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アジャイル開発

アジャイル開発に役立つWBSを作るポイントは?進捗管理のコツも解説

更新日: 2024年9月30日

プロダクトを開発する際は、事前にWBSを作成してタスクを洗い出します。本記事では、WBSの基本や、アジャイル開発における必要性、ガントチャートとの違いなどを解説します。アジャイル開発でスケジュールを立てる手順・管理のコツも紹介するため、ぜひ参考にしてください。

WBSの基本

WBSは、「Work Breakdown Structure」の頭文字を取った略称です。日本語では「作業分解構造図」と呼ばれるWBSは、プロジェクトにおけるタスクを分解して構造化したものです。WBSの作成過程では、まず主要な作業項目を特定し、各項目を小さなタスクに細分化します。続いて、タスクに対して責任者を割り当て、実施期間の開始日と完了日を設定します。

WBSを作る目的

WBSを作成する主な目的は、作業項目・タスクの見落としや重複を防ぎ、プロジェクトの全体像を関係者全員で共有することです。WBSによりプロジェクトに必要な工数とリソースを精緻に見積もれると、適切なスケジュールを策定できます。

PMBOKにおけるWBSの位置づけ

PMBOK(Project Management Body of Knowledge)は、国際的に認知されたプロジェクト管理の知識体系です。PMBOKは10個の知識エリアで構成されます。知識エリアの1つであるスコープ管理プロセスにおいて、WBSは重要なツールとして用いられます。

スコープ管理プロセスの目的は、要求事項の収集と、必要な作業範囲の定義です。WBSを活用すると、プロジェクトの全体像が明確になり、作業の構造化と詳細化が可能になります。

WBSとガントチャートとの違い

WBSはタスクリストです。ガントチャートは、各タスクの開始日、終了日、進捗状況を視覚的に表現する横棒グラフ形式のスケジュール表です。プロジェクト管理では、まずWBSで作業を細分化した後で、各タスクをガントチャートに転記して時系列で配置し、全体のスケジュールの立案・可視化を行います。

2つのWBS

プロダクト開発には、2つのWBSが活用されます。各WBSの概要と、適している開発について解説します。

1.成果物を中心としたWBS

成果物(プロダクト)を軸としたWBSは、成果物の要件が明確なときに適しています。成果物から逆算して小さなタスクを洗い出し、各タスクの順序と着手するタイミングを決めていきます。

2.プロセスを中心としたWBS

プロセスを軸としたWBSは、成果物の要件が明確ではない状況で効果的です。各段階での活動をタスクとして設定するため、成果物の要件が明確ではなくてもWBSを作成できます。

アジャイル開発には一般的にWBSは不向き

アジャイル開発では、WBSが不向きといわれる場合があります。アジャイル開発は全体像の把握が難しく、イテレーションを繰り返しつつプロダクトの仕様を変化させていくためです。アジャイル開発の柔軟性が、詳細な計画を前提とするWBSと相反する場合があります。

アジャイル開発に役立つWBSを作るポイント

アジャイル開発でWBSを作るポイントを解説します。適切に活用すると、WBSはアジャイル開発の効率化に貢献します。

正しい手順で作成する

WBSを作成する際は、以下の手順に従って進めてください。

1.主要な作業項目を特定する
2.各作業項目を小さなタスクに細分化する
3.タスクを構造化し、階層関係を明確にする
4.タスクの抜けや重複をチェックし、必要に応じて追加・修正する
5.タスクの優先順位と順序を決める
6.各タスクの工数や作業時間を見積もる

適切にWBSを作成しないと、タスクの漏れや重複などが発生する可能性があります。また、初期段階で細分化が困難な部分については、プロジェクトの進行に伴って段階的に細分化しましょう。

プロジェクトリーダーの独断で作成しない

プロジェクトリーダーが、独断でWBSを作成してはいけません。1人でタスクを細分化すると、漏れが生じやすく遅延リスクが高まるためです。

また、工数や担当者を一方的に決定すると、チームメンバーの状況や感情を考慮できず、トラブルの原因となる可能性があります。プロジェクトの成功確率を高めるには、チーム全体で協力してWBSを作成しましょう。

アジャイル開発でWBSを活用するメリット

アジャイル開発でWBSを活用するメリットを解説します。WBSを活用すると、リスクを軽減しつつプロジェクトを効率的に進められます。

タスクの抜け・重複がなくなる

WBSは階層構造で構成され、大きな作業項目を段階的に細分化します。細分化して階層化する過程でプロジェクト全体の構造を視覚化できるため、タスクの抜けや重複のリスクを低減できます。

役割分担・進捗管理しやすい

WBSによりタスクが明確になると、役割分担と進捗管理をスムーズに進められます。役割が明確になるメリットは、以下のとおりです。

・責任範囲の明確化による、スケジュール遅延リスクの低減
・より精緻な工数見積もりによる、スケジュール管理の容易化

アジャイル開発においては、WBSに加えてガントチャートを併用し、スケジュール管理を行うケースがあります。ガントチャートを活用した効果的な進捗管理のコツについては、後ほど詳しく解説します。

関係者とタスクやスケジュールを共有しやすい

情報共有にもWBSは役立ちます。WBSは客観性が高く、プロジェクト全体を構造化できるためです。WBSをもとにタスクやスケジュールについて説明すると、関係者は状況を素早く理解できます。

アジャイル開発でWBSを活用するデメリット

アジャイル開発でWBSを活用するデメリットを解説します。作成に時間をかけすぎず、タスク間の関係性が分かる工夫を取り入れましょう。

作成するまで手間がかかる

WBSの作成では、主要な作業項目の特定とタスクの細分化に時間がかかります。この過程を効率化するために、デジタルツールの活用を検討しましょう。デジタルツールを活用すると、階層構造を明確に表示でき、タスクの移動が容易になります。また、更新したデータをリアルタイムで関係者と共有できます。

タスク間の関係が分かりにくい

WBSでは、タスク自体は認識できても、階層内のタスクの関係性が分かりにくい場合があります。「タスクAの後にタスクBを実行する」といった関係性が分かるように、タスク間の依存関係を図示または注意書きで明確化しておきましょう。

アジャイル開発でガントチャートによって進捗管理するコツ

WBSをもとにガントチャートを作成すると、アジャイル開発の進捗管理をより効果的に行えます。アジャイル開発における、ガントチャートを用いた進捗管理のコツについて解説します。

タスクの優先順位を明確にする

ガントチャートを作成する前に、予算や納期を考慮してタスクに優先順位をつけてください。ただし、アジャイル開発では優先順位の変更が前提となっています。計画には柔軟性を持たせ、定期的に見直して調整できるようにしておきましょう。

現実的なスケジュールを立てる

ガントチャートは、メンバーの実際の作業能力を反映した現実的なものでなくてはいけません。しかし、プロジェクト開始時点では、メンバーの作業スピードを正確に把握することは困難です。そのため、開発の進行に伴いメンバーのスキルと生産性を観察し、定期的にスケジュールを見直してください。

工数見積もりの精度を上げる

ガントチャートの活用に向け、以下の方法で工数見積もりの精度を向上させましょう。

・時間ベースの見積もりではなく、ストーリーポイントによる見積もりにシフトする
・イテレーションごとに、工数の見積もりと実際の誤差を振り返る

ストーリーポイントによる見積もりは、タスクの複雑さや不確実性を適切に反映できます。

イテレーション終了時の振り返りを続けるうちに、見積もりの精度が徐々に向上します。バーンダウンチャートを作成しておくと、残作業量を容易に把握できるため、見積もりとの誤差を確認しやすくなるでしょう。

アジャイル開発でWBSをもとにスケジュールを立てる手順

WBSをもとに、リリーススケジュールとイテレーションスケジュールを立てる手順を解説します。

リリーススケジュールを立てる手順

リリーススケジュールは、プロジェクト全体のスケジュールです。リリーススケジュールを立てる手順は以下のとおりです。

1.WBSをもとに、プロジェクト内のタスクに重要度を設定する
2.各タスクの作業時間を見積もる
3.チームの作業効率(ベロシティ)を予測する
4.プロジェクト完了までのイテレーション数を見積もる
5.実際のベロシティを計測する
6.プロジェクト完了までのイテレーション数を更新する

実際のベロシティの計測は重要で、イテレーション数の更新により現実的なスケジュール管理が可能になります。

イテレーションスケジュールを立てる手順

イテレーションスケジュールは、1つのイテレーション内で実施する作業の計画です。イテレーションスケジュールを立てる手順は以下のとおりです。

1.WBSで定義された作業項目やタスクを確認し、優先度の高いものを選定する
2.選定した作業項目やタスクを、さらに具体的なタスクに細分化する
3.各タスクの工数を見積もり、イテレーション内で完結可能か確認する
4.イテレーションに余裕があれば、他の作業項目も追加して検討する

上記手順を通じて、チームは具体的な目標や作業の要点を明確にできます。

まとめ

アジャイル開発にWBSを活用すると、タスクの漏れや重複のリスクを軽減し、効率的にプロジェクトを進められます。関係者全員で協議し、適切な手順でWBSを作成しましょう。

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