開発支援事例:JMAM(日本能率協会マネジメントセンター)
立ち上げからPoC、UI/UX設計、開発、グロースまで一気通貫で伴走
JMAM(日本能率協会マネジメントセンター)は、日本能率協会の教育・出版・手帳部門を母体に独立した企業です。1991年の創立(分社化)以来、「学び」と「時間」のデザインを通じて、個人と企業の成長を支援。現在は、人材育成、出版、手帳の3つの事業を展開し、「学び続ける社会」と「時間を活かす文化」の実現を目指しています。
同社の長期ビジョン「JMAMグループ2030ビジョン」を担う新規事業として企画されたのが、個人成長支援サービス『ahame(アハミー)』。心理学とゲーム性を融合し、コミュニケーション力やEQ(心の知能指数)を高める短時間の学習体験を提供。SEL(社会性と情動性の学習)* に基づき、働く人のストレス要因として顕在化する人間関係やコミュニケーションの課題にアプローチしています。
Sun*は本プロジェクトに構想段階から、ビジネス・テック・クリエイティブの三位一体でPoC、UX設計、開発、リリース後のグロース支援までを支援。3年以上にわたり、社会課題に根差したサービスづくりを伴走しています。
*SEL(社会性と情動性の学習:Social and Emotional Learning)
子どもや大人が自分自身や他者との関係をよりよく理解し、感情をコントロールし、責任ある意思決定を行い、共感や協力を通じて健全な人間関係を築くための能力を育成する教育的アプローチ。
ahame(アハミー)とは
『ahame(アハミー)』は、感情の読み取り力や対人スキルを、短時間で楽しく身につけられるよう設計された個人成長支援サービス。
共同開発・監修には、『ビリギャル』著者の坪田信貴氏、主人公の小林さやか氏、ゲームクリエイターの米光一成氏などが参加。それぞれの知見や経験を活かし、ユーザーが“はじめの一歩”を踏み出しやすく、継続的に取り組めるよう、ゲーム性を取り入れた仕掛けが特徴です。サービス名の『ahame』は、「アハ体験(aha)」と「自分(me)」を組み合わせた造語で、働く毎日に“ちょっとした気づき”を届ける存在を目指しています。
クライアントの課題
JMAM社は『ahame(アハミー)』プロジェクトに取り組むにあたり、いくつかの課題を抱えていました。
まず、同社は長年にわたりBtoB領域で教育・人材育成サービスを展開してきた一方で、BtoC領域でのサービス開発には十分な経験がなく、生活者向けプロダクトの企画・設計に関するノウハウやリソースが不足していました。
また、ITプロダクトの内製開発に関する専門知識や実務経験も限られており、システム企画から要件定義、UX設計までを一貫してリードできる体制が社内に整っていないという課題もありました。
さらに、短期間で事業構想と検証(PoC)を並行して進めるためのリソースやプロセスも十分ではなく、スピーディに仮説検証を行う体制の構築が必要とされていました。
サービスデザインを支える思考フレーム VDS
Sun*では、サービスの構想と事業検証を支えるフレームワークとして「Value Design Syntax バリューデザインシンタックス(VDS)」を活用しています。
バリューデザイン・シンタックス/Value Design Syntaxは、Sun*グループである株式会社NEWhの登録商標です。
このVDSは3つの柱で構成されており、サービス全体の構造と整合性を言語化・可視化する手法です。
- サービスコンセプト(ユーザー像・課題・価値定義)
- 競争戦略(選ばれる理由/選ばれ続ける理由、知的資産や中長期的な優位性)
- 収支モデル(収益構造、コスト、損益試算)
本プロジェクトでは、VDSを初期段階から6度にわたりアップデート。以下のようなプロセスを経て、サービス案の具体化と精度向上を図りました。
- 仮説整理と着眼点の共有(初期)
- 複数案の比較・絞り込み
- 重要論点の色分け分析
- 一貫性のある全体像の記述
- 施策レベルへの落とし込み
- 収支や価値定義の再検討・ブラッシュアップ
このVDSを“進化するフレーム”として使い続けたことにより、サービス構想と事業性の両面からの検証・確信を深めることができました。このプロセスでは、「抽象 → 具体」への行き来を繰り返すことで、サービス構想を着実に実行可能な形へと落とし込むことができました。
BTC三位一体の共創体制とフェーズごとの連携進化
こうした背景のもと、Sun*はサービス構想から実装までを包括的に支援する共創パートナーとしてプロジェクトに参画。初期段階から、ビジネス(B)・テック(T)・クリエイティブ(C)による体制を構築し、プロジェクトの進行に合わせて支援の範囲と深度を段階的に拡大していきました。
本プロジェクトは、2022年2月のキックオフからスタートし、段階的にフェーズを重ねながら、2023年2月より本格的な開発フェーズへと移行しました。
サービスコンセプト策定(約4ヶ月)
ビジネスチーム中心に、スモールスタートで、VDS・競合調査・インタビューを実施し、コンセプトの言語化・可視化を中心に支援
UXデザインフェーズ(約2ヶ月)
クリエイティブチームが加わり、カスタマージャーニーやストーリーマップを作成。ユーザー体験設計を具体化し、VELCTモデルをベースにしたUX思想の反映
サービス設計においては、JMAMが掲げる⾃律的な成⻑を促すサイクル「VELCT(ヴェルク)モデル」――Visualize(可視化)/Encourage(後押し)/Learn(学ぶ)/Continue(継続)/Try(挑戦)の考え方をUXにも反映。ユーザーが“こうありたい自分”に一歩ずつ近づけるような体験設計を行いました。
PoCフェーズ(約3ヶ月)
テックチームが本格参加。検証用プロトタイプの設計、サイト制作を行い、ユーザー調査の設計と分析を支援
デザイン・要件定義フェーズ(約3ヶ月)
デザイナーとエンジニアが連携して実装に向けた仕様書・画面設計を整備
開発フェーズ
ベトナム拠点のエンジニアも参加し、本開発・改善に取り組む
サービスリリース、グロースフェーズ
Webサービスのリリース後、サービスのグロース支援
モバイルアプリリリース*
より直感的で使いやすいインターフェースへ。
Sun*はこのように、初期構想段階から段階的に支援の質と量を高めながら、長期的な信頼関係を築き、成果創出につなげてきました。
*正式版モバイルアプリについては、別の開発ベンダーが主導して開発を担当
クライアントの声
『発注者・請負者という概念はプロジェクト発足から存在せず、目的共有、柔軟な課題修正や解決、フィードバックし合える「不確実性のものを確実に変えていけるプロフェッショナル集団」として欠かせない存在です。全メンバーが主体的に参画いただき感謝しております。引き続き社内チームでは得られない、視点・視野・視座を期待しております。』