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第1回:非エンジニア向け!AIを使いこなす側に回るための軸をつくる勉強会

更新日: 2026年9月29日

第1回:非エンジニア向け!AIを使いこなす側に回るための軸をつくる勉強会

 

記事のポイント(要約)

① AIを使いこなす第一歩は、すべての機能を理解することではなく、うまくいかない経験も含めて試行錯誤を楽しみ、使い続けることにあります。

② AIが期待どおりに動かないときは、「指示を改善して再挑戦させる」か、「できた部分を生かして人間が仕上げる」かを、目的と時間に応じて使い分けます。

③ 目的や制約などのコンテキストを十分に伝え、調査、音声入力、プロトタイプ、AIエージェントへと活用範囲を広げることで、非エンジニアでも仕事の進め方を大きく変えられます。

「生成AIを使わなければと思う一方で、変化が速すぎて何から始めればよいかわからない」「試してみたものの、期待した回答が出ず、結局使わなくなった」――。

生成AIに関心を持つ非エンジニアが抱えやすい悩みです。

AIを使いこなすために、技術知識を網羅する必要はありません。重要なのは、AIを過信も過小評価もせず、まず触り、試し、目的に応じて任せる範囲を調整することです。

本記事では、Sun Asteriskが2026年4月8日に開催した「AIに振り回されないために、まず楽しむ。使いこなす側に回るための軸をつくるAI勉強会 第1回」の内容をもとに、非エンジニアがAIを使いこなすための考え方と実践方法を7つの軸に整理して解説します。

Business Designerの永安理久による実際のAI活用や、新規事業開発におけるプロトタイプ活用の例も交えながら、仕事の進め方がどのように変わり得るのかを見ていきます。

※本記事は2026年4月8日時点の講演内容をもとに構成しています。生成AIの製品名、機能、料金、利用条件などは変更される可能性があります。

登壇者プロフィール

株式会社Sun Asterisk Business Designer
永安 理久(ながやす りく)

新卒でソニーに入社し、Xperiaの商品企画を担当。同時に、合成音声技術を活用したエンターテインメント領域の新規事業を自ら起案し、企画からPoC、予算獲得まで一貫して推進。

その後、汗分析技術を扱うスタートアップPITTANに一人目のビジネス職として参画し、パートナーシップ構築や販売・カスタマーサクセス体制の立ち上げを担当。

Sun*参画後は、新規事業の事業化支援に携わる。


① AIを使いこなすために、なぜ「まず楽しむ」ことが大切なのか

AIを使いこなす第一歩は、最初から完璧な成果を求めることではありません。変化や失敗も含めて試すことを楽しみ、継続して触り続けることが重要です。

AIは短期間で機能や性能が変化します。以前試して「この作業には使えない」と感じた場合でも、数カ月後に改めて試すと、異なる結果が得られることがあります。

人間は「学び続ける未完成」だから変化に適応できる

AI時代の変化への向き合い方を考えるヒントになるのが、人間を「学び続ける未完成な存在」と捉える考え方です。

人間は、大人になってからも新しいことを学び、環境の変化に適応できます。AIが急速に進化する状況においても、この「学び続けられること」が大きな強みになります。

もう一つのヒントが、「赤の女王仮説」です。

環境そのものが変化している状況では、現在と同じ状態を保つためにも、自分自身が変化し続ける必要があります。

AIについても、一度試して使えなかったからといって、そこで判断を確定させる必要はありません。定期的に触り直し、AIの進化とともに自分の使い方も更新することが大切です。

AIの未完成な出力を「伸びしろ」と捉える

AIが期待した水準のアウトプットを出せなかったときに、

このレベルでは役に立たない

と切り捨てるのではなく、

今はここまでできる。次はどこまで進化するだろう

と捉えることで、AIを継続して使いやすくなります。

もちろん、使い続ければ必ず望んだ結果が得られるわけではありません。それでも、AIの現時点の限界と、自分の指示に不足していた点を切り分けながら試す経験は、今後の活用力につながります。

一度の結果だけでAIを評価するのではなく、変化を見ながら付き合い続けること。それが、AIに振り回される側ではなく、使いこなす側に回るための基本姿勢です。


② AIが期待どおりに動かないときの二つの選択

AIがうまく動かないときには、「指示を改善して再挑戦させる」方法と、「できた部分を生かして人間が仕上げる」方法があります。

どちらが正しいということではなく、その時点の目的や締め切りに応じて使い分けることが重要です。

AIを育てるか、人間が巻き取るか

例えば、AIに資料作成を依頼したものの、完成度が50%だったとします。このときには、次の二つの選択肢があります。

選択肢 適している状況 得られるもの
指示を改善し、AIに再挑戦させる 学習や検証に使える時間がある AIへの伝え方や活用力が高まる
AIが作った下書きを人間が仕上げる 締め切りが迫っている 下書き作成の時間を短縮できる

AIだけで完成しなかったとしても、構成案や下書きができたことで人間の作業が楽になったのであれば、AIはすでに価値を出しています。

「AIだけで100%完成しなかったから失敗」と捉えるのではなく、「人間が行う作業をどこまで減らせたか」という視点で評価することが大切です。

AIがうまく動かないときに、指示を改善して再挑戦させる方法と、人間が残りの作業を引き取る方法を比較

AIに原因分析と改善を依頼する

時間に余裕がある場合は、単に「もう一度やり直して」と依頼するのではなく、うまくできなかった原因をAI自身に分析させる方法も有効です。

例えば、次のようにフィードバックします。

今回の回答が期待した内容と異なった原因を分析してください。
私の指示に不足していた情報と、あなたが誤って解釈した内容を分けて整理してください。
同じ問題を起こさないための改善方法を示したうえで、回答を作り直してください。

AIに対して1on1で指導するようにフィードバックを重ねることで、AIの回答だけでなく、自分自身の依頼の仕方も改善できます。

一方、締め切りが迫っている状況でAIとのやりとりに時間をかけ続けると、かえって非効率になる場合もあります。

今はAIの使い方を学ぶ時間なのか、それとも成果物を完成させる時間なのか。その時点の目的を俯瞰して判断することが、効率的なAI活用につながります。


③ ハルシネーションを「正確さ」と「創造性」で使い分ける

ハルシネーションとは、生成AIが事実と異なる内容や、実在しない情報をもっともらしく出力する現象です。

重要なのは、AIを利用する目的に応じて、回答の扱い方を変えることです。

正確性が必要な場面では、回答を必ず検証する

次のような情報を扱う場合は、AIの回答をそのまま利用せず、一次情報を確認する必要があります。

  • 法律、契約、規制、制度に関する情報
  • 金額、割合、年月日などの数値
  • 人物や企業の発言
  • 製品の機能、料金、利用条件
  • 市場規模や調査結果
  • 医療、金融、セキュリティなど、判断ミスの影響が大きい情報

AIが示した情報についても、情報源が実在するか、公開日はいつか、誰が発信した情報か、要約によって意味が変わっていないかを確認することが重要です。

予想外の回答を「新結合」のきっかけにする

一方で、AIによる予想外の組み合わせが、新しい発想のきっかけになる場合もあります。

イノベーションを、既存の要素を新しい形で組み合わせる「新結合」と捉えると、AIが出した意外な回答をアイデアの材料として利用できます。

例えば、異なる業界の仕組みや技術が組み合わさった回答が出た場合、事実としてそのまま採用することはできなくても、

  • この組み合わせに新しい価値はないか
  • 別の業界へ応用できないか
  • 前提条件を変えれば成立しないか
  • 顧客の課題と結びつけられないか

と問い直すことで、新たな発想につながる可能性があります。

利用目的 AIへの求め方 出力の扱い
調査、契約、数値確認 情報源や条件を絞り、正確性を重視する 一次情報で検証する
アイデア出し、企画の発散 異業種や異なる視点との組み合わせを許容する 仮説や着想として扱う
意思決定、企画の収束 評価基準や制約を明確にする 人間が妥当性を判断する

 

AIによる知識の予想外の組み合わせが、事実と異なる出力にも新しい発想にもなり得ることを示している

AIの回答を正解として受け入れるのでも、すべてを誤りとして切り捨てるのでもなく、目的に応じて利用価値を判断することが重要です。


④ 良い回答を引き出す「思考の箱」とコンテキスト

AIには、依頼内容だけでなく、目的、背景、対象、制約、判断基準まで伝える必要があります。

AIが何を考慮し、何を考慮しなくてよいかという「思考の箱」を設計することが、回答の質を左右します。

隠れた前提条件が欠けると、AIは意図を補えない

人間同士の会話では、常識や過去の経験から、明示されていない前提条件を補いながら理解します。

一方、AIは、依頼者が頭の中で考えている条件を必ずしも正しく推測できません。

例えば、「社内のAI活用を推進する方法を考えて」と依頼した場合、依頼者の頭の中には次のような条件があるかもしれません。

  • 利用を強制する施策にはしたくない
  • 予算には上限がある
  • 情報セキュリティ規程を守る必要がある
  • 非エンジニアも参加できる内容にしたい
  • 3カ月以内に試行したい

これらを伝えなければ、現実性や倫理性を欠いた案、予算面で実行できない案が返ってくる可能性があります。

AIに考えさせる範囲を決めるうえで重要になるのが、「フレーム問題」という考え方です。

条件を設けなければ、AIは幅広い案を提示できますが、現実性は下がります。条件を追加するほど回答は現実的になりますが、同時に発想の幅は狭くなります。

AI活用施策を考える際、倫理や予算などの制約を加えることで回答が現実的な案へ絞られていく流れ

論理性や正確性を求めるときは「思考の箱」を狭くし、アイデアを広げたいときは、あえて箱を広くする。この調整によって、AIを収束にも発散にも使えるようになります。

目的・背景・制約・判断基準を伝える

AIへ依頼するときは、次の情報を整理すると、回答の精度を高めやすくなります。

  1. 目的:何を実現したいのか
  2. 背景:なぜ必要なのか、現在何が問題なのか
  3. 対象:誰が利用するのか、誰に向けたものか
  4. 前提条件:すでに決まっていることは何か
  5. 制約:予算、期間、禁止事項、利用できない手段
  6. 参考情報:過去資料、事例、社内データ
  7. 出力形式:文章、表、企画書、比較表など
  8. 判断基準:何をもって良い回答とするのか

例えば、次のように伝えます。

【目的】非エンジニア社員のAI利用を増やしたい
【背景】ツールは導入済みだが、利用者が一部に限られている
【対象】営業、企画、管理部門の社員
【期間】3カ月以内に試行する
【制約】参加の強制はしない。機密情報は外部AIへ入力しない
【出力】実施施策を3案、必要な工数・費用・リスクとともに比較する
【判断基準】参加しやすさ、継続性、情報セキュリティを重視する

AIとのコミュニケーションを「短い命令」ではなく、「判断材料の共有」と捉えることが大切です。

音声入力を「コンテキスト入力装置」として使う

多くの背景情報をキーボードで入力しようとすると、手間がかかるため、説明を無意識に省略しがちです。

そこで役立つのが音声入力です。

話す場合は、迷っている点や事情、細かなニュアンスまで一度に伝えやすくなります。文章として整理されていなくても、まず口頭で情報を渡し、その後にAIへ構造化させることができます。

音声入力は、単なる文字入力の高速化だけではありません。AIへ豊富な判断材料を渡す「コンテキスト入力装置」として活用できます。

投影資料では一例として、タイピングを約40文字/分、音声入力を約300文字/分とし、入力量に約7倍の差があると整理しています。実際の入力速度は、話者や利用環境、ツールなどによって異なります。

タイピング約40文字毎分に対し、音声入力では約300文字毎分となる情報入力量の違いを比較

実際に音声入力ツールを約1カ月利用したところ、ツール上では約16時間分の入力時間が短縮されたと表示されました。

あくまで一つの利用例ですが、音声入力は、AIへ多くのコンテキストを効率よく伝えるための手段として試しやすい方法です。

音声入力ツールを約1カ月利用し、ツール上で約16時間の入力時間短縮と表示された利用実績


⑤ 非エンジニアがAI活用を始めるなら「調査」から

非エンジニアが最初に取り組みやすい業務の一つが「調査」です。

単に検索や要約を任せるだけでなく、調査計画の設計から情報整理、結論の作成までをAIと一緒に進めることで、AIの効果を実感しやすくなります。

調査計画から結論まで、AIと一緒に進める

調査は、情報を集め、分類し、比較し、結論を出すまでに多くの時間がかかります。

AIを活用する場合は、最初から検索結果を集めさせるのではなく、次の順番で進めます。

  1. 調査の目的を伝える
  2. 必要な調査項目をAIに設計させる
  3. 企業規模、業種、地域などの分類軸を決める
  4. 各論点について情報を収集する
  5. 事実、企業の主張、AIによる推測を分ける
  6. 共通点と相違点を整理する
  7. 人間が一次情報を確認する
  8. 調査結果から示唆や次の問いをまとめる

例えば、次のように依頼します。

国内製造業における生成AI活用の課題を調査します。
まず、調査の目的を達成するために必要な論点と調査手順を設計してください。
大企業と中小企業の違い、業務領域別の違いも確認してください。
各情報には出典、公開日、対象企業を記載し、事実と推測を分けてください。
最後に、共通課題、企業規模別の違い、追加調査が必要な論点を整理してください。

AIが提示した出典については、リンクが実在するかだけでなく、元の資料に本当にその内容が書かれているかを確認します。

調査の設計から結論の整理までを一緒に行うことで、人間は「何を調べるべきか」「情報から何を読み取るか」という判断に集中しやすくなります。

まずは一つのAI基盤を継続して使う

AIツールは次々に登場しますが、最初からすべてを使い比べる必要はありません。

ChatGPT、Claude、Geminiなどの主要なAI基盤から一つを選び、同じツールを継続して利用することで、

  • どのような仕事が得意か
  • どのような仕事が苦手か
  • どの程度の情報を渡す必要があるか
  • 自分にはどのような伝え方が合っているか

といった特徴をつかみやすくなります。

まずは日常の仕事で繰り返し使い、自分なりの判断軸をつくることが重要です。

仕事以外の「面倒な部分」から任せる

AIを楽しみながら使うためには、仕事以外の小さな用途で試す方法もあります。

例えば、

  • 行きたい場所を伝え、移動順や時間配分を含む旅行計画を作る
  • 読んだ本の感想を伝え、異なる視点から質問してもらう
  • 人に相談するほど整理できていない考えを話し、論点を整理する
  • 趣味の記録方法や、自分専用の簡単なアプリを考える

といった使い方です。

旅行計画であれば、「どこへ行きたいかを考える」という楽しい部分は自分で行い、移動順や所要時間の調整といった面倒な部分をAIへ任せられます。

AIにすべてを代行させるのではなく、自分が楽しみたい部分を残し、それ以外を手伝ってもらう。この感覚が、無理なく使い続けるきっかけになります。


⑥ AIプロトタイプが仕事と新規事業開発を変える

AIによってプロトタイプを短期間で作れるようになると、「説明してから作る」だけでなく、「まず形にして、見てもらいながら考える」という進め方が可能になります。

変わるのは開発時間だけではありません。コミュニケーション、意思決定、顧客理解の進め方も変わる可能性があります。

生産性の変化は「改善」ではなく「桁違い」

実際のAI活用では、次のような成果が得られています。

取り組み 実践内容
求人票の作成 2週間で30本の求人票を作成
採用サイトのリブランディング 企画、構成、デザイン、実装を進め、2週間で約8割まで作成
アニメ視聴管理アプリ プログラミング経験がない状態から約2週間で開発。主要機能は数日で作成

これらはあくまで一つの実践例であり、業務内容や利用環境によって成果は異なります。

求人票では、AIが内容の精査や構成設計を支援しました。採用サイトでは、デザイン、コーディング、コンテンツ作成を並行して進めています。

その結果、人間はすべての作業を自分で行うのではなく、

  • 何を作るかという方向性を決める
  • 出力された案を評価する
  • 何を残し、何を捨てるか判断する
  • 最終的な品質を確認する

といった役割に集中しやすくなります。

AIによる生産性向上は、従来の仕事を少し速く行うだけではありません。仕事の分担そのものを変える可能性があります。

AIを活用し、30本の求人票作成と採用サイトのリブランディングを2週間で進めた実践例

作り直しのコストが下がり、無邪気に試せる

AIを使って開発したアニメ視聴管理アプリでは、当初作った複数の機能を「違う」と判断し、一度削除して作り直しています。

従来の開発では、時間や費用をかけて実装した機能ほど、捨てる判断が難しくなります。

しかし、AIによって試作のコストが下がると、

  • この機能は本当に必要か
  • 別の画面構成のほうがよいのではないか
  • 想定していた使い方と違うのではないか
  • こんな機能を追加するとどうなるか

といった疑問を、実際に作りながら確かめられます。

「計画してから実装する」だけでなく、「まず実装し、触った結果から計画を更新する」という進め方も可能になるのです。

作れるから、伝わる。伝わるから、決まる

アイデアを言葉やスライドだけで説明すると、参加者がそれぞれ異なるイメージを持ったまま議論してしまう場合があります。

一方、実際に操作できるプロトタイプがあれば、全員が同じものを見ながら話せます。

その結果、

  • 認識のずれを早期に発見できる
  • 「この機能は必要ない」と率直に言いやすくなる
  • 利用者の反応を具体的に確認できる
  • 判断基準が明確になる
  • 関係者の合意形成が速くなる

といった変化が生まれます。

言葉だけで説明する進め方と、AIでプロトタイプを作り具体物を見ながら議論する進め方を比較

プロトタイプは、アイデアを伝え、フィードバックを得て、次の判断をするための道具です。

作れるから、伝わる。伝わるから、決まる。

AIによるプロトタイプ作成の高速化は、開発工程だけでなく、コミュニケーションや意思決定の方法も変える可能性があります。

仮説:荒い課題理解から複数のプロトタイプを作る

一般的な新規事業開発では、顧客を調査し、課題を細かく理解したうえで、解決策を考え、プロトタイプを作ります。

一方で、プロトタイプの作成コストが大きく下がれば、荒い課題理解の段階で複数の解決策を作り、顧客の反応から課題を深掘りする進め方も考えられます。

一つの仮説として、次のようなプロセスです。

  1. 荒い課題理解をもとに、機能や切り口の異なる10個のプロトタイプを作る
  2. 想定顧客の反応を確認し、5個へ絞り込む
  3. 選ばれたプロトタイプを改善する
  4. 共通して評価された要素から、顧客が本当に求めている価値を見極める
  5. 最後に一つのプロトタイプを磨き上げる

従来の、

詳細な課題理解 → 一つのソリューション

という流れに加えて、

荒い課題理解 → 複数のソリューション → 詳細な課題理解

という流れを取り入れる考え方です。

これは確立された唯一の方法論ではなく、AIによる試作コストの低下から導かれた仮説です。

顧客が言葉だけでは説明できなかった課題を、具体物への反応から発見する。その意味で、プロトタイプを「課題を理解するための道具」として使う価値も高まっています。


⑦ チャット型AIからエージェント型AI・組織活用へ

AI活用の次の段階は、質問に答えてもらうだけでなく、AIにファイルやツールを扱わせ、複数の工程を進めてもらうことです。

人間は、作業の一つひとつを指示する役割から、目的、方向性、判断基準を示す役割へ移っていきます。

チャット型AIとエージェント型AIの違い

チャット型AIは、基本的に人間の質問や依頼に対して回答を返します。

エージェント型AIは、与えられた目的に向けて作業を分解し、ファイルやツールを利用しながら複数の工程を進めます。

比較項目 チャット型AI エージェント型AI
基本動作 一問一答が中心 ゴールに向けて複数の工程を進める
作業対象 回答文を生成する ファイルやツールを操作する
タスク 単発の依頼が中心 複雑なタスクを分解して実行する
文脈 会話ごとに説明し直すことが多い プロジェクトの文脈やファイルを参照する
人間の役割 回答を受け取り、各操作を実行する 方向性、権限、確認ポイントを設定する

 

例えば、資料作成であれば、チャット型AIは構成案や文章を回答します。

エージェント型AIでは、関連資料を読み、必要な情報を整理し、文章を作り、ファイルへ反映するといった複数の工程を進められます。

AIに毎回一つずつ指示するのではなく、目的と条件を示し、まとまりのある仕事を任せる形へ変わっていくのです。

非エンジニアでもAIエージェントを使えるのか

AIエージェントを使ううえで中心となるのは、プログラミングの知識だけではありません。

重要なのは、

  • 何を実現したいのか
  • どのような順番で進めるのか
  • 何を判断基準にするのか
  • どこまでAIに任せるのか
  • どの時点で人間が確認するのか

を言葉にすることです。

チャット型AIとエージェント型AIは、できる作業の範囲は異なりますが、どちらも基本はAIとのコミュニケーションです。

一つの目安として、利用経験者が伴走する場合、一部の業務でClaude Codeを試すところまでは2〜3時間程度、Claude Codeを前提とした仕事の進め方を体験するには丸2日程度という実践例があります。

業務内容やAIの利用経験によって必要な時間は異なりますが、最初からすべての業務を任せるのではなく、影響範囲が小さく、結果を確認しやすい仕事から試すことが現実的です。

複数のAIエージェントで効率と品質を高める

AIエージェントは、一つのタスクを一体のAIに任せるだけでなく、役割を分けて動かすこともできます。

例えば、

  • 一体目が全体計画を作る
  • 二体目がタスクを分解する
  • 複数のエージェントが調査や制作を並行して進める
  • 別のエージェントが成果物をレビューする
  • 最後に結果を統合する

といった分担です。

複数のエージェントへ仕事を分けることで作業を同時並行で進められるほか、制作を担当するAIとは別のAIにレビューを任せることで、異なる視点から成果物を確認できます。

ただし、AIの数を増やせば必ず品質が上がるわけではありません。

役割、入力情報、評価基準が曖昧なままでは、誤りが増えたり、似た回答が大量に作られたりする可能性もあります。

人間が最終的な方向性と評価基準を持つことは、エージェント型AIでも変わりません。

個人・チーム・組織のMDでナレッジを蓄積する

個人でAIを使うだけでは、優れた指示や判断基準が、その人の頭の中に閉じてしまいます。

個人利用の段階では、

  • プロンプトを各自が毎回考えている
  • 出力品質が人によって異なる
  • 良い使い方が個人の経験に閉じている
  • 新しいメンバーが毎回ゼロから説明を受ける

といった課題が生まれます。

この状態から組織利用へ進むためには、AIへ渡す情報やルールを、再利用可能な形で蓄積する必要があります。

その方法の一つが、Markdown形式のファイル、いわゆるMDファイルを用いた文脈管理です。

Level 1:個人のMD

  • 自分用のルールや好み
  • よく使う指示
  • 出力形式
  • 作業時に注意すること

Level 2:チームのMD

  • プロジェクトの目的
  • 顧客やユーザーの情報
  • プロジェクト固有の用語
  • 判断基準
  • 過去の検討経緯

Level 3:組織のMD

  • 会社全体の方法論
  • セキュリティやコンプライアンスの方針
  • 組織共通の品質基準
  • プロジェクト横断のベストプラクティス

優れた指示や判断基準、過去の失敗と改善方法を文章として蓄積すれば、他のメンバーも同じ情報を利用できます。

目指すべきなのは、「AIを使える一部の人だけが強い組織」ではありません。

「使える人が強い」状態から、「全員がAIで底上げされる」状態へ移行することが、組織的なAI活用のポイントです。


⑧ まとめ:AIに振り回されず、使いこなす側に回るために

生成AIを使いこなすために必要なのは、次々に登場するツールをすべて覚えることではありません。

本記事で整理したポイントは、次の7つです。

  1. AIの不完全さを含めて、変化と試行錯誤を楽しむ
  2. AIを育てるか、人間が仕上げるかを目的に応じて選ぶ
  3. 正確性が必要な場面と、創造性を広げる場面を区別する
  4. 目的、背景、制約、判断基準などのコンテキストを渡す
  5. 調査や日常の小さな用途から継続して試す
  6. プロトタイプを早く作り、顧客理解や意思決定に活用する
  7. AIエージェントとMDファイルを活用し、個人の知見を組織へ広げる

AIの進化を正確に予測することは困難です。だからこそ、将来の正解を待つのではなく、今のAIで何ができるかを試し、その経験から自分なりの判断軸をつくることが重要です。

うまくいかない経験も含めてAIとの協働を楽しむことが、「AIに振り回される側」から「AIを使いこなす側」へ移るための第一歩になります。


Sun AsteriskのAI・新規事業開発支援について

Sun Asteriskは、Business、Creative、Technologyの3つの視点から、事業構想、サービスデザイン、プロトタイプ・MVP開発、システム開発、事業グロースまで一気通貫で支援しています。

AIを前提とした新規事業の進め方を設計したい、アイデアを短期間でプロトタイプにしたい、個人のAI活用をチームや組織へ広げたいといった課題についても、事業とプロダクトの両面から伴走します。

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参照情報

イベント詳細 / Event Details

イベント名 Vol.01 使いこなす側に回るための軸をつくるAI勉強会
「AIに振り回されないために、まず楽しむ。」
開催日時 2026年4月8日(水)12:00–13:00
登壇者 株式会社 Sun Asterisk
永安 理久 Business Designer
参考・出典
  • 概念赤の女王仮説(『鏡の国のアリス』)
  • 概念シュンペーター「新結合」
  • 概念フレーム問題
  • WebAnthropic公式リリース(2026年2月)
  • 参考IDEO Human Centered Design / David Kelley / Interaction Design Foundation
編集・監修 Sun Asterisk 編集部