製造業においても、アジャイル開発の導入が検討されることが多くなりました。製造業で導入する場合、どのように生かせばよいのか知っておくことが成功のためには重要です。本記事では、製造業におけるアジャイル開発の流れや特徴について解説します。成功のポイントや注意点も解説しているため、ぜひ参考にしてください。
アジャイル開発は製造業でも拡大している
アジャイル開発は、IT業界で多用される手法ですが、製造業でも活用の幅が拡大しています。まずは、アジャイル開発の概要について解説していきます。
アジャイル開発とは
アジャイル開発とは製品の開発工程を小さい単位に分類して、開発とリリースを交互に繰り返しながらプロダクトを開発する方法です。
リリースするたびに発注者から製品に対するフィードバックを受けられ、フィードバックをもとに製品の不具合を修正しながら開発を進めていきます。
元の計画通りに進めるのではなく、柔軟に変化しながらスピーディにプロダクト開発をするため、市場の変化やニーズに合わせた対応や開発ができるのが特徴です。
製造業におけるアジャイル開発
これまで製造業はアジャイル開発が向かない業界だとされていましたが、近年は変わりつつあります。製造業でも開発分野や業界によっては、アジャイル開発の考え方を取り入れるのが有効です。
急速に進化を遂げるプロダクトの開発を進める際に、変化への素早い対応が可能となる、アジャイル開発の考え方が導入されるようになりました。
製造業でアジャイル開発が広がる理由
アジャイル開発の導入が製造業で拡大していているのはなぜなのでしょうか。主な2つの理由を解説します。
製品開発に柔軟さが求められるため
プロダクトの開発を進めていくなかで、顧客のニーズは変化していくことがあります。従来の開発方法であれば、開発着手後に機能を変更・追加することは難しく、期間も長期化してしまいがちです。
変化する顧客ニーズにマッチしたプロダクトを開発するためにも、変更へ柔軟に対応できるアジャイル開発が求められるようになりました。
製品が複雑化しているため
製造業のプロダクト開発は、ITやAIの登場・進化により複雑化が進んでいます。たとえば、自動車関連の開発においては、車の外装・内装・エンジンなどの開発に加え、Bluetooth付きのスピーカーやアンプなど、複雑なプロダクトを開発する必要が出てきました。
開発にあたり厳しい要件や規制がある業界もあるため、すべての業種には導入が難しいものの、一部の製造業者では導入が進んでいます。
アジャイル開発の流れ
アジャイル開発はどのようにして進めていくのでしょうか。一般的な流れを解説します。
リリース計画
アジャイル開発は、「途中で仕様・設計の変更・追加があるのは当たり前」という前提のもと、開発を進める手法です。そのため計画段階では細かく緻密な開発計画を立てずに、大枠の仕様と要件のみを決定します。
大まかな計画に留めているため、臨機応変な対応ができるようになり、ニーズに沿った製品開発が実施可能です。
イテレーション
リリース計画を立てた後は、開発を機能ごとに小さく分類したサイクルを繰り返し行います。この作業を「イテレーション」と呼びます。「計画・設計・実装・テスト」を1つのイテレーションとし、順番に反復して、リリースに向けて開発を進めていきます。
1つのイテレーションは、1~2週間ごとに行うのが一般的です。
アジャイル開発が向いている分野・プロジェクト
先述したように、アジャイル開発は、製造業でもすべての分野・プロジェクトに有効ではありません。アジャイル開発が向いているとされるのは、開発途中で顧客ニーズの変化による機能の変更・追加が予想されている分野・プロジェクトが挙げられます。
他にも、長くても1年程度で完了するプロジェクトや、すでに導入されているシステムとの互換性に問題がない分野などが、アジャイル開発に向いているといわれています。複合機メーカー・航空機メーカー・自動車メーカーなどでは、実際にアジャイル開発が導入されています。
アジャイル開発の主な種類
アジャイル開発にはいくつか種類があります。主なものを3つ解説するため、自社に合った方法で開発を進めてください。
スクラム
スクラムでは開発にあたり、チーム間でのコミュニケーションをしっかりと意識します。チームのメンバー1人ひとりに役割が与えられるため、チーム全体での協力が必要です。
メンバー間で計画を立案後、イテレーションの進行リリース前の動作確認まで、確認・分析を実施します。少人数が関わるプロジェクトに向いています。
ユーザー機能駆動開発(FDD)
顧客にとっての機能価値を開発の軸に置いて進める手法です。顧客にとって優先順位の高い機能から開発を行い、実際の動作を適切な感覚で繰り返し、アップデートしながらリリースを目指します。
比較的大規模なプロジェクトでも活用可能です。顧客のニーズを軸とするため、しっかりと理解をしたうえで開発を行いましょう。
エクストリーム・プログラミング(XP)
事前に立てた計画よりも、変更・追加などの柔軟性を重視して開発を進める方法です。コミュニケーション・シンプル・フィードバック・勇気の4つを価値として重視しています。
最小限のリソースで、最大のパフォーマンスを発揮することを目指しているため、メンバーの技術力が求められる手法だといえます。顧客との距離を近い状態に保てる小規模なプロジェクトで生かせるでしょう。
製造業でアジャイル開発を成功させるポイント
製造業でアジャイル開発を成功させるには、いくつかポイントがあります。ポイントを押さえたうえで導入を検討してみてください。
目標を明確化する
アジャイル開発を成功させるには、目標を明確化することが重要です。目標を定めておかないと開発途中で方向性がぶれて、計画通りのプロダクトが開発が難しくなるかもしれません。
これまでに獲得した知識や経験をもとに問題を可視化すれば、効果的な目標の設定にもつながります。問題を可視化して分析をしながら明確な目標を設定すると、方向性がぶれにくくなります。
経験者に舵取りを任せる
アジャイル開発は方向性を誤ると、大きな損失につながることがあります。導入に自信がない場合は経験者に舵取りをお願いすることで、方向性を大きく間違えることは避けられるでしょう。
内部に適任者がいないときは、外部委託を検討することも方法の1つです。不要なコストや時間をかけないためにも、アジャイル開発に関する知識やスキルを有した人材を見つけましょう。
社内全体で意識を統一させる
社内全体で、共通の意識を持つことも大切です。従業員がアジャイル開発の仕組みを理解できていないと、開発効率が下がる恐れがあります。
アジャイル開発を導入する前に現場の従業員に加え、経営陣や管理職も同様に社内で意識を統一します。仕組みを繰り返し説明しながら徐々に統一していきましょう。
アジャイル開発を導入する際の注意点
アジャイル開発を導入する際、気を付けるべき注意点について解説します。
他部門と連携がうまく取れない
他部門との連携がうまく取れないことで、他部門からのクレームが懸念されます。結果としてアジャイル開発は途中で断念し、従来の手法に戻して開発を進めなければいけなくなるでしょう。うまく連携を取るためにも、経営陣や管理職が現場を確認し、コントロールする必要があります。
変化を避けてしまう
開発途中の変化を避けることで、従来の無難な開発手法に戻してしまうことも考えられます。必要な変更を途中で行わなければ、「従来の開発手法と何も変わっていないのではないか」と、アジャイル開発のメリットを感じられない人もいるかもしれません。
最終的な効果をあらかじめ予測しておくことで、アジャイル開発の導入範囲を決めておくことが大切です。
要望以外の点にも目を向ける
顧客からのニーズに応えるだけでは、高品質なプロダクトは開発できません。要望がない箇所にも目を向けましょう。顧客からの要望がない部分にも気を配って開発を進めれば、顧客の満足度向上にもつながり、ゴール間際での大きな修正も避けられます。期待以上のプロダクト開発となるように、フィードバックや要望以外の仕様定義を行うことが重要です。
まとめ
IT業界で用いられていたアジャイル開発ですが、製造業でも注目が集まっています。開発中の柔軟な機能変更・追加が求められる分野・プロジェクトにおいては、すでに導入している企業もあります。
製造業でアジャイル開発を導入する際は、社内全体へ理解を広めたり、経験者に舵取りを託したりする必要があるため、しっかりと準備をしたうえで導入を検討しましょう。
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