オフショア開発白書とは、オフショア開発の動向をまとめた資料です。オフショア開発白書を参照すると、オフショア開発の最新の状況を確認できます。この記事では、オフショア開発白書のなかで特に重要なポイントを解説します。日本のオフショア開発の動向や人気の委託先などを把握するために、ぜひ役立ててください。
目次
オフショア開発白書で見る日本の動向
ここでは、オフショア開発白書で示されている日本の動向について解説します。
企業規模
オフショア開発について相談した企業規模については、従業員100名以下の企業の割合が減少しています。もともとは、コスト削減を目的としてオフショア開発を検討する企業が多く見られました。しかし、円安や人件費の高騰などの影響により、オフショア開発によるコスト削減の効果が下がっているため、オフショア開発を検討する小規模な企業が減ったと考えられます。
一方、従業員5,000名以上の企業の割合は増加しています。大規模な企業ではITの活用が活発なうえに、さまざまなシステムが必要です。そのようなニーズに対応するため、オフショア開発でリソースを確保していると考えられます。
業種
オフショア開発について相談した企業の業種は、過半数がIT業です。前年よりもさらにIT業の割合が増えており、IT業でオフショア開発を検討する企業は増加傾向にあると分かります。
IT業の次にオフショア開発の相談が多い業種は、メーカーとサービス業です。メーカーでは、設計開発や組み込み開発などを中心にオフショア開発が行われています。また、IoTをはじめとする先端技術による開発についても、オフショア開発が検討されています。サービス業では、Web開発システムなどの相談が多いです。モバイルアプリやサービス系の開発について、オフショア開発が取り入れられています。
その他にも、卸・小売や不動産などの業種で、オフショア開発を検討している企業が存在します。
属性
オフショア開発を相談した企業の属性は、ベンダーよりもエンドユーザーの割合が大きくなっています。ベンダーとは、クライアントにシステムを提供するシステム開発会社やSIerなどです。一方、エンドユーザーとは、自社でプロダクトやサービスを開発している企業を表しています。
依頼内容
オフショア開発の依頼内容は、サービス系のWebシステム開発やモバイルアプリ開発などが中心です。前年と比較しても、順位や割合に大きな変化はありません。ただし、先端技術に対する関心が高まっており、特にAI開発のシェアが拡大しています。
契約形態
オフショア開発の契約形態は、請負契約よりもラボ契約が多くなっています。請負契約は、開発するシステムごとに報酬を支払う契約です。請負契約のうち、300万円以下の案件は全体の30%以下となっています。それに対してラボ契約は、一定期間について人材を確保し、チームを作る契約です。ラボ契約が多い理由は、継続的なリソースの確保を求める企業が多いためと考えられます。
従来は、請負契約からスタートし、徐々にラボ契約へ移行するパターンが一般的でした。しかし、現在はオフショア開発のスタート期が終わって継続的な活用が進んでいるため、ラボ契約が増加傾向にあると考えられます。
オフショア開発の人気の委託先と理由
オフショア開発の委託先としては、複数の国があげられます。ここでは、人気の委託先と理由について解説します。
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ベトナム
オフショア開発の委託先としては、特にベトナムの人気が高いです。前年に続き、支持を集めています。ベトナムが人気な理由としては、勤勉で真面目な国民性や親日な人の多さなどがあげられます。また、地理的な近さや単価の安さなども人気の理由です。
ベトナムは、国が積極的にIT人材を育成しています。そのため、優秀なIT人材が増えており、リソースを確保しやすくなっています。また、これまで多くのオフショア開発に取り組んできた結果、高度な案件に対応できる企業も多くなりました。
さらに、ベトナムの学校では、第二外国語として日本語を扱うケースが増えています。ベトナムも、日本とのビジネスを重視していることが伺えます。
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フィリピン・インド
フィリピンやインドも、オフショア開発の委託先として人気があります。前年と比較しても、シェアが拡大しました。人気の理由は、英語でプロジェクトを進められるからです。
従来のオフショア開発では、ブリッジエンジニアの通訳を通して委託先へ指示を出していました。しかし、近年はプロジェクトの都合上、頻繁かつ詳細なコミュニケーションが必要となっています。そのため、エンジニアが英語で委託先へ直接指示を出す方法が普及しました。フィリピンやインドは英語が通じやすいため、オフショア開発の委託先として選ばれやすくなっています。
特にインドのエンジニアは技術力が高く評価されており、オフショア開発の委託先として検討する企業が増えています。
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ミャンマー・中国は縮小傾向
オフショア開発の委託先として人気が高まっている企業がある一方で、ミャンマーや中国への発注は減少しています。
ミャンマーでは2021年にクーデターが発生し、不安定な状況が続いている状況です。ただし、エンジニアの技術力は高いため、今後の情勢によってはオフショア開発の委託先として、有力な候補になる可能性があります。
また、中国のエンジニアの技術力は、日本を超えているといわれています。その結果、中国の企業にオフショア開発を依頼する場合、日本国内で開発を進める場合よりも費用が高額になる可能性も出てきました。もちろん、技術力を重視するなら、あえて中国を委託先として選択することも可能です。
オフショア開発のメリットとは
オフショア開発には、どのようなメリットがあるのでしょうか。具体的なメリットについて解説します。
1.リソース確保
日本国内では、人材不足に悩む企業が増加傾向にあります。海外の企業に開発を委託するオフショア開発なら、必要なリソースを確保できます。海外にも高い技術力を誇るエンジニアが増えているため、オフショア開発に取り組めば、優秀な人材をスムーズに確保できる可能性が高いです。
2.コスト削減
従来、オフショア開発の主な目的は、システム開発にかかるコストの削減でした。現在では、オフショア開発の費用も上昇傾向にあります。とはいえ、オフショア開発によりコスト削減を実現できるケースは、まだ少なくありません。委託先によっては、コスト削減を重視したオフショア開発が可能です。
オフショア開発白書で見る委託先の選び方とは
ここでは、オフショア開発白書から読み取れる委託先の選び方について解説します。
実績
オフショア開発の委託先は、日本企業と取引した実績の有無をもとに選びましょう。スムーズにオフショア開発を進めるには業界知識だけでなく、日本の商慣習に対する理解も必要だからです。
まずは実績資料を確認することが大切です。また、必要に応じ、開発規模やアサインした人数などの細かい情報も確認するとよいでしょう。実績についてチェックすると、技術力、プロジェクトマネジメント力、品質管理力なども把握しやすくなります。
エンジニアのレベル
オフショア開発では、委託先のエンジニアのレベルも重要です。特に、スキルセットや日本語のレベルなどを重視する企業が多い傾向があります。求める質のシステムを開発するには、当然ながら一定以上のスキルセットが必要です。
また、オフショア開発はコミュニケーションをとりながら進める必要があります。スムーズなやり取りのためには、日本語のレベルも重要です。日本語のレベルが高ければ、誤解や認識のずれが生じる可能性を下げられます。
トラブル発生時の対応
オフショア開発は離れた場所の文化が異なる相手に依頼するため、トラブルがつきものです。よって、トラブル発生時に適切な対応ができるか事前に確認しておきましょう。具体的には、トラブルに対して迅速かつ丁寧な対応ができる担当者の有無を、チェックする必要があります。
オフショア開発の委託先を選ぶ条件としては実績も重要ですが、実績があっても今後の依頼が必ず成功するという保証はありません。トラブルが発生した際のリスクヘッジを忘れないようにしましょう。
まとめ
今回解説したとおり、オフショア開発白書を見ると日本国内の動向がよく分かります。たとえば、オフショア開発では、ベンダーよりもエンドユーザーによる依頼が多いです。また、請負契約よりもラボ契約が多く、継続的にリソースを確保しようとする傾向がみられます。
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