだけ迅速に答えられるかというところは経営陣やマネージャーの間ですごく話し合っています。事業チャンスという捉え方もあるので、突破口を探しています。基本的には完全な回復は難しい中で、事業そのものは見直すポイントとして考えています。

中野:自分はこの状況にある種のデジャブを感じています。以前、所属していた会社でライブドアショックやリーマンショックを経験して、株価が98%オフくらいになりまして、上場した後に上場廃止を検討したことがありました。そのときに出会ったのがサブスクリプションというSaaS型のモデルだったので、昔味わったことを今またどう乗り切るかというのは検討しているフェーズです。

新規事業におけるリソースの活用方法

 -「助成金や銀行からの借り入れも、昔に比べると簡単」
 -「プロダクト設計初期に重要な論点」


中野:スタートアップ、エンタープライズどちらのシーンにおいてもコロナの前後では劇的なゲームチェンジが起こるのではないかというところで、共通して話題になるところは「資金」ではないかと思います。

新規事業においてプロダクトを作るときに、「お金がかかる」というのは当然と思いがちですが、エンタープライズとスタートアップでそれぞれどういう状況下でリソースを使っていくのかは、しばしば話題になるかと思います。

特にHandsOnでは、「資金がないからモノが作れません」という話は結構聞くんですが、「意外と少ないお金で回せるところは回せるのでは」というケースもあります。それでいくと助成金や銀行からの借り入れも、昔に比べると簡単に調達できるようになっていると思います。その資金の中でガチガチのプロダクトを最初に作っていくのかどうかという議論もありますが、例えばJapanTaxiでいうと、最初にアプリを作ったときはどうだったのでしょうか?

岩田:やはりプラットフォームなので、最初はどういうコストバランスでマーケティングを行っていくかというのは議論になりました。呼べる車がないとお客さんが来ても仕方がないし、タクシー会社からしても「アプリを導入したものの使うお客さんが来ない」という状況にもなりかねないので、そこのバランスはプロダクトの設計段階で論点になっていましたね。

中野:ちなみに、Sun*の場合は新規事業やプロダクトを作る時はお客様から相談を受けてからスタートするパターンが多いと思いますが、それらは最初、どのような状態で持ち込まれることが多いですか?

船木:そこは千差万別ですね。IT部分のプロダクト経験者という人もいれば、そうでない人もいます。また、「全く違うインダストリーからの既存アセットを使って、DXの文脈で新しい価値を作れるか」というご相談もあれば、「こんなアセットがあるんですが、どういった価値づけができますか?」というご相談もありますね。

柔らかい部分のご相談から、より具体的にリサーチをどうしていくか、PMFの手順をどこからどう進めていくかを、僕らの知見をもとにディテールのところで手伝っていくというイメージですね。

組織体制がシステムに反映される

 -「チームのルールや座組が決まった時点で、事業の成功確率が決まってくる」
 -「チームにおける共通認識が重要」


中野:それぞれお話いただいたことを踏まえて、プロダクト設計におけるコツや、プロダクトを作る上で、苦い思いをしている人としていない人の差として感じるものなどありますか?

船木:自身でスタートアップを起こした経験から言うと、「コンウェイの法則」ですね。組織体制というものが、そのままシステムに反映されるという法則です。複雑な組織であれば複雑なシステムが生まれ、シンプルな組織であればシンプルなシステムが生まれる。あるところに依存するような組織であれば、そういったデータに依存するようなシステムが生まれる。これは非常に真であると思っています。

新規事業の立ち上げにおいては、他の組織への依存や、自分たちでドライブできないところに依存していくことがそのままリスクとして跳ね返ってきます。組織のあり方として、どういったところと連携し、どういったルールの中で運用していくかがそのままシステム、あるいはサービスに反映されます。極端な言い方をあえてすると、チームやルールを作って、どういう座組でやっていくのかが決まった時点で、事業の成功が決まってくると感じています。


岩田:僕はチームにおける共通認識がすごい大事だと思っています。プロダクト設計の基本的な構造として「事業のコンセプトにおける顧客、ターゲットが誰なのか」が一番目にあって、「彼らに対してどういう価値を提供するのか」が二番目にあって、三番目に「どうやってそれを提供するのか」があると思っています。そこの認識がみんなの中でずれてくると、それぞれが違う方向に行ってしまい、成功確率が下がるというのを体験的に感じています。

中野:それは僕も強く思いますね。最近、プロダクト設計をしていて思うのは、スタートアップに関して言うと「なんでもやっちゃう問題」というのがあって、とりあえずお客さんが言うことを全部やって、何でも盛りだくさんにしてしまうという問題です。そして、エンタープライズに関して言うと「とやかくなんでもできない理由問題」というのがあって、とりあえずできない理由を並べてストップしてしまう問題です。「とりあえずやってみればいいのに」と思いながらもなかなか進まないという状況になったりします(笑)

プロダクト開発の壁

新規事業に失敗しないために意識すべきこと

プロダクト設計の成功確率を高める方法

 -「作らないものを決める」
 -「データベースは初期から時間かけて設計を」


中野:プロダクトとか価値って、シンプルな方がいいじゃないですか。プロダクト設計の一番の成功確率を高める方法として、「作らないものを決める」のはやったほうが良いと思います。

プロダクトを作るときに、経験値のある人だと「薄い層」を入れるケースがあります。たとえば、プロダクト設計をしているときに、データベースのモデル層があって、コントローラというメインの処理するところがあって、ビューというレンダリングする層があって、そこに薄い層が一枚入っていると後で色々取り回しがきいたりします。そういうところを入れているかいないかで、これまで何回かプロダクト設計を経験しているかいないかを感じるところはありますね。また、データベースで言うと、ユーザーID移行問題やDB統合問題はエンタープライズだとよく聞きますね。

岩田:そうですね。本当にデータベースだけはきちんと最初から時間かけて設計したほうが良いです。リプレイスとかリファクタリングにおいても最もいちばん大変なところです。アプリケーションレイヤーとかは書き直したりできますが…。

こういうところの設計の大切さはとても強く感じています。予測した設計はむずかしいですが、柔軟性、今で言うマイクロサービスなど、そういった設計を取り入れていくのは必要だと思います。

中野:そうですね。データベースの統合問題で言うと、素人に毛が生えた人が作っても最初の方は動いてしまうという場合がありますね。数百、数千のレコードだとあまり問題が発生しないのは当たり前で、レコードが数万とか数千万になると、とたんに性能が劣化して使い物にならなくなるという話もよくありますね。

岩田:スタートアップはリソース不足だとは思いますが、プロダクト開発においては「絶対にやるべきこと」を決めておくべきですね。後々のリソース効率を考えると、1,2年後必ず回収できるので、リーダーとしてそういったポイントは決めておく必要があると思います。

プロダクト開発における失敗パターン

 -「拙速で作ろうとしてしまう」
 -「中途半端なチーム編成にしてしまう」


中野:Sun*の中で、新規事業やプロダクト開発において失敗するパターンで、一番多く目にするものはなんでしょうか?

船木:拙速で作ろうとするときですかね。マーケットにエンジニアがおらず、採用できない中で、俯瞰視点でプロダクト設計をする人がいないまま、ある種の信頼関係だけで0.5人月であったり、フルコミできない人に、目的ベースの対話でなく「こんな機能欲しいんだよね」という機能だけ伝えて作ってもらうパターンです。この場合、中長期での目的が伝わったチームではないために、後で身動きがとれないようなプロダクトになってしまう、というのが、よくSun*に相談が来るプロジェクトです。

岩田:なるほど、ドキュメントもないようなパターンですかね?

船木:そうですね。「ソースコードが仕様です」というパターンです(笑)

中野:それはありますよね。僕が大手企業をお手伝いしている中でよく目にする失敗の原因としては、組織の問題が大きいと思っています。なので新規事業をやる時には、向こうの経営者や決済権を持っている方に「神隠しにしてください」と伝えます。やはり、新しいことをやるという変化に対して対応できない人が周りに多いと、できない理由を並べられて、なかなか進められないというパターンが多いので、「本気でやるのであれば、5人位の最小チームを神隠しにして専業にさせてください」というお話をすることが多いです。

合意形成の壁

新規事業・プロダクト開発における予算との向き合い方

事業の撤退基準を見据える

中野:僕の感覚だと、プロダクトを作るためのバジェットとしては3,000万円位のイメージですね。初期に3,000万円かけて、1年半で回収して損益分岐点を超える事業だったらGOです。

事業会社も当然そうなんですが、撤退ラインも含めてマイルストーンを設定して、KPIのゴールを超えられているかで見ています
目標に対するパーセンテージが未達だった場合は、次の月から何十%コストカットで、それが続いたら凍結、みたいな感じにしています。そもそもの撤退基準を一番最初に作っておいたほうが良いですね。

船木:そうですね。それは重要ですね。

岩田:結局そこでしょうね。その場合も、絶対額を決めるというよりは、収益モデルやコスト構造によるのかなと思います。そこがきちんと説明できれば、後は会社のバジェット次第ですね。

経営層を納得させるコツ

中野:そうですね。できるだけコストを掛けたくないという心情が当たり前だと思いますが、ちょっとずつ知見をためて、実現妥当性がわかるデータまで作った上で経営者と話すのが良いかなと思います。

岩田:そうですね。妥当なラインの金額感はその会社を経営している人が一番わかると思います。

船木:エンタープライズの場合、新規事業を立ち上げるポイントでP/Lを見ると、ほとんどの場合、既存事業に比べて誤差の範囲くらいの数値なので、「どうでもいいわ」となってしまうケースもありますね。なので、新しい価値を生み出すという視点でいくと、B/Sも見ていく必要があるという話は結構しますね。

中野:そのくらいの会社になると、「教育費として出してください」っていう言い方もありかもしれないですね(笑)

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