システム開発にはさまざまな手法があり、そのなかでも代表的なのが「ウォーターフォール型開発」です。工程ごとに区切りながら、上流から下流へと一方向に作業を進めるのが特徴です。この記事では、ウォーターフォール開発とアジャイル開発の違いや、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。
目次
ウォーターフォール開発とは計画重視の基本的な開発手法のこと
ウォーターフォール開発は、あらかじめ決めた計画にそって、上流工程から下流工程へと順番に進めるシステム開発の手法です。近年は柔軟な対応を重視するアジャイル型が注目される一方で、ウォーターフォールも目的やシステムの特性によっては今なお効果的な方法として選ばれています。ここでは、アジャイル開発との違いや、今もこの手法が選ばれる理由などについて解説します。
ウォーターフォール型の基本とシステム開発における特徴
ウォーターフォール型の特徴は、各工程を計画通りに順番で進め、後戻りせずに開発を完了させることにあります。たとえば「まず設計して、それが終わったらプログラムを書いて、最後にテストする」といったように、前の作業を終えてから次に進みます。
途中で前の工程に戻ることは基本的にないため、最初の段階で「何のシステムを作るのか」を細かく決めておくことが大切です。ステップごとに、内容を見直しながら進めるため、ミスがあっても早い段階で見つけやすく、後になってトラブルになるリスクを減らせます。
特に人数が多い大規模な開発や、完成後にしっかり動くことが求められるシステムに最適な開発手法です。
アジャイルとの違いと開発の進め方の比較
システム開発の手法のひとつに「アジャイル開発」があります。双方の違いは「開発の進め方」にあります。アジャイル開発は、機能ごとに短いサイクルで作っては見直す方法で、仕様の変更があっても柔軟に対応できます。
ウォーターフォールは最初に全体の仕様を固めてから順番に進めていくため、途中での変更には向いていません。アジャイルでは、1〜4週間ほどで小さな機能を完成させ、ユーザーの反応を見ながら改善していくスタイルが基本です。
市場の変化が激しい近年では、素早い検証が可能なアジャイルを選ぶ企業が増えています。ただし、どちらが適しているかはプロジェクトの性質によって変わります。
社内ツールの改善やWebサービスの新機能開発などはアジャイル、業務システムの入れ替えや公共系システムにはウォーターフォールが向いているといえるでしょう。
「時代遅れ」と言われる背景と今も使われる理由
現代では「ウォーターフォール開発は時代遅れ」といった声も少なからず見受けられます。その理由として挙げられるのが「開発に時間がかかること」や「途中での仕様変更に弱いこと」です。近年は、ユーザーの要望や市場の変化に素早く対応する必要があり、柔軟に進められるアジャイル開発が注目されています。
しかし、ウォーターフォール開発が全く使われなくなったわけではありません。たとえば、要件が明確で変更がほとんどないシステムや、銀行の取引管理や病院のカルテ管理といった、正確さが強く求められるシステムでは今もウォーターフォールが活用されています。
また、アジャイルとウォーターフォールを組み合わせた「ハイブリッド型」の開発手法も増えており、使い方次第で今も有効な手法といえるでしょう。
ウォーターフォール型のシステム開発工程と要件定義からテストまでの流れ
ウォーターフォール型のシステム開発では、工程を順番に進めるのが基本ですが、実際にどう進んでいくのかイメージが湧かないという人もいるでしょう。上流から下流へと流れるように、各ステップには明確な役割があります。ここでは、要件定義から基本設計、詳細設計、実装、テストといった一連の流れについてわかりやすく解説します。
要件定義から基本設計までの進め方
たとえば「従業員の勤怠管理システム」を作るとしましょう。まずは要件定義で「出勤と退勤時間を記録する」「1か月ごとの勤務時間を自動計算する」など、どのような機能が必要かを決めていきます。この段階で、誰が使うのか、どうやって使うのかも整理しておくことが大切です。
次に基本設計では、その内容をもとに、画面のレイアウトや入力フォームの配置、ボタンの動き方などをざっくり決めます。「どこに何があるか」を見える形にする作業です。この段階が曖昧だと、あとで手戻りが発生しないよう、細かく決めておく必要があります。
詳細設計から実装・テストまでの進め方
勤怠管理システムの基本設計が終わったら、次は詳細設計に入ります。「ボタンを押したら何秒以内に反応する」「データはこの順で保存する」など、見えない部分の動きを細かく設定します。実装の工程では、その内容に沿って実際のプログラムが作られる流れです。
テストも段階を踏んで実施され、まずは「出勤時間だけ登録してみて正常に動くか」といった単体テストを実施します。その後「出勤・退勤・集計までの処理が問題ないか」といった総合テストが行われます。
最後は「実際に何人が使っても問題ないか」という運用テストへと進み、全てのチェックをクリアすれば無事リリースとなる流れです。

進捗管理と品質担保の方法
ウォーターフォール開発は、進める順番が決まっているため、どこまで作業が進んでいるかを把握しやすいのが特徴です。たとえば勤怠管理システムの場合「今は画面の設計をやっていて、来週からプログラム作成に入る」といったように工程ごとの見通しが立てやすくなります。
工程の可視化がしやすいため、WBS(作業分解構造)を使った計画管理にも最適です。工程の区切りごとにレビューやチェックを行うことで、不具合や設計ミスを早めに見つけやすくなります。また、テストも1つひとつの段階で丁寧に行うため、後から大きなトラブルになるリスクを減らせます。
事前に設計と要件をしっかり固めておくことで、チーム内での認識のずれも起こりにくく、安定した開発が可能です。
ウォーターフォール開発のメリット・デメリット
ウォーターフォール開発は、アジャイル開発などとは異なり、事前に計画した流れに沿って工程をひとつずつ進めていくスタイルです。やり方が明確な分、向いているプロジェクトもあれば、上手くいかないケースもあります。
ここでは、ウォーターフォール開発のメリットとデメリットを整理しながら、それぞれの特徴を踏まえてどう使い分けるべきかを解説します。
メリット|進捗・品質・予算を管理しやすい
ウォーターフォール開発の大きな強みは、開発の全体像があらかじめ見えていることです。最初に「何の機能を作るか」「どのような流れで進めるか」を細かく決めたうえで、設計から実装、テストまで順番に進めていくため、計画通りに作業を進めやすくなります。
その結果、進捗状況を把握しやすく、関係者間での情報共有や作業の引継ぎもしやすくなります。また、工程ごとに内容をしっかり確認しながら進めるため、一定の品質を保ちやすいこともメリットです。予算や必要な人員も初期段階で見積もれるため、コスト面での管理もスムーズに行えます。
こうしたメリットがあるため、関係者が多く、手戻りが少ない方が望ましいシステム開発において、今もなお採用されるケースが多い手法です。
デメリット|変更に弱く、手戻りコストが大きい
ウォーターフォール開発の最大の弱点は、最初にすべての仕様を決めてから開発を進めることにあります。この方法では、あとから「やっぱり機能を変えたい」「別の仕組みにしたい」と思っても簡単には変更できません。
たとえば、実装が進んだ段階で仕様を修正する場合、設計や要件定義まで戻って作業をやり直す必要があり、大幅な時間とコストがかかります。さらに、各工程が終わるまで動くものが見えないため、ユーザーの反応をもとに微調整したい時にも対応が難しくなります。
変化の激しい市場やスピード重視の開発では、このような手戻りリスクが大きな課題といえるでしょう。だからこそ、ウォーターフォールを選ぶ場合は、最初の段階で要件定義や仕様をしっかり固めておくことが重要です。
まとめ
システム開発におけるウォーターフォールとは、あらかじめ決めた工程を順番に進めていく開発手法のことです。計画通りに進めやすく品質を安定させやすいといった特徴があり、アジャイル開発とは進め方や柔軟性の面で大きく異なります。
進捗や予算を管理しやすいというメリットがあり、大規模で要件が固まっている開発に適しています。一方で、仕様変更や手戻りには弱く、スピード感が求められる開発には不向きなケースもあります。自社のプロジェクトの性質に応じて、最適な開発手法を選ぶことがプロジェクト成功への近道です。
ウォーターフォール型開発を成功させるには、各工程でのタスクを明確にし、進捗を可視化することが重要です。Sun Asteriskの「WBS 基本と実践」では、WBSの基本から実践的な作成方法までを解説しており、プロジェクトの計画精度と実効性の向上を目指せます。以下のリンクより詳細をご確認いただけます。
WBS(Work Breakdown Structure)について、基本の解説と、作成方法を具体的にご紹介いたしました。
アジャイル開発で最低限抑えておきたいポイントをチェックリスト化いたしました。