アプリを改善しようとA/Bテストを繰り返したり、顧客の要望に合わせて機能を追加したのに「コンバージョン率が改善しない」「新機能を追加しても利用率が上がらない」——原因は、多くの場合がUIの見た目や機能数ではなく、設計の根本にある「勘違い」にあります。
そこでSun*では、KPIの停滞を引き起こす設計の落とし穴と、成果に直結するUI設計の”3つの鉄則”を解説するウェビナーを開催しました。
登壇者プロフィール
株式会社Sun Asterisk Designer 三澤 一真
映像制作会社にて動画編集やアニメーション制作などを経験後、ソーシャルゲーム事業会社にてスマートフォン向けゲームのコンセプト立案からUI/UX設計、グラフィックデザインなど、新規立ち上げからリリース・運用まで様々なフェーズのデザイン・ディレクション業務に従事。2020年より現職。リードデザイナーとして要件整理から情報設計、UIデザインなどを中心に担当。プロジェクトにおけるデザインチームの進行管理やメンバーマネジメントも担いながら、新規事業の立ち上げや事業成長の支援を行う。
株式会社Sun Asterisk Unit Manager / Designer 村松 享
クライアントワーク/事業会社でのWEB制作に携わり、B2B、B2C、B2B2C問わず100件以上のウェブ/アプリのプロダクト開発を手掛けた。2019年Sun*に参画。配車支援サービスのUI/UXデザインやMVP要件策定、ビジネスチャットのリブランディングおよびアプリリニューアルなど、クライアントと密に連携しながら事業拡大を支援。現在はデザインマネージャーとして、新規PJ創出や組織の成長に注力。これまでの経験を活かし、デザインの力で事業価値の最大化に貢献することを目指している。
アプリはいつリニューアルすべきか
リニューアルの判断基準は「構造の老朽化」
アプリのリニューアルというと、デザインの刷新や新機能の追加をイメージしがちですが、本当にリニューアルが必要なのは「構造が老朽化したとき」です。
画面の見た目やボタンのデザインを変えることは「UI表層の改善」にすぎません。一方、ユーザーが情報にたどり着くための経路や、アプリ全体の情報の整理方法——いわゆるIA(情報アーキテクチャ)——が現実のユーザー行動や事業戦略とズレてきたとき、それは表層の手直しでは解決できない「構造の問題」です。
3軸チェックリストで見極める

リニューアルの必要性を判断するためにおすすめなのが、ビジネス・クリエイティブ・テックの3軸でチェックすることです。
3軸のうち複数が当てはまる場合は、UIだけでなくIA(情報設計)レベルからの見直しが有効です。
KPI停滞が「改善不足」なのか「構造課題」なのかを見極める視点が分かるガイドブックはこちら
KPIが停滞するUIを作ってしまう3つの勘違い
成果が出ないUIには、根本的な「設計の勘違い」が潜んでいます。現場でよく見られる3つのパターンを解説します。
勘違い①:機能の追加が満足度を上げるという錯覚
「ユーザーから要望が上がっているから機能を追加する」——この判断は一見合理的ですが、実は満足度向上につながらないケースがあります。
ユーザーが「欲しい」と言う機能は、必ずしも「使われる」機能ではありません。機能が増えることで画面の情報量が増し、本来ユーザーに取ってほしい行動が埋もれてしまいます。満足度を上げるのは機能の数ではなく、「使ってほしい行動」へ誘導する体験の質です。
勘違い②:点(画面)の最適化で数字が上がるという錯覚
「登録画面の離脱率が高いから、その画面だけ改善する」という部分的な最適化アプローチも、実は数字が動きにくい典型例です。
ユーザーはアプリを「画面の集まり」として体験しているのではなく、目的達成までの「流れ」として体験しています。ある画面での離脱は、その画面だけの問題でなく、前後の文脈やユーザーの期待とのズレから生じていることがほとんどです。1画面を最適化しても、前後の導線が整っていなければ体験全体の質は変わらず、KPIも改善しません。
勘違い③:デザイナーは画面を作る作業者という認識のズレ
「要件定義は終わっているので、あとはUIを作ってほしい」——デザイナーをこのように捉えているプロジェクトでは、成果が出にくいことが多いです。
UIデザインは「決まった仕様を画面に落とす作業」ではありません。ユーザーの行動を設計することであり、そのためには事業戦略やKPIを理解し、「どんな行動を促すか」という意思決定に関わる必要があります。デザイナーが要件確定後に参加する体制では、戦略とUIの間に必ずズレが生じます。
成果に直結するUIを作る3つの鉄則
3つの勘違いを踏まえたうえで、次は「成果に直結するUIを作るための鉄則」を3点解説していきます。
鉄則1:戦略から「主役(オブジェクト)」を定義する

UIで最初に問うべきは「この画面で主役は何か」という問いです。これは「名詞」を主役にするか「動詞」を主役にするかの設計思想の違いです。
多くのアプリは機能(=動詞:「検索する」「予約する」「送る」)を主役にした設計になっています。一方、成果が出やすいUIは、ユーザーが価値を感じる対象(=名詞:「商品」「ルート」「取引履歴」)を主役に据え、それに付随するアクションを自然な流れで提示する設計です。
主役が定まれば、画面上の面積とコントラストをその主役に集中させることで、ユーザーの注意を自然に誘導できます。逆に主役が不明確なUIでは、情報が均等に並んでしまい、ユーザーは「どこを見ればいいか」わからなくなります。
鉄則2:「点」ではなく「線」で組み上げる
1画面ごとに最適化を考えるのではなく、ユーザーが目的を達成するまでの「流れ」全体を設計すること——これが鉄則2の本質です。
具体的には2つのアプローチが重要と述べました。

- 文脈の設計: ユーザーが「どこから来て、どこへ向かっているのか」という文脈を各画面に反映させる。例えば、商品詳細ページは「検索結果から遷移してきたユーザーが購買を判断する場面」として設計し、比較に必要な情報を優先して表示する。
- 共通ルールの徹底: 画面をまたいでデザインの一貫性を保つ。ボタンの位置・ラベルの表現・エラーメッセージのトーンが画面ごとにバラバラだと、ユーザーは毎回「ここで何ができるか」を再学習する必要が生じる。
一貫したルールに基づいた設計は、ユーザーの認知負荷を下げ、目的達成までのスムーズな体験を実現します。
鉄則3:デザイナーを”戦略の翻訳者”として巻き込む
鉄則3は、プロセス・体制についての提言です。デザイナーは、事業の意図をユーザーの体験に翻訳する役割を担っており、上流工程からデザイナーを参加させることが成果への近道なのです。
デザイナーが要件定義段階から関わることで、「この機能、本当に必要ですか?」「ユーザーにどんな行動を取らせたいですか?」という問いを早期に立てることができます。これにより、作ってから気づく手戻りを減らし、設計の意図とUIの表現を一致させることができます。

また、デザイナーが意思決定に参加するためには、「なぜこのデザインにしたか」のロジックで合意形成できることが不可欠です。「感覚でなく根拠で話す」ためのリサーチや分析の力が、デザイナーに求められます。
成果につながるUI設計の一歩目を踏み出せる「セルフチェック」はこちらから
事例:鉄則を実践した2つのプロジェクト
KDDI auポンタポータル——送客数+14%の改善
KDDIが提供するauポンタポータルのリニューアルプロジェクトでは、「ポイントを貯めたい・使いたい」というユーザーの目的(名詞:ポイント・ポータルサービス)を主役に据えた設計を実施。画面上の情報優先度を再定義し、ユーザーが目的のサービスに自然にたどり着ける導線設計を「線」で組み上げた結果、送客数が+14%向上しました。

関連サービスへの総客数を14%増加ささせた「Pontaポータル」の事例はこちらからチェック
NTT西日本 ビジネスチャット「elgana(エルガナ)」——ブランドとUIの一体設計
NTT西日本のビジネスチャット「elgana(エルガナ)」では、ブランド再構築とプロダクトUIデザインをリードしました。ブランドの価値観(「信頼感」「使いやすさ」)を共通ルールとしてデザインシステムに反映し、アプリ全体のUIの一貫性を確保。単なる画面の刷新にとどまらず、デザインと事業戦略の整合を取った体制づくりが成果につながりました。

作り込んだデザインシステムで事業戦略をUI設計までの一貫性を実現した「elgana」の事例はこちら
明日から実行できる3つのアクション
事業成長に直結するUI設計に生まれ変わらせるために「明日からすぐ実行できること」として以下の3つが挙げられます。
- 自社アプリの「主役」を言語化する: トップ画面やメイン機能画面で「ユーザーに最初に目を向けてほしいもの(名詞)」を1つ決め、それが面積・コントラストで強調されているか確認する。
- 1つのユーザーシナリオを「線」で追う: 「新規ユーザーが初めてコンバージョンするまで」など1つのシナリオを選び、全画面を順番に触って文脈の断絶がないかを確かめる。
- デザイナーを次の要件定義MTGに呼ぶ: 完成した仕様を渡すのではなく、「何を実現したいか」を話し合う段階からデザイナーを巻き込む。
まとめ
KPIが伸び悩むアプリには、「機能追加で満足度は上がる」「点の最適化で数字が動く」「デザイナーは作業者」という3つの勘違いが潜んでいます。これを突破するためには、戦略から「主役」を定義し、点ではなく線で体験を組み上げ、デザイナーを戦略の翻訳者として上流から巻き込むこと——この3つの鉄則を実践することが重要です。
Sunでは、2,116名のクリエイター・エンジニアが在籍し、100件以上のアプリ・プロダクト開発実績をもとに、UI設計から開発まで一気通貫で支援しています。アプリのKPI改善やリニューアルにお悩みの際は、ぜひSunまでお気軽にご相談ください。