TOPICS

TOP

>

TOPICS

>

新規事業開発

新規事業のマーケティング手法とは?立案から実行までの流れやフレームワークを徹底解説

更新日: 2025年6月30日

新規事業を立ち上げる際は、商品やサービスを展開するための戦略的なマーケティングが欠かせません。本記事は、これから新規事業を立ち上げる人に向け、新規事業のマーケティング戦略の流れや過去の失敗事例、失敗を防ぐために押さえておくべきポイントを徹底解説します。マーケティング分析で頻出のフレームワークも紹介するため、ぜひ参考にしてください。

新規事業のマーケティング戦略とは?

新規事業におけるマーケティング戦略とは、市場にある潜在的な課題やニーズを分析し、それに応える商品やサービスをどのように展開するかを計画・実行することです。

とはいえ、新規事業を進める際、「何から始めればいいのか」「成功する確率を上げるには?」といった悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。

まだ確立されていない市場を狙って顧客を獲得するには、入念な市場調査や的確なターゲティング、自社の強みを最大化するポジショニングが欠かせません。少ないリソースや資金をうまく活用し、明確な戦略を立てられれば、新規事業を成功に導けるでしょう。

マーケティング戦略立案から実行までの流れ

マーケティング戦略は、各フェーズごとにさまざまな分析を行います。効果的な戦略を実行するためには、入念な事前準備が欠かせません。

1.市場調査

新規事業における最初のステップは市場調査です。市場動向・業界構造・顧客ニーズなどの情報を収集・分析し、参入の余地があるビジネスを見極めましょう。

調査方法は文献やデータ収集のほか、アンケート・インタビュー・データ解析など多岐にわたります。表面的な数値だけでなく、顧客の心理や行動パターンから仮説を立てることも重要です。

<市場調査で検証する内容例>

  • 市場の規模や動向
  • 業界のトレンドや構造
  • 顧客ニーズ
  • 自社の強み
  • 競合企業や競合サービスの状況
  • 商品やサービスに関わる最新技術

2.市場と顧客の細分化

続いて、収集したデータをもとに市場と顧客を細分化(セグメンテーション)します。年齢・性別・居住地・ライフスタイルなどのさまざまな要素で分類することで、それぞれの行動特性やニーズの違いを明確化できます。

<セグメンテーションの要素>

  • 人口動態要因(デモグラフィック変数):年齢・性別・職業・所得・家族構成など
  • 地理的要因(ジオグラフィック変数):居住地・気候・地域文化など
  • 心理的要因(サイコグラフィック変数):価値観・ライフスタイル・社会階級など
  • 行動要因:購買頻度・ブランド志向・購入の動機など

3.ターゲットの決定

セグメンテーションした顧客のなかから、最も収益性が期待でき、自社のリソースでアプローチできる層をターゲットに設定します。

今後も市場の成長が見込まれるか、競合が少なく自社が牽引できそうかという点も慎重に見極めましょう。ターゲットを明確に定めることで、これから実行する戦略を策定しやすくなります。

4.市場におけるポジショニングの確立

ポジショニングとは、自社の商品やサービスを市場でどのような位置付けで売り出すかを定めることです。高価格帯なのか低価格帯なのか、機能性を重視するのかデザインを重視するのかなど、商品やサービスにどのような価値を付与するか決めましょう。

マーケティング戦略の成功のためには、既存のプロダクトや競合他社と差別化し、独自の訴求を行うことが重要です。

5.戦略実行と結果の分析

市場調査の上で決定したターゲットとポジショニングに基づき、実際に広告施策・販促活動・チャネル戦略などを展開します。

マーケティング施策は一度の実行で完結するのではなく、効果測定や結果分析を行い、何度も改善を繰り返す必要があります。実行前の仮説と結果を比較しながら、より効果的な施策を打ち出しましょう。

新規事業のマーケティング戦略の失敗事例3選

効果的なマーケティング戦略を立てていても、市場ニーズとのズレによって実行時に失敗するケースは珍しくありません。過去には、誰もが知る有名企業もマーケティング戦略に失敗しています。

セブンイレブンの生ビール:ちょい生

2018年夏、セブンイレブンは一部店舗で生ビールを100円で提供する「ちょい生」の試験販売を計画していました。しかし、想定を上回る需要が予測されたため、販売体制や品質保持に不備が生じる可能性を考慮し、発売前に提供を中止しました。

一部では、ビールを安価で販売することで、未成年が購入しやすくなってしまうのではないかという批判もあったようです。「ちょい生」は市場潜在的なニーズは捉えていた一方で、供給体制やリスク対策を含めたマーケティング戦略全体の設計において、もう一歩踏み込んだ準備が必要だったと考えられます。

ZOZO:ZOZOSUIT

2018年、ZOZOはプライベートブランド「ZOZO」の販売促進のため、全身のサイズを計測する「ZOZOSUIT」の配布を開始しました。

計測結果を活用してほぼオーダーメイドのアパレルを提供する試みでしたが、予想を超えるオーダーによって配布コストが膨れ上がり、肝心の測定精度にも課題が残りました。

赤字を解消できないまま2022年にサービスを早期終了した「ZOZOSUIT」は、話題性のある試みだったものの、顧客体験設計や継続的な利用価値に基づく戦略設計が弱く、マーケティング施策と事業モデルがかみ合わなかったといえるでしょう。

AOKI:suitsbox

2018年、AOKIはスーツのサブスクサービス「suitsbox」の提供を開始しました。若年層をターゲットにしたこちらのサービスは、月額7,800円でスーツ・シャツ・ネクタイをレンタルできる画期的な取り組みでした。

しかし、実際にはターゲット層ではない40代以上の既存顧客が利用者の多くを占め、AOKIのスーツ自体の売上低下を招いてしまいました。提供から半年でサービス終了となった「suitsbox」は新しいビジネスモデルへの挑戦でしたが、想定していたターゲット層との乖離があり、より丁寧な市場理解やターゲティングが求められる事例となりました。

新規事業のマーケティング戦略で失敗しないためのポイント

新規事業のマーケティング戦略で成功確率を上げるためには、入念な事前調査と精度の高い実行計画が重要です。

市場リサーチ・顧客検証・競合分析を徹底する

マーケティング戦略の基本は市場調査です。失敗したマーケティング戦略の多くは、不十分なリサーチによってターゲティングミスや需要と供給のズレが起こっています。市場リサーチや顧客検証、競合分析を徹底的に行い、根拠のある戦略を立てましょう。

市場のニーズと事業・サービスをマッチさせる

新規事業が成功するためには、市場や顧客のニーズと提供するサービスがマッチしていることが重要です。

事業において「やりたいこと」が先行してしまうと、顧客の求めるものとのズレが生じる可能性があります。顧客の視点を意識して戦略を立てることで、顧客満足度の高い戦略を実行できるでしょう。

持続的なビジネスモデルを構築する

継続的に利益を生み出すためには、持続可能なビジネスモデルを確立することが欠かせません。

一過性のブームや話題だけで終わらないよう、収益モデル・コスト管理・リピート施策などを徹底することが大切です。近年は定期的な売上が発生するサブスクリプションモデルも人気を集めています。

マーケティング分析に使える6つのフレームワークと活用法

マーケティング戦略を立てる際は、さまざまなフレームワークを活用して分析を行います。今回は、マーケティング分析で効果的なフレームワークを6つ紹介します。

3C

3C分析は、Customer(市場・顧客)・Company(自社)・Competitor(競合)の3つの視点から環境を分析する手法です。市場分析の基本であり、顧客ニーズや自社の強みと弱みを把握するのに効果的なフレームワークです。市場参入前の全体像を把握したいときに有効です。

4C

4C分析は、顧客の視点に立ってマーケティングを分析する手法です。Customer Value(顧客が感じる価値)・Cost(顧客の負担)・Convenience(購入における利便性)・Communication(顧客との対話)を軸にマーケティング戦略を最適化します。顧客視点でサービス設計を見直したいときに活用できるフレームワークです。

SWOT

SWOT分析は、Strength(自社の強み)・Weakness(自社の弱み)・Opportunity(機会)・Threat(脅威)の4点から、自社の現状の課題や市場におけるポジションを整理する手法です。内的要因と外的要因の2つの視点から分析を行うため、長期的な外部環境の変化に備える戦略を立てる際に有効です。

PEST

PEST分析は、自社を取り巻く外部環境をPolitical(政治)・Economic(経済)・Social(社会)・Technological(技術)の4視点で分析する手法です。このフレームワークは、長期的な外部環境の変化に備える戦略を検討する際に役立ちます。

5フォース

5フォース分析は、業界内での競争環境を分析するためのフレームワークです。業界内の脅威・新規参入の脅威・代替品の脅威・売り手の脅威・買い手の脅威の5つの視点から、どの要素がどの程度自社に影響を与えうるのかを分析し、市場参入の難易度を可視化します。新しい市場への参入難易度を判断したいときに有効です。

ポジショニングマップ

ポジショニングマップは、市場における自社の位置付けを図式化するフレームワークです。縦軸と横軸にそれぞれの要素を定め、自社と競合他社をマッピングします。自社の強みや他社との差別化ポイントが明確になり、顧客にどのような訴求を行うと効果的かを見極められます。競合と差別化した自社の立ち位置を明確にしたい場面で使用しましょう。

新規事業のマーケティングに役立つおすすめ書籍

マーケティング戦略の成功確率を高めるためには、専門知識を学んでおくことも大切です。マーケティング思考を体系的に学べるビジネス書や専門書を活用し、ノウハウを蓄積しましょう。

<これから勉強する方におすすめ書籍>

  • 中村愼一『ユーザーファーストの新規事業 社内の資産で新たな成長の種をまく』,宣伝会議,2022年
  • 栗原 康太『新規事業を成功させる PMF(プロダクトマーケットフィット)の教科書 良い市場を見つけ、ニーズを満たす製品・サービスで勝ち続ける』,翔泳社,2022年

まとめ

新規事業で効果的なマーケティング戦略を実行するためには、開発フェーズに合わせた適切なリサーチと分析が必要不可欠です。

Sun Asteriskでは仮説検証・ユーザーリサーと・UI/UX設計を含めた包括的支援が可能です。これから新規事業を立ち上げたい方や、マーケティングリサーチの知識を深めたい方は、ぜひ以下のガイドをチェックしてください。

【無料公開中】MVPを成功させるための具体的なポイントを分かりやすく資料と動画で解説いたしました。

【作成ガイド】「どのように市場ニーズを見極め、アイデアを形にし、事業として成立させるのか?」というプロセスを具体的にご紹介します。