インタビュー

Interview

独自のノウハウで新規事業をゼロから立ち上げるゼロワンブースターとSun*が目指す次世代ビジネスの創造

ゼロワンブースターのキーパーソンとCEOの小林泰平が語る“次世代の事業家輩出と事業創造”の意義

Sun*(サンアスタリスク)はゼロワンブースターからの依頼で、同社のビジネスモデルの1つである「イントレプレナープログラム(IAP)」を加速させていくためのツール「ゼロワンApps」の開発を手がけました。本記事では、ゼロワンブースター取締役の渡辺 朗氏とCEOの小林泰平が「次世代の事業創造」についての対談内容を抜粋して紹介します。

「ゼロワンApps」は、ゼロワンブースター独自のビジネスモデルをさらに発展させていくためのツール


渡辺:ゼロワンブースターは「世界で最も事業家の輩出に貢献する企業となり、誰もが事業創造できる社会を創る」というビジョンのもと、コーポレートアクセラレータープログラム(CAP)とイントレプレナープログラム(IAP)の2つを主力のビジネスにしています。


私は2019年4月にゼロワンブースターにジョインして、カルチュアコンビニエンスクラブ(CCC)で新規事業の立ち上げなどに携わってきた経験を生かしてビジネスの価値をさらに高めていく目的で、Sun*のようなビジネスとテクノロジーをもった企業とのコレボレーションを進めていきたいと思っています。


まず私たち自身が「アクセラレーター」と呼ぶのをやめようと思っています。


小林:おおいに共感できますね。一般的にアクセラレーターと言っても、やっていることはみんなまったく違いますからね。


渡辺:ゼロワンブースターでは「事業を創造できる人を生み出す」、「事業そのものを生み出す」取り組みを通して事業創造をさらに加速させていこうとしているので、「新しい事業を生み出すことを手がけるプレーヤー」というポジションでいたいと思っています。


主力ビジネスのうち、イントレプレナープログラム(以下、IAP)をさらに効率的に運営して発展させていくためのツールとして、Sun*に依頼して実現したのが「ゼロワンApps」です。


IAPは大手企業が対象で、組織のなかから独自の新しい事業を生み出せなくなっている大企業を私たちがサポートしています。森永製菓、キリンホールディングス、キッコーマン、住友商事などでのスピンアウトによる新規事業の立ち上げをサポートしているところです。


小林:クライアントとその課題によってケースバイケースだと思いますが、IAPの標準的な期間とプロセスについて教えてください。


渡辺:だいたい1年3か月ほどかけるのが一般的で、まずプログラムそのものの方針決定から始めます。企業によって目的が異なりますので、そのゴール設定ですね。たとえばあるクライアントの場合は、若手の優秀な人材が辞めてしまうという課題に直面していました。組織は依然としてタテ割りになっていて、優秀な若手はコンサルティング業界とか投資銀行、IT分野のスタートアップなどへ転職してしまうので、若手を定着させたいという目的がありました。


このように組織を活性化させて、若手スタッフのやりがいを高めたいという企業もありますし、純粋に新しい事業を創出したいというクライアントもあります。


次のプロセスとしては、社内でしっかり告知と応募のための準備などをすべて整えながらワークショップなどを実施して組織を盛り上げていく施策を実施します。大企業の事業創出ノウハウは論理的で、市場分析から始めるのが一般的なのでなかなか市場創造型の新規事業は生まれません。


「自分がどうしたいのか」、「どんな課題を解決したのか」といった動機がしっかりしていないと新規事業は創造できないので、そのための啓蒙期間を設けて選考へと移ります。
そこから書類選考や面談選考を経て約10チームに絞り込んだうえで最終選考になります。勝ち残ったチームのメンバーは、所属部署を離れて1年間、プランづくりに没頭していい決まりになっています。


このプログラムを進めるにあたって、それぞれ使うツールやソフトウェアが異なっていてデータを蓄積する目的もあってSun*に協力いただいて「0→1 Apps」を開発いただくことになりました。



Sun*で開発を支援したエンタープライズ企業の事業創造プロセスを可視化する 0→1Apps (開発実績ページ

ゼロワンブースターとSun*は、新規事業を立ち上げたい企業と若手の人材に貢献できるビジネスモデルを推進


渡辺:0→1 Apps」を活用する目的として、IAPを実施していくうえでの運用負荷を下げたいという点と、実施したときの活動ログをしっかり蓄積してデータベース化していきたいという2点があります。


エントリー企業にIDを付与して、あらゆる活動をIDに紐づけてデータベース化したいと思っています。進捗状況の確認のしやすさや実績の俯瞰、フォーマットの統一などを通して1人ひとりの参加者の熱意や姿勢といったデータを蓄積していきたいと思っています。
もう1つは成長の記録ですね。ピッチおよびピッチ資料といったアウトプットはプログラムの最初のころと終わりとでは大きく変わりますので、この差分もしっかり残していきたいですね。
この実績を踏まえて、今後はもう1つの主力ビジネスであるコーポレートアクセラレータープログラム(以下、CAP)での「0→1 Apps」の活用を考えています。ゼロワンブースターはエンジニアリングが主体の会社ではないので、今後はSun*さんと一緒に、より深い連携や関係構築をめざしたいですね。


小林:ありがとうございます。私たちは大学の教育現場で同じようなことを行っていて、年間200~300時間くらいの講座を過去5年にわたって実施してきました(2020年12月現在)。アントレプレナーシップの姿勢とテクノロジーのスキルを学んでもらいながら、日本語教育も並行して行っており、日本で活躍できる人材の育成を進めています。


ベトナムで4校、そしてインドネシア、マレーシアと計3か国で取り組んでいますが、卒業のタイミングでは就職までサポートしているのが大きな特徴です。


渡辺:卒業後の就職のサポートまで手がけていらっしゃるのはすごいですね。


小林:私たちの取り組みとゼロワンブースターのビジネスには共通点があります。Sun*のビジョンは「誰もが価値創造に夢中になれる世界をつくる」なのですが、そういった壮大なものだけではなくて、事業をつくりたい、なにか新しいことを始めたいという人がいて、でもスキルがない、経験がない、仲間がいない、お金がないといった理由であきらめなくていい土台づくりをしたいんです。


これは私たちが企業としてしっかりフォローしていくのはもちろん、そういうプラットフォームを社会にしっかりと築いていく必要があると思っています。ゼロワンブースターとはぜひコラボレーションしていきたいですね。


渡辺:私もそう思っています。



国という概念にとらわれることなく、世界のIT人材を発掘し育成していくことが次世代ビジネスの創造を実現


小林:ゼロワンブースターでは、出資を通してのベンチャーやスタートアップの支援も手がけていらっしゃいますか?


渡辺:少額ですが、シード期の企業20~30社に数百万円から1,000万円の投資をしています。今後は大手企業での独立起業家にも出資していきたいと思っています。母体になった企業と私たちからの投資で事業を進めていってもらって、最後はその企業への売却でもいいと思います。一度、独立した企業として事業を進めていくことで経営者としての価値が高まって“ホネのある”人材が育つのではないかと考えています。


小林:いいですね、絶対にそうするべきだと思います。Sun*でも「Startup Studio」というのですが、審査を通ったスタートアップ企業へ出資し、さらに出資後のシステム開発や事業開発もトータルで支援するスキームを持っています。ただまだ完全ではないし、そこはもっといいスキームをつくって、推進していきたいですね。


渡辺:そうですね、社名そのものが「ゼロワンブースター」というようにゼロから立ち上げていくところにこだわった事業が中心なので、Sun*のビジネスとはもっと連携できそうです。


小林:ベトナムでビジネスに取り組んで思ったんですが、才能のある人間が、自分の想いとは裏腹にワーキングプアのようにたとえば農家の跡取りで終わってしまうこともある。農業が悪いとかではなく、自分の想いを表現するチャンスが無いことが問題で、才能の最適配置ができればもっとフラットな世の中になると思っています。自分がやりたいと思うことと自分の才能が一致しているということは、幸せなことです。


同じことが、組織のなかでの人材の活用方法にも言えます。細かいことですが、社内のプロジェクトに人をアサインする場合もスキルだけで適当に決めるのではなくて、アサインのためのマネジメントシステムのようなものを考案したいと思っています。


過去の実績にもとづいて、どのチームでどういう人たちとチームを組めば最適なのかというようなところをサイエンスしていきたいと考えています。


渡辺:小林さんがおっしゃっている「人の才能をもっと覚醒させていく」という考えはすごいと感心しています。人の人生を豊かにしていくことのお手伝いということになりますよね。


弊社のクライアントの窓口部門は経営企画系が多いですが、人事部門との連携はあまり密でない気がします。人事部門は入社時やその後の異動履歴などのようなデータはもっていますが、それだけでいいチームはつくれません。


事業創造活動における社員の強みや適応度がデータ化され、そのデータを元に人事部門と事業を創る現場が連携することで推進力のあるチームづくりができると考えています。0→1Appsはそのデータを取得・活用するためのインフラとなります。


今後は、教育事業を拡充していく予定ですか?


小林:今後も教育事業はしっかりとやりつつですが、クリエイティブ&エンジニアリング事業と呼んでいる、「発掘してそこで育てた人材たちが活躍する“場”」を自分たちで開発する事業と、当社のヘッドハンティングとタレント発掘チームが人材を他社に紹介して、多くの人材に活躍できる“場”を提供する事業(タレントプラットフォーム事業)、という2つに取り組んでいます。


ベトナムの学生は、みんなとても優秀です。そして学ぶことに貪欲です。ベトナムにかぎらずアジアの国や地域はITやインターネットというテクノロジーの恩恵を大きく受けていますから、彼らにとってITエンジニアは花形の職業なんです。


これから発展していく国や地域にはまだYahoo!やCyber Agent、ライブドアも存在していません。そして同じアジア発のガンホー、NetflixやSpotify、Uberの成功を知っています。虎視眈々とビックになるチャンスをみんな狙っている雰囲気があります。

渡辺:お話をうかがっていると、マーケットがとてもホットなことがわかります。


小林:私自身は、国という概念をさっさとなくしてしまえばいいと思っています。日本含めてアジア、ASEANといった呼び方にこだわらず、南米などの新興エリアも加えたもっと大きな枠組みでとらえていくべきだと思います。現状はアメリカと中国の2強ですが、日本だけではむずかしい第3勢力を築いていく取り組みが大切だと思っています。


ゼロワンブースターとは、その基盤づくりをぜひ一緒に取り組みたいと思っています。


渡辺:すばらしい構想です。ぜひともに取り組んでいきたいですね。


小林:ぜひ!今回は貴重かつ有意義なお話をありがとうございました。

株式会社ゼロワンブースター
取締役
渡辺 朗氏 Akira Watanabe


1995年、カルチュア・コンビニエンス・クラブ入社。以後、データベースマーケティングの分野で事業戦略および新規事業開発などに従事。Tポイント事業、レコメンド事業の立ち上げなどを手がけ2012年、執行役員に就任。2015年、CCCマーケティング設立とともに執行役員に就任。2019年4月にゼロワンブースターへ転身し、2020年6月に現職

株式会社Sun Asterisk
CEO
小林 泰平 Taihei Kobayashi

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