アジャイル開発における契約には、大きく分けて3種類あります。アジャイル開発では、開発の過程で要件や仕様の変更が頻繁に発生するため、契約の柔軟性が重要です。一般的な「請負契約」は、契約内容が厳密に決まっているため、変更が難しい一方で、アジャイル開発においては柔軟に対応できる「準委任契約」がより適しています。
目次
アジャイル開発契約は「準委任」が主流
アジャイル開発では、開発の過程で要件や仕様が頻繁に変更されることが一般的です。こうした変化に柔軟に対応するためには、契約内容が厳密に決まっている「請負契約」よりも、柔軟な対応が可能な「準委任契約」が適しています。
請負契約では、事前に定められた成果物を納品することが求められるため、要件変更があるとリスクが高まる場合があります。一方、準委任契約では、プロジェクトの進行に合わせて柔軟に対応できるため、実際のニーズに即した価値の高い成果物を提供しやすくなり、顧客にとってもメリットが大きいといえます。
アジャイル開発における契約の種類
アジャイル開発における契約の種類は3つです。以下で詳しく解説します。
1.準委任契約
アジャイル開発では、事前に仕様や成果物が明確に定まっていないケースが多いため、準委任契約が主流となっています。この契約形態では、受託者が業務を遂行すること自体に対して報酬が支払われるため、プロジェクトの進行中に要件変更や追加を柔軟に行えます。
特に、アジャイル開発の特徴である仕様の変更や優先順位の変更が頻繁に発生する環境においては、柔軟な対応が求められるため、準委任契約は最適な契約形態といえます。
2.請負契約
請負契約は、完成した成果物に対して報酬が支払われる契約形態であり、ウォーターフォール型開発でよく採用されます。しかし、アジャイル開発ではプロジェクトの進行中に要件や仕様が変わることが多いため、請負契約は適切ではありません。
ただし、最終的なリリース段階で明確な成果物を求められる状況においては、請負契約が適用されることもあります。この場合、リスクを抑えつつ、確実な成果を納品することが可能です。
3.多段階契約
多段階契約は、プロジェクトの進捗に応じて段階的に契約を結ぶ方法です。初期段階では準委任契約を用いて柔軟な対応を行い、プロジェクトが進んで信頼関係が築かれた段階で、請負契約に切り替えることも可能です。その結果、初期段階ではアジャイル開発に必要な柔軟性を維持し、後期段階では確実な成果物を納品できるメリットがあります。
このように、多段階契約は、プロジェクト全体を効率よく進めるためのバランスの取れた契約形態です。
アジャイル開発における契約のメリット・デメリット
アジャイル開発における各契約のメリット・デメリットは以下の通りです。
準委任契約のメリット・デメリット
準委任契約の最大のメリットは、アジャイル開発の特性に合った柔軟性を持っていることです。仕様や要件が頻繁に変更されるアジャイル環境において、準委任契約ではこれらの変更に柔軟に対応することができ、開発プロセスがスムーズに進行します。また、プロジェクトの進行状況に応じて調整ができるため、開発チームも適切にリソースを投入することが可能です。
一方で、準委任契約のデメリットは、成果物の完成が保証されない点です。発注者にとっては、プロジェクトの進行が必ずしも期待通りの成果物につながらないリスクがあるため、目指す成果が得られない可能性があります。
請負契約のメリット・デメリット
請負契約の大きなメリットは、成果物の完成が契約で保証されている点です。発注者は、明確に定義された成果物の納品を確実に期待することができ、契約の範囲内で成果物を受け取ることが保証されます。そのため、プロジェクトの完成を確実に保証したい場合や、最終成果物が明確に定まっているプロジェクトにおいて、請負契約は有効です。
一方、請負契約は、アジャイル開発の特性にはあまり適していません。アジャイルでは要件や仕様が頻繁に変更されることが多いため、請負契約ではこれらの変更に対応することが難しく、結果として追加コストやスケジュールの遅延が発生するリスクがあります。また、契約の範囲外の変更を行う場合は、追加の交渉が必要となり、柔軟性に欠ける点もデメリットです。
多段階契約のメリット・デメリット
多段階契約は、初期段階では準委任契約を使用して柔軟に対応し、プロジェクトが進むにつれて請負契約に切り替えることで、プロジェクトの柔軟性と成果物の確実性を両立できる点がメリットです。この契約形態は、アジャイル開発の柔軟さを維持しつつ、最終的な納品においては請負契約による確実性を担保できるため、プロジェクトの両面に対応可能です。
多段階契約のデメリットは、複数の契約を段階的に締結するため、契約管理が煩雑になる点です。契約内容の変更や管理が複雑になることで、プロジェクトの進行が遅れる可能性があります。また、各段階での契約交渉や管理にかかるコストや時間も増加するため、適切な契約管理が求められます。
そもそもアジャイル開発とは
アジャイル開発とは、ソフトウェア開発手法の1つであり、短期間で計画・設計・開発・テストを繰り返すことで、段階的に製品をリリースしていく方法です。
この手法では、要件や仕様が変化することを前提としており、開発プロセスの途中で顧客からのフィードバックを受け取り、それに応じて柔軟に対応することが可能です。アジャイル開発は2001年に「アジャイルソフトウェア開発宣言」に基づいて確立され、特に変化の激しい環境や、要件が不明確なプロジェクトに適している手法です。
アジャイル開発とウォーターフォール開発の違い
アジャイル開発は、小さなサイクル(イテレーション)を繰り返しながら進行し、各イテレーションに計画、設計、開発、テストを行います。そのため、プロジェクトの途中で要件変更や市場の変化に柔軟に対応することができ、顧客との密接なコミュニケーションを維持しながら開発を進めることが可能です。
一方、ウォーターフォール開発は、上流から下流に向かって順序立てて進行する線形の開発手法です。各工程が完全に終了してから次の工程に進むため、進行は一方向で、途中での大幅な変更が難しいという特徴があります。
アジャイル開発のメリット
アジャイル開発では、短い開発サイクルで頻繁にリリースを行うため、顧客のフィードバックを迅速に反映することができます。これにより、プロダクトの品質を向上させるだけでなく、顧客満足度を高めることが可能です。
また、アジャイル開発は仕様変更や新しい要求にも柔軟に対応できるため、変化の多い市場や技術的な不確定要素が多いプロジェクトにも適しています。この柔軟性が、アジャイル開発の強みとなり、効果的なプロジェクト進行を支えます。
アジャイル開発契約書(準委任)に記載すべき内容
アジャイル開発における準委任契約書には、役割分担と協力義務、コミュニケーションや会議の頻度、そして報酬と支払い条件を明確に記載する必要があります。準委任契約では、作業そのものに対して報酬が支払われるため、報酬体系や支払い条件を具体的に定めることが重要です。
一般的には、月額料金や作業単価が設定され、それに基づいて定期的に報酬が支払われる形式が採用されます。これにより、契約内容が明確となり、双方の期待を統一することができます。
アジャイル開発契約書(準委任)に記載すべきでない内容
準委任契約は、特定の成果物の完成を保証する契約ではありません。そのため、契約書には成果物の納品や完成を保証する条項を記載すべきではなく、業務遂行に対する報酬が主となることが重要です。
この契約形態では、作業の進行そのものに対して報酬が支払われるため、契約の内容は成果物ではなく、業務プロセスに焦点を当てましょう。
まとめ
アジャイル開発契約は、アジャイル開発の柔軟なプロセスに対応するための契約形態です。本記事では、アジャイル開発契約の3つの種類である「準委任契約」「請負契約」「多段階契約」について解説しました。
特に、準委任契約が主流となる理由は、アジャイル開発では要件や仕様が頻繁に変更されるため、柔軟に対応できる契約形態が求められるからです。準委任契約では、作業そのものに対して報酬が支払われ、プロジェクトの進行に合わせた調整が可能です。
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