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Designship 2025 参加レポートVol.3:メインセッションの登壇資料とテーマの裏側を大公開! 

更新日: 2025年10月28日

Designship 2025 参加レポートVol.3:メインセッションの登壇資料とテーマの裏側を大公開! 

こんにちは、Sun*です。
2025年10月11日、Designship 2025のメインステージに、Sun*のサービスデザイン部門Division Managerである石川マーク健が登壇しました。

テーマは「From Physical to Digital: Insight-Driven Service Creation」

従来のUXデザインの枠を超え、新規事業創出において真に価値を生むデザインプロセスとは何なのか。建築家としてのバックグラウンドを持つマークが、2年以上かけて実践と検証を重ねてきた「発散的なインサイト駆動アプローチ」について語りました。

今回は、登壇に至るまでの背景や想い、そしてこれからの展望について、登壇資料とあわせてご紹介します!

なぜこのテーマで登壇したのか?

マークは、「発散的なインサイト駆動アプローチ」というプロセスについて、2年以上前から構想していたといいます。
Sun*ではデザインプロセスに決まった型がなく、プロジェクトごとに自分なりのやり方を模索しています。そのため、以前から参考として「こんなやり方がある」と社内に向けて共有したいと考えていました。

マークなりのデザインプロセスをまとめていたタイミングと、Designshipのテーマである「デザインジャーニー」が重なったことが、今回の登壇につながりました。「自分のデザインジャーニー」を描くために、これまで実践してきたプロセスを振り返ると、考え方に変化があったと感じたので、それを皆さんに伝えたいと思ったと語ります。

デザイナーの価値とは何か?インサイト駆動アプローチが生まれるきっかけ

マークがこのアプローチを考え始めたきっかけは、従来のUXデザインプロセスへの違和感でした。

Sun*では、デザイナーもビジネスデザイナーもエンジニアも、皆が一緒になってプロジェクトを進めます。ビジネス専門の人々がUXの領域にも踏み込んできている今、UXのプロセスは標準化され、デザイナーの立場がだんだん脅かされてきているという危機感があったと振り返ります。

デザイナーの価値とは一体何なのか改めて考えていくうちに、やはりインサイトを作る力が重要だと気づいたのでした。人間を観察する力、共感する力。数字以外のところからインサイトをどう引き上げてくるか。マークは、それが得意なのはデザイナーだと確信しています。

そこから、デザイナーが本当に大事にするべきプロセスやマインドは、今回発表した「インサイト駆動のアプローチ」と「不確実性を恐れないこと」なのではないかと考え始めたのでした。

アプローチの型が見えるまでの2年間の実験と検証

このアプローチがまとまるまで、マークは常に何度も実験を重ねてきました。プロジェクトを実施するたびに、そのプロセスが合っているかどうかを検証していたのです。

とあるプロジェクトでは、インサイトを元にした価値の軸をベースに、どうアイデアを発散できるかを試しました。他のプロジェクトでは、軸をまとめた時に見えてくるコンセプトから方向性を発散するアプローチを取りました。また別のプロジェクトでは、作った軸をどういう順番でプロダクトに反映していくかを重要視しました。

プロジェクトごとに若干の違いがあるため、「こうしなくてはいけない」という固定されたマインドでいるのではなく、何かがうまくいかない時に違うやり方を試してみると、それが思いがけず成功に結びつくと実感していました。

「インサイト駆動アプローチ」は、決まった型ではなく、柔軟性を持った、発散につながる根本的な考え方です。

「インサイト駆動アプローチ」とは?

さてここで、「インサイト駆動のアプローチ」とは何なのか改めて整理します。

従来のUXデザインは、既存サービスの改善には効果的です。しかし、新規事業や新しいサービス・プロダクトの創出においては、その枠組みだけではデザインしきれない部分があります。

そこで辿り着いたのが、ヒトの根本的な欲求から出発する「インサイト駆動アプローチ」です。

  • デザイン思考 = 発散
  • UXデザイン = 収束
  • インサイト駆動アプローチ = 発散と収束のハイブリッド

マークは、建築からデジタルへと自身のデザインのフィールドを広げる中で、より幅広い視点から物事を見るようになりました。システム的な考え方、業務改善系のプロジェクト、コンセプチュアルなもの、デザインする対象の幅が拡がったことで、どのような効果を狙っていくのか、意図も多様になりました。

このアプローチはデジタルプロダクトに限らず、体験設計やブランディングなど、様々な領域で活用できるプロセスです。

仮説を超えるデザインのために重要なことは、不確実性を恐れないこと

今回の登壇で、マークが最も伝えたかったメッセージは、「不確実性を恐れずに探索し続けること」の重要性です。

決まった思考プロセスがあったとしても、探索・追求する力は、デザイナーにしか持てないと考えています。
不確実性を恐れていたら先に進めなくなり、確実性のある中でしか選択できなくなります。それは仮説の中でしか考えることができないということになってしまいます。

仮説の枠を超えるためには、不確実性を恐れずに探索することが大切です。
そのために必要なのが、リサーチとインスピレーションです。

リサーチやインスピレーションを得るにはあらゆる方法手段がありますが、一つ例を出すと、マークは提案書や相手へのヒアリングの中で、やりたいことを表すために用いられている言葉の意味を調べ、深く検討することを大切にしていると話します。

「この言葉はどういうことを定義しているんだろう?」と考えるところから思考を展開し、アイデアを発散していくことが多いです。例えば「この言葉は辞書上ではこのように定義されているけれど、クライアントの資料上では違う思いや意味合いも含まれていますね。だったらこういうこともできますよね」という感じで、思いや要素を拾い上げていくプロセスを取り入れているのだそうです。

マークは、建築に関わっていた時代から変わらずこの姿勢を大切にしてきました。
ユーザーやクライアントへのインタビュー、オフィスを作る際に大事にしてきたことと同じで、キーワードには、必ず相手の思いがあります。それを理解し掬い上げて、それをベースに何ができるかを考えていくことが重要だと考えています。

そして、事前の知識量、リサーチする情報量によって、プロジェクトがどれだけ良くなるかが決まると考えていますし、クライアントの満足度も変わってくると感じていると話します。

登壇までの道のり:伝えたいことを伝える資料と緊張の解放術

登壇の準備は、マークが想像していた以上に大変でした。

まず、最初に用意した資料は詳細なプロセス説明ばかりで「面白くない」と感じたそうです。そこで、デザイン思考のプロセスと比較する形で、違いが分かるようなシンプルな説明に方針転換しました。

そして、もう一つの大きな課題が「緊張」でした。過去にこういったイベントでの登壇経験がある人に対処方法を聞いたり、Sun*メンバーの前でリハーサルを行い、言いたいことがきちんと伝わるか聞いてもらったりして、事前に何度も舞台で話すシミュレーションを行いました。

実際のステージでは、登場の瞬間にステージの真ん中のカーテンが開き、光が差し込むような瞬間がありました。その時、まるで自分が映画のワンシーンにいるような気持ちになり、セルフキャスティングをして、「さあ、行くぞ」という気持ちで臨みました。ステージ前方にSun*メンバーが座っていてくれたことも嬉しかった、と振り返ります。

登壇について共感の声によっての自信

登壇後、様々な人から「すごく参考になりました」「自分が思っていることを言語化してもらえたと感じました」などのお声を頂戴しました。

登壇する前は、「インサイト駆動のアプローチは皆やっているもので、自分の意見はそんなに特別じゃないのではないか」と思っていたマークでしたが、実際に共感してもらえたことで、「自分は意味のあることをやっていたんだな」と改めて自信を得ることができたと話します。

既存プロセスにおける問題提起と、それに対する考え方を共有できたことで、同じ問題意識を持っている人たちに対して、一つの方向性を提示できたのではないでしょうか。

Sun*デザインチームでの展開とこれからの展望

このアプローチは現在Sun*において、サービスの体験設計とサービスブランディングの領域で活用されています。プロジェクトのプロセスは様々なので、必ずしもこれに適応しないといけないわけではなく、一つの選択肢として共有されています。


特に効果を発揮するのは、柔軟さと創造性が必要な時、何を基準に判断すればいいかわからない時、デザインコンセプトの方向性が決まっていない時、多様なユーザーが存在する時などです。

一つのプロジェクトでインサイトの軸を作ることによって、もっと幅広いプロダクトに適用できると私たちは考えています。一貫性があり、軸がぶれない。軸が決まっていれば、どんなデザインの広がりにも対応できるでしょう。

また、このプロセスは「チームで取り組むもの」です。
デザイナーとビジネスデザイナーという職種で分断するのではなく、一つのチームとしてこの考え方を取り入れることが重要です。複数の職種からの視点があるチーム構成の方が、インサイト駆動のプロセスをより実現できると考えています。

今回の登壇では、今後の展望として考えている内容の20%程しか発表できなかったと心残りを見せるマーク。残りの80%も、どこかで皆さんに共有できる機会を作りたいと考えているので、どうぞお楽しみに。

今後は、AIをうまく取り入れたアプローチにできるか実験を重ねながら、このプロセスをさらに進化させていくつもりだということです。

おわりに

不確実性を恐れず、探索し続けること。
仮説の枠を超えて、新しい価値を生み出すこと。
そして、チームとして一つになって、デザインに向き合うこと。

今回の登壇を通じて、新規事業創出におけるデザインの可能性、そしてデザイナーが本当に持つべき力について、一つの方向をお伝えすることができたのではないでしょうか?

実際に使用した登壇資料は、こちらからご覧いただけます。もし何か共感いただいたものがあれば、ぜひお声を聞かせていただけると嬉しいです。

 

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