ソフトウェア開発の場においてスタンダードな手法のひとつとなっている「アジャイル」。「アジャイル」が特にあてはまるものは、何と言っても新規事業の開発プロセスです。
その背景には、グローバル化が進むなかで海外勢と競うためにはスピード感が欠かせないから、という危機感や、「Society5.0」時代の特徴とされる“不確実で激しく変化する環境”への対応のため、といった理由が挙げられます。
技術の進歩やニーズの多様化といった変化の激しい今、既存のビジネスでは時代遅れとなり、今までにない新しい価値を創造することが求めれています。
では、これからの時代において、その新しい「価値」の作り手とは誰で、「価値創造」のモデルはどのように変化し、それを可能にする環境や体制はどのようなものであるべきなのでしょうか?
本稿では、Sun*が考える「新しい価値創造モデル」について、ご紹介したいと思います。
目次
新規事業開発の手法としてアジャイルが採用され始めた背景
長い間、プロダクト開発において“効率的”とされてきた手法といえば、ご存知「ウォーターフォール型」。サプライヤーがプロダクト(≒価値)を構想し、マーケットリサーチ等を通じてニーズを確認して設計書や仕様書を作成。SIerを活用するなどしてプロダクトを開発し、世の中にリリースする、というのが一連の流れでした。
こうしたサプライヤー主導のやり方は、技術力や既存の知財といった事業の⾃社資源をより多く保有する大企業が、短期間で市場ニーズを満たす製品・技術を開発し、⻑期的に収益を上げ続ける「クローズドイノベーション」の時代において、大きな利益を生み出してきました。
しかし、1990年代以降、この“必勝法”が通用しなくなり始めます。その原因は、以下の4つに集約されるでしょう。
- インターネット、ITの急速な発達(普及)
- グローバル化、製品の⾼度化、複雑化、モジュール化
- 新興国企業を含めた競争の激化
- プロダクト・ライフサイクルの短期化
上記に加え、近年では、AIやロボディクスなどのテクノロジーが飛躍的に進化したり、GAFAに代表される新興勢力の魅力的なサービスが市場を席巻するなど、新しい波が次々に起こったことで、人々の嗜好やライフスタイル自体が大きく変化し、ニーズの多様化・細分化が加速していったこともクローズドイノベーションの限界の理由と言えそうです。
そこで、これを解決するためにまず見直されたのが「開発のあり方」でした。このころ、開発スピードを上げてコンシューマーニーズに柔軟に対応するべく注目され始めたのが「アジャイル型の開発」です。ご承知の通り、今日のプロダクト開発の世界では、「仕様が固まっていない段階でプロトタイプを開発・リリースし、市場からのフィードバックを元にブラッシュアップしていくやり方は、変化が激しい時代において最適な手法だ」として、「当たり前の手法」になっています。
Sun*でも創業以来、アジャイルアプローチでの開発を行なっており、それに最適とされるRuby on Railsをメインの開発環境として使用してきました。
ただ、当時の変化は、あくまでウォーターフォール型で言う「SIerを活用するなどしてプロダクトを開発」の部分最適であり、最上流の企画や構想などのフェーズが過去のやり方のままでは、結局のところ限定的な効果にしかならず、市場ニーズとのタイムラグを完全に解消するには至りませんでした。
そこで、抜本的な変革として、新規事業開発のフェーズでもアジャイルの考え方が採用され始めた、というわけです。
DXは価値提供のあり方を大きく変えている
では、新規事業の開発手法としてアジャイルが採用されている例にはどういったものがあるのでしょうか? 最近すっかり生活に溶け込んだいくつかのプロダクトやサービスから見てみましょう。
まず、「Uber」や「airbnb」です。これを従来のタクシー業界やホテル業界と比較してみましょう。
前者は「車に乗って目的地に移動する」、後者は「宿泊する」という意味では従来と同じ価値を提供しているように見えます。ですが、「Uber」や「airbnb」の場合、個々人のニーズによって車や建物を介してサービスの受け手にも担い手にもなれる、という点がこれまでの価値のあり方とは明らかに異なります。
また、サブスクリプションでエンタメ作品や音楽を楽しめる「Netflix」や「Spotify」のようなサービスは、サービスの受け手側がほしいだけ利用できる、楽しめる、という点が旧来のレンタルビデオやCD業界とは異なります。
上記の4つの新興サービスに共通するポイントを挙げるなら、サービスがユーザーを中心に生み出され、サービス提供者側だけでなくユーザー側も一緒に価値を形作っている、ということだと言えます。
同時に、これらはITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させるDX社会の恩恵の一端でもある、とも言えるでしょう。
そう考えると、これからは、最初にユーザーの存在とニーズがあり、それをプロダクトのチカラで下支えすることでビジネスが始まり、適宜評価を受けながらプロダクト(=価値)が成長していく、という流れがビジネスのスタンダードになると見通せるかもしれません。
そのような世界観のなかでプロダクトを開発するとなれば、やはり早い段階でプロトタイプをリリースして、ユーザーの反応を見ながら調整したり路線変更した方がコスト・リソースともに合理的であり、結果的に「最もユーザーに愛されるプロダクト」が生まれる、と期待できるのではないでしょうか。
ユーザー中心設計で価値創造するフレームワークとは? サプライヤー主導と何が違うか?
上掲の表にあるデザイン思考やリーンスタートアップといった言葉は、IT業界以外では耳慣れないかもしれません。そこで、Sun*での新規事業開発の流れを例に、説明したいと思います。
まず、事業の課題の抽出や具体的な方向性を見つけるなどのために、デザイン思考で行ないます。ここでまさに「ユーザー中心設計」の土台となる、ユーザーが抱えている社会のどんな課題をプロダクトで解決するか? を定めることになります。
次に、最小限のコストとリソースで“試しに作ってみた”プロトタイプを市場にリリースし、反応を確かめながらプロダクトとしてブラッシュアップしていきます。このようなリーンスタートアップと呼ばれる開発手法は、事業全体の最適な予算配分や事業戦略の策定にも貢献すると考えられます。
そして、上記の実績をもとに予算取りや資金調達が完了すれば、本開発への第一歩を踏み出すことになります。
ご想像の通り、ユーザー中心設計の方法でサービス開発をするには、フレキシブルに対応できる開発チームの存在が欠かせません。Sun*では、ベトナムの開発拠点を活用し、開発チームをスケールアップし、短期間で開発を推進したり、リリース後は人数を柔軟に調整するなどの対応を行なっています。
Sun*の提供する価値創造とは? 3つの手法
前述の通り、Sun*では、ユーザーのニーズを徹底的に追求した「ユーザー中心設計」での開発において、従来のシステム開発の開発工程と異なり、デザインシンキングで創出したアイデアでプロトタイプを開発・リリースして改善する、という流れを高速回転させています。
この方法なら、サプライヤー主導の開発に比べて、新規事業の構想から開発・リリース、検証のサイクルを短期化できるため、よりビビッドに市場のニーズに応えられると考えています。
また、このような理想のスピード感を実現する上で基盤となるのが、ユーザーニーズに合わせたサービスのアップデートのスピードと質を担保するために独自で構築したSun*のDevOpsのツールです。
開発チーム(Development)と運用チーム(Operations)がお互いに協調し開発・運用するサービスによって、ビジネスの価値をより高めるだけでなく、その価値をより確実かつ迅速にエンドユーザーに届け続けるための手法であるDevOps。
例えば、AmazonやFacebookなどではこれを用いて10秒ごとに新しいコードがデプロイ(展開)しており、多いときで1時間に1079回デプロイを行なっているとか。こうして、ユーザーごとの志向に基づいた最適なアプローチの可能性をより高めているそうです。
デプロイが高速で行なわれることは、サービス提供者側にとっても、ユーザーにとってもより満足度の高い体験をもたらしてくれます。
例えば、eコマースのサイトでは、閲覧する時間帯などによって商品の値段が異なる場合がありますが、これはサービス提供者側が特定の購買行動の特徴を条件設定して行なわれています。DevOpsは、そんな理想的な顧客体験を現実にするための試行にもなります。これによってユーザーは欲しい時に欲しいものを購入しやすくなり、サービス提供者側は収益拡大や機会損失の回避、良質な顧客体験によるユーザーとの関係性の強化などが見込めるようになる、と考えられます。
つまり、デプロイの高速化は、サービス提供者が常にユーザーとの対話を通じて極めて高速かつ良質なサービス運営を続けることに繋がる、ということ。これらのことから、DevOpsのツールがいかに必須の環境か、ご理解いただけることでしょう。
近年、多くのサービスやプロダクトが極めて短いスパンでリリースされるようになっています。これは、アジャイルが一般化したためだと考えられるでしょう。しかし、リリース後もユーザーニーズを織り込み、受け入れて進化させる発想がなければ、せっかくのプロダクトも一度きりのリリースで消えてしまうことになるかもしれません。
サプライヤーだけでなくサービスの受け手も「価値創造」をするようになった今日だからこそ、新規事業の開発においてもアジャイルの発想は求められるはずです。
Sun*では、そうした時代に備えて、プロダクトの戦略・設計の支援からUI/UXデザイン、コンサルテーションなどが可能な体制を整え、世の中に「Make awesome things that matter.」をひろげていく準備をしてきました。このチカラとみなさんの発想で、世界をあっと驚かせてみませんか?
アプリ開発に関するご相談承ります
スマートフォン向けアプリを多数開発しているSun*では、開発をスピーディかつ高い品質で行うための豊富なノウハウがあります。ご要望に沿って開発するだけでなく、サービスの本質を捉え、多種多様な機能や技術のノウハウを活かした提案をいたします。具体的に構想が固まっていない段階での相談からでも、お気軽にご相談ください。iOS、Androidの両プラットフォームでの開発技術を保有しており、スクラッチでの開発はもちろん、既存アプリの改修も承っております。
またSun*には、自社内にUIUXのデザインコンサルのできるデザインチームがいますので、デザインと開発を一気通貫で行うことができます。洗練されたUI(ユーザーインターフェース)のiPhone・iPadアプリを開発する事で企業におけるアプリ・サービスの活用を最大限サポートします。
新規ITサービスの立ち上げや、既存サービスの改善でお悩みのことがあればお気軽にご相談ください。