新規事業を成功させる確率は非常に低く、事業の多くはさまざまな原因によって失敗に終わっているのが現状です。本記事では、これから新規事業を立ち上げる方向けに、よくある失敗原因・過去の事例・成功させるためのポイントを解説します。新規事業の失敗例に共通するパターンを知り、適切な戦略で新規事業を成功させましょう。

新規事業が失敗する確率は90%
2017年版「中小企業白書」やアビームコンサルティングが実施した「新規事業創出の実態調査」によると、新規事業を立ち上げ、結果的に利益を生み出せた企業は全体の1〜2割程度でした。
つまり、新規事業の80〜90%は、計画立案・事前準備・事業展開・黒字化のいずれかの段階で失敗に終わっているということです。
新規事業の成功率が低い背景には、準備不足・市場理解の甘さ・戦略の欠如など、複数の要因が絡んでいるといえます。これから新規事業を立ち上げる方は、事前に回避できるおもな失敗原因を知っておきましょう。
新規事業が失敗する10の原因
新規事業の失敗の多くは、事前準備の不足や不健全な組織体制に起因しているといわれています。
市場調査不足
市場環境を十分に理解しないまま事業を展開すると、競合の強さや顧客ニーズの把握が不十分となり、事業失敗の可能性が高まります。自社が勝てる市場かを事前に見極められず、リソースが無駄になる可能性があります。
失敗を避けるためには、事業立ち上げの初期段階で徹底した市場分析を行い、リアルな顧客像とニーズを可視化することが大切です。
顧客ニーズの見極め不足
顧客が抱える「本当の課題」を把握できないまま製品やサービスを提供すると、ニーズとプロダクトのズレが生じてしまい、事業失敗の原因になりえます。
開発者視点の分析だけでなく、実際の顧客行動やフィードバックに基づいた検証も十分に行いましょう。
市場参入タイミングのミス
狙っている市場がまだ未成熟な段階で事業を展開すると需要がともなわず、逆にすでに飽和している市場だと競合が優位に立ってしまう可能性があります。
事業を成功させるためには、市場の動向をしっかりと見極め、適切なタイミングで市場に参入することが求められます。

専門知識・ノウハウ不足
既存事業とは異なる新規分野に挑戦する場合、技術的・業界的な知識やノウハウが不足しやすくなります。
知識不足はプロダクトのクオリティや意思決定のスピードに大きな影響を与えるため、ときには外部人材やパートナー企業を活用しながら事業を進めるのも1つの方法です。
資金不足
新規事業は収益化までに時間がかかることが多く、初期投資資金だけでなく、赤字期間をカバーするための運転資金も必要です。
顧客の反応がよかったとしても、資金繰りが破綻すれば、サービス内容に関係なく撤退せざるを得ません。助成金の活用や金融機関との連携も視野に入れながら、慎重な資金調達を行いましょう。
参加メンバーが多く意思決定が遅れてしまう
多人数でのプロジェクト運営は、情報共有や方向性の統一に時間がかかり、意思決定が遅れる原因となります。
新規事業はスピード勝負であり、変化に迅速に対応できる体制作りが不可欠です。なかでも立ち上げの初期フェーズは、少数精鋭のチームで取り組むのが効率的といえます。
チームの権限が少なすぎる
新規事業のチームに意思決定の裁量がないと、重要な意思決定や戦略実行のスピードが遅くなってしまいます。上層部の承認待ちが続けば、その間に機会損失が起こる可能性があります。新規事業を立ち上げる際は独立性のある体制を設け、現場主導で動くことが重要です。
メンバーのモチベーションや本気度が維持できない
新規事業は成果が見えるまで時間がかかるため、チームの士気を維持するのが難しくなりがちです。目に見える結果が出ないとメンバーの熱量が低下しやすく、途中離脱も起こり得るでしょう。
新規事業チームを健全に維持するために、評価制度や裁量権の付与など、心理的な満足度も含めたマネジメントを行いましょう。
絶対に成功できるという過信
自分たちのアイデアやこれまでの経験を過信し、マーケットの検証結果やユーザーの声を無視した判断を続けると、事業の失敗リスクが高まります。
常に失敗と隣り合わせである認識を持ち、仮説の検証と修正を繰り返しながら事業を進めていきましょう。
撤退タイミングのミス
事業を展開してから一定期間が経っても思うような成果が出ない場合、潔く撤退する判断も重要です。
失敗を引き延ばすと自社のリソースが浪費され、他事業へも影響を与えてしまう可能性があります。撤退タイミングで悩まないよう、あらかじめ撤退ラインを数値で定義しておくことをおすすめします。

新規事業の失敗事例4選
誰もが知る大手企業であっても、新規事業に失敗するケースは珍しくありません。実際に起こった過去の失敗事例を知り、教訓を得ることも大切です。
セブンイレブン:7 Pay
2019年にスタートしたセブンイレブンのスマートフォン決済サービス「7 Pay」は、サービス開始直後から不正アクセスによる被害が相次ぎ、わずか3か月でサービス終了となりました。
開発時のセキュリティ対策の甘さが原因で、リリース前の検証やシステム評価が不十分だったことが明らかになっています。結果的に顧客の信用を失ってしまった「7 Pay」は、専門知識に富んだ人材やリスク管理が不足していたといえるでしょう。
ファーストリテイリング:SKIP
ユニクロを運営するファーストリテイリングは、2002年に野菜の販売事業「SKIP」を開始しました。このサービスはユニクロの生産販売体制を野菜の販売にも転用し、新鮮な有機野菜を安く購入できる仕組みが強みでした。
しかし、生産数の確保やリピーターの確保に課題が残り、わずか2年で事業撤退に追い込まれてしまいます。「SKIP」の失敗は、野菜販売事業の専門知識の不足や顧客ニーズの見極め不足に原因があるといえます。
AOKI:suitsbox
AOKIが展開したスーツのサブスクサービス「suitsbox」は、若年層をターゲットに定め、2018年から開始されました。
しかし、実際に利用したユーザーの多くは40代以上の既存顧客で、スーツ自体の売り上げが低下する事態となりました。わずか半年でサービス終了となった「suitsbox」は、市場リサーチやターゲティングのミスが浮き彫りになった一例といえます。
Amazon:Fire Phone
Amazonが2014年に発売したスマートフォン「Fire Phone」は、独自OSや買い物機能などを搭載した端末で、iPhoneの対抗勢力として期待されていました。
しかし、実際に手にとったユーザーからの評価は低く、高価格な点も災いして1年で発売が中止されました。「Fire Phone」は、ユーザー視点の設計が欠けていたことや、すでにスマートフォン業界が飽和していたことが敗因といわれています。
新規事業を失敗させないための6つの方法
新規事業の立ち上げを失敗しないためには、入念な事前準備と万全な組織体制の構築が欠かせません。事業の成功率を高めるために、以下のポイントを意識しましょう。
少数精鋭のメンバーで立ち上げる
事業の初期段階では意思決定の速さと柔軟な対応力が求められるため、少数精鋭のチーム編成が適切です。
チームの人数が多すぎると、責任の所在が曖昧になり、コミュニケーションコストも増加します。小規模でもスキルと熱意を兼ね備えたメンバーを集めれば、大きな事業を成功させられる可能性があります。
情報収集を徹底的に行う
プロダクトと顧客ニーズのズレを発生させないためには、徹底した情報収集によって仮説の精度を高めることが不可欠です。
市場動向・競合の脅威・顧客の行動パターンなどを多角的に分析し、エビデンスベースで戦略を策定しましょう。外部データや業界レポートだけでなく、現場でのヒアリングやインタビューなどを通じて情報を集めることも大切です。
外部の人材を取り入れる
自社の強みだけでは補えない領域や知見に乏しい専門領域がある場合、外部のプロに協力を仰ぐのが有効です。
特に前例の少ない新規分野では、業界知識や経験がないと判断ミスが起こりやすいため、外部人材を取り入れて適切な判断を取れる状態にしましょう。
仮説検証を継続的に行う
新規事業は不確実性が高いため、最初から完璧なプランを描くことはほぼ不可能です。
仮説・検証・改善のプロセスを高速で回し、市場の反応を頻繁に確認しながら戦略をアップデートしていきましょう。失敗を恐れず、得られた結果を積極的に事業に反映する姿勢が成果を左右します。
金銭的な余裕を持った状態で立ち上げる
事業資金が十分に足りていないと、あらゆる行動に制限がかかり、十分な戦略を立てられずに失敗する可能性が高まります。
新規事業を立ち上げる際は、助成金や補助金、エンジェル投資家・VCからの資金調達を組み合わせ、半年〜1年分の運転資金を確保しておくのが理想です。健全な組織運営のためにも、金銭的に余裕のある状態を作っておきましょう。
あらかじめ撤退ラインを決めておく
新規事業に取り組む際、ときには「続けるべきか、やめるべきか」の判断を迫られる場面があります。
感情に左右されず、冷静な意思決定を行うためにも、撤退基準を数値や期間で事前に明確化しておくことが大切です。失敗の可能性が高い事業を早めに損切りできれば、次の挑戦にもスムーズに移行できるでしょう。
まとめ
新規事業を軌道に乗せるのは非常に難しく、多くは失敗に終わってしまうのが現状です。そのため、よくある失敗原因と成功パターンを知り、戦略的に事業を展開していくことが重要です。
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