システム開発を行うには、膨大な費用が発生します。発注に先立って見積書を取る際は、必要以上の出費を発生させないためにも、作業内容の内訳や各項目の費用の妥当性を見極めることが大切です。
今回は、システム開発にかかる費用の内訳や、見積もりの妥当性を判断するためのポイントを詳しく解説します。
システム開発費用の構成要素とは?
システム開発費用は、単価・工数・管理費・そのほかの費用の4つの要素で構成されています。それぞれの詳細を見ていきましょう。
単価
単価とは、システム開発に携わるエンジニア1人あたりの費用を指します。基本は1か月単位で算出し、スキル・経験・担当する開発内容によって金額が大きく異なります。なかでも、プロジェクトを取りまとめるPMや上流工程のSEの単価は高額になります。
作業工数
作業工数は、開発に必要な時間の総量を表す単位です。単価と作業工数を掛け合わせることで、エンジニア1人あたりの人件費を算出します。開発にかかる工数は、要件定義の複雑さや明確さによって大きく変動します。不明確な要件定義のまま開発を進めると、追加作業が発生しやすく、想定していた作業工数を大幅に超過するおそれがあります。
管理費
管理費は、開発に付随する間接的な費用です。開発に使用するデバイスや設備の管理費用、ソフト・ライセンスのダウンロード費用などがこれにあたります。大規模な開発プロジェクトの場合、人件費だけでなく管理費も膨大になります。
そのほかの費用
システム開発では、エンジニアの人件費と管理費に加えて、そのほかの費用も発生します。たとえば、エンジニアが遠方から移動する際にかかった交通費や宿泊費は、そのほかの費用として計上するケースが一般的です。また、プロジェクトがスケジュール通りに進まないケースを考慮して、あらかじめ予備費を確保しておくこともあります。
システム開発の見積もりの内訳
ここからは、システム開発の見積書によく記載される項目について解説します。
要件定義費
要件定義は、クライアントと要件定義を擦り合わせる段階でかかる費用です。要求の数や開発規模の大きさによって費用が変動します。
設計費
設計費は、システムの基本構造・画面レイアウト・データベース構成などを定める作業にかかる費用です。基本設計・詳細設計に分かれており、開発作業の土台となる役割を果たします。
デザイン費
デザイン費は、ユーザーインターフェース(UI)・画面レイアウト・アイコンなどのビジュアル設計にかかる費用です。デザイン費には、デザイナーによる設計とクライアントとの調整工数が含まれています。
システム開発費
システム開発費は、設計された仕様書に基づいてプログラムを構築する工程にかかる費用です。システム開発費の大部分を占める費用で、ほとんどがエンジニアの人件費に充てられます。
テスト費
テスト費は、開発後のシステムが仕様通りに動作するかを検証する工程にかかる費用です。単体テスト・結合テスト・総合テストなど、開発段階に応じて複数のテストが行われます。
導入費
導入費は、完成したシステムを本番環境へ反映する作業にかかる費用です。サーバー設定・初期データ登録・稼働確認などがこれに含まれます。導入を担当した人員の人件費のほか、設備や機材の費用が含まれるケースもあります。
導入支援費
導入支援費は、システム利用者への操作説明・マニュアル作成・初期トレーニングなどにかかる費用です。スムーズな稼働のためには、導入後の手厚いサポートが欠かせません。
運用保守費
運用保守費は、システム稼働後のトラブル対応や機能追加、定期メンテナンスなどにかかる費用です。システムを稼働するうえで欠かせないランニングコストであり、継続的に発生し続けます。
そのほかの費用
そのほかの費用には、納品物の管理費・セキュリティ費用・クラウド利用料・ライセンス料などが含まれます。プロジェクトによっては、エンジニアの交通費や宿泊費、会議室のレンタル料などが発生するケースがあります。
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システム開発の見積もりを算出する4つの方法
システム開発の見積もりを算出する方法は、いくつか存在します。ここでは、代表的な算出方法を4つ紹介します。
トップダウン(類推見積)
トップダウン法は、過去の類似案件を参考にしながら予算を算出する方法です。ざっくりと予算を見積もるため短時間で算出できますが、類似案件がない場合は精度が低くなりがちです。また、複雑な要件や大規模なプロジェクトにはあまり適していません。
パラメトリック(係数モデル)
パラメトリック法は、作業内容を点数化して予算を算出する方法です。特定のモデルを参考に、各作業に係数を掛けて細かい金額まで見積もります。トップダウン法と併せて活用することも多く、より詳細まで予算を算出したいときに便利です。
ボトムアップ(工数積上げ)
ボトムアップ法は、各工程ごとに必要な作業を仮定しながら工数を積み上げる方法です。開発にかかる全ての工程を細分化しながら予算を算出するため、精度の高い金額を導き出せます。しかし、見積もりの作成に時間がかかるうえ、膨大な工数が発生する大規模プロジェクトの見積もりには不向きです。
FP法(ファンクションポイント法)
FP法(ファンクションポイント法)は、作業内容を機能単位で分類し、機能に「難易度」や「複雑さ」の係数を掛け合わせて予算を算出する方法です。基準をもとに計算するため正確な予算を想定できますが、作業内容が明確に定まっている必要があります。
費用の妥当性を判断するポイント
システム開発の見積書を受け取った際、さまざまな項目が並んでいたり高額だったりして、判断に迷う方は多いのではないでしょうか。ここからは、費用の妥当性を判断するためのチェックポイントを紹介します。
エンジニアの単価が妥当か
エンジニアの単価は個人のスキルレベルや担当フェーズによって幅があり、特に上流工程や専門的な知識を要する業務では高単価になる傾向があります。見積書に記載されたエンジニアの単価が、相場より極端に高い場合や安い場合は要注意です。職種ごとの相場や経験年数を確認し、単価に妥当性があるかどうかを見極めましょう。相場観は、業界レポートや過去に発注した案件との比較、フリーランス向けの求人情報などを参考にすると把握しやすくなります。
作業範囲や作業内容が明確に定められているか
見積もりに記載された作業範囲や作業内容が不明確だと、費用配分が曖昧になり、後から追加費用が発生する可能性があります。見積書の段階で「どこからどこまでが開発対象か」や「どこからが追加費用になるのか」などを明文化し、双方の認識を一致させておきましょう。
作業工数が妥当か
作業ごとにかかる工数が作業内容に対して適切かどうかを確認することは、費用の妥当性を判断する上で重要です。過去の類似開発事例や業界の相場と比較し、極端に工数が多かったり少なかったりしないかをチェックしましょう。特に、調査分析・進捗管理・テストなどにかかる工数は見落とされがちなので注意が必要です。たとえば、要件定義に1~2人月、基本設計に1人月程度など、工程ごとに目安の工数感を持っておくと、見積書を読み解きやすくなります。
開発における前提条件に問題がないか
システム開発の見積書は、開発環境や使用する機材など、いくつかの前提条件をもとに作成されています。そのため、開発における前提条件の認識に相違がないかどうかを必ず確認する必要があります。
リスク対策が盛り込まれているか
システム開発では、想定外の仕様変更やスケジュールの遅延がつきものです。イレギュラーな対応が発生した際でも柔軟に対応できるよう、見積書にはあらかじめリスク対策が盛り込まれている必要があります。トラブル時の対応方法や予備工数、追加費用のルールなどが明記されているかどうかを確認しましょう。
>>見積もりの妥当性がわかる|「システム開発 見積もりガイド」を見てみる
費用を抑えるためのポイント
システム開発には高額な費用がかかるため、できるだけ予算を抑えたいと考える企業もあるのではないでしょうか。ここからは、開発費用を安く抑えるために工夫できるポイントを紹介します。
内容や機能を明確にして追加料金を発生させない
見積書の段階で要件定義や実装したい機能を明確にしておくことで、不必要な機能を実装する費用や開発中の機能追加にともなう追加費用の発生を防ぐことができます。あらかじめ必要な機能と優先順位を整理しておくと、開発側との意思疎通もはかりやすいでしょう。
自社のリソースを部分的に活用する
全ての開発作業を外部に委託すると、膨大な人件費が発生します。開発予算を抑えたい場合は、開発工程の一部を社内で対応することも視野に入れましょう。内製化できる工程を自社のリソースでまかなうことで、コストダウンにつながります。
パッケージソフトを活用する
システムをゼロから開発すると、時間もコストもかかります。開発内容が複雑でない場合は、既存のパッケージソフトを活用することで費用を大幅に抑えられるかもしれません。ただし、全てのシステムをゼロから開発するよりもカスタマイズ性は低下するので注意が必要です。
複数社で相見積もりを取る
見積もりを取る際は、1社だけでなく複数社に依頼をかけて比較検討することが重要です。相見積もりをとることで、開発費用の相場を把握でき、不当に水増しされた金額を見極めることができます。また、担当者の対応やサポート体制の違いなども事前に確認できるでしょう。また、金額だけでなく、見積書の粒度や工数の算出根拠なども比較することで、信頼できるパートナーかどうかをより客観的に判断できます。
補助金を利用する
中小企業やスタートアップ企業の場合、国や自治体の補助金を利用できるケースがあります。補助金を活用することで、開発にかかる費用の一部を公的に支援してもらうことが可能です。申請には条件や期間が設けられているため、事前にリサーチしておくとよいでしょう。
まとめ
システム開発の費用にはさまざまな項目があり、作業内容や想定される工数をもとに見積もりを算出しています。開発中の追加費用発生や必要以上の出費を防ぐためにも、見積書の段階で費用の妥当性を判断することが重要です。正しく見積書を読み解くことは、余計なコストを抑え、信頼できるパートナーを見極めることにもつながります。
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