QCDを活用すると、品質の高いシステムを開発できます。予算や納期も考慮したうえで、顧客の信頼や満足度の向上につながるでしょう。それぞれのバランスを取ることで、システム開発の成功に導けます。この記事では、QCDの概要や重要性、プロセス管理などを解説します。QCDを実践するコツも解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
QCDとは
QCDとは、システム開発の成功に欠かせない要素です。以下3つの言葉の頭文字を取り、造語として使われます。
- Quality(品質)
- Cost(費用)
- Delivery(納期)
プロジェクト内では、上記の3つが関係し合っています。発注者とシステム開発者、どちらもQCDのバランスを意識して、システム開発に取り組むことが必要です。
Quality(品質)
システム開発では、顧客満足度を満たす品質が求められます。たとえば、システムの安全性や使いやすさ、保守性などです。それぞれの要素は、同業他社との競争や顧客の信用にも関わるため重要です。ただし、小規模プロジェクトの場合、緻密なチェックが不要な場合があります。プロジェクトの規模によって品質に求める基準が異なるため、事前に確認する必要があります。
Cost(予算)
システム開発の予算は、人的リソースや技術的リソースなどが大半を占めます。それぞれを効率的に管理し、品質を維持したまま納期を守らなければなりません。あらかじめ開発の範囲を決めて、顧客の要望への具体的な対応が求められます。予算を抑えてリソースが不足すると、品質の低下や納期の延長のリスクが高まるため、注意が必要です。
Delivery(納期)
スケジュール通りにシステム開発を終わらせるには、納期の設定が欠かせません。納期を守ることで信頼につながるため、細かく設定して期日を守る必要があります。たとえば、画面表示の開始時期やリリースの期日など、詳細を設定するとよいでしょう。エンジニアの増員が納期の短縮につながらない場合もあるため、適切な時期を設定することが大切です。
QCDの優先順位
QCDにおいて、「Quality(品質)」が最優先です。次に「Cost(費用)」「Delivery(納期)」と続きます。システムの品質を担保することは、信頼性や満足度に影響するため最も大切な要素です。最低ラインの品質維持を考慮し、コストと納期を設定しなければなりません。
ただし、プロジェクトによって目的や特性が異なります。業界の特性や顧客の要望などでも、QCDの優先順位が左右される場合があります。システム開発の現場に応じて、柔軟に対応することが必要です。
システム開発におけるQCDの重要性
QCDは、企業の生産活動に影響するため重要です。その背景には、顧客の多様なニーズや市場競争力の維持、技術の変化などがあります。それぞれを考慮して、限られた予算や時間内でシステムを開発する必要があります。
QCDは相互に関係し合うことで、顧客満足や売上げなどの結果につながります。システム開発の総合的な成功には、3つの要素のバランスを取ることが求められます。
QCDを達成するためのプロセス管理
QCDを活用するには、プロセス管理をする必要があります。ここでは、適切なプロセス管理を4つ解説します。
スコープ管理
スコープ管理とは、主に以下2つの手法で管理するものです。
- 成果物スコープ:フェーズごとに成果物を定義して管理する
- プロジェクトスコープ:作業範囲を明確にして管理する
成果物スコープは、達成度合いに応じてプロジェクトを管理します。成果物の対象は、プロジェクト全体や設計書、仕様書などです。プロジェクトスコープは、基本設計や製造のような詳細な作業内容を洗い出して管理します。システム開発における、要件定義や基本設計などが対象です。
要員管理
要員管理とは、チームを組織して管理する手法です。適切な人員を配置して、プロジェクトを迅速かつ的確に進行させます。要員管理を行う際は、プロジェクトの人員を配置するために、保有するスキルを把握する必要があります。
また、能力開発や異動、採用など、さまざまな場面での人員配置を考慮しなければなりません。他部門のプロジェクトも含めて、俯瞰的に人材を管理することが大切です。
コミュニケーション管理
コミュニケーション管理とは、プロジェクト内の情報の伝達や共有を管理することです。それぞれを適切に管理し、プロジェクトのスケジュールの見直しを行います。会議や打ち合わせなどを通して、関係者に適切な情報を伝えることが大切です。
間違った情報が伝わると、プロジェクトの進行に悪影響を与えるため、注意が必要です。ステークホルダーをはじめとした関係者同士の利害も考慮し、情報を共有しましょう。
リスク管理
リスク管理とは、事前にプロジェクト進行のリスクに備えることです。適切なリスク管理をするために、想定される被害や対処方法などを考慮する必要があります。事前にリスクに備えることで、プロジェクトの進行ロスを削減可能です。
ただし、リスクの種類によって、プロジェクトに与える影響は異なります。生産プロセスごとに対策をすることで、リスクをコントロールできるでしょう。
調達管理
調達管理とは、必要な人員や設備、資材などを調達する管理手法です。外部機関との契約によって、プロジェクトに必要な資源を調達します。システム開発の予算を考慮して、適切なリソースを確保することが必要です。資源を調達するだけではなく、契約の管理も対象である点に注意しましょう。
調達管理には、取引先との連携も求められます。プロジェクトを成功させるために、適切な人的なリソースを調達することが大切です。
QCDを実践する際のコツ
QCDは、目標を達成するツールとして活用できます。ここでは、QCDを実践する際のコツを解説します。
最終目標を設定する
QCDを導入する際は、達成したい目標を設定する必要があります。最終目標を決めることで、何をするべきかを逆算できるためです。プロジェクトの初期段階であれば、課題が明確になっていないケースが多くあります。最初の段階で目標に具体的な数値をもたせることで、プロジェクトを適切に管理できます。
プロジェクト管理ツールを活用する
プロジェクト管理ツールは、QCDを管理するために有効です。たとえば、ガントチャートを活用すると、プロジェクト全体の流れや進捗状況などを可視化できます。また、フォーラム機能によって、コミュニケーションの利便性の向上も可能です。管理ツールを有効に活用することで、QCDの最適化な管理ができます。
信頼関係を構築する
QCDには、メンバーや外部関係者との信頼関係が欠かせません。プロジェクトの1人ひとりが担当する分野に責任をもち、チーム一丸となって取り組む必要があります。さまざまな関係者と積極的にコミュニケーションを図り、協力を得られる関係性を構築しましょう。良好な関係を築くことで、円滑な運営につなげられます。
発注者が積極的に関わる
QCDを実践するには、発注者がシステム開発に積極的に関わることが求められます。開発会社にすべてを任せると、品質を満たさないシステムが出来上がる可能性があるためです。発注者とシステム開発会社は、プロセスごとに協力しなければなりません。定期的に情報を共有し、発注者が管理に関わると認識のズレを防止できます。適切な見積もりを得るためにも、初期段階から関与することが重要です。
知っておきたいQCDの派生語
QCDには似た意味の派生語があります。ここでは、知っておくと役立つ派生語を4つ解説します。
QCDS
QCDSは、QCDに「Service(顧客対応)」を加えた造語です。評価指標として、顧客へのサービスやサポートなどが含まれます。QCDSにおいても、「Quality(品質)」を満たすことが最も大切です。システムの品質を担保すると、顧客へのサポート対応を最小限に抑えられます。
QCDF
QCDFは、QCDに「柔軟性(Flexibility)」を加えたものです。顧客の要望に対して、柔軟に応えているかを評価指標としています。QCDFでも品質が優先されますが、状況の変化に応じて対応する力も重要な要素です。システム会社と密にコミュニケーションを取ることで、システムを柔軟に改良できます。
QCDE
QCDEは、QCDに「Environment(環境)」を追加したものです。製造工程において、環境の負荷の小ささも考慮して評価されます。たとえば、コストを増やして環境負荷を下げたり、品質を重視して環境負荷を重くしたりするなどです。環境の負荷を考慮する際は、事前に認識を合わせる必要があります。
QCDSE
QCDに、「Safety(安全性)」と「Environment(環境)」を加えた造語です。QCDだけでなく、従業員の安全を確保し、環境に配慮することも評価指標とされます。たとえば、建設業では、作業環境が頻繁に変わるため、安全な環境が必要です。危険を伴う作業が多い環境では、QCDSEが重視されます。
まとめ
QCDはシステム開発の成功に必要な要素です。システムの品質を最優先とし、コストや納期を考慮してプロジェクトを進行させます。3つの要素のバランスを取ることで、顧客満足や売上などの成果につながります。それぞれのバランスを取るためには、プロセス管理やプロジェクト管理ツールなどを活用するとよいでしょう。
QCDは開発工程だけでなく、初期の見積もりにおいても重要です。スコープを明確にせずに進行すると、後工程で「コスト増」「納期遅延」などが発生するためです。正確な見積もりを取るために、要件整理や体制構築の段階から、QCDを意識する必要があります。Sun Asteriskでは、見積もり精度の改善に役立つ資料をご用意しております。ぜひ以下よりダウンロードください。

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