数々のデジタルビジネスを牽引するSun*。その中心を担うPMP(プロジェクトマネージャー組織)では、メンバーがより主体的に力を発揮できるよう、この1〜2年で組織改善に取り組んできました。組織の課題とどう向き合い、メンバーが誇りを持てる組織へと変えてきたのか。マネジメント体制の改善、人とテクノロジーによるプロジェクト支援など、さまざまな施策を推進してきたユニットマネージャー(UM)の一人である矢代に、取り組みと組織改善にかけた想いを聞きました。
目次
改めて見つめ直した、私たちの課題
― PM組織で組織改善の取り組みが始まった、当時の様子を教えてください。
矢代:当時一番大きな問題だったのが、マネジメント体制が十分に回っていなかったことでした。ユニットマネージャー(UM)が手いっぱいで、新しく入ったメンバーに十分なケアをする余裕がなかったんです。中途入社した方へのケアは特定の人の責任ではなく組織の問題。ただ、組織全体で余裕がなく、中途で入ったメンバーも疲弊してしまう、という悪循環に陥っていました。
2024年10月頃、まずPMPの体制を大きく変更しました。ユニットを細分化してマネージャーが増え、改めて「組織改善にしっかりと取り組もう」という気運が高まりました。さまざまな組織課題があるものの着手できない状態があり、2025年の年明けからユニットマネージャーでワークショップを行い、課題を書き出して整理していきました。そこから、人材育成体制や評価制度の見直し、プロジェクト配置など、トピックごとに役割分担をして活動を進めました。
― 推進にあたり、どのようにアプローチしたのでしょうか?
矢代: マネジメント体制不足という課題から、「PMP組織改善タスクフォース」を立ち上げ、マネージャー以外からも取り組むメンバーを募りました。タスクフォースによって組織に足りていない部分を補強すること、またメンバー自身に主体的に関わってもらう狙いがありました。
組織を変えるには「仕組みを整える」ことと、「価値観・文化を育てる」という2つのアプローチが必要だと思っています。そういう意味でも、マネージャーたちがトップダウンで仕組みを整えるだけでなく、ボトムアップでの取り組みもセットで考えました。特に、メンバーが自発的に組織を良くしようとする想いや価値観、文化を作らないと、うまくいかないことが起きたときに諦めて組織のせいにしてしまう。そうではなくて、「自分たちで良くしていこう」という気持ちに変換したかったんです。とはいえ文化形成はすぐにできるものではないので、少しずつ種まきをして育てていく必要がありました。
仕組みを整える+ボトムアップで文化を育てる
― 具体的にどのような施策を行ったのでしょう?
矢代:これまで以下のような施策に取り組んできました。
<マネージャー推進施策>
- プロジェクトアサインのオープン化
- オンボーディング支援
- プロジェクト支援
<ナレッジシェア>
- UM座談会
- OJT報告会
- UMやユニット主催の勉強会
<ボトムアップ施策>
- PMナレッジサイト「PMP Div Portal」の開設・運用開始
- 活躍するPMメンバーの活動を組織全体にシェアする「Connect PM」
- SQL勉強会
ボトムアップ施策は、メンバーでKPT(仕事やプロジェクトの振り返りを行うフレームワーク)を行い整理した結果、若手によるナレッジシェアの推進活動が中心になりました。他にもいくつか取り組みがあり、途中で断念してしまったものもあります。
― ご自身が担当された施策について、詳細を教えてください。
矢代: 私が最初に取り組んだのは、プロジェクトアサインをオープンにする仕組みづくりです。当時、自分にマッチしないところにアサインされて苦しんだり、「無理にやらされている」という感覚を持ったりして、希望するキャリアが積めないことを理由に離職する人がいたんです。Sun*はクライアントワーク企業で案件はお客様のニーズありきなので、100%やりたい仕事を選べるかというと難しい。ただ、メンバーに選択肢を見える化することはできると考え、案件を開示してアサイン希望を募るフローを作りました。

アサインの募集が始まるとSlackに通知が流れ、スタンプで意思表明できる仕組み
自分で手を挙げて決めたことであれば、そこで起こった成功体験も失敗も、本人の成長につながりやすいですし、納得感もあります。まずは「選択できる」「選択している」という状況を作ることを目的にしました。今では、実際に手を挙げたリアクションから案件の担当につくことが日常的になっています。若手やジュニアは人数が多いのでコンペになりやすかったり、逆に高い専門性や経験値が求められるプロジェクトでは「シニアのこの人しかできないだろう」という案件もあったりしますが、メリハリをつけて運用しています。
― 選択肢が分かると、次のチャレンジにもつながりそうですね。他にはどんなものがありますか?
矢代: 中途入社者のオンボーディング課題に着手しました。直近1年に入ったメンバーを集めて意見をもらったり、あちらこちらでブレストを重ねました。そのなかから重点アクションを選定して、業務をスムーズに進められる環境を作るため、「オンボーディングのフロー」「バディ」「プロジェクト伴走サポーター」の3つをターゲットにしました。
オンボーディングのフロー整備では、ナレッジサイトをタスクフォースのメンバーと一緒に作りました。ミーティングの録画や資料、社内勉強会のアーカイブ、Slackのチャネルリスト、社内ツールや申請関連など、必要な情報を集約しています。常に見てもらうためにイベントやニュースなど更新性の高い情報も入れて、運営メンバーが継続してメンテナンスしていますね。

矢代: 「バディ制度」は入社者ごとにバディが一人つくもので、PMの中途入社者全員に対して実施しています。バディは1カ月ほど1on1ミーティングをしながら、相談役として心理的安全性を担保したり、分からないことを聞いたり、社内のつながりを増やしたり、といったサポートをします。入社メンバーからすごく評判が良くて、「手厚くて助かった」という声をもらっていますね。その後にバディから報告会を行い、UMや人事にも共有。逆に人事のフォロー面談の内容はフィードバックしてもらっています。
実はもともと、バディ制度はデザイナー組織で行われていました。デザイナーは離職率が低く、主体的な文化や価値観もあって強さを感じていたので、参考にさせてもらって。逆に、PMPで新たに作った資料や報告会をデザイナー組織が取り入れるような循環も生まれています。 ちょっとした仕組みだと思うのですが、新しく入ってきたメンバーには必要で、ちゃんとプロセスとして回していくことが大事だと思っています。
― 「プロジェクト伴走サポーター」についても教えてください。
矢代:「プロジェクト伴走サポーター」は、PMが初めて単独で案件にアサインされるときに、主にUMが一緒にプロジェクトに入って伴走をする仕組みです。PM単独でのアサインだと「何をしていいかわからない」「誰にも聞けない」という状況になりがちなので、そこを避けるためにサポーターが一緒にミーティングに出たり、壁打ち相手になったりしています。
「作っただけでは使われない」AIによる仕組化と、組織に文化を広げる種まき

年に数回、PMメンバーがオフラインで集まるワークショップの様子
― 他にも、力を入れた取り組みはありますか?
矢代: プロジェクト支援の取り組みですね。実は、プロジェクトプロセスの標準化やドキュメントの標準化は、Sun*の特性上、苦手な領域でした。案件の幅がとても広く、抽象化したところで汎用化できないことが多いんです。ただ、PMの仕事は一定の抽象化をしないとナレッジシェアができない・取り入れにくいとも感じています。
そこで作ったのが「プロジェクトスターターキット」です。Sun*では新規案件の立ち上げから入ることが多いのですが、ナレッジが汎用化しにくい一方で、立ち上げフェーズでつまずくと後から立て直すのが本当に大変。そのため、一番効果が出やすい立ち上げを支援するチェックリストやテンプレートを作りました。 作成には複数のシニアPMが協力してくれ、ナレッジを集めて一緒に形にしていきました。
キットには外部とのキックオフまでにやるべきことが網羅されています。例えば案件にリードとジュニアのPMがアサインされたとき、これまではリードPMの裁量で指示を出していましたが、キットを見てジュニアが自分のタスクを把握でき、主体的に動けるようになりました。また、過去のヒアリングをもとにした「起きやすい問題」の対策や、社内のさまざまなPMから集めたテンプレートなども全部入れて、カスタマイズして使えるようにしています。
― とても実践的なキットに見えます。
矢代: ポイントは、「作っただけでは絶対に使われない」という前提で仕組み化したことです。具体的には、キット専用のSlack botを作り、Slackのコマンドで使えるようにしました。Slack上で操作すると、プロジェクト用のスプレッドシートやCanvasが一瞬で自動作成されて、共通の格納フォルダに入るようになっています。これによって、プロジェクト外の人やPMOも立ち上げの状況を見られるようになりました。
さらに追加機能として、ミーティングの文字起こしや議事録をNotebookLMに読ませて、週1回、自動でミーティングの概要やプロジェクト課題などのサマリーをSlackに流してくれる機能のリリースも準備しています。
新しいプロセスを導入するときには、「使ってもらうための仕組み」が重要だと思っていて、使えるテクノロジーを活用して設計することも面白いですね。AIについては、作った瞬間からだんだん古くはなっていくんですけど。
どの施策もそうですが、私がいろいろと考えたり、できるところを作ったりするにしても、「自分がいなくても回る仕組みを作ること」をゴールにしています。オンボーディングも以前は私が運営していましたが、今は若手のPMメンバーが中途オンボーディングチームとして運営してくれています。組織改善は一人にできることが限られているので、種まきをしたらあとは任せていく。任された人が成長することでさらに価値観が広がっていき、文化が作られていくんだと思います。
エンゲージメント数値が向上、もっと「入って良かった」と思える組織に

― これまで取り組んで、組織にどのような変化がありましたか?
矢代: 成果は確実に出てきました。まず離職率が大きく下がり、直近の半年間でネガティブな理由で離職した人は出ていません。 また、PM組織のエンゲージメントスコアが、1年前は全国平均程度だったところから大きく上がりました。若手の多いユニットでは非常に高い数値も出ています。1年かけて取り組んできた施策が機能して、文化や価値観も根付いてきている手応えがありますね。これまで手の回らなかったところに、私が専任で100%コミットできたのも良かったんだと思います。
― 矢代さんが組織改善にコミットした背景には、どんな想いがあるのでしょうか。
矢代: メンバーが「これをやりたい」と思ったことを、ちゃんと形にできるような道筋や枠組みを作ってあげたいという想いがあります。どんな人でも絶対に良いところや強みはあって、それが組織にプラスに働くカンフル剤になるような仕組みや、お互いを認める文化を作りたいと思っています。まだまだ、道半ばではあるんですけど。
前提として、私のなかでは、「人」が中心にあります。おそらく個人で成果を出すよりも、「人をモチベートして、パフォーマンスを出すための仕組みを作る」ことが好きなんだと思います。原体験として大学時代のアルバイトリーダーの経験があって、新しいメンバーが入ってきたときに、その人を育ててどんどん前に出てもらって結果を出していく、チームの多様性もどんどん広がっていく、という状況をすごく面白く感じたのが始まりだと思います。当時から、「自分は必要だけど、そこにいなくてもいいチーム」を作りたいと思っていました。
― そんな矢代さんから、今のPMP組織はどのように見えていますか?
矢代: 良いところは、本当にいろいろな人がいる「多様性」ですね。みんなが自分と違うものを受け入れて、尊重している。それって自分の軸があるからこそできることだと思うので、素晴らしいと思っています。 一方でもう少しだと思うのは、「最初に作って終わり」になる場面があるところです。組織が変わっていくなかで、制度や仕組み、それを運用する人が追いついていなくて、まだまだ発展途上なのだと思います。スタートアップの少人数で立ち上げるときの感覚が、良くも悪くもまだ残っている印象はありますね。
― これから組織でやっていきたいことや、目指したい姿を教えてください。
矢代: 直近では、新しい仲間を増やしていくための採用にコミットしていきたいと思っています。「Sun*のPMってこういう良いところがあるんだよ」というのを、日々状況が変わっていくなかでもその時々で言語化して、内外に発信していきたい。外の人には「入ってみたい」と思ってもらいたいし、せっかく入ってもらったメンバーには「入社して良かった」と誇りを持ってもらえる、そういう組織にしていきたいと思っています。
個人的には、この会社がとても好きです。完璧な組織はないですし、好きだからこそ思うところはあるんですけど、自分はそれを変えられる立場にあると思っています。 そして、メンバーにもそういう想いを持ってほしい。組織に対して感じることはいろいろとあると思いますが、「自分で動いたら、変えられるのかも」と気づいて一緒に行動できたら、さらに素敵な組織になっていくんじゃないかと思います。
矢代 恵理子 / Eriko Yashiro
株式会社Sun Asterisk Project Manager
大学卒業後、富士通株式会社に入社。市町村向け住民情報システムパッケージの開発を担当し、詳細設計から適用支援を経験。その後、製造システムパッケージの開発を経て、2012年頃からSNSアプリ、サブスクリプションアプリ、TV局関連サービスなどのシステム開発ディレクションを担当するほか、マネージャーとして組織改善、開発プロセス標準化、人材育成、採用など幅広く担当。2022年9月よりプロジェクトマネージャーとしてSun*にジョイン、現在はUnit Managerを務める。
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https://sun-asterisk.com/recruitment
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