「ゲーミフィケーション」という言葉を知っていますか?
これはゲームの仕組みや要素をゲーム以外の場面に転用することで、ユーザーのモチベーションを高め、その行動に影響を及ぼすことです。
似たような商品やサービスが多く存在し、他社と差別化してユーザーに選ばれるものを提供するのが難しい昨今。そんな中、サービスに「情緒的な価値」を付加する「ゲーミフィケーション」が、事業成長に欠かせない要素として注目が高まっています。
先日Sun*は、株式会社セガ エックスディーさん(以下、セガXD)と共に、ワークショップを通してゲーミフィケーションを用いたサービス設計を体験できるイベント「ゲーミフィケーションで加速する体験設計の新たなアプローチ」を開催しました。
本記事では、そのイベントの様子をご紹介します。
ゲーミフィケーションって何?
まず最初に、セガXD エクスペリエンスデザイン部 課長の矢口 岳史氏(以下、矢口氏)から、ゲーミフィケーションとは何なのか、簡潔な説明がありました。

セガXD・矢口氏
矢口氏が所属するセガXDは、ゲーミフィケーションを通して企業や社会の課題解決に取り組んでいます。エンターテインメントを源流に持つ企業として、いかにユーザーのワクワクする感情を揺さぶるかという「衝動」を大切にしているといいます。ゲーミフィケーションをカスタマーエクスペリエンス(CX)やユーザーエクスペリエンス(UX)の向上の一環であると捉えていて、ユーザーにどう喜んでもらうかという視点から、機能的な価値ではなく情緒的な体験価値による差別化を目指してサービスの設計をしているそうです。
「ゲーミフィケーションの概念はとても広いんです」と矢口氏は言います。
よく言及されるものには、バッジ・レベル・ステータスバーといった方法論的テクニックがありますが、現在は人間の内発的動機づけを引き出す時代へと移り変わってきました。本質に着目した「人を動かす」成功事例が生まれている中で、市場の注目も高まっており、これが現在のゲーミフィケーションの立ち位置になっていると語ります。
セガXDが定義するゲーミフィケーションとは、「人を動かし、夢中にする力を通じた課題解決のアプローチ」。大まかに、以下の2つに分類しています。
・瞬間UX: 無意識についやってしまうこと、つい意識的にやりたくなってしまうこと
・習慣UX: ついやり続けてしまうこと
その中でも、特にゲーミフィケーションの要素が色濃いのが習慣UXだと話します。
なお、セガXDでは、人間の本質的な欲求を9つに分け、それら欲求やモチベーションをいかに喚起するかという観点で、体験デザイン手法を体系化しています。
それをカード化したものが、この後に行われたワークショップで使用する「ゲーミフィケーションカード」です。

課題解決のアプローチ・ゲーミフィケーション
近年、私たちの身の回りにはゲーミフィケーションの要素が溢れています。
ゲーミフィケーションは、2022年には2.1兆円規模だったところ、2027年にはおよそ3倍の6.5兆円規模になると予想され、今後グローバルで大きく拡大すると見込まれている期待の市場です。小売、金融など、様々な産業において活用されています。特に初期のハードルは高いがやらないといけないもの、例えば教育や環境、行政などとの相性がよく、例えばセガXDでは、とある自治体のDX促進において、町民をどう巻きこんでいくのかを検討するにあたり、ゲーミフィケーションを活用して支援した実績があるそうです。
他人との「関係欲求」を刺激する ―ALLLYの目指す未来
続いて、Sun*のALLLY事業部事業部長の大竹 浩介(以下、大竹)が、Sun*においてゲーミフィケーション的な考え方を活用しているサービスの具体事例として「ALLLY」を紹介しました。

Sun* 大竹
「ALLLY」は、OEM(Original Equipment Manufacturing)型でアーティストごとにシステム基盤を開発し、ファンコミュニティの運営を行うサービスです。浜崎あゆみさんや倖田來未さんといった有名なアーティストに活用されており、各アーティストにディレクターがベタ付きで、それぞれの状況にあわせて企画や予算などを検討しています。
大竹は、「ALLLY」の根幹には、矢口氏の話に出てきた「習慣UX」があると話します。
曲の売り方がCDからオンライン・サブスクリプションへと移り変わってきた音楽シーンにおいて、長年同じアーティストのファンであり続けてもらうためには、曲の流行などに左右されず、「その人が好きだ」という思いを紡ぎ続けるシステムが必要だと考えました。これをいかにファンクラブとして実装・構築していくか模索しているのが、「ALLLY」というプロジェクトです。
「ALLLY」では、実装されている機能が「双方向型」であることを最も大事にしていると言います。
具体的には、アーティストと直接でやり取りができる場を提供したり、チャットでファン同士のコミュニケーションを促進したり……推し活をしている人にとって、日々の活力を得られる、日常の中で心地よさを感じられるような場を作り出しています。
また、「共有」「共創」「共感」という指標を置いていて、アプリ設計する際、それぞれの機能が3つの指標のどこに合致するか考えています。たとえば、グッズを作るとき。アーティストが配信で色やデザインをファンに相談しながら決めることで、ファンの意見が反映されるという「参加型」「共創」の体験を得ることができます。一緒に作り上げたからこそ、グッズを買うにあたってより愛着が強くなる。こういった経験を繰り返すことが、ファンの熱量を高めていくことにも繋がるのです。
このように、「ALLLY」のユーザーモチベーションサイクルが点ではなく、結び付けられて設計・実装していることに、矢口氏も感嘆していました。
いざ、ゲーミフィケーションでアイディアをブレスト
講演が終わった後は、「ゲーミフィケーションカード」を使ってワークショップを行いました。
「ゲーミフィケーションカード」とは、矢口氏の講演でも出てきた、セガXDが独自で人間の本質的な9つの欲求を体系化し、それぞれにアプローチする具体的な手法を記載したものです。

セガXDが独自で体系化したゲーミフィケーションカード
今回のワークショップでは、テーブルごとにテーマをディスカッションして決定。課題の設定において、特に条件や制限はありません。
テーマを決めた後はランダムにシャッフルした山札から手法カードをめくり、その内容を活用して、テーマに対する解決のアプローチを考えます。多種多様な手法のおかげか、各テーブルのブレストは白熱していました。

カードを活用してディスカッションを行う参加者

参加者のディスカッションを熱心に聞く矢口氏
アイディアブレストが終わった後は、各チームの発表です。
高齢者に定期的に眼科に通ってもらうためのログインボーナスならぬ「目薬ボーナス」や、結婚指輪のサブスクリプションサービスなど、矢口氏も「予想つかないアイディアが続出した」と漏らすほど、ユニークなアイディアがたくさん飛び出しました。
まとめ

左から、大竹、矢口氏、増渕(本イベントの司会進行を務めたSun*社員)
いかがでしたか?ゲーミフィケーションの基本的な考え方から実際の活用事例の紹介、さらにはゲーミフィケーションをどのように考え実践したらいいのかを体験できるワークショップを通じて、すぐに活用できる知識とスキルを習得していただけます。少しでもイベントの内容や雰囲気が伝わっていれば幸いです。
始まる前から同じテーブルの人同士で名刺交換をしたりなど、和気あいあいとした雰囲気が終始続き、交流も活発だった本イベント。およそ30人弱の参加者の皆様から、事後アンケートにて9割以上の方にご満足いただける結果となりました。特にワークショップにおいて理解を深めていただいた方が多くいらっしゃいました。
私たちの身の回りには、実はゲーミフィケーションの要素に溢れています。サービス設計でどのように要素を入れ込むのか検討する際、今回のイベントの内容が一助となれば感無量です。
サービス設計にゲーミフィケーションを活用する際、プロのアドバイスが欲しい場合はセガXDへ、実際にデザインや実装を行いたい場合は、Sun*へぜひご相談ください。
Sun*では、今後も皆様のお役に立てるよう、様々なイベントを開催していきます。
引き続きご注目ください!