新規事業の立ち上げ時は共通して直面しやすい課題があります。アイデアはあるのに形にならない、人材が足りない、予算が確保できないなど、さまざまです。また、問題を放置すると事業化に至らず立ち消えることもあります。この記事では、新規事業でよくある課題の整理方法から対処方法を具体的に解説します。構想段階の仮説の整理やチーム体制の整備、資金調達の考え方など、実行につなげるヒントも紹介するため、自社の事業開発に悩む人はぜひ参考にしてください。
新規事業の立ち上げに直面しやすい課題
多くの企業が新規事業の立ち上げに直面する課題には共通点があります。ここでは、下記の5つの課題について解説します。
- 顧客のニーズを正確に捉えられない
- 人材不足のためチーム編成できない
- 事業を実行する予算や資金が確保できない
- 新規事業を進めるノウハウが社内に蓄積されていない
- 計画段階での合意形成が取れず実行に移せない
課題を正しく理解し、初期段階から対策を講じることが、新規事業の成功への第一歩です。
顧客のニーズを正確に捉えられない
経営者や担当者の思いつきで始めたものの、実際のニーズとズレていた、想定より市場が小さかったという失敗事例も少なくありません。ニーズを読み違えると、事業の縮小や撤退を余儀なくされるリスクも高まります。そのため、実際のデータと仮説に基づいて市場を数値ベースで検討することが求められます。
人材不足のためチーム編成できない
新規事業では、専任のチームメンバーを確保できず、プロジェクトを進められないケースも少なくありません。
特に中小企業では、人材不足がボトルネックになりやすく、事業の兼任を余儀なくされるパターンもあります。意思決定者と実行担当者を明確に決定し、必要に応じて外部人材の活用も検討しましょう。
事業を実行する予算や資金が確保できない
新規事業の初期フェーズでは、プロトタイプ開発や市場調査、テストマーケティングなど、一定の予算が必要です。
しかし、事業化が未確定な段階では、社内でも予算が承認されにくく、資金不足も発生しやすいでしょう。予算の制約によって十分な検証が行えず、事業の進行が遅れるケースが考えられます。
新規事業を進めるノウハウが社内に蓄積されていない
多くの企業では、既存事業の運営経験が蓄積されている一方で、新規事業の開発に関する知見やプロセスが共有されていません。加えて、新規事業を立ち上げても、進め方が責任者に依存しやすく、課題の定義、検証、収益化の判断があいまいなまま進行してしまうこともあります。その結果、失敗の原因も記録されず次に生かされにくくなります。
計画段階での合意形成が取れず実行に移せない
新規事業では、社内で意見が分かれやすく、経営層や関係部門の合意形成が難航しやすい課題があります。特に、大企業では意思決定プロセスが複雑になりやすく、企画が承認されるまでに時間がかかりやすいでしょう。スピード感が求められる新規事業では、意思決定の簡略化が重要です。
関係者の温度差により、進行がブレる
新規事業は関係者の熱量や認識レベルに差が出やすく、推進スピードに影響します。
企画側と開発側、上層部と現場などで期待値がズレたまま進めると、後々の軌道修正に時間とコストがかかります。
プロジェクト初期段階で「なぜ今やるのか」「何を目指すのか」を明文化し、チームの足並みをそろえておくことが重要です。
新規事業の課題を分析するフレームワーク
フレームワークとは、課題を整理し、重要なポイントを分析できる考え方の1つです。ここでは、新規事業で直面しやすい課題をみつけ、構造的に分析できる代表的なフレームワークを3つ紹介します。
- Value Design Syntax®:構築段階の分析方法
- SWOT分析:自社のリソースを把握する
- リーンキャンバス:仮説の整理
いずれも、実行可能かつ再現性のある方法として、多くの企業で活用されています。
Value Design Syntax®:構築段階の分析方法
Value Design Syntax®(以下VDS)は、「顧客ニーズが不明瞭」「関係者の共通認識が取れない」といった、構想段階でよくある課題解決に有効ななフレームワークです。初期フェーズでありがちな、”ふわっとしたアイデア”を「価値」「実現可能性」「収益性」の3軸で構造化できるため社内説明資料としても活用できます。
>>詳しい資料はこちら:新規事業の打率を上げるフレームワーク「バリューデザインシンタックス®」(無料ダウンロード)
SWOT分析:自社のリソースを把握する
SWOT分析は、自社の状況を整理するのに有効なフレームワークです。
下記の4点を整理すると、活用できる経営資源と、事業を取り巻く外部要因を客観的に把握できます。
- Strength:自社の強み
- Weakness:自社の弱み
- Opportunity:市場の機会
- Threat:脅威、競合やリスク
内部と外部に分けて考えられるため、自社がどの市場でポジショニングが取れるかを分析可能です。
リーンキャンバス:仮説の整理
リーンキャンパスは、仮説を構造的に可視化できるフレームワークです。
下記の9つの項目で構成されます。
- 顧客:ターゲットとなるユーザーや市場
- 課題:顧客が抱えている具体的な問題
- 独自の価値提案:自社の強み、差別化のポイント
- ソリューション:課題の解決方法
- チャネル:顧客に価値を届ける手段
- 収益の流れ:課金方法や価格モデル
- コスト構造:人件費、開発費、マーケ費など
- 主要指標:KPIなどの定量的な指標
- 優位性:ブランド、特許、ネットワークなど
項目を整理することで、事業仮説の抜けや矛盾に気づきやすくなります。
新規事業立ち上げ時の課題を解決する方法と対策
新規事業を成功するためには、直面する課題を明確にしたうえで適切に対処する必要があります。ここでは、立ち上げ時によくある課題に対して有効な4つの実践的な対処法を紹介します。
- 競合の少ない市場に参入しポジショニングを取る
- 社内の組織体制・意思決定プロセスを整備する
- 社外のリソースを活用し人材や経験不足を補う
- 収益化できるビジネスプランを策定して資金調達に成功する
自社の課題を具体的に洗い出し、1つずつ実行に移していくことが成功への近道です。
競合の少ない市場に参入しポジショニングを取る
市場に参入するときは、競合が少ない領域を見極め、自社が優位性を持てるポジションを取ることが重要です。ポジショニングマップを用いて、他社との違いを明確化すると、顧客から選ばれる可能性が高まります。
また、ニッチな市場で実績が得られると、将来の事業展開にもつながります。
社内の組織体制・意思決定プロセスを整備する
新規事業では、スピード感ある意思決定と試行錯誤が求められます。
しかし、既存の稟議フローの煩雑さや担当者が兼任体制のままだと判断が遅れ、検証サイクルが回りにくくなります。
専任チームを設け、意思決定者を明確にしたうえで、週次レビューなどのルールを整備すると、進行の停滞を防げます。
社外のリソースを活用し人材や経験不足を補う
立ち上げフェーズでは、事業開発・マーケティング・プロダクト設計など多様なスキルが必要です。一方で、社内のリソースだけでは人材も専門スキルも足りない場面に直面します。
そのため、業務委託や副業人材、スタートアップ支援の専門家など、外部の即戦力に依頼するのが現実的です。初期段階からリソースを把握し、不足分を明確にしておくと外部との連携も進めやすくなります。
収益化できるビジネスプランを策定して資金調達に成功する
事業のアイデアがあっても、資金がなければ実行に移せません。説得力のあるビジネスプランを作成するには、仮説検証の実績やKPI、収支シミュレーションを含めて、数字で将来性を説明する必要があります。
小さく試して結果を出し、データに基づく資料を準備することで、社内の承認も外部資金の調達も成功しやすくなります。
まとめ
新規事業の課題を解決するためには、フレームワークを活用して現状を正しく把握し、構造的に分析することが重要です。立ち上げ初期には「ニーズの見誤り」「人材や資金の不足」「社内の意思決定の遅さ」など、多方面から課題が生じやすいため、段階ごとに対処する必要があります。ただし、全てのフレームワークが自社に合うわけではないため、目的に応じて選ぶ必要があります。
自社に合った進め方がわからない場合や、社内リソースだけでは難しい場合は、外部の専門家と連携するのも1つの選択肢です。
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