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DESIGN TREND Picks #5

更新日: 2025年12月12日

DESIGN TREND Picks #5

こんにちは!
Sun*デザインチームです。

こちらの記事では、公式Xでご紹介したトレンドをいつでも振り返ることができるよう、いくつかの内容をまとめてお届けします。

本記事が、時代の潮流を捉え、日々の業務に活かすためのヒントとなれば幸いです。

ニューロダイバーシティを考えたデザイン

「ニューロダイバーシティ」とは、脳や神経に由来する個人レベルの特性の違いを尊重しようとする考え方のことです。

 

ニューロダイバーシティはなぜ求められている?
ユーザー一人ひとりの「体験」を最大化するために、ニューロダイバーシティの考え方が求められるようになりました。

現在では、世界人口の約15〜20%が自閉症やADHD、ディスレクシア(読字障害)といった神経的特性を持つと言われれており、コミュニケーションの得意・不得意や、集中力のあり方、感覚の敏感さなどに認知特性の違いが表れます。その多様性に配慮したUI/UX設計を行うことで、すべてのユーザー体験の改善につながると考えられています。

 

ニューロダイバーシティに向けたデザインアプローチ
多様なユーザーの課題を解決するために、以下のアプローチが効果的だと考えられています。

  • 情報の構造化
    シンプルで直感的に操作できるデザインによって、明確に階層化して情報を整理し、グラフィックを活用して理解を助けます。
  • 視覚的な明瞭性
    適切なコントラストや強調表現によって、重要な要素を明確化し、視覚的な手がかりを提供します。
  • カスタマイズの可能性
    ユーザーのニーズに合わせて、文字サイズや色の変更、音声案内のオン・オフのオプションを設けます。
  • 感覚的刺激への配慮
    過剰なアニメーションを避け、確認やエラーメッセージを視覚と音声の両方で提供します。

 

取り組み事例

  • 事例1:Microsoft Inclusive Design
    Microsoftが提供するデザインガイドライン。認知・視覚・聴覚・身体など多様性を考慮した設計原則が整理されています。

    出典元:Microsoft Design

 

  • 事例2:Netflix
    Netflixの字幕フォント・サイズ・背景色は、自由に調整することができます。音声ガイドや複数言語にも対応していて、ユーザーごとにカスタマイズ可能です。

    出典元:Netflix

デザイナーからひとこと
ニューロダイバーシティへの理解を深めることで、誰にとってもやさしく、使いやすいプロダクトづくりにつながると感じました。

情報の伝え方やカスタマイズの柔軟性といった工夫を積み重ねて、多くの人々がストレスなく使えるデザインを目指していきたいと思います。

財布→スマホ→そして何も持たない時代へ

体験に溶け込む決済
支払いの方法は、現金からカード、スマホ決済へと進化してきました。そしてこれからは、「意識して操作する行為」から、「日常に溶け込むもの」へと変化していくと考えています。声や視線、顔認証といった技術により、決済は意識せずに完了する”見えない存在”へとシフトしています。

 

事例1:XRCard──声と視線で操る決済

出典元:Flybits Unveils XRCard With Spatial Banking for Smart Glasses

FlybitsのXRCardは、スマートグラス連携でAIとARを融合した革新的な決済カードです。モバイルアプリ不要で、音声コマンドだけで金融情報にアクセスできます。「今月の食費は?」といった質問にAIが即座に回答し、支出履歴は3D ARで空間に視覚化されます。さらに、請求書をスマートグラス越しに見るだけで割り勘も自動計算できます。声と視覚による直感的な操作で、新しい金融体験を実現しています。

 

事例2:手ぶらで通れる顔認証改札

出典元:大阪駅(うめきたエリア)での顔認証改札機の実証実験で、顔情報登録アプリを提供

大阪・関西万博で注目を集めるのが、大阪メトロの次世代顔認証改札機です。直感的なLED表示と音声ガイダンスで認証状況をリアルタイムに知らせ、手ぶらで通過できるストレスフリーな体験を実現しています。マスクや眼鏡を着用していても安定して認証でき、車いすユーザーから高身長の方まで幅広く対応する、国内の大規模鉄道で初となる、革新的な改札システムです。

 

デザイナーからひとこと
デバイスの進化を目の当たりにして、デザイナーとして常に価値観をアップデートし続ける必要性を強く感じました。スマートグラスでの決済、顔認証だけで通れる改札だけではなく、中国では手や顔をかざすだけの決済が当たり前になってきています。スマートフォンに固執せず、新しいデバイスでのユーザーインターフェースや体験設計を考え続けなければ、気づいたときには出遅れている可能性があります。これからは、様々なデバイスに柔軟に対応し、「どんなかたちで届け、どう受け取られるか」まで含めて体験を設計できるデザイナーが求められるのではないでしょうか。

デジタル詐欺に引っかかったことある?あのダークUXから学ぶ

悪意あるデジタル詐欺の仕組みを分解してみると、人の意思決定を瞬時に動かす高度な“体験設計”が隠されています。詐欺で使われる心理的トリガーは、実はUXデザインでも日々触れている「行動デザインの原則」と近いものです。だからこそ、これらの設計を理解することで、ユーザーを守るUX設計にも活かすことができます。

UX視点で見る「詐欺に引っかかる設計」

  1. タイムプレッシャー(緊急性の演出)
    「今すぐ」「24時間以内」「アカウントが停止されます」といった言葉で緊急性を演出して、ユーザーに冷静な判断をさせない仕組みです。焦りが生まれると、人は深く考えずに行動してしまいます。
  1. 感情の揺さぶり(恐怖・不安・期待)
    恐怖(口座停止)、不安(セキュリティ警告)、期待(高額報酬)といった強い感情を刺激することで、思考を鈍らせ、行動を誘導する設計です。感情は最も強い意思決定のトリガーです。
    出典元:「Facebook公式アカウントが永久停止」DMが届いた。巧妙な乗っ取り手口を知っておこう!, サポート詐欺の偽広告画面の消し方とは?詐欺被害に遭った場合の対処法
  1. 一貫したストーリーテリング(物語の自然さ)
    与えられるシナリオに破綻がないと「自然に信じてしまう」状態に陥りやすいです。恋愛詐欺などがその典型で、メッセージや行動に一貫性があるほど、ユーザーは“本物”だと思い込んでしまうでしょう。
  1. 徐々に情報を開示する(ステップ誘導)
    いきなり重要な情報を求めないのがポイントです。最初は軽い依頼から始まり、その次は小さな同意、そして気づいたら大きな要求へ…という流れで、徐々に信頼を得て行動ハードルを下げていきます。

    出典元:SNS型投資詐欺

 

まとめ
詐欺で使われるテクニックは、ユーザーの意思決定を左右する強力な行動デザインです。しかし、それを悪用するのか、ユーザーを守るために正しく使うかはデザイナー次第。詐欺UXの構造を理解することは、安心感のある導線設計や誤操作の防止、適切な情報開示など、より“安全で信頼できる体験”をデザインするためのヒントになります。

 

デザイナーからひとこと
私たちは日常の中で、デジタル詐欺に対してネガティブな印象を持っています。しかしその裏側には、人の意思決定の仕組みや心理トリガーなど、デザイナーとして学べるポイントもたくさん隠されています。日々プロダクトを使い、無意識に触れているさまざまな体験の中にも、「なぜこんな行動を誘導するのか」「どうしてこれは信頼しやすいのか」といった発見が見つかるはずです。

もちろんマイナス要素もありますが、単に「これは“悪い例”だな」と終わらせるのではなく、「どうすればプラスに転換できるかな?」という視点から考えることで、デザインの幅が広がり、より解像度の高い体験づくりにつながります。

今回このテーマを選んだのは、そうした“日常の中にある学び”に対して、私たち自身がもっとアンテナを張っていけたらと思ったからです。少しでも皆さんの視点の broaden(広がり)につながれば幸いです。

“包む”だけじゃない素材から考えるこれからのパッケージ

「エシカルパッケージ」という言葉を知っていますか?これは、単にリサイクル可能な素材を使うだけでなく、製造工程から使用後の処分方法まで、製品のライフサイクル全体を通してサステナビリティを意識する考え方です。

近年、自然由来の素材の活用や、リユース・リサイクルを前提とした構造設計、過剰包装を避けたミニマルな設計など、あらゆる工程で配慮されたパッケージデザインが増えています。ここでは、そんな思想を体現したユニークな事例を3つご紹介します。

 

事例1:容器のないマスカラ
サステナブルデザインの視点から、パッケージの再定義が進んでいます。中でも注目が集まっているのは、「素材」から発想し、形や使い方を再設計する動きです。
たとえばLUSHの「ネイキッドマスカラ」は、容器そのものをなくし、固形のまま水で湿らせてブラシで塗布する仕様になっています。プロダクトとパッケージが一体化した、新たな製品のあり方を提示していると言えるでしょう。

出典元:プラスチックパッケージを使わない環境に配慮した『ネイキッドマスカラ』

 

事例2:歯磨きペーパー
水に濡らすと泡立ち、通常の歯磨き粉と同じように使える、紙のような歯磨き粉です。容器を必要としないため、旅行やアウトドアでも使いやすく、必要な分だけ持ち運ぶことができます。1枚ずつ使用するため、衛生的かつ環境に配慮された設計です。見た目は紙、使えば歯磨き粉というギャップが、これまでにない体験を生み出しています。
出典元:歯磨きペーパー 株式会社ミヨオーガニック

 

事例3:食べられる包装
海藻を主原料とする、100%自然由来の生分解性の素材を使用しています。食品や入浴剤などの包装に使うことができ、使用後はお湯で溶けたり土に還ったりと、環境に負荷をかけずに自然へと戻ります。
単に“包む”だけでなく、使い終えたあとに消えていくプロセスそのものが印象的な体験としてユーザーの心に残る、未来志向のパッケージです。
出典元:Biopac 

 

デザイナーからひとこと
ノベルティを制作する中で、梱包の形や素材を検討するうちに、パッケージのデザインが体験にどう影響するのか興味をもち、いくつかの事例を調べてみました。パッケージを“届け方のデザイン”と捉えることで、素材の選び方や見せ方が人の印象や行動に影響を与える点に強く惹かれました。これはUI/UXにも通じることで、「どんなかたちで届け、どう受け取られるか」まで含めて体験を設計することの大切さを改めて実感しました。表層的なデザインにとどまらず、仕組みや文脈ごと含めて考える視点として、日々の制作にも活かしていけるのではないでしょうか。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。
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