Webシステムやアプリを開発する際、海外に委託するオフショア開発を活用する企業が増えています。オフショア開発を成功させるためには、オフショア開発の事例からポイントを学ぶことが重要です。本記事では、オフショア開発の成功事例はもちろん、失敗事例もあわせて紹介します。これからオフショア開発を検討中の企業の担当者は、ぜひ参考にしてください。
目次
オフショア開発の概要
まずは、オフショア開発の概要を3つの観点から解説します。
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オフショア開発とは?
オフショアとは、ビジネスにおける「海外」を意味する言葉です。オフショア開発とは、海外のIT人材にWebシステムやアプリなどのプロダクト開発を委託することを指します。国内で不足しているIT人材のリソース確保や、人件費削減などを目的として行われています。近年では、東南アジア諸国が委託先として多く選ばれています。
オフショア開発の動向
1980年代から日本で行われてきたオフショア開発は、かつてはコスト削減を主な目的として活用されていました。しかし、技術力のあるIT人材を雇う、リソース確保の面でオフショア開発の需要が高まっています。委託先として特に注目を集めているのは、ベトナム、フィリピン、インドの3国です。
オフショア開発が盛んな分野
オフショア開発は、特に以下のような分野で盛んに行われています。委託先によっては、AIやVRなどの先端技術も依頼が可能です。
・Webシステム・ソフトウェア・アプリ開発
・システムのテスト工程
・システム運用・保守
・AI(人工知能)・機械学習
・VR開発
・研究開発(R&D)
オフショア開発のメリット
オフショア開発のメリットは、主に3つあります。1つは国内で不足しているIT人材を確保できるという点です。近年では、海外のエンジニアの技術力が向上しており、優秀な人材を活用できる機会が増えています。
人材が確保でき業務効率が上がることで、納期短縮につなげられることもメリットです。また、以前と比べて効果は減少傾向にあるものの、人件費が安価な国に委託することで、コスト削減効果が期待できる場合もあります。
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オフショア開発のデメリット
オフショア開発では、ビジネス文化や言語の違いによる、意思疎通のしづらさがデメリットになりやすいでしょう。日本と海外では品質に対する認識が異なっている場合が多いため、成果物の細かい部分まで認識をすり合わせていくことが重要です。また、小規模案件を海外に委託する場合、コスト削減効果が少なくなってしまうこともデメリットの1つです。
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オフショア開発の流れ
次に、オフショア開発の具体的な流れを解説します。
開発目的を明確化する
まずは開発目的を明確にしましょう。制作したいプロダクトの内容とその理由、最終目標を具体的に決めておくことが大切です。また、オフショア開発の目的がコスト削減なのか、リソース確保なのかによっても、今後の委託先などの検討事項が異なってきます。委託する目的についても、事前に社内で共有しておきましょう。
委託先・契約・開発方式を決める
上記で決定した内容をもとに、委託先の国を検討します。国が決まったら、依頼するオフショア開発会社を選びましょう。オフショア開発会社を選ぶ際は、これまでの実績を見て、自社が依頼する内容とマッチしているかを確認することが大切です。
次に、契約形態を決定します。契約形態には請負型・ラボ型・準委任型の3つがあり、請負型は業務ごとに契約する方法、ラボ型は開発期間ごとに契約する方法、準委任型は労働の代行を目的として契約する方法です。また、開発手法にはウォーターフォール開発とアジャイル開発の2種類があるため、案件の規模や目的に適した手法を選びましょう。
仕様書・開発環境を整備する
次に、開発するプロダクトの機能や仕様をまとめた仕様書を作成します。海外では、「暗黙の了解」は通用しないことがほとんどです。細かな仕様や要望までを仕様書にまとめることが、プロジェクト成功の鍵となります。また、仕様書の翻訳に齟齬が生じるとトラブルの原因となるため、委託先の言語へ仕様書を翻訳する際も細心の注意を払いましょう。
成果物を確認・検証する
成果物を制作している途中は、こまめに進捗を確認することも大切です。海外と日本とでは、納期やスケジュールに対する認識がずれていることが多いため、細かく管理を行いましょう。また、納品後は委託先の担当者とともに、成果物と仕様書の内容が合っているかを確認します。不具合が見つかれば修正を依頼しましょう。
オフショア開発が向いているプロジェクト事例
次に、オフショア開発に向いているプロジェクトの事例を3つ紹介します。
技術力が必要な事例
オフショア開発では、技術力が必要な案件も依頼可能です。近年では、オフショア開発の委託国の技術領域の拡大が進んでおり、高い技術力を持つエンジニアを採用できるようになっているからです。また、AIや機械学習などの先端技術に対応できる開発会社も増えているため、自社に知見のない難しい開発も実現しやすくなっています。
長期的・大規模な開発の事例
オフショア開発では、長期的もしくは大規模な案件を委託する方が、コストメリットを享受しやすい傾向にあります。また、長期的に同じメンバーで開発を続けることでチームワークが形成され、コミュニケーションを取りやすくなることもメリットです。オフショア開発では、コミュニケーションの齟齬が生じないことが成功のポイントとなります。
既存システムに関わる事例
日本ではIT人材が不足しているため、企業においては、自社の既存システムの運用、拡張まで手が回らないことが課題としてよく挙げられています。既存システムに関わる仕事を海外に委託することで、自社のリソースを新規案件開発などのコア業務に割り振れるようになるため、業務効率化の推進にもつながります。
オフショア開発の成功事例
オフショア開発の成功事例を、リソース不足の解消とコスト削減の観点から紹介します。
リソース不足を解消した事例
日本では、IT人材が不足していることを背景に、エンジニアの採用競争が激化しています。そのようななか、A社では自社でリソースを確保することが難しく、必要なシステム開発ができない状況でした。オフショア開発を活用したことで、開発に必要な技術力を持つエンジニアを集められ、リソース不足の解消を実現しています。
コストを削減した事例
国内のエンジニアを採用してコストを削減しようとすると、どうしても品質面で妥協せざるを得ない傾向があります。品質を下げずにコスト削減を実現したい場合、人件費や物価の安い国に委託することも1つの方法です。B社では、オフショア開発で海外の人材を起用したことにより、品質を保ちながら開発コストを抑えることに成功しています。
オフショア開発の失敗事例
オフショア開発の失敗事例には、以下のようなものがあります。
成果物の品質が低い
オフショア開発で失敗しやすい事例として、成果物の品質が低いことが挙げられます。価格が安価という理由のみで委託先を決めると、プロダクトが指示どおりに完成しないことも考えられるでしょう。
たとえば、可読性の低いソースコードが用いられているケースです。読みにくいソースコードではバグが生じやすく、バグの特定や修正に時間もかかるため、結果として余計なコストがかかることにつながります。
担当者の入れ替わりが激しい
オフショア開発では、短期間で担当者が入れ替わる委託先もあるため注意が必要です。海外は日本よりも人材が流動的な側面があるため、プロジェクトの途中で担当者が変わることも考えられます。担当者が変われば引き継ぎが発生するため、開発がスムーズに進まなくなるリスクが発生しやすくなるでしょう。
費用対効果が悪い
オフショア開発のメリットの1つとして、コスト削減効果があることはすでに解説しました。しかし、予期せぬトラブル対応によって、想定以上のコストがかかることも考えられます。結果として、国内開発よりも費用がかかってしまい、オフショア開発における費用対効果が悪くなってしまった事例もあります。
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事例から分かるオフショア開発のポイント
以上の事例から、オフショア開発を成功させるために留意しておきたいポイントを3つ紹介します。
要望を具体的に決めておく
オフショア開発では、成果物の具体的な内容や要望を細かく提示することが重要です。日本と海外ではビジネスの文化や仕事に対する姿勢がそもそも異なるため、あいまいな指示では、想定と異なる成果物が上がってくる可能性があります。仕様書を委託先の国の言語へ翻訳する場合は、ニュアンスが変わらないよう配慮することも重要です。
開発会社の実績を確認する
オフショア開発会社を選ぶ際は、複数の会社を比較したうえで選びましょう。選定する際の1つのポイントは、オフショア開発会社のこれまでの実績を確認することです。オフショア開発会社の実績と、自社が依頼したい案件の内容が近ければ、イメージにあった成果物が完成する可能性が高まります。
コミュニケーションに力を入れる
繰り返しになりますが、オフショア開発で大切なことは、コミュニケーションが円滑に行われることです。自社が想定する成果物を納品してもらうためには、コミュニケーションに齟齬が生じないよう調整してくれる、ブリッジエンジニアの存在が不可欠といえます。
ブリッジエンジニアとは、自社と委託先の意思疎通サポートや管理などを担当してくれるエンジニアで、オフショア開発における重要な役割を担う人材の1人です。
まとめ
オフショア開発を成功させるためには、オフショア開発会社を選ぶ際に事例を確認することや、委託先に仕事を依頼する際に指示を正確に伝えることが大切です。また、自社と委託先の橋渡し役となる、ブリッジエンジニアを配置することも重要なポイントの1つといえます。
株式会社Sun Asteriskでは、日本とベトナムを合わせて1,000名のエンジニアを保有しており、さまざまなプロジェクトに柔軟に対応できる体制を整えています。また、言語のスペシャリストも在籍しているため、コミュニケーションのサポートも安心してお任せいただけます。オフショア開発の利用を検討する際はぜひお気軽にご相談ください。
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