IT人材不足や人件費の高騰などに対応するため、オフショア開発を検討する国内企業が増えています。しかし、オフショア開発にはデメリットや注意点があります。物理的な距離や文化、ビジネス慣習の違いを乗り越えるには、慎重な準備が必要です。この記事では、オフショア開発のメリット・デメリットや注意点などを解説します。オフショア開発の状況もまとめているので、ぜひ参考にしてください。
オフショア開発とは?
IT業界におけるオフショア開発とは、海外の企業やリソースを活用して、開発業務を進める手法です。Webシステムやサービス、スマートフォン向けアプリ、AIなどがオフショア開発により生み出されています。
日本はIT人材が不足しがちで、人件費は高い傾向です。オフショア開発として人件費の安い国に業務を発注すると、人件費を抑えられるうえに、海外の優秀なITエンジニアを確保しやすいといえます。
オフショア開発の状況
近年、オフショア開発先としてベトナムが注目されています。2024年におけるオフショア開発の状況を解説します。
中国からの撤退が進んでいる
かつて主流だった中国でのオフショア開発は、円安や人件費高騰、カントリーリスクへの懸念により、発注先の分散化が進行しています。人件費の安いフィリピン、インドなどが新たなオフショア開発の発注先として検討されるなか、特に注目されている国がベトナムです。
ベトナムへのオフショアが注目されている
ベトナムは、オフショア開発の新たな発注先として注目を浴びています。日本企業からの委託案件をこなして、すでに多くの実績を積んでいるベトナム企業は少なくありません。ベトナムはIT人材の育成に力を注いでおり、優秀なエンジニアを多数輩出しています。IT人材の豊富さ、需要の高い先端技術にも対応できるスキルレベルは、オフショア開発の発注先候補として大きな強みです。
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オフショア開発のメリット
オフショア開発で優秀な人的リソースを確保すれば、コストを削減できるうえに事業の幅も広がります。ここでは、オフショア開発のメリットを解説します。
IT人材を確保しやすい
日本は少子高齢化が深刻化しており、生産年齢人口の減少が続いています。IT人材の数自体も、供給が追いつかない状態です。しかし、セキュリティ対策やAI・ビッグデータの活用が重視されるなか、IT人材の確保は各企業にとって急務となっています。
国内だけではなく海外にまで裾野を広げると、IT人材を確保しやすくなるでしょう。また、優秀なエンジニアが多い国にオフショア開発を発注すると、案件の効率的な進行も期待できます。
※参考:IT分野について|経済産業省
コストを削減できる
オフショア開発を採用する企業の大きな目的は、コスト削減です。IT人材の確保に要する人件費は、開発コストの多くを占めます。そのため、物価が安い国のIT人材に働いてもらえると、人件費の削減が見込めます。
開発中の仕様変更や検収後のメンテナンスなど、オフショア開発特有のコストが発生する場合もあるでしょう。ただし、トータルコストを鑑みると、コストを削減できる案件は多いと考えられます。
併せて読みたい:オフショア開発にかかる費用はいくら?国ごとの単価を比較・解説
対応できる開発案件が増える
オフショア開発により多様な人材を確保できると、対応できる開発案件を増やせます。たとえば、Webシステムに精通したエンジニアが自社にいない場合でも、他国の優秀な人材に発注すれば事業を進められます。
近年は各国の技術レベルが向上したこともあり、対応できる案件のレベルも総じて引き上げられています。オフショア開発.comで作成された「オフショア開発白書2024」によると、AIやブロックチェーンを活用した高い技術レベルの案件が、2022年では全体の3%だけでしたが、2023年では全体の9%と3倍程度伸びています。
スキルやノウハウを蓄積できる
人件費を抑えられるオフショア開発なら、中長期的な人材確保につながるでしょう。優秀な人材に長く働いてもらえると、自社専用の開発チームを作りやすく、スキルやノウハウの蓄積も期待できます。開発チーム内におけるチームワークが向上すれば、業務効率化も期待できます。
オフショア開発のデメリット
物理的な距離や、文化・慣習の違いは、オフショア開発のハードルとなります。オフショア開発のデメリットを解説します。
こちらもおすすめ:【資料】オフショア開発 成功の手引き
コミュニケーションが難しい
外国に業務を発注する関係上、オフショア開発ではコミュニケーション絡みの問題が発生しがちです。日本語のニュアンスを翻訳しきれないと、適切な指示が出せず意図が伝わりません。物理的な距離があるため、直接顔を合わせての打ち合わせは困難です。しかし、設計書の内容を正しく理解してもらえないと、開発の進捗や完成品のクオリティにも影響が発生します。
品質や進捗の管理が難しい
物理的に距離が離れているオフショア開発では、品質や進捗を直接確認することが難しい場合があります。報告上は問題がないように見えても、実際は遅延や問題が発生しているかもしれません。状況を見誤ると、結果的に納期に間に合わなかったり、予想外のタイミングで期限の延長を依頼されたりするリスクが生じます。
規模によってはコスト削減効果が小さい
小規模な開発では、オフショア開発により削減できるIT人材の人件費は限定的です。また、オフショア開発を成功させるには、IT人材以外にもさまざまな人材を確保する必要があります。
たとえば、円滑なコミュニケーションのための通訳者や翻訳者、各企業・チーム間の調整役となるブリッジSEのように、サポート的な立ち回りをしてくれる人材は不可欠です。IT人材に関する人件費の削減幅が小さいうえに、特殊な要員に関する人件費がかさむと、結果的にコストカットにならない可能性があります。
文化やビジネス習慣が違う
発注先との文化やビジネス慣習の違いは、業務に対するスタンスや認識の違いとなって表れる場合があります。たとえば、セキュリティに関する意識の差異や、納期が迫っている状況での労働時間に対する考え方の相違などが、発注先との協働において課題となる可能性があります。
オフショア開発のデメリットを防ぐ対策
国が違うことで生じるデメリットがあるオフショア開発ですが、失敗を防ぐためにできることは多いです。ここではオフショア開発を成功に導くためのポイントを解説します。
コミュニケーションは質と量の両方を担保する
指示が曖昧にならないようにするために、ドキュメントを作るのは非常に大切なことです。テキストになっていれば言った言わない問題も解消できるし、ある程度理想のイメージを具体的に伝えることができるようになります。
ドキュメント作成だけが重視されがちですが、外国にあるオフショア拠点とのコミュニケーションにおいて「量」も非常に大事です。具体的には、プロジェクトが始まる前に可能な限り現地に赴き、実際にプロジェクトに入るメンバーとの親交を深めることをおすすめします。受発注する関係性ではあるものの、やはり人と人が深くかかわるのが開発なので、できるだけ親密でなんでも質問したり言い合える関係性を作っておくのが理想的です。
さらにプロジェクトが始まった後も、積極的にデイリーやウィークリーでミーティングをセッティングするのが良いです。日本人でも一部そうですが、外国メンバーの場合、必要以上に日本側をお客様としてとらえてしまい、聞きたいことがあっても自分から聞けないことが多々あります。それを防ぐためにも、できるだけ細かい頻度でこちら側から声をかける機会を設けましょう。
品質管理、プロセス管理は日本側も責任を持つ
当たり前ですが、発注した仕事がスケジュール通りに進んでいるかは発注元である日本側が責任を持って確認するようにしましょう。残念ながら丸投げしてすべてがうまくいくことは少ないので、遅れが出そうか、分からないところがないかなど品質や納期に直結するような事項は日本側から積極的に確認するようにしてください。
さらに、現地での品質管理も大切です。例えば独自の品質管理プロセスがあったり、独立した品質管理チームがいるなど、品質管理を仕組み化している企業をパートナーに選ぶのが良いでしょう。
他にも成功させるためのポイントがありますので、ぜひ下記のリンクから成功の手引きもご覧ください。
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オフショア開発の発注に関する注意点
前述のデメリットを避けるには、発注先の選定と発注方法がポイントです。オフショア開発の発注に関する注意点を解説します。
信頼できる発注先を選ぶ
オフショア開発の委託企業は数多く存在します。そして、それぞれの企業で得意としている開発やスキル、日本語への理解力などは異なります。オフショア開発を検討する以上、コストを重視することは当然です。
しかし、安さだけで発注先を選ぶと、プロジェクトが失敗する可能性があります。実績を確認したり、技術力・コミュニケーション能力の程度を把握したりして、信頼できる発注先を選びましょう。
要件定義を徹底する
要件定義を徹底することも、オフショア開発の発注に関する注意点として挙げられます。国内での開発なら、要件定義に詰めが甘い部分や不明な部分があっても、スムーズに改善できるケースが多々あります。
しかし、オフショア開発では改善までに時間がかかる傾向です。最初の要件定義に問題があると、問題を抱えたまま進行しかねません。当初の予定が変わると、クオリティに影響が出るほか、トラブルに発展する恐れもあります。
セキュリティ対策を取る
オフショア開発の発注先の多くが、途上国や新興国です。途上国や新興国はセキュリティに対する意識が低い傾向が見られるため、注意が必要です。オフショア開発に本格的に取り組む前に、情報漏洩やセキュリティに対する認識を合わせておきましょう。また、セキュリティ対策としては、適切な管理ができるプロジェクトルームの設置や、専用回線を用いたクローズドネットワークの構築などの手立てが効果的です。
独立性の高い案件を選ぶ
案件の関係者が増えるほど、コミュニケーションが複雑になります。オフショア開発に向いているのは、他の企業やチームと連携せずに済む独立性の高い案件です。たとえば、社内の育成システムや勤怠管理システムは、オフショア開発に向いています。一方、購買管理システムのような社内と社外の連携が求められるものは、オフショア開発に不向きです。
トータルの費用を試算する
オフショア開発では、IT人材の人件費を削減しやすい反面、ブリッジエンジニアやコミュニケーターなどの人件費が追加で発生します。特に小規模な案件の場合、追加コストにより結果的にコストが増大する可能性があります。オフショア開発を検討する際は、トータルの費用を試算し、コスト面でのメリットを慎重に判断してください。
また、案件の規模を大きくすると、管理の難易度が増すことにも注意が必要です。むやみに関係者を増やさず、案件の内容に見合った適切な人材数を確保するようにしましょう。
まとめ
オフショア開発には、コスト削減や優秀な人材の確保といったメリットがあります。一方、物理的な距離や文化・慣習の違いは、オフショア開発のデメリットといえます。案件を成功させるには、双方の認識のすり合わせや環境整備が必須です。
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