こんにちは。Sun Asterisk AI開発チームです。
生成AIの普及に伴い、社内データや独自ナレッジを活用したLLM(大規模言語モデル)開発の検討が進んでいます。しかし、開発手法の選定やインフラ構築、ハルシネーションなどの課題も少なくありません。
本記事では、LLM開発の基礎知識やAPIの利用・RAG・ファインチューニング・フルスクラッチの違いについて解説します。導入ステップや成功のポイントなど、自社に最適な開発戦略の立案に役立つ情報をまとめたので、最後までご覧ください。
- LLM(大規模言語モデル)の基本的な仕組みと生成AIとの違い
- API利用、RAG、ファインチューニング、フルスクラッチの特徴
- コスト、精度、セキュリティの3軸による開発手法の選び方
- LLM開発を成功に導くための具体的な5つのステップ
- ハルシネーションや情報漏えいを防ぐための課題解決策
LLM開発の基礎知識
まずは、LLM(大規模言語モデル)の基本的な仕組みや、従来のAIや生成AIとの違いについてまとめました。
自然言語処理を行うLLMの仕組み
LLM(大規模言語モデル)は、大量のテキストデータを学習し、文脈に応じた自然な言語処理を行うAIモデルです。入力された単語の並びから、次に続く最適な単語の確率を予測・生成します。単なるキーワードマッチングとは異なり、文脈やニュアンスを理解できるため、高精度な文章生成や要約、対話処理などが可能です。
従来のAIや生成AIとの決定的な違い
従来のAIはデータの識別や予測など特定の作業に特化する一方、生成AIは文章や画像など新たな成果物を創出する技術全般を指します。LLMは生成AIの一種で、特に「言語処理」に特化したモデルです。要約、翻訳、コード生成など、汎用的かつ複雑なタスクを対話形式で柔軟に処理できるのが特徴です。
LLM開発における4つの手法

LLMを自社システムに組み込むための代表的な4つの開発手法について解説します。
外部モデルを活用するAPIの利用
既存のLLMをAPI経由で自社システムに組み込む手法です。自社でGPUなどのインフラを構築する必要がなく、初期費用を抑えつつ短期間で開発できます。一方で、モデル自体のカスタマイズには限界があり、機密データを送信する際は、エンタープライズ向けのセキュアなプランを選択するなど、情報漏えい対策が必須です。
社内データを検索させるRAG
RAG(検索拡張生成)は、ユーザーの質問に対して、回答前に社内のデータベースやドキュメントを検索し、その結果をもとに回答を生成させる手法です。社内規定や製品情報など、LLMが学習していない独自ナレッジに基づいた回答が可能になり、精度の高い回答を得やすくなります。また、モデル自体を再学習させる必要がないためコストを抑えやすい手法です。
追加学習させるファインチューニング
既存のオープンソースモデルなどをベースに、自社の特定業務や業界特有の専門用語、独自の文章スタイルなどを追加学習させる手法です。RAGだけでは対応が難しい、出力フォーマットの指定や、高度な専門知識を要するタスクにおいて精度の向上が期待できます。ただし、APIの利用やRAGと比較して開発コストや運用保守の難易度は高くなります。
ゼロから構築するフルスクラッチ
専用の基盤モデルをゼロから設計し、独自の膨大なデータを用いて事前学習から行う手法です。アーキテクチャから完全にコントロールできるため、データの機密性を高いレベルで担保しつつ、特定のドメインに特化したカスタマイズが可能です。しかし、高度なAI人材の確保が必要となるため、大規模なプロジェクトにのみ適した選択肢といえます。
手法を選ぶ際の3つの比較軸
LLM開発の手法を選ぶ際は、コスト・精度・セキュリティの3つの軸を整理しましょう。
開発コストと維持費用
LLM開発の手法によって初期費用と運用コストは異なり、APIの利用は初期投資を抑えられるものの利用量に応じた従量課金が必要です。RAGは開発費と検索基盤の維持費が生じる一方で、投資対効果に優れます。一方、ファインチューニングやフルスクラッチは莫大なコストがかかります。
併せて読みたい:開発コストとは?システム開発費用の内訳や算出方法をわかりやすく解説
要求される精度とカスタマイズ性
求められる応答精度やカスタマイズの自由度も重要な基準です。汎用的な対話であればAPIの利用で十分ですが、自社データに基づく回答を求める場合はRAGが最適です。さらに、専門用語の理解や出力形式の固定化など高度なチューニングが必要な場合はファインチューニングが適しています。極限の独自性と精度を求める場合はフルスクラッチが唯一の選択肢です。
セキュリティとデータの機密性
データの機密性とセキュリティ要件は、手法選定における決定的な要素です。APIの利用時は、モデル再学習へのデータ利用オフ契約やエンタープライズプランの導入も検討しましょう。金融や医療など高度な情報統制が求められる領域では、ローカル環境や自社専用クラウド上でオープンソースLLMを構築・運用するRAGやフルスクラッチが安全な選択肢です。
LLM開発を進める5つのステップ

LLM開発を進めるための5つの開発手順を解説します。
目的設定と業務範囲の切り出し
まずは「誰のどのような業務課題を解決するのか」を明確にし、LLMの適用範囲を限定します。最初から全社展開を目指すのではなく、効果検証がしやすい特定の業務領域から切り出しましょう。具体的な投資対効果の目標を設定すれば、プロジェクトの迷走を防ぎスムーズな意思決定が可能になります。
社内データの収集と前処理
独自ナレッジを活用するため、社内に散在するドキュメントやデータベースから必要なデータを収集します。集めたデータには、表記揺れの統一やPDFのテキスト化、不要情報の削除といった前処理が必要です。データの質がLLMの応答精度を左右するため、ファイル形式や画像なども含めて収集しましょう。
基盤モデルの選定とシステム設計
要件に合わせて、APIで商用モデルを使うか、オープンソースモデルを独自構築するかを選定します。モデルの選定と並行して、検索基盤(RAG)のアーキテクチャやセキュリティ要件に応じたインフラ構成、既存システムとの連携ロジックなど、システム全体の大枠設計も必要です。
併せて読みたい:システム開発設計の種類と流れ|要件定義など工程ごとの進め方を詳しく解説
プロトタイプの構築とAPI連携
設計に基づき、早期に動くプロトタイプを構築します。外部APIなどとの連携ロジックを実装し、実際の業務データを入れて基本的な動作確認を行います。プロトタイプを現場のユーザーに早い段階で触れてもらえると、実運用に向けた課題や改善点の洗い出しが可能です。
併せて読みたい:PoCとプロトタイプの違いとは?実現性検証と試作の違い・進め方を解説
精度検証と本番運用の改善
プロトタイプを用いて出力内容の精度検証を実施し、プロンプトの調整やRAGの検索精度の改善を繰り返します。評価基準を満たした段階で本番環境へデプロイし、運用開始後もログの分析やユーザーフィードバックをもとに、モデルや検索基盤の継続的なチューニングを行い精度向上を図ります。
LLM開発に必要なリソースと体制
LLM開発を成功に導くために必要なリソースと体制についてまとめました。
計算資源とGPUインフラの確保
自社でのモデル構築やファインチューニング、RAG検索基盤の運用には、クラウドやオンプレミスでのGPUインフラが不可欠です。高性能GPUの確保やクラウドサービスの選定を行い、処理速度やAPI呼び出し速度と運用コストのバランスを最適化することが求められます。
専門知識を持つチーム構成の整備
LLM開発には、AIエンジニアやデータサイエンティストに加え、インフラを構築するエンジニア、プロダクトマネージャーなどの連携が必須です。さらに、ドメイン知識を持つ現場の業務担当者をアサインすることで、実際の業務課題に即した精度の高いAIシステムの開発が可能になります。
併せて読みたい:アジャイル開発チーム構成と役割、仕事内容から成功の秘訣まで徹底解説
セキュリティとガバナンスの構築
企業でLLMを活用する際は、機密情報の漏えいを防ぐデータ運用ポリシーの設定や利用ガイドラインの策定が不可欠です。入力したプロンプトや社内データがモデルの再学習に使用されない契約形態を選び、アクセス権限の管理やログ監査を行える高度なガバナンス体制を構築する必要があります。
開発に活用される主要な基盤モデル
開発時には要件に合わせて商用およびオープンソースの基盤モデルを選択します。商用モデルとしてはOpenAIのGPTシリーズやGoogleのGemini、AnthropicのClaudeがあり、オープンソースではMetaのLlamaや国内企業が提供する日本語特化モデルなどが代表的です。
LLM開発における課題と解決策
LLM開発で直面しやすい課題と、実践的な解決策を解説します。
誤情報を防ぐハルシネーション対策
ハルシネーション(事実と異なる嘘の出力)を防ぐには、RAGを導入して最新かつ正確な社内データを参照させる手法が効果的です。さらに、入力プロンプトで「根拠となる情報に基づき回答すること」を指示したり、出力文に対して参照元ドキュメントのソースを表示・検証するロジックを実装することで、信頼性の高いシステムを構築できます。
情報漏えいを抑えるセキュリティ対策
社内データや個人情報の漏えいを防止するため、APIの利用時は入力データがモデルの追加学習に使用されないオプトアウト契約やエンタープライズプランの契約が必要です。また、プロンプトインジェクション攻撃などの不正操作を防ぐ入力フィルタリングの導入や、アクセス権限の厳格化、ログ監視体制の徹底によりセキュリティレベルを高めます。
併せて読みたい:PoCセキュリティとは?リスクと安全に進めるポイントを解説
PoCで終わらせない全社定着の工夫
実証実験(PoC)で終わらせないためには、企画段階から現場のキーマンを巻き込み、実際の業務に組み込んだUI/UXを設計することが重要です。また、定量的な業務削減効果を可視化して経営層と共有するとともに、社内マニュアルやプロンプトの作成などのサポート体制を整え、現場のユーザーが日常的に使いこなせる環境を整えます。
まとめ
LLM開発の成功には、自社の業務課題に応じた最適な開発手法の選定や、高品質なデータの準備、堅牢なセキュリティ体制の構築が不可欠です。しかし、基盤モデルの選定から全社定着までのプロセスを自社のみで進めるのは容易ではありません。
株式会社Sun Asteriskでは、DXコンサルティングや設計といった上流工程から本格的な開発までを一気通貫でサポートできるケイパビリティの広さと、圧倒的に柔軟な開発リソースを強みとしています。自社の独自ナレッジを活用したLLM開発の進め方や、成果につながるAI活用について詳しく知りたい人は、以下の資料をご覧ください。
よくある質問
Q LLM開発とはどのようなものですか?開発手法にはどのような種類がありますか?
Q LLM開発を検討する際、まず何から着手すべきですか?
Q LLM開発はどのような手順やステップで進められますか?
Q LLM開発を進める中で直面しやすい課題や注意すべきポイントは何ですか?
Q LLM開発にかかる費用や開発期間の目安はどのくらいですか?
Q LLM開発を進めるための適切な体制や外部パートナーから受けられる支援について教えてください。

40%の生産性向上を実現するまでに現場で起きたこと・試したことを、実プロジェクトの記録として公開いたしました。

Sun Asteriskがこれまで手がけてきたプロジェクトを多数ご紹介しております。