アジャイル開発をスムーズに進めて高い品質を保つには、テストの実施が重要です。この記事では、アジャイル開発のテスト担当者に向けて、アジャイルテストの4象限やテストのポイントを解説します。アジャイル開発の概要や手法もまとめているので、ぜひ参考にしてください。
アジャイル開発とは
そもそも、アジャイル開発とは何のことを指すのでしょうか。アジャイル開発の詳しい意味を解説します。
プロダクトの開発手法の1つ
アジャイル開発は、システムやソフトウェアなどのプロダクトを開発する手法の1つです。開発においては、要件定義や設計、実装、テスト、運用などのサイクルを細かい単位で繰り返して進めていきます。従来の開発手法よりも期間を短縮できるため「素早い」という意味の英単語「agile」にちなみ、アジャイル開発と呼んでいます。
アジャイル開発では機能単位でサイクルを構成しつつ、1つの機能をリリースした後に、新たな機能のサイクルに着手するという手法がとられます。
急な仕様変更や追加要望に強い
アジャイル開発では1つのサイクルの規模が小さいため、次のサイクルに移行しやすいのが特徴です。単位が小さいため、突然の仕様変更や追加要望にも対応しやすいでしょう。
アジャイル開発手法の一覧
アジャイル開発の手法を一覧にし、簡単に解説すると以下のとおりです。
スクラム | 少人数のチームを組んで開発工程を繰り返す |
リーン | 無駄を省いて開発を進めることを重視する |
カンバン | 視覚的にプロジェクトを管理する |
クリスタル | 複数のアジャイル手法で構成されている |
デブオプス | 開発チームと運用チームで業務を分担する |
エクストリームプログラミング | 顧客の要望の変化に対して柔軟に対応する |
適応型ソフトウェア開発 | 思索、協調、学習という3つのサイクルを繰り返して開発を進める |
テスト駆動開発 | コードを書く前から単体テストケースの確立を重視する |
受入テスト駆動開発 | さまざまなメンバーが協力してテストを構築する |
行動駆動開発 | 開発者、マネージャー、顧客が関わる |
それぞれの開発手法について詳細は、次項以降で解説します。
アジャイル開発の手法詳細
ここでは、前項でご紹介した11のアジャイル開発手法について、それぞれ詳細を解説します。
1. スクラム
スクラムは、スプリントと呼ばれる開発工程を繰り返す手法です。1つのスプリントには、1〜4週間程度の期間が設定されます。また、スプリントごとにこまめに目標が立てられ、基本的にはスプリントごとに少人数のチームを組んで対応する点が特徴です。
2. リーン
リーンは、無駄を省いた開発を重視する手法です。具体的には、以下の7つの要素を原則として開発を進めます。
1. 無駄を排除する
2. 不具合の発生を防いで品質を高める
3. フィードバックから知識を得て活用する
4. 重要な意思決定は急がず熟考する
5. 速やかにリリースする
6. メンバーの意見を尊重する
7. 個別の工程ではなく全体を見て最適化する
3. カンバン
カンバンは、分かりやすいビジュアルで、視覚的にプロジェクトを管理する手法です。開発における各段階の進捗を把握しやすくなり、今後の計画を立てて無駄を省き、チームの可視性を向上することにつながります。
4. クリスタル
クリスタルは、複数のアジャイル手法で構成されている手法です。優先順位をつけ、都合や事情に合わせて手法を調整します。適正があるのは、短期的なプロジェクトかつ、1つのワークスペースで作業するチームで動く場合です。
5. DevOps(デブオプス)
DevOpsは、開発チームと運用チームの業務を分担し、相互に協力して進める手法です。具体的には、反復的なソフトウェア開発、自動化、プログラム可能なインフラの展開と保守の使用と定義されています。
6. エクストリームプログラミング
エクストリームプログラミングは、顧客の要望が変化することを前提とした手法です。緻密な計画は立てず、顧客の要望の変化に柔軟な姿勢で対応します。一定のサイクルを短期間で反復し、要望を最大限反映することを目指すのが特徴です。
7. 適応型ソフトウェア開発
適応型ソフトウェア開発は、継続的な仕様変化への適応を重視する手法です。思索、協調、学習という3つのサイクルを繰り返して開発を進める特徴があり、状況変化の激しいケースに適しています。
8. テスト駆動開発
テスト駆動開発は、コードを書く前から単体テストケースの確立を重視する手法です。開発者は、各機能の基本的なテストケースの作成から始め、プログラミング・単体テスト・リファクタリング、それぞれの要素を反復プロセスで組み合わせていきます。
9. 受入テスト駆動開発
受入テスト駆動開発は、さまざまなメンバーが協力してテストを構築する手法です。メンバーには、開発側だけではなく顧客も含まれます。受入テストを構築するだけではなく、関連する機能も実装します。
10. 行動駆動開発
行動駆動開発は、アプリやプログラムが意図された動作だけになるように設計する手法です。一般的には、開発者、マネージャー、顧客が話し合い、理想とする製品の全体像を確立する所から始めます。開発者には最初に目標が与えられるため、不要なコードや機能をつけたり、焦点がずれたりすることが防ぎやすいでしょう。
11. 機能駆動開発
機能駆動開発は、2週間未満の短い開発期間を繰り返して全体の開発を進める手法です。具体的には、以下の手順を基準として活動します。
1.全体モデル開発
2.フィーチャーリストの構築
3.フィーチャーごとの計画
4.フィーチャーごとの設計
5.フィーチャーごとの構築
フィーチャーとは、2週間以内で開発できる小さな機能のことを指します。
アジャイル開発の手法を選ぶ際のポイント
アジャイル開発の手法は、以下のポイントを押さえながら選択するとよいでしょう。
開発チームの規模を参考にする
開発チームの人数によって、適している手法は変わってきます。そのため、開発チームの規模を確認して、最適な手法を選びましょう。たとえば、スクラムはチーム5~9人で構成することが一般的です。開発チームが9人以下ならスクラムを採用し、10人以上なら別の手法を検討するといった考え方ができます。
チームのレベルに合わせる
チームを構成するメンバーのレベルに合わせて、手法を選ぶことも大切です。メンバーのレベルを測る要素として、アジャイル開発の経験の有無や、主体的なコミュニケーションの取りやすさなどが挙げられます。手法ごとに求められるメンバーのレベルと、実際に集まるメンバーのレベルを合わせることを意識しましょう。
重視する要素を参考にする
開発チームが重視する要素も手法を選ぶ際のポイントです。たとえば、マネジメントを重視するなら、進捗管理がしやすいスクラムが向いています。一方、開発の柔軟性を重視するなら、仕様変更がしやすいエクストリームプログラミングが向いているでしょう。手法ごとの強みとチームのニーズを把握して、最適な手法を選んでください。
複数の手法を組み合わせることを検討する
複数の手法を組み合わせると相乗効果が期待できます。組み合わせによって手法のデメリットをカバーしたり、メリットを大きくしたりできるでしょう。手法ごとの特徴を把握し、目的に沿った最適な組み合わせを目指すことをおすすめします。
アジャイル開発のメリット
アジャイル開発を行うことで以下のメリットが得られます。
顧客満足度が向上する
アジャイル開発は顧客の要求を満たしやすく、顧客満足度の向上が期待できます。なぜなら、アジャイル開発においては、顧客を含むステークホルダーに情報提供が行われるためです。また、ステークホルダーも開発工程の一部に関与するため、フィードバックを提供できます。双方向のコミュニケーションにより、要望を満たした製品の提供が可能です。
製品の品質が向上する
アジャイル開発は、製品の品質を良好な状態に保ちやすいメリットもあります。理由として挙げられるのは、プロジェクトの一部としてテストが組み込まれていること、クライアントやテストユーザーからの意見を反映する機会も多いことです。ユーザーの意見が反映されやすく、製品の品質向上が期待できるでしょう。
開発途中の仕様変更に対応しやすい
アジャイル開発は、開発途中でも仕様変更に対応しやすいといえます。開発において仕様変更は珍しくありません。アジャイル開発は仕様変更を想定している手法であるため、変更があっても金銭的なコストや時間がかかりにくいのがメリットです。
ミスコミュニケーションを防げる
アジャイル開発のチームは、基本的に毎日ミーティングを行うため、ミスコミュニケーションを防げます。ミーティングでは、進捗状況やトラブルの有無について報告が行われており、開発に必要な情報を全員で共有可能です。コミュニケーションの機会が多くなれば、認識のずれや混乱といった事態を避けやすくなります。
市場へのリリースが早くなる
アジャイル開発は、別の開発手法よりも市場へのリリースが早くなります。アジャイル開発は、要件定義書や詳細設計書、運用マニュアルなど、時間のかかるドキュメント作成の省略が可能です。仕様変更にともなう手戻りも起こらないため、開発スピードが早くなります。市場へのリリースが早くなれば、競合他社よりも優位な立場を築きやすいでしょう。
アジャイル開発のデメリット
メリットの多いアジャイル開発ですが、デメリットも認識しておくとよりスムーズです。アジャイル開発のデメリットを解説します。
方向性が変わりやすい
アジャイル開発は細かい仕様変更を繰り返しがちで、方向性を柔軟に変えられます。そのため、個別の機能単位では目的を意識して開発を進めやすいものの、全体の設計や方向性を見失いやすいともいえるでしょう。したがってアジャイル開発においては、定期的に振り返りを実施して方向性を確認するなどの対策が求められます。
スケジュールの調整が難しい
アジャイル開発は仕様変更に柔軟に対応しやすい一方、スケジュールの調整が難しい傾向にあります。仕様変更が何度も起こると、全体のスケジュールに影響が出る可能性が高まるため、こまめな調整が必要です。
まとめ
アジャイル開発の手法には、上述の一覧でみてきたとおりさまざまなものがあります。開発の目的に応じて最適なものを組み合わせることで、効率よくロスの少ない開発が可能になるでしょう。
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