オフショア開発とは、海外の会社にITシステムの開発や運用を任せる方法です。海外に発注するため、品質が気になるという人も多いのではないでしょうか。この記事では、オフショア開発の品質について解説します。日本国内の開発との違いや、オフショア開発の品質を上げる方法なども解説するため、ぜひ参考にしてください。
目次
オフショア開発とは
オフショア開発とは、ITプロダクトの開発や運用などを海外の会社に委託する方法です。ビジネス用語として、主にIT業界で知られています。オフショア開発の委託先は、アジア圏の国々が中心です。オフショア開発に取り組むと、日本国内でITシステムの開発や運用を進めるよりも、コストを抑えやすくなります。また、人材不足の解消のためにオフショア開発を活用するケースも増えています。
オフショア開発で発生しうる品質に関する問題の具体例
オフショア開発では、どのような品質に関する問題が発生する可能性があるのでしょうか。ここでは、具体例を紹介します。
動作しない
オフショア開発で納品された成果物が正常に動作しないケースがあります。原因は、要件定義の内容を正確に理解してもらえなかったためです。日本国内で開発を進める場合、仕様書に細かい指示を記載しなくても、適切に処理してもらえる可能性があるでしょう。
しかし、海外で開発を進める場合、日本国内と同じようにはいきません。オフショア開発は日本人の感覚が通用しない点を念頭に置いて、取り組む必要があります。
想定と異なった成果物
想定していない成果物が納品されるパターンもあります。たとえば、委託した会社の国でメジャーなデザインが採用され、日本では馴染みのないデザインになっている場合です。また、指示していない余計な機能が勝手に追加されている場合もあるかもしれません。
使いやすいITシステムの基準は、日本と海外で異なります。オフショア開発においては、認識の違いを理解したうえで指示を出す必要があるでしょう。
納期遅延
オフショア開発では、納期が遅れる場合もよくあります。日本の納期に対する考え方は、海外よりも厳密です。海外では、仕事よりも休息や家族との時間を大切にする意識が強い国も少なくありません。よって、オフショア開発のスケジュール感には注意が必要です。
なお、納品された成果物に問題があれば修正にも時間がかかるため、その点も視野に入れる必要があります。たとえ納期が遅れてもプロジェクト全体になるべく支障が出ないよう、余裕のある計画を立てましょう。
予算超過
オフショア開発は、コスト削減を目的として行われる場合が多いです。しかし、実際に取り組んでみると、予算を超えてしまうケースもあります。言語が異なる国の会社に依頼するため、オフショア開発では仕様書や指示の翻訳が必要です。言語スキルを持つ人材も確保しなければならず、人件費が多くかかります。
また、為替の変動にも注意が必要です。円安が進むと、想定以上にコストが膨らむ恐れがあります。オフショア開発の予算管理は、日本国内での開発と同様の考え方ではうまくいかないため、要注意です。
参考記事:オフショア開発の進め方とは?具体的な手順や押さえておきたいポイント
オフショア開発の品質が低くなってしまう理由
オフショア開発の品質が低くなる理由は何でしょうか。以下で詳しく解説します。
1.言葉の違い
言葉の違いは、オフショア開発で大きな課題となります。基本的に日本語が通じず、日本国内と同様にコミュニケーションがとれるわけではありません。うまくやりとりができないと、日本側も委託された側もストレスを感じます。指示が適切に伝わらず、意図した品質に達しない成果物となる可能性もあります。オフショア開発においては、スムーズなコミュニケーションをとるための意識や工夫が不可欠です。
2.日本側のあいまいな指示
日本人は、物事を直接的に表現しない傾向があります。日本国内では相手の考えを察しながら仕事を進める場合が多いです。
しかし、海外では相手の考えを察する文化はありません。はっきり表現しない限り、委託された側は日本側の意図を理解できない可能性が高いでしょう。あいまいな指示を出した結果、意図していない成果物が納品されるケースが発生しています。オフショア開発では、要望をはっきりと正確に伝える必要があります。
3.感覚の違い
デザインの感覚は国によって異なります。たとえば、日本で「おしゃれ」「見やすい」「便利」とされるデザインも、外国では評価されない可能性があります。操作性や見た目についても細かい指示を出さなければ、委託した会社の国で一般的なデザインが適用される恐れがあるでしょう。このように感覚に違いが出やすい部分については、具体的な打ち合わせを実施する必要があります。
4.品質管理
品質管理の体制に不備があると、オフショア開発の品質が低下する恐れがあります。発注や指示出しだけを行い、それ以降は現場に任せきりにするというスタンスでは、成果物の品質が低くなりがちです。特に、長期の開発期間を想定している場合、メンバーの入れ代わりが発生する可能性もあるため、注意が必要です。オフショア開発では品質管理を徹底し、こまめなチェックを心がけましょう。現場に対するフォローも徹底する必要があります。
5.開発プロセス
開発プロセスに問題がある場合も、品質が低くなる原因になります。オフショア開発では、プロジェクトを進める途中で設計を調整するケースも少なくありません。仕様を変更するには要件定義書への追記や修正を行ったうえで、委託先に合わせて翻訳する必要があります。正確かつ迅速に対応できなければ調整後の指示が現場にうまく伝わらず、成果物の品質も低下する恐れがあります。開発プロセスの途中で調整を加えても適切に作業を進められるよう、十分配慮しましょう。
オフショア開発の品質を上げるための方法
オフショア開発の品質を上げるには、どうすればよいのでしょうか。ここでは、具体的な方法を解説します。
1.日本人のブリッジエンジニアに参画してもらう
ブリッジエンジニアとは、日本側と委託された側を仲介するためのエンジニアです。それぞれの意図を正確に伝える役割を果たすため、納品物の品質に大きな影響を及ぼすでしょう。ブリッジエンジニアは、システム開発の知識だけでなく、双方の国の言語スキルをもち合わせている必要があります。ブリッジエンジニアのアサインにより、言葉や文化の違いによる認識のズレを解消しやすくなります。なお、日本側でブリッジエンジニアを用意できない場合、委託された側でブリッジエンジニアを配置する方法もあります。
参考記事:オフショア開発におけるブリッジSEの役割とは?重要性や選び方を解説
2.細かくコミュニケーションをとる
オフショア開発の品質を上げるうえでは、綿密なコミュニケーションが特に重要です。定期的に打ち合わせを行い、日本側の要望や目指すゴールなどを正確に共有する必要があります。また、認識のズレが発生していないか確認することも大切です。
さらに、報告や連絡がしやすい関係の構築にも力を入れましょう。良好な関係が築けていると、ミスやトラブルが発生しても相談されやすく、品質の向上につながるといえるでしょう。
3.開発プロセスを導入する
オフショア開発は、目的に合わせて適切な開発プロセスを選択する必要があります。オフショア開発の主な開発プロセスは、契約方式と開発方式です。
契約方式には、さらに準委任契約と請負契約があります。準委任契約は、人材を確保して開発を進める方式です。請負契約は、ITシステムの納品を約束する方式となっています。
一方、開発方式には、ウォーターフォール開発とアジャイル開発があります。ウォーターフォール開発は、途中でテストを実施して設計から運用までの工程を進める方式です。アジャイル開発は、ウォーターフォール開発よりもさらに細かく工程を区切り、適宜コミュニケーションをとりながら開発する方式です。
参考記事:システム開発の流れ・プロセスの種類|成功のためのポイントなども解説
4.品質管理を徹底する
オフショア開発の品質を維持向上させるには、徹底的な管理が不可欠です。たとえば、仕様書の内容について、日本側と委託された側の間で認識のズレが生じていないか確認しながら、開発を進めましょう。また、指示に沿った成果物を完成させるには、可能な限り細かくテストを実施する必要があります。さらに、オフショア開発では納期の遅延が発生する場合も多いため、余裕のあるスケジュールを設定すべきです。
5.内容が明確な仕様書を作成する
オフショア開発で海外の国に開発を依頼する場合、日本国内での開発よりも、仕様書で明確な指示を出す必要があります。あいまいな表現は避け、可能な限りはっきりとした指示を心がけましょう。委託された側に伝わりやすい内容になるような、工夫を取り入れることが大切です。たとえば、数値化したり図面を挿入したりし、具体的に表現するとよいです。
一般的なオフショア開発の進め方
オフショア開発の手順は納期やコストなどにも大きく影響するため、あらかじめ把握しておく必要があります。オフショア開発に取り組む場合、最初に目的を明確にしましょう。要件を定義したら、複数社から見積もりをとって比較します。委託先を決めて契約内容をよく確認し、契約の手続きをしてください。
その後、仕様書を作成して担当者と共有します。進捗管理を開始したら、担当者と適宜コミュニケーションをとりながら開発を進めます。こまめに動作テストを実施し、最終的にシステムが納品されます。
参考記事:オフショア開発の準備の進め方とは?導入前に知っておきたい9つのステップを解説
まとめ
オフショア開発の品質が低くなる場合、さまざまな理由が考えられます。たとえば、言葉や感覚の違いなどです。オフショア開発にはコスト削減や人材確保などのメリットがあるため、品質低下への対策を取り入れながら取り組みましょう。
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