新規事業開発の第一歩として、企業ビジョンに沿ったアウトプットの伴うプロジェクトは必要不可欠といえます。しかし、はじめから大型のプロジェクトとしてスタートしても、顧客が求めるニーズに正確にマッチした製品やサービスが実現できるとは限りません。
そこで、新規事業開発の初期段階としては、「SMALL WIN」を目指すことが重要といえます。小規模であったとしても成功を収めることで、プロジェクトメンバーのモチベーションを上げる原動力となり、プロジェクト自体を強い意志で継続・加速させていくことができるでしょう。
今回は、新規事業開発においてSMALL WINからスタートした後、プロジェクトを成功に収めるためにはどのようなステップが必要なのかを紹介します。また、Sun*では具体的にどのようなアプローチを行っているのか、新規事業開発における姿勢や考え方も含めて詳しく解説していきます。
新規事業のプロジェクトステップ
新規事業開発にあたっては、対象となる顧客のリサーチや調査を経て、プロトタイピング、MVP開発の後、本開発へ移行するというのが大まかな流れといえます。これらのプロセスを具体化すると、以下の6つのステップに分けて考えることができます。
① 業界構造分析
新規事業の開発にあたっては、はじめの段階で業界全体がどのような構造になっているのかを詳細に分析する必要があります。
たとえば、ヘルスケア関連の業界にフォーカスしてみると、歩数や心拍数といったヘルスケアデータの管理に役立つスマートフォンアプリは多く存在しますが、医師と直接コミュニケーションができるアプリは決して多くありません。加えて、コロナ禍ということもあり、感染症のリスクを恐れて病院へ行くこと自体に抵抗を感じる顧客も少なくないでしょう。
このように、新規事業として参入を検討している業界全体がどのような構造・傾向をもっているのかを分析することが最初のステップといえます。社会情勢なども踏まえた正確な業界構造分析をすることによって、自社が取り組むべき新規事業の大まかな方向性が見えてきます。
② 顧客分析・ニーズ探索(課題整理・ビジネス構想)
新規事業の立ち上げにおいて、もっとも重要なのがビジネスの目的です。顧客がどのような課題を抱えているのか、それらを実現するためにどのような事業を行いたいのかを検討することが「顧客分析・ニーズ探索」にあたります。
このフェーズでは、まず現状分析として顧客が把握している課題の整理を行いつつ、顧客が把握できていない課題についても分析しピックアップしていきます。客観的な視点から状況を確認することで、そもそも顧客自身が課題として感じていないことや、業務のムダが見えてくることも少なくありません。顧客分析によって網羅的に抽出した課題を整理しつつ、どの課題について深堀りしていくべきなのかを明確化していきます。
また、より課題を明確化・具体化するために、ターゲット顧客(ペルソナ)を設定し仮説を組み立てていくことも顧客分析の一環として挙げられます。
ちなみに、顧客分析やニーズ探索にあたっては、新規事業開発のプロジェクトに関わるメンバーの想いや理念も重要なポイントといえます。「この課題を解決することで、◯◯で困っている顧客に価値を提供できる」という確固たる信念があれば、プロジェクトを実現するための大きな原動力にもなるでしょう。
③ Customer Problem Fit(顧客課題・ターゲットの策定)
顧客分析・ニーズ探索の後は、Customer Problem Fitとよばれるフェーズに入ります。顧客分析やニーズ探索は、あくまでも社内で検討されたものに過ぎません。そのため、「顧客の多くはこのような課題を感じているだろう」とプロジェクトメンバーが肌感覚で理解していても、実際にはそれらの課題がすでに解決されていたり、そもそも課題が存在していなかったというケースもあるのです。
課題が存在しないことを認識しないままプロジェクトを進めてしまうと、結果として顧客ニーズがない製品やサービスを開発することになり、プロジェクトそのものが失敗に終わってしまう可能性も高くなります。
そこで、Customer Problem Fitのフェーズでは、実際に課題が存在することを裏付けるために「3C分析」や「STP分析」といったフレームワークを活用し市場調査を行います。
顧客分析・ニーズ探索はプロジェクトメンバー個人の意識や経験によって仮説を組み立てますが、Customer Problem Fitでは定量調査や統計データによって市場全体を俯瞰することが大きな違いといえるでしょう。これら2つのフェーズを経て、対象となる顧客のターゲット像と、解決すべき顧客の課題を明確化します。
④ Problem Solution Fit(ソリューション企画の研磨)
新規事業において解決すべき課題が明確化できたら、課題を解決するために必要なソリューションや企画を具体的に検討します。このフェーズをProblem Solution Fitとよびます。
Problem Solution Fitでは、これまで世の中に存在していなかった製品やサービスを新規で開発するパターンもあれば、既存の製品やサービスを改良することで実現できるパターンもあるでしょう。そこで、ソリューションを実現するうえで最適な方法を検討・検証します。
具体的には、MVP(Minimum Viable Product)とよばれる実用最小限の製品を製作するための初期設計を行います。MVPは顧客からのフィードバックを得ながらソリューションの精度を高めていくことを目的としており、新規事業開発において欠かせない重要なプロセスといえます。また、同時に、初期のビジネスプランやコンセプトのストーリー化、キービジュアル化なども並行して進めていくのがProblem Solution Fitです。
⑤ プロトタイピング(検証方法設計/簡易検証)
Problem Solution Fitのフェーズで開発すべき製品やサービスの具体化が完了したら、プロトタイプを実際に開発し、仮説を検証していきます。
プロトタイピングはMVPと混同されることが多いですが、MVPとは異なり、製品やサービスのコンセプトや方向性を示すことが目的といえるでしょう。たとえば、世の中に自動車がない時代と仮定したとき、顧客に対して自動車の価値を理解してもらうためには、エンジンそのものではなく、4つの車輪が搭載された自動車の姿を見せたほうが直感的に理解できます。
すなわち、プロトタイピングの段階では自動車の心臓部であるエンジンは必ずしも必要ではなく、4つの車輪や運転席のハンドル、自動車のボディなどのほうが重要ということになります。システム開発やアプリケーション開発にあたっては、UIやUX、画面遷移といったビジュアルの要素が該当するでしょう。
なお、プロトタイプを顧客に提示するにあたっては、実際に課題解決に役立つかを検証するために、検証方法および検証KPIの設計も行う必要があります。
⑥ Product Market Fit
プロトタイピングによってビジュアル的な仕様が決定したら、検証結果をもとにソリューション開発に着手します。また、Problem Solution Fitのフェーズで設計した仕様をもとに、MVPを開発していきます。なお、MVPはあくまでも実用最小限の機能を実装した製品やサービスのことであるため、この段階ではUIやUXを完成させる必要はありません。
MVP開発と同時に、ビジネスモデルや収益モデルなどもブラッシュアップしていきます。対象となる顧客、市場をあらためて見直すとともに、競合他社との優位性はどのように確保するか、収益を確保するための戦略、セールスおよびマーケティングに関する戦略などもProduct Market Fitのフェーズで検討しておきます。
新規事業のビジネスモデル・サービスデザイン検討におけるSun*のアプローチ
上記で紹介した6つのプロジェクトステップは、Sun*における新規事業開発でも取り入れられています。しかし、細かな点を見ていくと、企業によっても新規事業開発へのアプローチや考え方は異なるもの。Sun*では具体的にどのようなアプローチ方法、および考え方のもとでビジネスモデルを構築しているのか詳しく解説しましょう。
戦略思考型とリーンスタートアップ型の違い
新規事業のビジネスモデルを構築するにあたって、取り入れられることが多いマネジメント手法に「戦略思考型」があります。戦略思考型のマネジメントは、主に大企業型の事業開発に用いられるケースが多く、自社の技術力を生かし、高性能な製品や多機能の製品を開発するといった、いわば企業側の方針に沿ったマネジメントといえるでしょう。ちなみに、このようなアプローチ方法は「プロダクトアウト」ともよばれます。
これと対極にあるのが「リーンスタートアップ型」のアプローチです。企業側の方針を優先するのではなく、顧客が抱えている課題やニーズを調査し、それにマッチした製品やサービスを開発するという考え方が根本にあります。そのため、リーンスタートアップ型においては、プロダクト開発段階での顧客からのフィードバックは極めて重要であり、顧客視点に立ったアプローチといえるでしょう。なお、リーンスタートアップ型のアプローチは「マーケットイン」ともよばれます。
Sun*の開発ではリーンスタートアップ型が優位
大前提として、上記で紹介した「戦略思考型」と「リーンスタートアップ型」のアプローチは、どちらが良い・悪いと一概に言えるものではなく、両者にはそれぞれメリットとデメリットが存在します。たとえば、戦略思考型の場合は企業の強みや技術力を最大限生かすことができるため、ブランディングの強化にもつながるでしょう。一方、リーンスタートアップ型の場合は、顧客ニーズに合ったものを開発するため、顧客からの信頼を得やすいというメリットもあります。
そのため、両者はともに新規事業開発において必要なアプローチ手法であることに変わりはありません。
Sun*の場合は、顧客中心のソリューション設計を採用しているため、リーンスタートアップ型のアプローチが優位となっています。
Sun*における顧客中心のソリューション設計の考え方
では、Sun*が目指す「顧客中心のソリューション設計」とは具体的にどのような考え方なのでしょうか。
顧客に対して製品やサービスを提供し、何らかの価値を提供したいと考えた場合、サービス提供者である企業だけでは把握しきれていないことが多数存在するものです。たとえば、「◯◯の課題を感じているのはどのような属性の顧客なのか」、「その課題を解決するためのソリューションは、どのように開発すれば良いのか」など、これ以外にもさまざまなポイントが挙げられるでしょう。
そこで、サービス提供者である企業が把握できていないことを解決していくために、Sun*ではさまざまな仮説を検討し、その仮説を反映したソリューションを設計。顧客からのフィードバックを得ながらブラッシュアップし、新規事業の成功確度を上げていきます。これが、Sun*における「顧客中心のソリューション設計」の考え方です。
Sun*が活用するフレームワークの一例
顧客中心のソリューション設計を実現するために、Sun*ではいくつかのフレームワークを採用しています。代表的なフレームワークを2つ紹介しましょう。
リーンキャンバス
リーンスタートアップ型に対応したフレームワークとして代表的なものが「リーンキャンバス(Lean Canvas)」です。ビジネスモデルにおける以下の9要素を記載することで、新規事業の方針やプランが整理でき、プロジェクトを俯瞰しながら効率的に進められます。また、視点の抜け漏れや、9要素の繋がりを確認する意味でも役立つフレームワークです。
- 顧客セグメント
- ユーザーの課題(ペイン)
- なぜ理容するのか独自の価値提案
- 何を提供するのか
- 顧客との接点
- 収益の流れ
- コスト構造
- 主要指標
- 圧倒的優位性
体験マップ
体験マップとは、顧客視点に立って行動をストーリー化することにより、課題(ペイン)が表出するまでのプロセスを把握できるフレームワークです。顧客の状況に合わせた「行動」や「タッチポイント」、「感情」を整理しつつ、それぞれの場面に応じた「ペインポイント」を探っていきます。
特に高単価の商材やBtoB商材は、導入を検討してから購入を決断するまでの期間が長い傾向があるため、顧客が抱える課題を正確に把握するためにもストーリー化しながら整理することは有効といえます。
まとめ
新規事業開発に取り組む考え方やアプローチ手法にはさまざまなものがあり、企業規模や組織としての考え方によっても最適な方法は異なるものです。そして、何が正解・不正解といったことはなく、自社にとって最適であると考えられる手法を取り入れることが重要といえるでしょう。
Sun*の場合は、顧客中心のソリューション設計としてリーンスタートアップ型が優位となっていますが、戦略思考型によるアプローチを行うケースもあります。自社で新規事業開発を検討しているなかで、どのようなアプローチが最適であるか分からない場合には、まずはSun*へお気軽にお問い合わせください。
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