Sun*×ベネッセが挑む、AI駆動開発の「新常識」:Sun* Growth Gathering 特別事例共有会
デジタル変革のスピードが加速するなか、開発現場では生産性向上が声高に叫ばれる一方で、AIにおけるハルシネーションのコントロールも課題となり、ハーネスをプロセスにどのように設計するかも重要になってきています。Sun*がクライアントと定期的に開催しているイベント『Sun* Growth Gathering』のセッションにおいて、このような課題に取り組んだ事例として、株式会社ベネッセコーポレーションにご登壇いただきました。Sun*が開発をサポートするツールの一つとして独自に開発しているMoMorphを使って、ともに挑戦したAI駆動開発プロジェクトの全貌を公開します。
MoMorphとは?
デザインに重きをおいた、スペック主導型AI駆動開発を行うための開発ツール/プラットフォームです。Figmaのデザインとスペックをひも付けた画面仕様書を素早く作成することにより、精度の高いテストケースを生成し、その後のAIを使った開発プロセスを整えます。開発効率を最適化するためにSun*が独自に開発しているもです。
https://app.sun-asterisk.com/momorph/
【登壇者プロフィール】
平田 氏: 株式会社ベネッセコーポレーション 開発統括PM。既存の開発フローを抜本的に見直し、AIによる圧倒的な効率化と品質の両立を推進。
岡藤 氏: 株式会社Sun Asteriskでプロジェクトの伴走者として、最新のAIツール選定や開発プロセスのアップデートを担当。
「30%の向上」で満足していいのか? ―― 既存手法の限界とMoMorph導入の背景
岡藤:今回、ベネッセとSun*が「AI駆動開発」という大きな挑戦をご一緒することになった経緯から、改めて詳しくお聞かせいただけますか?
平田:実は、このプロジェクトが始まる前から、弊社内でも生成AIを活用した開発にはチャレンジしていたんです。しかし、従来のウォーターフォール型の開発フローのなかで、部分的にAIを導入するだけでは、生産性の向上は30%程度で高止まりしていました。
岡藤:30%でも十分すごい数字に見えますが、さらなる高みを目指されたわけですね。
平田:ええ。設計書をExcelやPowerPointからAIと親和性の高いMarkdownに書き直したり、Figmaからコードを生成しようとMCPも使って試行錯誤したりしましたが、結局は「局所的な自動化」に過ぎませんでした。設計の根幹からAIを組み込み、フロー全体を再構築しなければ、抜本的な改善は難しいと感じていたときに出会ったのが、Sun*さんの提唱するMoMorphを活用した開発スタイルでした。

MoMorphの開発スタイル
「デザインからコードへ」を最短距離で繋ぐ ―― MoMorphが実現する新時代の設計フロー
岡藤: 今、まさにAI駆動開発は過渡期にあります。我々Sun*も、自律型AIエージェントの「Devin」や、一足飛びに開発品質を引き上げた「Claude Code」など、新しいツールを即座に取り入れ、最適解を探ってきました。その中心にあるのがMoMorphです。
基本的なフローは「デザイン→基本設計→詳細設計→実装」という伝統的なステップを踏んでいますが、その中身が劇的に変わっています。 具体的には、FigmaのデザインからMoMorphのプラグインを使ってスペックを入力し、そのまま画面設計書をもとにテストケースを自動生成しています。これをAI(Claude Code)へのプロンプトとして渡すことで、テストケースもあることにより、人間が介在するコストを最小限に抑えつつ、極めて精度の高いコーディングが可能になりました。
平田: 「人間はレビューに徹し、成果物はAIが作る」という前提をプロジェクト計画に盛り込んだのは画期的でしたね。企画チームで要件を固めた後は、詳細設計から実装、さらに自動テストまで、AIが一連の流れを担っていく。こうした「AIファースト」の発想が、この取り組みの大きな特徴です。従来の延長線上にある小幅な効率化とは、明らかに性質が異なります。
MoMorphによるテストケースの改善効果
※Sun*がMoMorphから生成したテストケースとClaudeから生成したテストケースの精度を検証した結果
| 評価項目 | Claude | MoMorph |
|---|---|---|
| 入力要件 | テストケーステンプレート(空) 仕様ファイル |
テストケース生成モード選択 |
| 生成時間(初回) | 約1〜2時間 | 約30分 |
| 出力形式 | ローカルExcelファイル (QAフォルダに手動アップロード必要) |
ツールから直接出力 |
| テストケース品質(初回) | 約40%(期待値比) | 約60%(期待値比) |
| 品質上の課題 | ・記述方法が統一されていない ・フォーマットが混乱している ・専門性が不足している |
・フォーマット統一 ・標準化レベル高い |
| レビュー&修正時間 | 約3〜4時間 | 約2時間 |
| 総所要時間 | 約4〜6時間 | 約2.5時間 |
| 安定性 | 不安定(フォーマット変動あり) | 高い(フォーマット統一) |
数億円規模のインパクト ―― 3カ月で見え始めた「CAPEXコスト半減」の可能性
岡藤: プロジェクト開始から3カ月が経ちました。ここで、現時点で見えてきた成果についても触れたいと思います。
平田: もともとの目標は、生産性を50%高めることでした。足元では39%向上という結果が出ています。まだ目標値には届いていませんが、これまで一つの壁になっていた30%をはっきり超えられたのは大きいですね。
加えて、追加で実装したコードの約80%をAIが生成している。この点も、かなりインパクトがあると感じています。
岡藤: 品質面でも、大きく崩れることなく安定していますよね。ビジネスへの影響という意味では、どのように見ていますか。
平田: かなり大きいです。次年度の開発CAPEX、つまり設備投資にあたるコストを半減できる可能性が見えてきていて、金額ベースでも数億円規模の削減を十分に狙えると考えています。
しかも、単にコストが下がるだけではありません。これまで予算の都合で見送っていた機能についても、今期のリリースに載せられる見込みが出てきました。これはプロダクトの価値を高めるうえでも、かなり大きな意味があります。

技術以上に難しい「マインドセット」の転換 ―― ワンチームで不安を越える
岡藤: ここまでの話だけ聞くと順調に見えますが、実際の現場では、変化に対する戸惑いもありましたよね。AI駆動開発では、これまでの進め方を手放す覚悟も必要になります。
平田: 本当にそうでした。企画チームも開発チームも、最初は「本当にAI中心で開発できるのか」という不安がかなり強かったです。私のところにも、「Sun*さんはこう言っているけれど、本当に大丈夫でしょうか」といった個別の相談が何度も来ました(笑)。
岡藤: そうした場面で、平田さんが一貫して「Sun*とベネッセはワンチームなんだから、よくするための意見は遠慮なく出そう」と言い続けてくださったのは大きかったと思います。技術だけでなく、意識の持ち方が重要だと改めて感じました。
平田: 実際、「MoMorphにデータを入れるのが少し面倒だ」という声もありました。ただ、そこはあえてぶらさずに、「MoMorphは使う前提で進めよう」とはっきり伝えました。
新しいやり方を根づかせるには、リーダーが途中で迷わず、AIが最も力を発揮できる流れを維持する必要があります。今回ここまで来られたのは、Sun*さんの技術力と、それを受け止めるチーム側の姿勢がうまく噛み合ったからだと思います。

今後の展望 ―― 「要件を書けば製品ができる」世界へ
岡藤: では最後に、この先さらに生産性を高めていくうえで、どのような展望を描いているのか聞かせてください。
平田: まずは、今の39%向上を50%まで持っていきたいです。そのために期待しているのが、先日リリースされたMoMorph MCPです。GitHubへのアップロードまで含めた流れがよりなめらかになりますし、生成精度の向上にもつながるはずです。
また、ベトナムのエンジニアメンバーとも直接話すなかで、現場で何を改善すべきかがかなり具体的に見えてきました。
岡藤: 私たちとしても、今は主に開発フェーズでのAI活用を進めていますが、今後はさらに上流の要件定義や要求整理の領域まで広げていきたいと考えています。ベネッセの企画チームのみなさん自身がAIを使いながら要件を整理できるようになれば、全体のスピードはさらに上がるはずです。
平田: 最終的に目指しているのは、企画担当者が要件を書けば、MoMorphを起点にAIが設計から製造、テストまで一気通貫で担う状態です。そこまでいければ、開発の常識そのものが変わると思っています。
MoMorphにしっかり賭けて、その変化を本気でつくっていきたいですね。Sun*さんには、これからもぜひ攻めの開発を期待しています。
岡藤: ありがとうございます。その未来、ぜひ一緒に実現していきましょう。

