新規事業の立ち上げには、国や自治体が実施する補助金・助成金を利用できる場合があります。なかには6,000万円という高額な金額を支給する制度もあり、新たな取り組みに挑戦する企業にとって頼もしい支援制度です。本記事では、新規事業に使える補助金・助成金制度について、各制度の募集要件や支給額を解説します。
目次
補助金と助成金の違い
補助金と助成金はまとめて考えられることが多いですが、実は以下のような違いがあります。
補助金とは
補助金とは、おもに企業の新たな事業・サービスなどを支援する制度です。おもな管轄は経済産業省や自治体で、税金を財源としています。支給額が高額になる傾向がありますが、受け取るには審査を通過しなければなりません。
助成金とは
助成金とは、おもに企業における雇用や労働環境の改善、人材育成などの支援を目的とした制度です。おもな管轄は厚生労働省や自治体で、雇用保険料や労働保険料を財源としています。補助金と比べると支給額は控えめですが、要件さえ満たせば基本的に受け取ることが可能です。
新規事業立ち上げで最大6,000万円受け取れる補助金・助成金
新規事業の立ち上げに、最大6,000万円という高額な金額を支給する制度があることをご存じ
でしょうか?それが、経済産業省・中小企業庁が実施する「事業再構築補助金」です。
事業再構築補助金は、コロナ禍の影響で苦戦を強いられた企業を支援するため、2021年に設立された制度です。新しい時代の変化に対応するため、新市場進出や事業転換などにチャレンジする企業を支援することを目的としています。
A〜Gまで計7つの申請枠が設けられ、枠によっては中小企業でも最大6,000万円や、さらに高額の支給額を受け取ることが可能です。
事業再構築補助金の新規受付は2025年3月で終了
新規事業の立ち上げに使える制度のなかでは、支給額が高額なことで知られる事業再構築補助金ですが、新規応募申請の受け付けは2025年3月をもって終了となりました。
しかし、事業再構築補助金以外にも、新規事業の立ち上げに使える補助金・助成金にはさまざまな種類があります。
新規事業の立ち上げに使える補助金・助成金
ここからは、事業再構築補助金以外に、新規事業立ち上げに使える補助金・助成金を紹介します。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)
中小企業者や小規模企業者・小規模事業者などを対象に、革新的な新製品・サービスの開発や海外需要開拓などに必要な設備投資の費用の一部を補助する制度です。
「製品・サービス高付加価値化枠」と「グローバル枠」の2つの申請枠が設けられ、製品・サービス高付加価値枠では最大2,500万円が補助されます。
申請するための基本要件は、以下の4つです。
- 付加価値額の増加
- 賃金の増加
- 事業所内最低賃金水準要件
- 従業員の仕事・子育て両立(従業員数21人以上の場合のみ)
さらに、グローバル枠に申請する場合は、基本要件に加えて「海外への直接投資に関する事業」や「インバウンド対応に関する事業」などのいずれかに当てはまる必要があります。詳しい要件については、「ものづくり補助金総合サイト」でご確認ください。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者の持続的な経営を支援するため、販路開拓や生産性向上の取り組みにかかる費用の一部を補助する制度です。「通常枠」「賃金引き上げ枠」「卒業枠」「後継者支援枠」「創業枠」の5つの申請枠が設けられ、通常枠以外では最大200万円が補助されます。また、免税事業者から課税事業者に転換する小規模事業者に対しては、補助上限額に一律50万円が上乗せされます。
なお、補助対象となる「小規模事業者」とは、常時使用する従業員の数が以下の範囲に収まる事業者のことです。
業種 | 常時使用する従業員数 |
---|---|
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 5人以下 |
宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
製造業その他 | 20人以下 |
※参考:小規模事業者持続化補助金|商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金事務局
IT導入補助金
企業のITツール(ソフトウェア・サービスなど)の導入にかかる費用の一部を補助する制度です。
「通常枠」「インボイス枠(インボイス対応類型)」「インボイス枠(電子取引類型)」「セキュリティ対策推進枠」「複数社連携IT導入枠」の5つの申請枠が設けられ、通常枠では最大450万円が補助されます。
ただし、補助の対象となるITツールは、事務局の審査に通過し、事前に登録されたもののみです。補助を受ける事業者は、まず導入するITツールと、IT導入支援事業者を選定します。そして、IT導入支援事業者と共同で交付申請を行います。
※参考:IT導入補助金2025|IT導入補助金2025事務局
事業承継・M&A補助金
事業承継やM&Aに際する設備投資や、事業再編・事業統合に伴う経営資源の引き継ぎを行う中小企業などを支援する制度です。2025年の11次公募より、「事業承継・引継ぎ補助金」から「事業承継・M&A補助金」に名称変更され、「事業承継促進枠」「専門家活用枠」「PMI推進枠」の3つの申請枠が設けられることとなりました。
各申請枠の詳細は今後公表される予定ですが、専門家活用枠の暫定版公募要領では「買い手支援類型(I型)」と「売り手支援類型(II型)」の2枠が設けられ、最大600万円を支給すると記載されています。
※参考:事業承継・M&A補助金|事業承継・M&A補助金事務局
キャリアアップ助成金
企業内における、非正規雇用の労働者のキャリアアップを促すための制度です。派遣労働者や有期雇用労働者などの正規雇用化や待遇改善を図る企業に対し、従業員1人あたり最大90万円が支給されます。具体的には、以下のようなコースが設けられており、それぞれ助成条件や支給額が異なります。
支援内容 | コース |
---|---|
正社員化支援に関するコース | 正社員化コース |
障がい者正社員化コース | |
処遇改善支援に関するコース | 賃金規定等改定コース |
賃金規定等共済化コース | |
賞与、退職金制度導入コース | |
短時間労働者労働時間延長コース | |
社会保険適用時処遇改善コース |
たとえば、有期雇用労働者を正規雇用へ転換する場合の支給額は、中小企業は1人あたり57万円、大企業は1人あたり42.75万円です。
地方自治体の助成金
自治体によっては、国の制度とは別に独自の支援事業を行っている場合もあります。たとえば、東京都では都内で開業予定の企業や、開業して5年未満の企業を対象とした「創業助成金」を実施しています。人件費や広告費、器具備品購入費や市場調査・分析費などの一部を助成する制度で、支給額は最大400万円です。
ただし、助成金を受け取るためには、東京都が実施する「事業計画作成」や「事業評価」「施設入居」などに関する創業支援事業のうち、いずれか1つをあらかじめ利用する必要があります。
新規事業の立ち上げに補助金・助成金を利用する際の注意点
新規事業の立ち上げに補助金・助成金を利用する場合は、次の4つのポイントに注意しましょう。
募集要件に当てはまっていることを確認する
補助金や助成金を利用するためには、各制度の募集要件に該当する必要があります。対象となる事業に当てはまっていることはもちろんのこと、認められている用途についてもきちんと確認することが大切です。
必ず受け取れるとは限らない
補助金・助成金は申請すれば必ず受け取れるわけではなく、対象外の事業期間外の経費については、支給を受けられない可能性があります。特に、補助金は採択されないと受け取れず、人気のある制度は倍率も高くなります。
申請期限が短いものもある
ほとんどの補助金・助成金には、申請期限が設けられています。また、なかには募集期間が短い制度もあるため、最新の情報を確認し、申請書類は早めに準備しておきましょう。
自己資金を確保する必要がある
補助金や助成金は、該当する経費の一部を補うものであり、全額が支給されるわけではありません。また、基本的には後払いとなるため、先に自己資金を確保する必要があります。そもそも自己資金が不足している場合は、金融機関の融資など別の手段を講じることを検討しましょう。
まとめ
新規事業の立ち上げに使える補助金・助成金には、「ものづくり補助金」や「小規模事業者持続化補助金」などさまざまな種類があります。制度を上手に活用して、負担を抑えながら新たな取り組みにチャレンジしましょう。
システム開発に関する新規事業を検討中なら、ぜひSun Asteriskにご相談ください。DXコンサル、設計から、本格的な開発まで一気通貫でサポートいたします。柔軟な開発リソースを生かし、お客様のさまざまなニーズに寄り添います。
【作成ガイド】「どのように市場ニーズを見極め、アイデアを形にし、事業として成立させるのか?」というプロセスを具体的にご紹介します。
本ガイドでは、複雑になりがちなシステム開発の見積もりの基本構造や比較のポイントをわかりやすく解説いたしました。