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システム開発

システム開発における代表的なリスクとその回避策|実例付きで徹底解説

更新日: 2025年7月9日

03-30_システム開発における代表的なリスクとその回避策

システム開発には多くの工程があり、依頼者やエンジニア、テスト担当など、関わる人の立場もさまざまです。開発が終わるまでには、納期の遅延や品質面でのトラブルといった多くのリスクが潜んでいます。

こうしたリスクを最小限に抑えるには、発生しやすい問題とその回避策を事前に理解しておくことが重要です。この記事では、システム開発における代表的なリスクとその回避方法について、実例を交えながらわかかりやすく解説していきます。

システム開発は想定外の連続|リスクへの理解がプロジェクトの明暗を分ける

システム開発において、想定外の出来事はよくあることです。スケジュールの遅れや予算オーバー、品質の低下など、リスクを放置すればプロジェクト全体に大きな影響が及びます。こうしたリスクは実際に起こる前から潜んでおり、原因の多くは技術的な問題や認識のズレ、体制の不備にあります。

開発途中の仕様変更や連携不足が原因で、訴訟や多額の損失につながった事例も少なくありません。システム開発を成功に導くには、開発に潜むリスクの種類と対策を事前に理解し、早い段階から備えることが大切です。

システム開発で発生しやすい代表的なリスクと現場で起きた事例

システム開発では、多様なリスクが潜んでいますが、なかでも発生頻度が高く影響の大きいものがいくつかあります。ここでは、実際に起きた現場の事例をもとに、代表的な5つのリスクとその背景について解説します。

品質リスク|仕様が曖昧で不具合が多発しやすくなる

品質リスクとは、開発したシステムが発注側の求める品質を満たせないリスクのことです。主な原因としては、仕様が曖昧なまま進めてしまうケースや、要件の認識にズレがある場合が挙げられます。

たとえば、機能要件の詳細が詰め切れておらず、セキュリティや操作性といった非機能要件の伝達が不十分だった場合、想定と異なるシステムが納品されてしまいます。

その結果、検収が通らず納期遅延や手戻りが発生し、金銭的な負担につながる恐れがあります。品質リスクは、他のリスクの引き金にもなるため、特に注意が必要です。

金銭的リスク|見積もり精度が低く予算オーバーにつながる

金銭的リスクとは、当初の見積額を大幅に上回る費用が発生するリスクのことです。たとえば、開発途中での仕様変更や機能追加により工数が増え、想定外の費用がかかるといったケースです。事前に見積もった内容が不十分だった場合、途中で手戻りが発生し、追加費用が重なることもあります。

こうした状況が続けば、発注者側の不信感を招き、開発会社との関係悪化にもつながりかねません。最終的には契約トラブルに発展するリスクもあるため、見積もり段階での精度やヒアリングの質が、金銭的リスクの回避に直結します。

技術的リスク|対応しきれない技術選定で開発が停滞する

技術的リスクとは、開発会社の技術力が不足していることで、予定通りに開発が進まなくなるリスクです。たとえば、仕様が複雑すぎて実装が難航したり、想定した技術では求める性能が出ずにバグの解消ができなかったりするようなケースです。

ヒアリング時点では対応可能と判断していても、進行後に技術的な限界が明らかになり、開発が止まることもあります。開発途中で技術方針を変更することになれば、構造の見直しや再設計が必要となり、全体のスケジュールに大きく影響するかもしれません。無理な技術選定は、納期遅延や品質劣化の原因にもなるため、初期段階から慎重な判断が重要です。

納期リスク|スケジュール管理が甘く納期遅延が発生する

納期リスクとは、予定していた期日までにシステムを納品できなくなるリスクのことです。開発途中の仕様変更や作業の手戻り、スケジュールの見積もりが甘いことなどが主な要因としてあります。

また、進行中にメンバーが急きょ変更されたり、情報共有が不十分だったりすると、引き継ぎに時間がかかり進捗がさらに遅れる可能性もあります。

仮に新メンバーを急きょ追加したとしても、プロジェクト全体の目的や要件を把握するまでに時間がかかり、結果として逆効果になることもあります。納期の遅れは金銭的な損失につながるだけでなく、クライアントからの信頼を失う原因にもなるため、余裕を持った計画と柔軟な体制づくりが欠かせません。

コミュニケーションリスク|意思疎通不足で認識ズレが広がる

コミュニケーションリスクとは、情報共有や意思決定がうまくいかず、認識のズレや作業の停滞を引き起こすリスクのことです。発注側と開発側で、目的や仕様の理解が一致しない背景には、初期の説明不足や関係者ごとの役割・責任が曖昧なまま進行しているといった体制の問題があります。

さらに、社内の承認フローが複雑で、部門ごとに判断軸が異なる場合、方針変更が避けられない状況になりかねません。その結果、手戻りや不要な修正が増え、品質や納期にも影響を及ぼすことになります。

こうした事態を防ぐには、明確な体制づくりと情報共有の仕組みを整備し、関係者全体で共通認識を持つことが不可欠です。

システム開発におけるリスク回避策とアセスメントの実践法

システム開発でリスクを避けるには、起こりそうな問題を洗い出し、影響の大きさや発生の可能性を見極めたうえで、適切な対策を講じる必要があります。

早い段階で重大なリスクを特定し、優先順位をつけて備えることで、後のトラブルを防ぎやすくなります。ここでは、リスクを評価・分類し、対応につなげるための考え方を解説します。

業務フローや関係者ヒアリングをもとにリスクを洗い出す

リスクを的確に洗い出すには、開発前の業務フロー整理と関係者への丁寧なヒアリングが欠かせません。目的や機能、スケジュール、管理体制などについて、双方の考えを具体的にすり合わせておくことで、仕様のブレや見積もりのズレを防げます。

特に初期段階では、現場で抱えている課題や実現したい内容を細かく引き出すことが重要です。こうした共有が不十分なままだと、後の工程で手戻りやトラブルにつながる恐れがあります。早い段階での丁寧な対話が、リスク回避の土台を作ります。

影響度と発生確率に応じてリスクを分類・可視化する

リスクを分類・可視化するには、1つひとつのリスクについて「影響度」と「発生確率」をもとに優先順位をつけます。たとえば「発注側から要件が途中で変わる可能性が高い」と判断した場合は、影響が大きくても慌てないように、あらかじめ要件変更の受付フローを明確にしておくことが大切です。

仕様変更が起きた時に備えて、スケジュールにも数日単位の予備を確保し、関連資料の改訂履歴も整理しておくと、手戻りが発生しても混乱せずに対応できます。こうした備えができていれば、たとえ高リスクでも被害は最小限に抑えられます。

評価項目を設定して重大リスクをアセスメントする

重大リスクを見極めるには、影響度や発生確率だけでなく、具体的な評価項目を用いて、定量的に判断することも重要です。たとえば「コスト増加の可能性」「納期への影響」「品質低下のリスク」「復旧や回避にかかる手間」といった軸をあらかじめ設定し、それぞれ1〜5点でスコア化します。

たとえば、新たに導入予定の外部ツールが複雑で習得に時間がかかる場合、その習得コストや失敗時の影響まで評価に反映させます。合計スコアが一定値を超えたものは重大リスクとして扱い、先回りでの対策を優先します。

リスクを避けるために押さえておきたい開発会社の選び方

システム開発における重大なリスクを避けるには、開発会社の選定も非常に重要です。技術力だけでなく、体制や進行管理、契約面の対応力によってもリスクの大きさが大きく変わるためです。ここでは、信頼できる開発会社を見極めるためのポイントについて解説します。

開発実績と専門性を確認して信頼できる会社を選定する

開発会社の専門性を見極めるには、単に実績数を見るのではなく「自社と同じ業種・規模のシステムをどれだけ経験しているか」が重要です。たとえば販売管理や業務効率化など、自社と似た課題を扱った開発事例があるかを確認します。

加えて、実績ページに使った技術や対応範囲が詳細に記載されているかも注目ポイントです。さらに、面談の段階で過去案件におけるトラブル時の対応などを具体的に尋ねれば、表面的な営業トークかどうかも見抜けます。信頼できるかどうかは、経験の深さと対話の誠実さの両方で判断しましょう。

体制や進行方法を確認して認識ズレを防止する

開発における認識ズレを防ぐには、開発会社のプロジェクト管理体制を具体的に確認することが重要です。「誰が指揮を取り、どのように情報共有されるのか」「開発状況をどうやって管理し、可視化しているのか」といった運用方法まで事前に確認しましょう。

たとえば、PMBOKやPRINCE2といったプロジェクト管理のフレームワークに基づいて進行している会社であれば、属人的になりにくく、引き継ぎ時の混乱も抑えられます。また、進捗報告の頻度やレビュー体制、仕様変更時の対応ルールが明確かどうかも重要です。

見積もりや契約内容を精査してトラブルを回避する

見積もりの際には、金額だけでなく「どこまでが対応範囲で、何が別料金になるのか」を明確にしておきましょう。たとえば軽微な修正など曖昧な表現のまま契約すると、後から追加費用を請求されることもあります。

開発フェーズごとの作業範囲、対応可能な回数、納期の猶予条件などが契約書や提案書に明文化されているかが重要です。また、トラブル時の対応や瑕疵担保責任の有無なども事前に確認しておきましょう。契約時には開発会社任せにせず、自社でリーガルチェックや専門家の目を通しておくと安心です。

まとめ

システム開発では、予期せぬトラブルが起こるのは当たり前です。なかでも品質・予算・納期・技術・コミュニケーションに関するリスクは発生頻度が高く、プロジェクト全体に影響を及ぼす恐れがあります。これらを防ぐには、リスクを事前に洗い出し、評価し、優先順位を明確にしておくことが重要です。

さらに、社内でどれだけ対策を講じていても、開発会社選びを誤ればリスクの発生源にもなりかねません。実績や体制、契約条件まで含めて、丁寧に見極めておくことが欠かせません。

この他にも、開発リスクを減らすうえで重要なのが「進行管理の仕組み」です。スケジュールの遅延や仕様の抜け漏れといったトラブルの多くは、計画時点でのタスク整理や優先順位の判断が曖昧なまま進んでしまうことが影響しています。そこで活用したいのが「WBS」です。WBSを活用すれば、タスクの抜け漏れやスケジュールの甘さといったリスク要因を可視化し、事前に対策を講じることができます。Sun Asteriskでは、WBSの作り方をテンプレート付きで紹介しています。詳しくはぜひダウンロードしてご覧ください。

WBS(Work Breakdown Structure)について、基本の解説と、作成方法を具体的にご紹介いたしました。

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