セミナー・イベント

Event

【イベントレポート】なぜ新規事業はすすまない? 大手企業とスタートアップから見るオープンイノベーションとは

セミナー・イベント 2021/03/02

【イベントレポート】なぜ新規事業はすすまない?
大手企業とスタートアップから見るオープンイノベーションとは

国内市場の成熟、事業ライフサイクル短期化を背景に、急速に進展するデジタル社会に対応するため、企業にはこれまで以上のスピードで変化していく必要性がでてきました。このような状況下で、大手企業の新規事業開発、DX(デジタルトランスフォーメーション)を検討する企業が増えてきています。一方で、それらを推進するIT人材の不足などから、適切な進め方・成果を出すことに悩んでいる企業が多いことが実情です。

そんな中、近年注目を集めている手法がオープンイノベーションです。
今回のイベントでは日本マイクロソフト、EDGEof、そしてSun*の3社が集まり、大企業とスタートアップそれぞれの目線から新規事業開発、DXを推進する手段としてのオープンイノベーションについて意見を交わしました。

なぜ今、オープンイノベーションなのか?

– オープンイノベーションを通じて実現したいこと

「遅れてしまった”日本のデジタル化”に変革を起こす」
「大企業とスタートアップの掛け合いで、互いのKPIを一緒に伸ばす」

 

原(マイクロソフト):マイクロソフトが何をやりたいかと言うと、デジタルトランスフォーメーションを推進したいんです。世界と比較しても、日本はデジタル化に遅れています。

そこには様々な課題があって、例えば日本の大企業に開発者がいないこと。今はデジタルを使って事業を作っていくのが主流ではあるのですが、それを自社だけでやろうとすると難しいという課題があります。

ただ、「開発者がいないので外注して、昔ながらのウォーターフォールで開発する」みたいな事をやっていると、どうしても時間がかかって1周遅れのような状態になってしまいます。日本マイクロソフトとしては、技術的なリソースを使ってそこに変革を起こしたいと思っています。

梅田(Sun*):スタートアップと大企業との掛け合いで、お互いのKPIが一緒に伸びるような状態になることが一番重要かなという風に思っています。

大企業が実績とアイディアとエンジニアを求めていて、スタートアップは信頼性とネットワークを望んでいる中で、ミスマッチが起こって何も進まないということが一番の問題だと感じていて、僕らはそういった両者の間に入ることでお互いが本当に欲しいものを結びつけるようなことやっているイメージです。

OpenInnovationEvent-2

– オープンイノベーションの今と昔

「かつては、誰もやり方がわからないまま突き進んでいた」
「ここ1,2年で、イメージしやすいオープンイノベーションの環境が整った」

 

原:「オープンイノベーションといえばAI」みたいな時期が、かつてあったと思うんです。その当時は、テクノロジーの進化と、「事業を新しくしなきゃいけない」というフラストレーションも相まってみんなその道に進んだものの、結局やり方が分からず、なかなか上手くいかないというケースがありました。

今ではノウハウが溜まってきたり、梅田さんのところ(Sun*)みたいに、そこに特化した提案が充実してきています。

梅田:最近はB to BのSaaSとか、いわゆるインダストリーに深く入り込んだスタートアップが出てくるようになったので、ある意味、今の方が明確な意思を持って大企業とスタートアップがコラボレーションしやすくなっているかもしれません。

柳原(EDGEof): たしかにto Bのスタートアップは増えていますね。特に大企業、中小企業の個別インダストリーの中のワークフローが分かっている状態で、そこに当てにいっているサービスが圧倒的に増えてきました。逆にいうと、偶発性に期待したり、テックオリエンテッドなところから1つフェーズが変わってきているというのが最近の僕の見方です。

原:創業するスタートアップが変わってきたというのは僕も感じています。創業しやすい環境が市場的に整ってきていることに加えて、コンサル業界から上がってきている人がすごく多いなと。

その結果、インダストリーごとのペインを理解して、それを解決するためにサービスを立ち上げるという創業の形がすごく増えている。そうすると、そのインダストリーにいる大手のプレイヤーとのシナジーが生まれやすいということもあって、いままでよりもイメージしやすいオープンイノベーションの環境が1,2年前よりは整っていると思います。

オープンイノベーションにおける、大企業とスタートアップの役割

– 大企業から見るオープンイノベーション

「大手とスタートアップをマッチングさせる仕組みが整っている」

 

原:マイクロソフトが一番強いのはテクノロジーです。オープンイノベーションを進めていく中で「どのようにテクノロジーを使うか」という方向性を示すことはできると思っています。

ただ、それだけでは当たり前のことで、もう一つ我々の強いところで言うと、日本でももう30年以上ビジネスをしているので、大手の方々との接点を多く持っている。そういう方々が新しく事業を創る上で困っているポイントは、マイクロソフト社内でも認識、共有されています。

それを汲んだ上で、そのポイントに合わせて大手とスタートアップをマッチングさせられるんです。そういった仕組みが社内で整ってきている、というのはとても大きなことだと思っています。

– スタートアップから見るオープンイノベーション

「事業を最速で最大に成長させるための選択肢」

 

梅田:オープンイノベーションとかDX(デジタルトランスフォーメション)とか、定義が広すぎてよくわからないという意見もあると思うんですが、僕たちとしては、デジタル化していくための一つの手段としてオープンイノベーションがある、という風に考えています。

DXを進める時に、内部と外部どちらのリソースを使うのか。我々は外部としてのリソースを提供してはいるんですけれど、そもそもの最重要事項は、事業が最速で最大に成長していくこと。そこに着眼した時に、自社のリソースだけでやることが果たして正解なんだっけ、という立ち位置で、僕達は外部リソースとしてのプロフェッショナルという形でやらせていただいています。

柳原:うちではマッチングとPMに加えて、最近だと企業さんのオープンイノベーションのお手伝いをやらせていただくときは、スタートアップと企業のコミュニケーションの中間に入るという形が増えています。お互いのやりたいことを噛み砕きながらコミュニケーションをとる段階で、けっこうハレーションが起きるので、その解消に回るっていうケースが多くなっています。

企業が事業連携等でスタートアップと何かを始めたけれど、上手く進まないみたいなことが増えてきているなという風に感じていて。どちらかと言うと、進行中の部分で色々サポートさせていただいているプレイヤーなのかなという風に考えています。

オープンイノベーションを成功させるコツ

– 大企業とスタートアップで「目線を合わせよ」

「目線が合っていないのが、一番辛い失敗例」

 

梅田:スタートアップと大企業で連携する時に、大企業の担当者の方とスタートアップの社長が上手く出会うということの難易度が高い。さらにその上で、ビジネスを回せる人材が両社にいるのか、という問題もあります。うちの場合は、お互いの資金調達の構造などを理解した上でどう立ち回っていくかというところを重要視しています。

原:そうですね、僕もそこに尽きるなという感じはしています。もうちょっとエモーショナルな話をすると、オープンイノベーションにおいて失敗する時に、何が一番辛いかっていうと、「目線が合っていないこと」だと思っています。

大企業、スタートアップにかかわらず、自分たちの事業を理解してもらうために、自分たちのテクノロジーを理解してもらうために、目線を合わせることはとても重要です。自分たちが提供できるものは何か、それに対して業務フローの中で課題解決できるものは何かっていう目線を合わせることで、一緒に解決しようと思える感情が生まれると思っています。そういった目線の合わせ方は、両者にとってとても大事で、そこが成功の要因かと思っています。

– 「エース」に任せよ

「オープンイノベーションには「圧倒的な成功体験」の可能性がある」

 

梅田:「売上が立たないから、スタートアップ担当のポジションにはエースを置かない」という人事配置の問題のような気もしています。リソース自体は足りているけど、企業としての優先度が低いというのが原因の1つだと思います。

柳原:本当にその通りだと思います。実際、「新規事業担当になったら、社内でどう評価されたらいいですか?」という相談はかなりありますね。

梅田:そこはパッションがあるかないかの話だと思っていて、「パッションを持って取り組むことができれば、圧倒的な成功体験が積める」という可能性が大企業においては、オープンイノベーションの領域にしかなかったりするので、僕らはそういった人たちと一緒に仕事をしているケースが多いです。

– 基軸からブレないマインドを持つ

「大企業側の基軸にはコアコンピテンシーがあるべき」

 

原:僕も、スキルセットというよりはマインドの問ー題だと思っています。大企業の中のある部署で何か新しいことをやろうと思った時にケーパビリティが足りなかったとしても、他の部署を探してみたらケーパビリティを持ってる人は多分いるんです。

ただ、大企業内で他部署と連携しようとすると、「KPIを合わせるために1年かけて、1年後からやりましょうか」というような話になってしまいます。だったら、スピードを早めるために、自分たちに足りないものを補填するという意味でもスタートアップの人たちと組むのが重要だと思っています。

大企業側のコアコンピテンシーが何なのか、例えばそれがテクノロジーだとしたら、それは既存の主軸となっているテクノロジーなのか、それとも「今はまだ開発段階だけれど、これからマーケットにすごくフィットしそうなテクノロジー」なのか、ちゃんと見極める必要があります。自分たちが狙っているマーケットに対して、最善のものは何なのかを見極めることが重要です。

また、そこに会社のエースを投入しないと会社の次の主軸となるようなものは出てこないと思うので、そういうチームの作り方をする。プラスでそこに何かエッセンスを加えたり、スピードアップしたりするためにオープンイノベーションと言う手法があるんじゃないかなと。やはり、大企業側の基軸には自社のコアコンピテンシーがあるべきで、そこでアップサイドを考えながらリソースとスピードの観点でチームを率先していく中でスタートアップを巻き込むというのが良いんじゃないかなと思っています。

まとめ

今回のイベントでは、「スタートアップと大企業から見るオープンイノベーション」をテーマにトークセッションが行われました。

各社が目指すゴールに向けてどのように進んでいくのかを考えたときに、自社のリソースを使うという選択肢もあれば、外部と協業して進めるという手もあります。

オープンイノベーションはあくまでそういった手段の一つであり、その進め方に教科書的な正解はありません。

大企業、スタートアップを取り巻く環境が大きく変化する中で、自社にとって最適な打ち手はどのようなものなのか、さらに大きく視野を持って検討する必要性がでてきています。

ニュースセミナー・イベント【イベントレポート】なぜ新規事業はすすまない? 大手企業とスタートアップから見るオープンイノベーションとは